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2024/05/21 14:34 |
紫陽花 其の参/イヴァン(熊猫)
キャスト:クランティーニ・セシル・フロウ・イヴァン
場所:ポポル付近・裏街道
NPC:フィーク/フィル・パンドゥール/五代目志士川茣蓙衛門 
―――――――――――――――

仕事柄、大抵の武器なら目にしてきた――

とはいえ、これだけ近くで銃の類を見るのはそうなかった。
クランティーニの手元にある黒い塊をちらと見て、
さらに弾丸が発射されるまでを観察してから、イヴァンは
飛び掛ってきた黒装束の一人を足で出迎えた。

「やっぱ珍しい?」

煙草を口の端にひっかけたまま、クランティーニが
花に水でもやるかのような気安さで、穏やかに笑う。
何も答えないでいると、「わかったよ」と男は話を切り、
片手に銃を持ったまま煙草の位置を直して、また標的を探し始めた。

と、胡散臭そうな使い魔の声が、前触れもなく足元から響く。

「…あの木っ端、何やってやがんだ?持病け?」

なんとなしに検討をつけて、視界の隅――少し木が入り組んだところ
を見ると、セシルがいた。
微妙に両手を曲げて、足を一歩踏み出した格好のまま動かない。
手にはそのへんで折ったらしい、葉のついた枝を握っている。

黒装束の男達は、目立つ位置にいるクランティーニに集中しているらしく、
こちらを狙ってくる者はほとんどいない。
きょろきょろ頭(こうべ)をめぐらせながら、少年のすぐ横を一人の
黒装束が気づかずに通り過ぎてゆく。
それでもセシルは微動だにしない。ちょっと視線が動いたが。

たまりかねたのか、パンドゥールが不審そうな声音で
少年に問いかけた。

「おいそこの紫小僧」
「うっせ木に話かけんな妖怪」

即座に返ってきた答えに、影がぐっと盛り上がるのがはっきり見える。
が、イヴァンは無視してこちらに来た黒装束(さっきセシルのそばを通り過ぎた)
を一撃で昏倒させた。

まぁ、でもセシルの気持ちもわからなくはない。こんな面倒くさそうなことは、
面倒なことが好きなものにさせておけばいい。
それを回避するために『木』に変装するかどうかは別としてもだ。

ふと、フロウの姿がない――と思ったら、すぐ背後で妖精(フィークとか
いうらしい)と、まったくの無防備な様子のままで何事か話し合っている。

「セシルさん、一体どうしたんですかね?」
「知らね。さっき同じこと聞いたらあいつ、石蹴ってきやがった」

透明な羽をせわしなく動かして飛ぶそれを目で追っていると、さすがに
視線に気づいたのか、こちらに近づいてきた。

「なんだよ」

別に、という意味も含めて首を軽く横に振ると、妖精はふん、と鼻を鳴らして
目線の高さでくるりと背を向けた。

だがなんとなく、ただ目の前で動くものがなんとなく気になって、
右手を伸ばす。

「ぎゅ!?」
「あはっ、フィーク捕まえられてるです」
「朗らかに笑うな!つーか指さすな!てめっ、放せこのヤロー!」

指を噛まれる前に手を放すと、妖精はかなり高く舞い上がってから、
なにやら罵声を浴びせてからフロウのもとへと飛んでゆく。

数メートル先でフロウを狙っているらしい黒装束の姿を確認して、
足元の尖った石を拾い上げながら、イヴァンは今夜の夕飯について
思考をめぐらせていた。

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2007/02/12 22:31 | Comments(0) | TrackBack() | ▲紫陽花

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