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2024/05/17 05:12 |
シベルファミト 03/しふみ(周防松)
第三話「気まぐれ狐」

PC:ルフト ベアトリーチェ しふみ
場所:ゾミン
NPC:ブルフ ウェイトレス 変態さん

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


しふみは特に考え事もせず、運ばれてきたじゃがいもの冷製スープを黙々とスプーン
で口に運んでいた。

「ウェイトレスさん、お勘定をお願いします」

男性の声が上がる。
ざわざわとした店内の空気の中に掻き消えていきそうな、ありふれた言葉だった。
「はい」と返事をして小走りに向かったのは、先ほどしふみの「油揚げ」発言に戸惑
いをみせたウェイトレスである。
なんとなく、ウェイトレスの向かったテーブルに視線を向けてみると、一組の男女の
姿があった。
赤毛の、まだ「幼い」とさえ表現できそうな年齢の少女と、一際目立つ巨体の……
男、と判別できる、頭にずっぽりと頭巾をかぶった人物。
ウェイトレスに声をかけたのは、こちらの巨体の男だったのだろう。


……む。


赤毛の少女を見たしふみの脳裏に、何かが引っかかった。


……はて。


スプーンを運ぶ手を止めて、しふみは引っかかった何かを探ってみる。


……あの小娘、見たことがあるようなないような。


さらに思考を煮詰めてみる。


……あぁ、違う。あの小娘に似た雰囲気の奴がいたのだ、大昔。


それから、その『あの小娘に似た雰囲気の奴』の顔を思い出し、ふと懐かしさを感じ
て遠くを見つめたい衝動に狩られた。

その時、だった。
肌が、ぞわり、と粟立つような寒気を覚えたのは。
風邪をひいた時の寒気とは違う、嫌悪感からくるものである。
嫌悪感を抱かせるものの気配を探ってみると、それは斜め後ろのテーブルから感じる
ものだった。

テーブルの上には水の入ったグラスが一つ置かれているだけで、注文をした形跡はな
い。
グラスの水にも手をつけている様子はない。
その視線の先には――赤毛の少女がいた。
男の濁った目は少女を見つめたままで、他のことには一切意識を傾けていない様子で
ある。
まるで、視線で捕らえようとしているのではないかというぐらいに、その目はピタリ
と少女をつけていた。



助ける義理があるかと聞かれれば、否、と答える。
ならば何故、と尋ねられたらこう答えるしかあるまい。

『ただの気まぐれ』と。


しふみは、その変態男の頭に向けてスプーンを投げつけた。
コツン、と音を立て、スプーンは見事に男のこめかみに当たり、跳ね返って床に落ち
た。
少女以外のことは眼中にない男でも、さすがにこれには意識をかき乱されたらしい。
その濁った目を、いきなりこちらに向けてきた。
その目は、彼にとっての不当な闖入者に『邪魔をするな』と雄弁に語っている。

「はぁい?」

しふみは、神経を逆撫でせんばかりに、にこりと笑みを浮かべて小さく手を振った。



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2007/02/12 20:47 | Comments(0) | TrackBack() | ○シベルファミト

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