PC:マリエル、アウフタクト
場所:魔術学院
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“真面目だねぇ、君。君みたいな歳から論文なんか読んでたら、将来ハゲるよ”
マリエルは、棟を出て図書館に向かいながら、先ほどハーフエルフの青年にかけられた言葉を思い出して、改めて腹を立てていた。
さっきは、驚きが先に立ってなんとか受け流したが、一人になって思い返すと、思いかえるほど胃の中がぐっと熱く重たくなるようだった。思わず、先ほど資料室で借りた分厚い資料数冊をぎゅっと胸に抱える。
マリエルは、学院を目指すことになるまで、ほとんど魔術に触れたことはなかった。コールベルの両親にそのような力はないし、親類縁者に魔法使いもいない。
魔術学院入試のために父親の知人の魔法使いに、最低限の基礎を教えてもらったのが、マリエルが魔法の力に本格的に触れた最初だった。
そのような環境だったから、魔術学院に合格したのも奇跡のようなものだと、マリエルは思っている。
実際マリエルは、入学1年目の頃、幼いころから自然と魔法の力に慣れ親しんでいた級友から、知識面でも技術面でも大きく引き離されていたのだ。
そんな自分が、現在級友たちになんとかついていけているのは、与えられた課題に対して全力で取り組むようにしているからこそだ…というのがマリエルの現状認識だ。
ハーフエルフの青年の言葉は、そのような自分のあり方を意地悪く全面的に否定したように、マリエルには感じられた。
確かに、いま胸に抱えている資料に乗っているような文献は、今のマリエルには難しいものだ。読んでいて、わからない言葉が沢山でてくるし、そもそも本文の意図するところを捉えることすらおぼつかないこともある。
それでも、わからない言葉1つ1つを調べることで確実に知識は増えるし、わからないなりに以前よりは概要もつかめるようになってきているような気もしているのだ。
それになにより、自分が魔術学院にくるきっかけとなったベッケラート教授の授業は、少し無理をしてでもしっかり勉強したいと思っていた。
イライラと考え事をしながら足を動かしていたら、いつもより早足で歩いていたらしい。重たい資料を抱えているにも関わらず、気がついたら、図書館の前まで来ていた。
魔術学院には、図書館がいくつか点在している。主に、学問領域ごとにわかれていて、立地も図書館によってそれぞれだ。
授業によっては、学院の敷地内を回って本を借りる必要があり、要領を得ないうちはそれだけで休日がほとんどつぶれてしまうこともあった。
そしてなにしろ魔術学院という場所だ。マリエルの周りでは、学生には所在地すら知らされていない図書館や、肉眼では見ることのできない図書館すらあるのでは、という噂すらあった。
マリエルは入口の前で一度立ち止まる。ドアをあけるために資料を抱え直していると、後ろに人の気配がして、ぐっと入口が動いた。
マリエルが見上げると、マリエルよりも年次が大分上の学生だろうか、明るい髪の色の男性が、ドアを支えてくれていた。
「ありがとうございます」
マリエルが礼を言うと、男性も頭だけを動かして軽く会釈を返した。
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場所:魔術学院
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“真面目だねぇ、君。君みたいな歳から論文なんか読んでたら、将来ハゲるよ”
マリエルは、棟を出て図書館に向かいながら、先ほどハーフエルフの青年にかけられた言葉を思い出して、改めて腹を立てていた。
さっきは、驚きが先に立ってなんとか受け流したが、一人になって思い返すと、思いかえるほど胃の中がぐっと熱く重たくなるようだった。思わず、先ほど資料室で借りた分厚い資料数冊をぎゅっと胸に抱える。
マリエルは、学院を目指すことになるまで、ほとんど魔術に触れたことはなかった。コールベルの両親にそのような力はないし、親類縁者に魔法使いもいない。
魔術学院入試のために父親の知人の魔法使いに、最低限の基礎を教えてもらったのが、マリエルが魔法の力に本格的に触れた最初だった。
そのような環境だったから、魔術学院に合格したのも奇跡のようなものだと、マリエルは思っている。
実際マリエルは、入学1年目の頃、幼いころから自然と魔法の力に慣れ親しんでいた級友から、知識面でも技術面でも大きく引き離されていたのだ。
そんな自分が、現在級友たちになんとかついていけているのは、与えられた課題に対して全力で取り組むようにしているからこそだ…というのがマリエルの現状認識だ。
ハーフエルフの青年の言葉は、そのような自分のあり方を意地悪く全面的に否定したように、マリエルには感じられた。
確かに、いま胸に抱えている資料に乗っているような文献は、今のマリエルには難しいものだ。読んでいて、わからない言葉が沢山でてくるし、そもそも本文の意図するところを捉えることすらおぼつかないこともある。
それでも、わからない言葉1つ1つを調べることで確実に知識は増えるし、わからないなりに以前よりは概要もつかめるようになってきているような気もしているのだ。
それになにより、自分が魔術学院にくるきっかけとなったベッケラート教授の授業は、少し無理をしてでもしっかり勉強したいと思っていた。
イライラと考え事をしながら足を動かしていたら、いつもより早足で歩いていたらしい。重たい資料を抱えているにも関わらず、気がついたら、図書館の前まで来ていた。
魔術学院には、図書館がいくつか点在している。主に、学問領域ごとにわかれていて、立地も図書館によってそれぞれだ。
授業によっては、学院の敷地内を回って本を借りる必要があり、要領を得ないうちはそれだけで休日がほとんどつぶれてしまうこともあった。
そしてなにしろ魔術学院という場所だ。マリエルの周りでは、学生には所在地すら知らされていない図書館や、肉眼では見ることのできない図書館すらあるのでは、という噂すらあった。
マリエルは入口の前で一度立ち止まる。ドアをあけるために資料を抱え直していると、後ろに人の気配がして、ぐっと入口が動いた。
マリエルが見上げると、マリエルよりも年次が大分上の学生だろうか、明るい髪の色の男性が、ドアを支えてくれていた。
「ありがとうございます」
マリエルが礼を言うと、男性も頭だけを動かして軽く会釈を返した。
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