忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/04/27 04:49 |
シベルファミト 26/しふみ(周防松)
第二十六話 『しふみ、離脱する』

PC:しふみ ベアトリーチェ ルフト (顎羅)
NPC:ウィンドブルフ 庭師
場所:ウォーネル=スマン邸

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やれやれ、騒々しいことよ」

肩をこきこきと動かしつつ、しふみは魚人間とルフト、ついでにブルフが落ちていっ
た窓をちらりと見る。
窓の外からは時折、派手な音がする。
戦っているのだ、あの妙な魚人間とルフトが。
そのうち「なんだ」「どうした」と言い出す人間の声も混じりそうだ。
「加勢する?」
ソウルシューターを抱えたベアトリーチェが小首を傾げる。
抱えている物さえ無視すれば、年相応の、かわいらしい仕草だ。
「面倒くさい」
しふみは全くやる気のない声で答えた。
それを聞いたベアトリーチェは「んじゃ、まあいいや」などと言いつつソウルシュー
ターをベッドに置いた。
「あの魚、何なんだろ。魚が犬の肉を食べに来るなんて聞いた事ないわ」
「おそらくは肉食の魚なのであろう。どこぞには大量にいるというではないか」
「知ってるー、川に落ちた牛とか人間とかにいっぱいたかって、あっという間に骨に
しちゃうんでしょ」
「……さすがに、それは大げさな表現であろう」

不意に、ベアトリーチェが少しばかり考え込む。

「でもさあ、犬の肉って美味しいのかしら」
「美味と言う者もおるが……あれは、おそらく食べ慣れぬ者の口には合わぬであろう
な」
ぴくり、とベアトリーチェは方眉を動かす。
「……アンタ、もしかして食べたことあるの?」
「ほほ。どうであろうな」
しふみは着物の袖で口元を隠しつつ、意味ありげに笑う。
「質問に答えろー!」
「わしは鶏肉の方が好みじゃ」
「ちがーう!」

……ルフトが聞いたら泣きそうな会話である。



それにしても、だ。
しふみは思う。

そろそろ来るかもしれないと思っていたが、もしかしたら、あの魚人間、ソレかもし
れない。

……追っ手。
あるいは、追っ手側が差し向けた刺客。

過去に少しばかり因縁があって、しふみは追われる身の上になった。
具体的に何がどうして、というと、しふみにはわからない。
わからない、というよりは、思い出せない。
彼女にとっては非常にどうでもいい、もはや覚えてもいないような些細なことを、あ
ちらが勝手に因縁に仕立て上げ、挙句、追いまわしているのが実情である。
確実に言えるのは、追いつかれたら撃退するのが非常に大変だ、ということである。
追っ手の目的は、彼女を捕まえることではなく、確実に息の根を止めることにあるか
らだ。

これがただの取り越し苦労なら何の問題もない。
しかし、もし本物だったら?

取り越し苦労ではなかった場合のことを考えると、やはり「そうである」と考えて行
動した方が安全には違いない。

……逃げるか。

しふみは、あっさりと決めた。

撃退する手間のこともあるが、誰かを巻き込むというのが非常に嫌なのだ。
もっとも、相手に迷惑をかけてしまうからというわけではなく、巻きこんだ相手から
恨みつらみを聞かされたり、「なんで追われてるんだ」と追及されるのが面倒で嫌な
だけなのだが。

「嬢や」

しふみは、ベアトリーチェに向き直った。

「何?」
「犬や鳥にも伝えておいてくれ。気が変わったから退散する、とな」
「は?」

言いつつ、しふみは着物の袖の下に手を入れ、小さな小さな丸い玉を取り出す。
いつぞや、ナイトストールの家を荒らして得た戦利品の一つ、煙玉である。

「ではさらば」

しふみは、それを無造作に床に投げつけた。
ぼがん、という音とともに、もくもくもくもくもくと濃い煙が立ち昇る。
ついでに、鼻にツンとくる嫌な臭いも漂う。

「ちょっ、アンタ、一体何すんのよ!」

不快感を露わにし、煙をぱたぱたと手で払いながら、ベアトリーチェは抗議の声を上
げる。
――その声が上がった時、しふみは既に、その場にいなかった。



ウォーネル=スマン邸に勤める庭師は、植えこみの剪定をする手を休め、額の汗を拭
くついで、ちらっと空を見上げた。
今日も今日とて、快晴である。
別に何かを見ようとして空を見たわけでもないので、彼はすぐに仕事へと意識を切り
替えた。

と、その時、視界を一匹の動物が駆け抜けて行った。

「おうわっ!」
動物の出現に驚いて、庭師はハサミを落としかけた。
動物はすばしこく、あっという間に庭を横切り、音もなく塀の上に飛びあがり、向こ
う――つまり外へと消えた。

「あれー……?」

ぼさっと見送っていた庭師は、間抜けな声を上げながら、ふと考えた。

きつね色、ってどんな色だっただろうか。

確か、揚げ物をカラッとおいしく揚げた時の色を「きつね色」と表現するはずだ。
緑色を指して「きつね色」と言ったりはしない。

じゃあ、今通っていったのは何だ?
きつね色じゃない狐?

庭師の視界を風のように通り抜けた狐は、確かに赤い色をしていた。
それだけならまだしも、その尻尾が七本、というのはどういうわけだろうか。
庭師は、そんな生き物を見たことがなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
PR

2007/08/24 02:17 | Comments(0) | TrackBack() | ○シベルファミト

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<星への距離4/ロンシュタット(るいるい) | HOME | アクマの命題 第二部 ~緑の章~【3】/オルド、スレイヴ(匿名希望α)>>
忍者ブログ[PR]