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2024/05/16 12:37 |
シベルファミト  02/ベアトリーチェ(熊猫)
第二話『夜を覆う者』

キャスト:ルフト・ベアトリーチェ・(しふみ)
NPC:ブルフ
場所:ゾミン
――――――――――――――――

人気のない食堂はしかし静まっているというわけでもなく、昼相応の
騒々しさに包まれている。

「ナイトストール(夜を覆う者)、か。女々しい名前をつけられたもんだわね」

ベアトリーチェはパンの歯ざわりを感じながら、賞金首の情報が記された
報告書に再度目を通した。

犯人――『ナイトストール』の手口はいつも決まっているようだ。
幼い少女を狙って誘拐し、そのうちの誰一人として生きて帰った者はいないという。
ただし遺体は、必ずゴミ袋に入れられた状態でこの街のどこかで発見されている。
そして発見されるたびに、賞金額はあがっていっている。

「恐ろしい実力の持ち主なんでしょうね。早く捕まえないと」

相槌をうつ、目の前の巨体に彼女は一瞥をくれた。
この暑いというのにすっぽり頭巾をかぶり、あまつさえごく限られた者しか知りようのない
料理の名まで出して、この犬は目立ちたいのかそうでないのかわからない。

まぁ天然とは、そういうものなのだろう。

「狩るわよ。必ず」

ベアトリーチェは重みのない声音でそう言うと、ウェイトレスを呼び止め、追加オーダーで

クリームソーダを注文した。
肉――この蒸し暑い中でどのように保存されていたかわかったものではないが、特に
不安さを感じさせないほどその味はいい――と野菜が詰まったサンドイッチの端を
くわえて、報告書を前にしばし黙る。

ハンターの報告――というより体のほとんどを無くしたショックで、錯乱して出た
たわごとを鵜呑みにするならば、犯人は外套を身に纏っているらしい。

報告書は、そんな命を落としたハンター達の遺言書と言っても差し支えない。
だが半死人にろくな証言ができるわけでもなく、ハンター達はひとこと、ふたこと
たわごとを遺して死んだのだ。

つと、ルフトを盗み見る。彼はカレーの味が気に入ったのか、子供のようにスプーンを

進めていた。

(今ここに警邏隊がなだれ込んできて、こいつをしょっぴいてっても不思議はないわね)


苦笑すると、ルフトははたと手を止めて、テーブルの奥から紙ナプキンを取った。
頭巾の中にそれが手品のように消える。口を拭いているのだ。

「しかし検討がつきませんね。ハンター達が犯人に遭遇した場所はばらばらだし、
 死体発見場所も決まっていないようですし…待ち伏せしようにも
 人相がわからない事には」
「でも待ち伏せがてっとり早いかもよ?ここは夜間外出禁止令が適用されてるし。
 ギルドからの依頼だって証明すれば、夜警にも協力を仰げるんじゃないかしら」

くわえたままだったサンドイッチをようやく齧る。ルフトはとっくにカレーを平らげていた。

「待ち伏せするのも面倒だから、おびき寄せるってのもありよね」
「おびき寄せる?」

クリームソーダを運んできたウェイトレスが、首を傾げているルフトの皿を下げていく。

ベアトリーチェはにっこり笑ってストローに口をつけた。

「あたしみたいな可愛い子、犯罪者じゃなくてもほっとかないわよね?」
「ベア」
「なによー、不満?」
「いや、そうじゃなくて、さっきから視線を感じるのですが」
「そりゃあんたは不審が服着て歩いているみたいなもんだからしょうがないけど」

とは言ってみたものの、ベアトリーチェはさっと店内を見渡した。
ルフトの五感に嘘はない。彼が感じるというのなら、確かにそうなのだろう。

「危険なの?」
「いえ。しかし隙がありません。どうしますか?」
「出ましょう」

クリームソーダの上に浮いているアイスだけを食べてしまうと、ベアトリーチェは
立ち上がった。

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2007/02/12 20:46 | Comments(0) | TrackBack() | ○シベルファミト

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