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2024/11/15 10:20 |
ナナフシ  8:A great fierce battle named endless sterility/オルレアン(Caku)
PC:オルレアン・アルト
NPC:ゴシャーな敵
PLACE:正エディウス国内?
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「なんか敵っぽいのが現れたけど、ちょっとコレ人間相手の規格はみでてな
い?」

「大丈夫だと思います、貴女(貴方)も規格外ですし」

目の前にゴシャー!と立ち塞がった巨大怪物を目の前に、二人は平坦な声でそ
れぞれの心境を吐露しあった。
身の丈七メートルは下るまい、というぐらいの大きな背丈に人の体をデフォル
メしたような単調なシルエット、人ならば顔のある位置には理性など感じさせ
ることもない巨大な口腔がくっぱり口開いていた。

「ちょっと!って冷静になってる場合じゃないわよ本気で!あんなデカ物どっ
から叩けばいいのよ!」

「ええと、とりあえずさっき、変な蛾出してたじゃないですか?あの黒いの、
怪物VS蛾のミュージカルって見たことある気がするんで、そんな感じで?」

「馬鹿言わないで!あたしの人造精霊だって万能じゃないんだから!
増殖で体積増やしてもせいぜい馬サイズ程度よ…って来たぁぁぁぁぁ!!!?」

真上から徐々に降ってくる影に、顔を引き攣らせながら叫ぶオルレアン。
怪物が愛嬌さえ感じさせる身投げタックルの大瀑布に、アルトはダークエルフ
の脚力を最大限に使用し、オルレアンは咄嗟に人造精霊に命令を送り羽への擬
態で宙に避ける。
耳を劈くような大爆音と目を遮る視界で、辺りはもうもうと煙る。

「…ちょっとは頭使いなさいよコノ馬鹿!てか魔法生物!?なんなのコイツ!」

「…あ」

離れた場所にいるアルトが、ふとオルレアンに指を差す。
次の瞬間、口を大きく開けた怪物が顎を開いてオルレアンを噛み砕こうと咥え
ようと―――



がちっ!!


「って舐めんじゃないわよこの下種がぁ!」

紫電を散らしながら鎌を握るオルレアン。怪物の口の縁に足をかけ、怪物の口
腔内から脳天にめがけて鎌を突き刺し、つっかえぼうにしている。どうやら人
造精霊達も限界に近い力を発揮しているのか、鎌からは静電気のように紫色の
光がちかちかと跳ね回る。
さすが女性とは言い難い筋力で両者拮抗。よし、今だヤれ!とアルトは怪物に
ちょっとだけ応援を送る。

「…え?」

と、まだ収まりきっていなかった煙の中から手のような巨大もみじがアルトを
がっちり捕まえた。割とぬるい力で(おそらくオルレアンを噛み砕くことに必
死になっているからだろう)握られているので絞め殺されることはないが、が
っちりと掴まれたおかげで逃げ出せそうもない。
どうしようかと頭をめぐらせて、とりあえず怪物VSオカマの激闘を温い瞳で見
守ることにした。どうせどっちかが片つくまで体力は温存しておこう。ついで
にどっちも片付かないかな、と夢見ながら無関係を装った見学を始めたのであ
った。

……………………

三時間経過。

……………………

「ぬぉぉぉぉぉぉ……」

オルレアンは今だ怪物との不毛な力比べを続けていた。
人造精霊も約60%が休眠してしまうという現在状況。これ以上抜けられると本気
でヤヴァイので気力で死守しているが、いつまで持つか分からない。
そもそも、人造精霊とは生物の遺伝子から生まれた生命体だから、エネルギー
がなくなると彼らは活動できない。ようは宿主であるオルレアンの体力から自
分の活動エネルギーをぶっちぶっち取っていくので長時間の戦闘には不向きな
のだ。

(コイツ、まさか…)

生物にしては無機質な怪物の形を見て、オルレアンは最初、魔法生物の何かか
と思っていた。だが、魔法生物にしては意志が見られない。基本的に魔法生物
とは魔法を駆使する生命体だから、意志とのアクセスは重要だ。
数字がわかっても計算ができない猿のように、魔法は確固たる自意識からの発
信がないと行使できない。魔法を本能で使えるなんて能力はそうそうない。

「コイツ、まさか人造精霊とか言わないわよねあのクソジジィ!!」

「オルレアンさーん、もうそろそろ駄目そうですか?リタイアしますかー?」

平穏なアルトの声が聞こえてきたが、内容は早く破滅を願っているようにしか
思えない。

「馬鹿言ってんじゃないわ!リタイアしたらこの世から脱落じゃないの!」

「天国だと誰も綺麗で平等ですよ」

「オンリーワンじゃないと許せないのよ!」

ぐぎぎぎぎ、と手に汗握りながら、鎌がきしみを上げる。
オルレアンの胸中に、師とはまた別の予感がよぎって記憶を浮かび上がらせ
る。

(もしかして、コイツは…)




あの日、剣を信じて戦った日。あの日、忠誠を剣として振るったあの日。
まだ誰も彼もが生きていて、だからこそ陥落せねばならない城があった。
何もかもを焼き尽くさなければ、魔女の呪いを止められないとした元凶の日。
騎士らが乗り込んだ先に目にしたのは、黒い異形が人肉を貪る阿鼻叫喚。生き
たまま取り込まれていく同胞の絶叫。

城の地下に埋められたのは、瀕死の人間達。
なぜなら、彼らは突入時に魔女の呪いを受け、その身に黒い斑点が浮かび上が
っていた。呪いは感染する、そこで終らせなかればならなかった。

そうして、
正統エディウス国の北の果て、イズフェルミア地方ジェネック男爵領ヴァンジ
ェロ城の地下に、当時大量の人造精霊と感染者が埋められた話は、エディウス
国の上層部に属する者なら周知の事実だ。



「まさか、あの時のを掘り返したとか言うんじゃないでしょうね!」

叫びながら、怪物の真っ黒な喉奥を睨む。
あの紳士は元々魔法使いではない、だがあの馬鹿が「城」から人造精霊を掘り
返して指導者に復讐しようと思いつくのは容易だ。地位を奪った憎い敵同士を
ぶつけ合わせて、共食いでも狙ったのか。
マズイ、人造精霊は本来生物を根幹とする。こいつはどこをどうしたのか、寄
生している本体が見当たらない。のっぺりとした表皮や牙を見る限り、それが
人造精霊によって増殖した部分であり、本体でないのは見て分かる。

「ちょっとそこのエルフ!どっかにこの馬鹿が基本にしてる生物がいるはず
よ!生温い瞳で眺めてないで探しなさい!」

「ごめんなさーい、目が悪くなりました。見えません」

「ぎゃー!最低の言い訳ね!」

あと何時間持つか、2時間ぐらいだな、とアルトは冷静に穏便に平和的に考え
ていた。

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2007/02/11 23:35 | Comments(0) | TrackBack() | ○ナナフシ

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