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2024/05/17 02:49 |
アクマの命題二部【1】 オルドと愉快な仲間達/オルド(匿名希望α)
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PC:オルド
NPC:いろいろいっぱい
場所:ソフィニア地方のどこか
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「ここも久しぶりだな。なーんもかわってねぇクソツマラネェ所だぜ」

 森のはずれにある岩場。草原との境目になっており、気持ちのいい風が通り抜
けている。

「あいつは何やってっかなー。 っつっても幽霊だったしな。成仏してンかねぇ」

 小さい頃に初めてここに来たとき、妙にキョロキョロしている半透明な人物に
会った。
 その頃のオルドと歳が近そうな子供の幽霊。初めて見るソレにオルドは興奮し
しばき倒していた。
 だが少年の霊も負けておらず、拳と言葉で語り合っていた。長く続く交流は友
情となりやがて禁断の愛とかわって……そして!」

「って、変わるかボケ。勝手に俺様のモノローグ騙ってんジャねぇこのクサレネ
コがぁぁぁぁ!」
「きゃぴるん☆」



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アクマの命題 第二部【緑の章1】 オルドと愉快な仲間達
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「なーなーオルドー。そのあとどうなったの?」

 複数の子供が和になって一人の男の話に聞き入っている。
 呼びかけられた名前の通りオルドである。黒猫のせいで気分が悪くなったの
で、ちょっとした昔話を使って子供の反応で楽しむコトにしていた。

「あぁ?こっからか? まぁマテマテ。ちゃんと話してやっからよ。テメェでオ
トシマエつけてもらうためによ、冷徹男から貰った怪しい薬飲ましたんだ。打ち
上げられた魚みてぇに跳ね回るのは笑えたな。ンで俺がトドメ刺そうとしたらあ
の高慢女が止めやがって「もっといい方法がありますわ!」とか言ったワケよ」

 子供に話す内容ではないのだが、子供達は悪役が懲らしめられる場面と思って
いるのか期待に目を輝かせている。
 溜めを作りわざとじらせて、続きを話そうとしたオルドだったがここで邪魔が
入った。

「やっとみつけたぜオルドの兄貴!」

 大声上げているのはオルドの友人、犬系の獣人のジョニーだ。筋肉質だがそう
は見えない細長い躯体。背はオルドよりも高い。彼の普段の姿は人間と同じた
め、獣人とは区別がつかない。
 オルドの周囲にいる子供たちも、実は様々な種の獣人である。純粋な人間も混
じっているが。

「ア? これからイイところだっつーのに……なんだってんだ?」

 気分を害したオルドはジョニーを睨むが、予想外に焦っているのを感じ取り怪
訝に思う。

「ったくしゃぁねぇな。おらガキども、今日はこれでおしまいだ」

 しっし、と手のひらで追い払うオルド。
 えー、と一斉に声を上げるがしぶしぶと次は何をして遊ぶかを話し合いながら
散っていった。

「すまねぇ兄貴」
「で? 昼間っから俺を探してるっつーことはナんかあんのか?」

 ジョニーは軽く息を切らしているが、オルドは息を整えるのを待つことなく聞
き返す。

「それが……ボブのやつが大変なんすよ。一緒に来てくだせぇ」
「あん?」


 ‡ ‡ ‡ ‡


「スタンレェェェェ!! 一体どこいっちまったんだよぉぉぉ!!」

 昼間から酒をあおっているずんぐりとした男。ちょっと獣化しかけている。

「なんだありゃ」
「俺っちが見かけた時にはもうあの状態ですぁ。ボブ!いい加減泣きやめ!う
ぜぇ!!」

 ため息ついた後にずかずかと机に突っ伏している男、ボブに近寄る。
 それに気づいたボブはうぁ?と顔をあげる。ぴたっと声が止まるがまた叫び出
した。

「ジョニィィィ!! スタンレーがぁぁぁ! うおぉぉぉぉ!!」

 名前を言った後に叫ばれては意味が分からない。
 ジョニーに抱きつかんばかりの勢いのジョニーにオルドがイスに足蹴をかます。
 勢いで転げ落ちるボブを見下ろして平然と言ってのける。

「ドアホ。意味わかんねーぞゴルァ」

 またぴたりと声がやむ。が、
 立ち上がりそのままの抱きつかんばかりの勢いで突っ込んでくるボブ。

「オルドォォォ!! スタン(ゴッ)……」

 オルドの頭突きが炸裂!
 ボブは致命的なダメージを受けた!
 ボブは沈黙した!

「だから落ち着けって言ってンだろ?」

 言ってない。
 さらには聞こえてもいない。ボブ、轟沈中。
 ジョニーはうつ伏せに倒れているボブの側に屈みこみ、頭をぼりぼり掻きなが
らボブおきろーと囁いている。ダメージの心配など微塵もない。
 突如、がばっと起きあがるボブ。

「で? どうしたよ」

 オルドが何事もなかったかのようにボブに問いかける。
 よつんばの体勢まで立ち直ったボブは呟いた。

「頭が痛ぇ」

 そりゃそうだ。
 げんなりとしたジョニーの表情は無視。見下ろし状態のままで再度オルドが問
いかける。

「スタンレーがどうのトカ言ってたミテェだけどよ」

 ボブは立ち上がった!

「ハッ! そうだ! オルドォォォ!! スタン(ゴッ)……」

 ボブはオルドに迫った!
 オルドの頭突きが炸裂!
 ボブは致命的なダメージを受けた!
 ボブは沈黙した!

「おぉボブよ。死んでしまうとは情けない」
「まだ死んでないっすよ。つーかやった本人が言うセリフっすか?」

 やれやれといった表情のオルド、またかといった顔のジョニー。

「繰り返しはギャグの基本だ!」

 真顔で叫ぶオルドだが、話がかみ合ってない。
 まぁいいですけど、とボヤくジョニー。いいのかオイ。
 いつま経っても話が始まらない。

「オレが走り回った時間、無駄になっちまったかな……」
「あん? ンなわきゃねーだろ」

 遅くても同じコトしてるだろうしな! という意志をオルドのサムズアップか
ら察する。
 てぃ。と後頭部をチョップするジョニー。
 むくりと起きあがるボブ。

「ハッ! そうだ! オルドォォォ!! スタン(ガッ)……」

 三度抱きつきそうな勢いで突っ込んでくるボブの顔面をオルドは鷲掴みにした。

「三度目はネェ」

 眉間にシワをよせて見下ろしながらガンつけオルド。

「オウ」

 こめかみに青筋を浮かばせオルドの手の指の隙間からガンつけボブ。
 周囲からの「またかコイツラかよ視線」を受けつつ、ようやく話が進みそうだ。

 ‡ ‡ ‡ ‡

「ったく余計な手間とらせやがって」
「兄貴が言うことじゃねぇって……」
「まったくだぜオルド」
「……」

 もう誰にツッコんだらいいかわからなくなったジョニーは閉口。
 いちいちリアクションするのは無駄だとわかっているのだが律儀にも反応して
しまう。
 それもいつものコト。ジョニーはため息一つでやり過ごした。
 オルドとジョニーはボブの座っていたテーブル席に着き、視線をボブへ向ける。

「ンで?」
「実は……カクカクシカジカってワケなんだよ」
「あ? てめぇの弟のスタンレーが悪い魔女にだまされて獣化が解けなくなる炒
飯盛られちまって苦しんでる所を幽霊に拉致られた上にくそまずいモルフ羊食わ
されてグロッキーになっている所でキツネに道案内頼まれて追っ手に囲まれたの
が20日前に見かけたけど今はどこにも見あたんねぇけど昨日いたような気がした
からから心配でしかたネェってこのブラコン」

 真面目な顔で一息にしゃべるオルド。ジョニーは再びため息をつきながら一言。

「兄貴。ボブはカクカクシカジカしか言ってねーっス」

 一間を置く。そして、

「なんだとぉ!?」
「な、なんだってぇ!?」
「いい加減ハナシ進ませろやテメェラ」
「「オウ」」

 問答無用に突っぱねるジョニー。ボケ二人は息を合わせて即座に応答する。
 潮時と感じたのか、オルドもボブも真面目に話す気になったようだ。
 ボブは息を大きく吐いて気持ちを落ち着かせている。

「オマエラも知ってるだろうけどよ……弟のスタンレー。最近どこいったかわかん
ねぇんだよ!」

 ボブの弟スタンレー。身内には珍しく知性みなぎる優男である。
 その優等生っぷりに部族内ではいい噂も悪い噂も流れている。
 小さい頃から知っているオルド達は悪い噂を流した根元に殴り込んだ事もあった。

「いつからよ」
「気づいてから……7日目、だ。 最後にあ見たのは、アレだ。あん時だ!」
「ボロボロになって帰って来た時か?」
「おう。その日は家で寝たのは見たんだけど……おぉぉぉ!スタンレェェェ!!」
「落ち着け」

 オルドの質問に答えていたボブだったが、スタンレーを思い出して嘆きモード
になりかけた。
 すかさずジョニーがボブの頭に斜め45度からチョップを入れる。

「俺が家を出てから帰ったらスタンレーいなくナテタ」

 スイッチが入ったかのように元に戻るボブ。語尾がおかしいのは気にしてはい
けない。
 10日前、ジョニーとオルドがイいイ人というものについてくだらない談義をし
ていた所、ぼろぼろになったスタンレーと遭遇した。ボブに知らせ手当をした彼
らの記憶はまだ新しい。

「あいつが何も言わず遠出するってのは考えづらいなぁ」

 首をひねって考えるジョニー。オルドも同意見だ。

「だろ? だろ!? それにココんところ見なくなったやつも何人かいるっぽい
し……し、心配で! 心配でぇぇぇええええ!」

 黙っとられんのか、と再びジョニーがチョップしたあとにうーんと唸りながら
口にする。

「あん時の落ち込みようは酷かったっすね。こぼこになった原因はスタンレーが
何も言わなかったからわかんねーけど」

 スタンレーは「何でもない。大丈夫。転んだだけ」の一点張りだったのをオル
ドも思い出す。

「俺も自分で探し回ったんだけどよ……行きつけの場所とかあいつが付き合ってる
女の家とか」
「は? あいつ付き合ってるヤツいたのか?聞いてねぇぞ?」

 オルドは眉間にシワをよせてボブを睨む。

「言ってなかったか? つーか言ったって! 俺は言ったぞオマエラに! 夢の
中で!」
「「知るかよ!」」
「どこにもいねぇんだよ! 女の家にもキてねぇっていうし」

 ボブの本気なのか冗談なのかわからないボケにオルドとジョニーは叫び返す
が、二人のつっこみを無視してすでに話をすすめている。
 いつものコト。ボブが言う事言ったので汲み取って話を進めなければ、いつま
でたっても終わらない。
 オルドの頭の中では、一応情報は蓄積されている。一応。
 

「つーかその話信じられんのかよ? グルかもしんねーだろ? 誰から聞いたン
だよ?」
「スタンレーの女からだからそれはない! 美人だし!」

 理由になってねー。とツッコむ気にもなれなかったが、ボブはさらに。

「でもあんなかわいこちゃんなら、俺、だまされてもいいかも……」
「ちょ、おま……」

 ボブの浮かべた表情にヒキ気味なジョニー。こいつ女で身を滅ぼすな、とオル
ドも暗黙一致。
 そんな最中、ジョニーはふと思い出す。

「あ、でも兄貴。最近この辺りで最近みかけなくなったヤツ多いらしいっすよ。
関係ないから気にしてなかったんすけど」
「……あのガキどももなンか言ってたなそんなコト。ったく雲行きが怪しくなって
きたもんだゼ」
「あん? 晴れてっぞ?」
「……」

 外の天候を確認しながら疑問符つきの顔なボブ。盛大にため息なオルド&ジョ
ニー。

「当たり前だろ。俺様天気予報でそう出てたしな!」

 俺が真実だと言わんばかりに自信満々のオルドと、その言葉に納得した風なボブ。

「ツッコむトコ違うし! ボブも納得した風にうなずいてンじゃねぇ!」

 そんな二人はハっとしてツッコんだジョニーを見つめる。視線があつまったの
でジョニーは思わず言葉に詰った。

「さすがは俺らのヒーロー」
「あぁ。ツカミはバッチリだ!」
「話戻せ話!ったく……で、どうすんのさ兄貴」

 頼れる司会進行その名はジョニー。今日も絶好調である。

「あ゛ー。 まずはいろんなトコでスタンレーの目撃情報集めて足取りを辿るか」
「おぉ!オルドなんか探偵みたいだぜ!」
「考えナシで学院の講師がつとまるかよってンだ。あとはその女も気になるな。
後で調べっか」
「それは俺が「ンなもんダメに決まってンだろ?俺かジョニーだ」何で「騙され
ていいやつが疑うことなんかできるかよ」だおあぁあ」

 セリフの途中でオルドとジョニーに却下され頭を抱えて机に突っ伏すボブ。な
にやらブツブツ呟いているがよからぬコトだろうからこの際無視。

「ボブはこの辺の知り合いやらを回ってスタンレーの目撃情報探せ。あと時間が
あればトルバとバイコークもまわってコイ。ジョニーはソフィニア南経由で西ま
でまわってギルドやら知り合いやらを回って似たようなコトねぇか見て来い。範
囲絞り込むぞ」
「随分範囲広いなオイ」

 大人の徒歩で3日はかかります。

「気にすんな。集合場所はーっとファイゼンの飯屋な」
「ファイゼンっつーと?ソフィニアの北西だっけ?」
「確かそこらヘン」

 無茶な注文すらスルーして話が彼らに似合わずトントン拍子で進んでいく。
 難易度とか実現できるかどうかっていう検討をすっとばして。
 彼らにとってそれは問題ではないようで、とりあえずレールを引いてから考え
るらしい。
 大雑把だが彼らはそういう人物だ。

「で、北西ってどっちだ?」
「店の名前は?」

 方角のコトを聞いたボブは無視。
 ジョニーの問いに対してオルドが神妙な顔で答える。

「とれびあ~ん」

 妙にオカマっぽい口調だったためにジョニーが椅子からずり落ちそうになる。

「そうか、とれびあ~ん、か」

 ボブも真面目な顔をしてオルドに続く。店の名前を言う時も同じように抜けた
ような発音だった。

「そう、とれびあ~ん、だ」
「とれびあ~ん」

 ジョニーは頭を抱えている!

「「とれびあ~ん」」

 裏の組織が取引をしているような雰囲気の二人だが、発する言葉はあまりに場
違い。

「「とれびあ~ん」」

 にらみ合う二人。そして先に口を開くのはオルドだ。

「合言葉は」「とれびあ~ん」
「日進月歩の」「とれびあ~ん」

 オルドの問いに対して合いの手を入れるボブ。

「アタナとワタシの」「とれびあ~ん」
「デンジャラスだぜ」「とれびあ~ん」
「あばんぎゃるどだ」「とれびあ~ん」

 そして腹の底から笑いだす。同時に椅子を蹴飛ばし立ち上がった。

「くくくくっくっはっはっはははは!とれびあ~ん!」「ぎゃっはっはっはっ
は!とれびあ~ん!」

 鬼の様な形相で睨み合い……

「「とれびあ~ん!」」

「「とれびあ~ん!」」

「「とれびあ~ん!」」

「「とれびあ~ん!」」

「「とれびあ~ん!」」

 誰 か コ イ ツ ラ と め て く れ 。

 ジョニーは先程のボブのように机に倒れこんでいる。
 背景に”ドドドドド”という謎擬音語が憑きそうな雰囲気の中、オルドとボブは
頭の中の何かがトンだように「とれびあ~ん」を絶叫連呼している。

「お前らとれびあ~んに行くのか?」

 渋いCOOLな声が通る。この酒場のマスターだ。その声にオルドとボブがピ
タっと止まる。
 ジョニーも顔を上げて声の主を見やった。この流れをさりげなく止めたマス
ター。只者ではない。

「あ?マスター知ってンのか?」
「主のイビアンとは顔見知りだ。最近は会ってねぇがな」

 女の名前にピクリと反応するボブ。

「美人か?」
「表現によっちゃぁ太陽のような明るさの美人だ。それに最近は可愛い女の子が
入ったって言う噂だ」
「女の子……」

 ボブの表情がニヤついている。あからさまによからぬ妄想をしているのがわかる。

「おいおい。12、3歳のおじょうちゃんって話だぞ?」
「かまわない!」
「この変態が」
「テメェも変態だろ」

 吐き捨てるように言い放つオルドに対し、ボブは正面から突きつけるように低
く言う。

「変態!」「変態!」
「「変態!」」
「「変態!」」
「「変態!」」
「イビアンに宜しく伝え……って聞こえてねぇな」
「スンマセン。すぐ撤去します」

 ジョニーはマスターにお代を払った後オルドとボブに近づき……

「オイテメェラ」
「ヘンおぐあ!?」「ヘンうぐふ!?」

 首根っこ鷲づかみ。

「ちったぁ静かにできんのかあぁぁああ!!」

「「おおおおおおおおおおお!?」」

 ブン回してから酒場の入り口から外へ放り投げ。

「すんません、お騒がせしましたぁー!」

 騒音がいなくなり急に静かになる店内。ジョニーは彼らを追うように脱兎の如
く飛び出した。

「おう、また来いよ」

 やはりマスターは強かった。


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2007/04/06 23:46 | Comments(0) | TrackBack() | ○アクマの命題二部

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