・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
PC:タオ
NPC:
場所:シカラグァ・サランガ氏族領・港湾都市ルプール
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その青年は一人街道を歩いていた。
ふらふらとどこか不安定で、ゆっくり歩いてるように見えて、そのくせ足が速い。
ただ歩いているはずなのにどう移動しているのかよくわからず、気持ち悪い。
…ただすれ違うだけなら、わずかな違和感だけしか感じないのだろうな。
茂みに身を潜め石弓の照準を合わせながら、狙撃手は思った。
青年の外見は男性にしては低めの背丈、なで肩の華奢な体躯で、その表情に浮かぶ柔和な微笑は、連続殺人犯として高額な賞金をかけられているとは信じがたいものだった。
だが狙撃手は、今なら信じる気になれた。
残虐性はみじんに感じ取れない。殺人を犯すような男かと問われれば今でも首を横に振るだろう。
ぱっと見は無害な小男にしか見えない。
しかし、明らかにあの男は異質だ。
観察し続けたから、その動きの異様さがわかる。
あんな動きを身につけた男が、まっとうな生活を送っているとは思えなかった。
だとしても関係ない。いくら動きが奇妙だろうが、矢が刺されば死ぬのが道理だ。
狙撃手は自分に言い聞かせると、静かに引き金を絞った。
石弓から放たれた矢は一直線に青年の背中に飛んでいき、
そして青年のすぐわきを通り、街道脇の木の幹に深々と突き刺さった。
狙撃手の腕が悪かったわけではない。
本来ならその狙撃手にとって決して外すはずのない距離だった。
しかし青年の異様な動きが目測を誤らせたのだ。
青年は振り返り、こちらを見た。
目が合う。発見された。
最初の一撃で仕留められれば楽だったのだが、こうなれば仕方ない。
街道脇から青年を取り囲むようにして、様々な武器を持った男達が飛び出してきた。
青年に動揺が見られないのは、気付いていたからか、それとも慣れているのか。
周囲を囲む男達は、筋骨隆々で、人相も険しく、柔和で華奢な青年と比べると、まるで熊と兎だ。
得物も、男達は剣やら斧やら槍やら凶悪そうなものを構えているが、青年は得物らしきものは何一つ持っていない。
どう見ても、殺人鬼を取り囲む賞金稼ぎではなく、哀れな獲物を捕らえようとしている山賊達の図だ。
実際、山賊と賞金稼ぎにそう差があるわけでもない。賞金稼ぎをしていた男が、一月後に犯罪者になっていたなんていうのはざらだ。
しかし彼らはまだ、法の側にいた。
一方、高額賞金首であるところの青年はというと、この状況においてなお、変わらず微笑みを浮かべており、今自分の置かれている状況を理解しているのか怪しいところであった。
もっとも、その青年がどう思っていようが賞金稼ぎ達には関係なかった。
手配書には『生死不問』と書かれている。
もとより生かして捉えるつもりはない。
男達が一斉に襲い掛かった。
数分後、狙撃手は賞金稼ぎとして長生きするための賢明な行動に出た。
つまり、勝てぬ相手には挑まない。
石弓を捨て必死に逃げる狙撃手を見送った後、青年-タオ・リウシェン-は足元に転がる死体を埋葬することにした。
死体を街道脇に運び込む時、死体の懐から一枚の手紙が落ちた。
タオはそれを懐にしまうと、簡単に死者を弔い、旅を再開した。
* * *
港湾都市ルプール。
サランガ氏族領の中でも直轄領に隣接し、首都ティルフ擁する大陸最大の淡水湖と外洋に面するこの街は、湾の最奥に位置し、島嶼にも恵まれ、天然の良港として、かつ海路交易の中心地として栄えており、漁業を中心産業とするサランガ氏族領の都市の中では、少々変わった趣を持っていた。
遊牧商人でもあるコーレリアの民や、金属細工物を運び込むグルナラスの民、さらにはシカラグァの民などが入り混じり、活気と喧騒が町全体を包んでいた。
桟橋には入港した帆船から荷物が下ろされ、立ち並んだ船渠からは木を削り、組み込む音が聞こえる。
タオは視線を転じて外洋へと向けた。
目の前に広がる外洋の地平には、かつてライガールという国が存在した小大陸が見える。
ある日を境に、天変地異により、そこに住む人々ごと消え去り、抉り取られたような大地だけが残された、呪われた地だ。
呪いに怯え、今では漁師も小大陸の傍にはいかない。
その小大陸の周囲には幾つもの小島が存在していた。
このルプールへの出入りにはどうしたところで、あの小大陸との間を抜けなければならない。
そして、人が住み着くことのない名も無き小島の数々。
いつしかそこには無法者が住み着き、海賊が横行するようになった。
シカラグァの海軍が何度となく討伐を行い、その都度四散するも、ほとぼりが冷める頃に集まってくる。
この一帯は海賊地帯とも呼ばれ、日々多くの海賊が現れ消えていく。
国が常に守ってくれるわけではない。
したがって、商船は自衛のために腕利きの冒険者や賞金稼ぎを雇い入れるのが常であった。
…あるいは、ライバルの商船を襲う際の戦力としても。
タオが手に入れた手紙は、とある商船への傭兵ギルドからの紹介状であった。
あの時戦った男の内に、この紹介状で謳われているほどの戦歴を感じさせる技量の持ち主がいたか首を捻るところであったが、死合の結果とはいえ、どこぞの商船の護衛が欠けてしまうのも、はたまた護衛の依頼を受け、手ごろな戦士を推薦したのであろう傭兵ギルドの面目を潰すのも心苦しく、タオは彼の代わりに護衛を引き受けることを決意したのだ。
もとよりあてのある旅でもなく、船旅に心惹かれるものを感じたのも事実ではあるが。
あちこち訪ね歩き、途中路地裏に誘い込まれたり、刃物突きつけられたり、殺しちゃったりしながら、なんとか目当ての商人の屋敷にたどり着いたのは夕刻の頃になっていた。
紹介状を見せると、商人はそれととタオを、胡乱な表情で見比べた後、「貴方がレットシュタインの野盗を退治したねぇ」と呟いていたが、問われたわけでもなかったのでタオは沈黙を守った。
むろん、そんな名の土地の名すら知らない。
商人は訝しげにタオを見つめた後、「まぁいいでしょう。最近また海賊の活動が活発になっていると聞きます。護衛は一人でも多いほうがいい。」と一人納得した。
ニ日後、タオは甲板の上で潮風に吹かれていた。
甲板の上では忙しそうに屈強な水夫達が動き回り、タオの近くでは同じく護衛に雇われた数名がカード遊びにふけっている。
「お前、前はレットシュタインにいたんだって?」
頭上からの声に振り仰ぐと、禿頭の巨体の男が見下ろしていた。
腰には手斧を二本挿している。
「ずいぶんとでかいホラを吹いたもんだ。
ソロバンはじいてるだけの奴らは釣書一つで騙せても、俺はそうはいかねぇぞ。
お前みたいなチビがまともに戦えるわけがない。」
その時、不意に船が揺れ、禿頭の男はよろめいた。
「おっと。船旅はこれだから好きくねぇ。
いいか、くれぐれも俺の足だけは引っ張るなよ。」
禿頭の男はそれだけ言い捨てると、タオから離れていった。
「どっちが足を引っ張ることやら。」
横合いから、タオに言葉が投げかけられた。
赤髪の長髪の青年が唇の片端を釣り上げてタオに笑いかけた。
赤みがかった褐色の肌はサランガかグルナラスの民のようだ。
長身痩躯だが鍛えられた体つきで、腰にはサーベルと先込め式単発銃が突っ込まれていた。
「あのおっさん、よろめいてやがったぜ。
あんたはぐらつきもしなかったのにな。」
赤髪の青年はタオの傍に歩み寄った。
「俺はソムってんだ。」
「私はタオと言います。」
タオは差し出された手を握った。
「よろしくな、タオ。
さてまぁ、俺はあんたの腕前が見た目どおりだとは思っちゃいねぇが、
レットシュタインは嘘だよなぁ。
鬼みたいに強ぇ女と組んでたっていう男も華奢とは聞いてるが、
…カフール人じゃなかったハズだ。
というより、あんた見たことあんだよなぁ。どこぞの手配書で。」
ソムはタオの顔を覗き込む。
「まぁいいや。
あんたが何者だろうが、一緒に戦ってくれるならそれでいい。
沖の上には法はないしな。
船の上では仲良くやろうぜ。」
ソムはにかっと笑うと、あらためて船の上を見渡した。
「しかしまぁ、今回の護衛はバラエティに富んでるね。
能無し筋肉ダルマから名うての腕っこきまで、よくもまぁ集めたもんだ。
ほら、あそこにいるのは"決闘者"バラントレイ伯に"魔弾の"バンドレア。
片っ端から引っ張ってきた感じだよねぇ。」
「それほど海賊は脅威なのですか。」
「まぁね。最近じゃ5隻に1隻は被害を受ける。
今、元気なのは残虐無比の"義足の"コシンガと"伊達男"アーサーの二つだな。
"義足"は抵抗すれば皆殺しらしいし、"伊達男"も戦闘は勇猛苛烈らしい。
でも今最も怖いのは、霧から現れる謎の海賊団だ。
船を残して積荷も人も全て奪い去る。
やつらに捕らえられて帰ってきた奴はいねぇ。
ニコラスのとこの船には"黒剣の"レイブンが乗り込んでたらしいが、
結局は奴も他の連中と一緒に消えた。」
「なるほど。」
タオは頷くと、船首側の甲板にいる人々に目を向けた。
そこで沖を眺めている人々は、水夫とも、ここにたむろっている傭兵達とも雰囲気が異なっていた。
ソムはタオの視線に気付き、教えた。
「あぁ、荷物運ぶついでに客も運ぶんだとよ。
商人様はそつがないねぇ。
…吟遊詩人まで乗せてんのか。」
タオの目も、なんとはなしにその吟遊詩人を捉えていた。
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PC:タオ
NPC:
場所:シカラグァ・サランガ氏族領・港湾都市ルプール
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その青年は一人街道を歩いていた。
ふらふらとどこか不安定で、ゆっくり歩いてるように見えて、そのくせ足が速い。
ただ歩いているはずなのにどう移動しているのかよくわからず、気持ち悪い。
…ただすれ違うだけなら、わずかな違和感だけしか感じないのだろうな。
茂みに身を潜め石弓の照準を合わせながら、狙撃手は思った。
青年の外見は男性にしては低めの背丈、なで肩の華奢な体躯で、その表情に浮かぶ柔和な微笑は、連続殺人犯として高額な賞金をかけられているとは信じがたいものだった。
だが狙撃手は、今なら信じる気になれた。
残虐性はみじんに感じ取れない。殺人を犯すような男かと問われれば今でも首を横に振るだろう。
ぱっと見は無害な小男にしか見えない。
しかし、明らかにあの男は異質だ。
観察し続けたから、その動きの異様さがわかる。
あんな動きを身につけた男が、まっとうな生活を送っているとは思えなかった。
だとしても関係ない。いくら動きが奇妙だろうが、矢が刺されば死ぬのが道理だ。
狙撃手は自分に言い聞かせると、静かに引き金を絞った。
石弓から放たれた矢は一直線に青年の背中に飛んでいき、
そして青年のすぐわきを通り、街道脇の木の幹に深々と突き刺さった。
狙撃手の腕が悪かったわけではない。
本来ならその狙撃手にとって決して外すはずのない距離だった。
しかし青年の異様な動きが目測を誤らせたのだ。
青年は振り返り、こちらを見た。
目が合う。発見された。
最初の一撃で仕留められれば楽だったのだが、こうなれば仕方ない。
街道脇から青年を取り囲むようにして、様々な武器を持った男達が飛び出してきた。
青年に動揺が見られないのは、気付いていたからか、それとも慣れているのか。
周囲を囲む男達は、筋骨隆々で、人相も険しく、柔和で華奢な青年と比べると、まるで熊と兎だ。
得物も、男達は剣やら斧やら槍やら凶悪そうなものを構えているが、青年は得物らしきものは何一つ持っていない。
どう見ても、殺人鬼を取り囲む賞金稼ぎではなく、哀れな獲物を捕らえようとしている山賊達の図だ。
実際、山賊と賞金稼ぎにそう差があるわけでもない。賞金稼ぎをしていた男が、一月後に犯罪者になっていたなんていうのはざらだ。
しかし彼らはまだ、法の側にいた。
一方、高額賞金首であるところの青年はというと、この状況においてなお、変わらず微笑みを浮かべており、今自分の置かれている状況を理解しているのか怪しいところであった。
もっとも、その青年がどう思っていようが賞金稼ぎ達には関係なかった。
手配書には『生死不問』と書かれている。
もとより生かして捉えるつもりはない。
男達が一斉に襲い掛かった。
数分後、狙撃手は賞金稼ぎとして長生きするための賢明な行動に出た。
つまり、勝てぬ相手には挑まない。
石弓を捨て必死に逃げる狙撃手を見送った後、青年-タオ・リウシェン-は足元に転がる死体を埋葬することにした。
死体を街道脇に運び込む時、死体の懐から一枚の手紙が落ちた。
タオはそれを懐にしまうと、簡単に死者を弔い、旅を再開した。
* * *
港湾都市ルプール。
サランガ氏族領の中でも直轄領に隣接し、首都ティルフ擁する大陸最大の淡水湖と外洋に面するこの街は、湾の最奥に位置し、島嶼にも恵まれ、天然の良港として、かつ海路交易の中心地として栄えており、漁業を中心産業とするサランガ氏族領の都市の中では、少々変わった趣を持っていた。
遊牧商人でもあるコーレリアの民や、金属細工物を運び込むグルナラスの民、さらにはシカラグァの民などが入り混じり、活気と喧騒が町全体を包んでいた。
桟橋には入港した帆船から荷物が下ろされ、立ち並んだ船渠からは木を削り、組み込む音が聞こえる。
タオは視線を転じて外洋へと向けた。
目の前に広がる外洋の地平には、かつてライガールという国が存在した小大陸が見える。
ある日を境に、天変地異により、そこに住む人々ごと消え去り、抉り取られたような大地だけが残された、呪われた地だ。
呪いに怯え、今では漁師も小大陸の傍にはいかない。
その小大陸の周囲には幾つもの小島が存在していた。
このルプールへの出入りにはどうしたところで、あの小大陸との間を抜けなければならない。
そして、人が住み着くことのない名も無き小島の数々。
いつしかそこには無法者が住み着き、海賊が横行するようになった。
シカラグァの海軍が何度となく討伐を行い、その都度四散するも、ほとぼりが冷める頃に集まってくる。
この一帯は海賊地帯とも呼ばれ、日々多くの海賊が現れ消えていく。
国が常に守ってくれるわけではない。
したがって、商船は自衛のために腕利きの冒険者や賞金稼ぎを雇い入れるのが常であった。
…あるいは、ライバルの商船を襲う際の戦力としても。
タオが手に入れた手紙は、とある商船への傭兵ギルドからの紹介状であった。
あの時戦った男の内に、この紹介状で謳われているほどの戦歴を感じさせる技量の持ち主がいたか首を捻るところであったが、死合の結果とはいえ、どこぞの商船の護衛が欠けてしまうのも、はたまた護衛の依頼を受け、手ごろな戦士を推薦したのであろう傭兵ギルドの面目を潰すのも心苦しく、タオは彼の代わりに護衛を引き受けることを決意したのだ。
もとよりあてのある旅でもなく、船旅に心惹かれるものを感じたのも事実ではあるが。
あちこち訪ね歩き、途中路地裏に誘い込まれたり、刃物突きつけられたり、殺しちゃったりしながら、なんとか目当ての商人の屋敷にたどり着いたのは夕刻の頃になっていた。
紹介状を見せると、商人はそれととタオを、胡乱な表情で見比べた後、「貴方がレットシュタインの野盗を退治したねぇ」と呟いていたが、問われたわけでもなかったのでタオは沈黙を守った。
むろん、そんな名の土地の名すら知らない。
商人は訝しげにタオを見つめた後、「まぁいいでしょう。最近また海賊の活動が活発になっていると聞きます。護衛は一人でも多いほうがいい。」と一人納得した。
ニ日後、タオは甲板の上で潮風に吹かれていた。
甲板の上では忙しそうに屈強な水夫達が動き回り、タオの近くでは同じく護衛に雇われた数名がカード遊びにふけっている。
「お前、前はレットシュタインにいたんだって?」
頭上からの声に振り仰ぐと、禿頭の巨体の男が見下ろしていた。
腰には手斧を二本挿している。
「ずいぶんとでかいホラを吹いたもんだ。
ソロバンはじいてるだけの奴らは釣書一つで騙せても、俺はそうはいかねぇぞ。
お前みたいなチビがまともに戦えるわけがない。」
その時、不意に船が揺れ、禿頭の男はよろめいた。
「おっと。船旅はこれだから好きくねぇ。
いいか、くれぐれも俺の足だけは引っ張るなよ。」
禿頭の男はそれだけ言い捨てると、タオから離れていった。
「どっちが足を引っ張ることやら。」
横合いから、タオに言葉が投げかけられた。
赤髪の長髪の青年が唇の片端を釣り上げてタオに笑いかけた。
赤みがかった褐色の肌はサランガかグルナラスの民のようだ。
長身痩躯だが鍛えられた体つきで、腰にはサーベルと先込め式単発銃が突っ込まれていた。
「あのおっさん、よろめいてやがったぜ。
あんたはぐらつきもしなかったのにな。」
赤髪の青年はタオの傍に歩み寄った。
「俺はソムってんだ。」
「私はタオと言います。」
タオは差し出された手を握った。
「よろしくな、タオ。
さてまぁ、俺はあんたの腕前が見た目どおりだとは思っちゃいねぇが、
レットシュタインは嘘だよなぁ。
鬼みたいに強ぇ女と組んでたっていう男も華奢とは聞いてるが、
…カフール人じゃなかったハズだ。
というより、あんた見たことあんだよなぁ。どこぞの手配書で。」
ソムはタオの顔を覗き込む。
「まぁいいや。
あんたが何者だろうが、一緒に戦ってくれるならそれでいい。
沖の上には法はないしな。
船の上では仲良くやろうぜ。」
ソムはにかっと笑うと、あらためて船の上を見渡した。
「しかしまぁ、今回の護衛はバラエティに富んでるね。
能無し筋肉ダルマから名うての腕っこきまで、よくもまぁ集めたもんだ。
ほら、あそこにいるのは"決闘者"バラントレイ伯に"魔弾の"バンドレア。
片っ端から引っ張ってきた感じだよねぇ。」
「それほど海賊は脅威なのですか。」
「まぁね。最近じゃ5隻に1隻は被害を受ける。
今、元気なのは残虐無比の"義足の"コシンガと"伊達男"アーサーの二つだな。
"義足"は抵抗すれば皆殺しらしいし、"伊達男"も戦闘は勇猛苛烈らしい。
でも今最も怖いのは、霧から現れる謎の海賊団だ。
船を残して積荷も人も全て奪い去る。
やつらに捕らえられて帰ってきた奴はいねぇ。
ニコラスのとこの船には"黒剣の"レイブンが乗り込んでたらしいが、
結局は奴も他の連中と一緒に消えた。」
「なるほど。」
タオは頷くと、船首側の甲板にいる人々に目を向けた。
そこで沖を眺めている人々は、水夫とも、ここにたむろっている傭兵達とも雰囲気が異なっていた。
ソムはタオの視線に気付き、教えた。
「あぁ、荷物運ぶついでに客も運ぶんだとよ。
商人様はそつがないねぇ。
…吟遊詩人まで乗せてんのか。」
タオの目も、なんとはなしにその吟遊詩人を捉えていた。
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