忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/17 05:12 |
シベルファミト  04/ルフト(魅流)
第四話『夜を彷徨う者達』

PC:しふみ、ベアトリーチェ、ルフト
NPC:ナイトストール
場所:ゾミン(夜)
--------------------------------------------------------------------------------



 結局、ベアを説得する事はできなかった。

「そういうわけですので、今から寝て夜にまた出かけます」

「そうなると、俺は戦力外だなぁ。どうすっかな」

「何があるかわからないのでついてきてくれると助かるのですがね」

「やれやれ、相変わらず用心深いこって。ま、いいけどな」

 それだけ言ってブルフは自分の羽根の中に頭を突っ込んだ。夜に備えて仮眠を取るのだろう。それを確認したルフトもまた、窓を閉めて布団を被った。

                ◆◇★☆†◇◆☆★

 それは、食事を取ろうと近くの食堂へ足を運んだ時の事だ。頼んだ食事が来るのを待ちながら深い意味もなく食堂の中を見回し、そして雷に打たれた。
 燃えているかのごとく赤い髪、そして宝石のような深い緑の瞳。さらに片目を覆う眼帯がアクセントとなっていて、まさに最高の素材と言える。だから私は、じっとその少女を見つめ続けた。今はまだ準備が足りない。場所もタイミングも悪い。だから、好機が来た時を逃さないようにせめて人相風体だけは諳んじれるくらいに私の頭の中に叩き込まなければならぬ。
 それだというのに、十分に覚える前に邪魔が入った。無礼な事に私に向けてスプーンを投げつけてきた女がいた所為だ。さらに頭の悪い事に、そちらに視線を向けた私に向かって「はぁい」などと言いながら手を振る始末だ。歳の頃は20を過ぎた頃だろうか。やはり見事な赤い髪に少し魅力を感じるが、いかんせん歳を食いすぎている。瞳の色も青ではやはりイマイチだ。無視する事にして、視線を戻す。なんということだ、少女がいない。
 どうやら女の方に気を引かれた隙に会計を済ませ出て行ってしまったらしい。慌てて席を立ち大通りにでるが、すでに影も形も見当たらない。仕方がないので、一度家に帰って万一の時のための準備をする事にした。

 ある特殊なキノコの胞子には、吸ったモノの眠気を誘う効果がある物がある。世間では植物学者ということになっている私が研究の途中で見つけた物だ。これが私の愛しい芸術品の素材達を集めるのに一役買ってくれている。私はそれを袋に入れ、念のための切り札を入れた袋と共に腰に括りつけた。これで、いつまたあの素材を見かけても大丈夫だ。後は、タイミングを窺って眠らせ、ここへつれてくればいい。
 そこで私は昨日から置いたまま放置していた失敗作の存在を思い出した。新しい芸術のためにも失敗作は早く棄ててしまわねば。
 幸い、馬鹿な警邏達は「研究のために必要だ」と言うとあっさりと夜の街をうろつく許可をくれた。そして、自分には関係ないと夜間外出禁止令を無視して外出する者や、知らずに夜この街に入ってくる者などへの対応で彼らは忙しく、わざわざ許可を取りに行った私を疑うものはいない。物事を都合よく采配する神の存在なぞ私は信じないが、それでも状況は完全に私に有利なのは事実だ。だから、失敗作を棄てに行くのに苦労する事もない。今夜にでも棄てに行こう。日を置いて柔らかさを増した失敗作を小さいパーツに小分けし、私は満足して眠りについた。

                ★☆◆◇†☆★◇◆

「いくわよ。用意はいいわね?」

 仮眠を取って、時間は既に夜。待ち伏せをする用意を整えたベアトリーチェとルフトは宿屋の前で最後の作戦会議を今終えた所だ。
 作戦そのものは単純で、ベアトリーチェが囮となって街を歩き、ルフトがそれに遅れて気配を殺しながら進む。ナイトストールが出た時点で合流し、叩く。そういう手筈になっている。
 この囮作戦のために食堂から帰る道で買ったクリーム色のワンピースを着て、ベアは鼻歌混じりに夜の街を歩く。ルフトは常に一つ手前の角に隠れてその後と追った。愛用の棍――先端にはブルフが止まっていて、何かあればすぐに鎌として使えるようになっている――と、ベアから預かったソウルシューターを持っているのでそれなりに距離を空けて歩かないと物凄くめだってしまうのだ。

 人気があまりない道を進んで行く。あちらこちらに立てられた街灯の明りや、営業していないはずの酒場から僅かにこぼれる光のお陰で暗くて歩くのに困るとかそういう事はない。
 あてのない散歩も一時間を超え、今夜は失敗かなという思いがルフト頭をよぎった時、独特な臭いがルフトの鼻を衝いた。嫌悪感と、そして本能の奥底に与えられる強烈に刺激。

「これは……腐臭、ですか」

 風に乗って届く臭いは腐りかけてからしばらく経ったモノが出す臭いだ。風向きの関係なのかもしれないが、普通はそんなものがいきなり現れるなんて事はない。この臭いの出方はまるで、袋の中から今外にブチ撒けたかのような。

「ビンゴ、ですね」

 ベアと合流して、臭いの元へと一気に駆け抜ける。一瞬だけ眼に入った赤い色彩が物凄く印象的だった。
PR

2007/02/12 20:47 | Comments(0) | TrackBack() | ○シベルファミト

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<シベルファミト 03/しふみ(周防松) | HOME | シベルファミト 05/ベアトリーチェ(熊猫)>>
忍者ブログ[PR]