第十三話 『枯れない砂漠』
キャスト:ルフト・しふみ・ベアトリーチェ
NPC:ウィンドブルフ
場所:ムーラン
――――――――――――――――
朝。
豪奢な天蓋つきベッドから身を起こす。
砂よけのために二重になっている窓から差し込む光は、依然として強い。
が、壁に施された冷気の呪符が部屋のすみずみまで涼を満たしていた。
くああ、と豪快にあくびをしながら、彼女一人で使うには広すぎるベッドから
降りる。ひんやりとした大理石の床は、磨き上げられて鏡のように
ベアトリーチェの姿を上下逆さまに映し出した。
だぼついたネグリジェのすそを引きずりながら、洗面台に向かう。
あの夜から、一ヶ月が経過していた。
その間一行はゾミンからムーランへと渡り、ベアトリーチェの腕も完治した。
医者にはかかっていないが、もともと大した怪我でもなかったのだから
よかったといえばよかったのだろう。
顔を洗い、柔らかで清潔なタオルで拭きとって。
「さて♪」
浮かれ気分で、部屋の端まで向かう。
一見すると壁だが、取っ手がある。それを両手で思い切り開くと。
そこには、何着もの服がずらりと並んでいた――
・・・★・・・
ムーランの民族衣装に身を包んだベアトリーチェは、鼻歌まじりに
自分の部屋を出た。無論、他の部屋も豪華を極めている。
短い廊下を渡り終えると、そこは吹き抜けだった。今いる2階から、
階段ごしに1階を望むことができる。
石造りの壁には細かい文様が彫られ、それは天井にまで達している。
天窓は吹き抜けをまっすぐ貫き、真下の噴水を照らし出していた。
蓮をうかべた噴水は陽光を受けて虹を作りだし、中央にすえられた
女神の像はそれを纏うように、今日も笑顔で立っている。
砂漠に囲まれたムーランで、これほどの噴水を見ることはそうそうない。
猛暑と砂に苛まれているこの地に噴水があろうものなら、一夜を待たずして
空になるに違いない。市民に飲まれて。
2階からそれらを見下ろし、ベアトリーチェは満足そうに笑みをこぼすと、
絨毯が敷かれた階段を下りる。その途中で、1階にいたルフトが礼儀正しく
挨拶をしてきた。手には銀盆を持ち、上には涼しげなガラスの器に盛られた
フルーツの山がある。
「おはようございます、ベア」
「おはよー」
ルフトの肩に止まっていた鷹――ウィンドブルフが、ばさっと、飛び立つ。
彼は羽を広げればかなりの大きさになるが、室内だというのに窮屈そうな様子も
なく悠々とベアトリーチェの前に降り立つ。
「もう昼だぜー?起こしにいってやろうかと思ったぐれーだ」
「こういう時は寝坊してなんぼなの」
へっ、と鳥らしからぬ笑いをこぼして、ふたたびウィンドブルフは飛び立った。
階段を逆撫でするように滑空し、壁の手前で急上昇していっきに天窓あたりへ
たどり着く。そのまま2階を経由して、噴水の水を足で跳ね上げてからルフトの
肩へと収まった。
「遅かったのぅ」
階段を降りきると、1階の奥から赤毛の美女が声をかけてくる。彼女は
窓際よりの一段高いスペースに陣取って、サテンの刺繍がほどこされた
クッションに肘をつき、優雅に身を横たえていた。
彼女――しふみもまた、ムーランの民族衣装で着飾っていた。
おもむろに横手にあった杯にジュースを注いで、こちらに渡してくる。
ベアトリーチェはそれを受け取ると、しふみの隣に座って彼女の杯に
自分の杯をこつん、とあてて飲み干した。
殺人鬼「ナイトストール」捕縛から約一ヶ月――
莫大な報奨金を手にした一行は、『蜃気楼の都』ムーランのとあるホテルで、
なんていうかまぁぶっちゃけ豪遊していた。
キャスト:ルフト・しふみ・ベアトリーチェ
NPC:ウィンドブルフ
場所:ムーラン
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朝。
豪奢な天蓋つきベッドから身を起こす。
砂よけのために二重になっている窓から差し込む光は、依然として強い。
が、壁に施された冷気の呪符が部屋のすみずみまで涼を満たしていた。
くああ、と豪快にあくびをしながら、彼女一人で使うには広すぎるベッドから
降りる。ひんやりとした大理石の床は、磨き上げられて鏡のように
ベアトリーチェの姿を上下逆さまに映し出した。
だぼついたネグリジェのすそを引きずりながら、洗面台に向かう。
あの夜から、一ヶ月が経過していた。
その間一行はゾミンからムーランへと渡り、ベアトリーチェの腕も完治した。
医者にはかかっていないが、もともと大した怪我でもなかったのだから
よかったといえばよかったのだろう。
顔を洗い、柔らかで清潔なタオルで拭きとって。
「さて♪」
浮かれ気分で、部屋の端まで向かう。
一見すると壁だが、取っ手がある。それを両手で思い切り開くと。
そこには、何着もの服がずらりと並んでいた――
・・・★・・・
ムーランの民族衣装に身を包んだベアトリーチェは、鼻歌まじりに
自分の部屋を出た。無論、他の部屋も豪華を極めている。
短い廊下を渡り終えると、そこは吹き抜けだった。今いる2階から、
階段ごしに1階を望むことができる。
石造りの壁には細かい文様が彫られ、それは天井にまで達している。
天窓は吹き抜けをまっすぐ貫き、真下の噴水を照らし出していた。
蓮をうかべた噴水は陽光を受けて虹を作りだし、中央にすえられた
女神の像はそれを纏うように、今日も笑顔で立っている。
砂漠に囲まれたムーランで、これほどの噴水を見ることはそうそうない。
猛暑と砂に苛まれているこの地に噴水があろうものなら、一夜を待たずして
空になるに違いない。市民に飲まれて。
2階からそれらを見下ろし、ベアトリーチェは満足そうに笑みをこぼすと、
絨毯が敷かれた階段を下りる。その途中で、1階にいたルフトが礼儀正しく
挨拶をしてきた。手には銀盆を持ち、上には涼しげなガラスの器に盛られた
フルーツの山がある。
「おはようございます、ベア」
「おはよー」
ルフトの肩に止まっていた鷹――ウィンドブルフが、ばさっと、飛び立つ。
彼は羽を広げればかなりの大きさになるが、室内だというのに窮屈そうな様子も
なく悠々とベアトリーチェの前に降り立つ。
「もう昼だぜー?起こしにいってやろうかと思ったぐれーだ」
「こういう時は寝坊してなんぼなの」
へっ、と鳥らしからぬ笑いをこぼして、ふたたびウィンドブルフは飛び立った。
階段を逆撫でするように滑空し、壁の手前で急上昇していっきに天窓あたりへ
たどり着く。そのまま2階を経由して、噴水の水を足で跳ね上げてからルフトの
肩へと収まった。
「遅かったのぅ」
階段を降りきると、1階の奥から赤毛の美女が声をかけてくる。彼女は
窓際よりの一段高いスペースに陣取って、サテンの刺繍がほどこされた
クッションに肘をつき、優雅に身を横たえていた。
彼女――しふみもまた、ムーランの民族衣装で着飾っていた。
おもむろに横手にあった杯にジュースを注いで、こちらに渡してくる。
ベアトリーチェはそれを受け取ると、しふみの隣に座って彼女の杯に
自分の杯をこつん、とあてて飲み干した。
殺人鬼「ナイトストール」捕縛から約一ヶ月――
莫大な報奨金を手にした一行は、『蜃気楼の都』ムーランのとあるホテルで、
なんていうかまぁぶっちゃけ豪遊していた。
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