キャスト:クランティーニ・セシル・フロウ・イヴァン
場所:クーロン付近裏道~クーロン
NPC:フィーク・マグラルド・フッさん
―――――――――――――――
「ようようよう、泣く子も黙るってぇ天下無敵の『蒼烈の彗星』がよう、
なんだってこんな格好しなきゃなんねんだ?」
馬車が出発すると同時に、パンドゥールがここぞとばかりに喋りだした。
「しかもその仕事が護衛ときた!」
ばっ、と一瞬だけ、馬車の中が暗くなる。
パンドゥールが『身体』を広げたのだ。
「旦那は暗殺が生業なんだ、護衛なんざそこいらのモップでも充分だァ。
なぁ、旦那?お前様はなんとも思わねぇのけ?」
今度はイヴァンのシルエットに戻り、腕組みをする。
イヴァンは相変わらず答えなかった。
馬車の中はかなり広い6人乗りで、イヴァンはフロウとセシルと共に
到着を待っていた。
だが広いとはいえ、皆かさばる服を身につけているため、開放感はないに等しい。
ちなみに耳には、両方ともに羽飾りをつけられたせいで、かなりうざったい。
そしてそれをいじろうとするフロウを、幾度となくかわす。
そして幾度となく聞こえるため息は。
「この俺の姿をポポルの連中が見たら、きっと異種族虐待だとか言って蜂起するぜ」
「どうせ殺虫剤まいて終いだろ」
セシルとフィークは、二人ともそっくりな格好で、そんなことを言い合いながら
窓に肘をついて遠い目をしている。
セシルはまだ少年のあどけなさが残っているので、見た目に関しては
メイクの腕を差し引いてもさほど違和感はない。
ただ、歩きのフォームや座る時の所作を、何より言動を見れば、
見破られないほうがおかしいだろう。
「この際、この仕事蹴っちまったらどうだい。
…あー、駄目だァ旦那、針は無しだ。へいへい、わかり申したよ、
お手上げだ。手前は何処へでも付いて行きまさァ」
両手を放り投げるしぐさを最後に、パンドゥールは黙る。
イヴァンは馬車の振動に身を任せ、レースで縁取られた襟に首をうずめた。
確かにパンドゥールが言うように、自分の本業は暗殺だ。
護衛という仕事をやったことがないわけではないが、
退屈でしかも割に合わない。できればあまり受けたくない仕事である。
ただ、ギルドランクがAランクのクランティーニが、この自分が
必要とされているのは、それだけの敵が控えている可能性もあると言う事だ。
――だとすれば。
下手をすれば暗殺よりよほど、愉しい事になるに違いないのだ。
外の夕闇は茜を抱え、雲はひときわ最後の赤を放っていた。
場所:クーロン付近裏道~クーロン
NPC:フィーク・マグラルド・フッさん
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「ようようよう、泣く子も黙るってぇ天下無敵の『蒼烈の彗星』がよう、
なんだってこんな格好しなきゃなんねんだ?」
馬車が出発すると同時に、パンドゥールがここぞとばかりに喋りだした。
「しかもその仕事が護衛ときた!」
ばっ、と一瞬だけ、馬車の中が暗くなる。
パンドゥールが『身体』を広げたのだ。
「旦那は暗殺が生業なんだ、護衛なんざそこいらのモップでも充分だァ。
なぁ、旦那?お前様はなんとも思わねぇのけ?」
今度はイヴァンのシルエットに戻り、腕組みをする。
イヴァンは相変わらず答えなかった。
馬車の中はかなり広い6人乗りで、イヴァンはフロウとセシルと共に
到着を待っていた。
だが広いとはいえ、皆かさばる服を身につけているため、開放感はないに等しい。
ちなみに耳には、両方ともに羽飾りをつけられたせいで、かなりうざったい。
そしてそれをいじろうとするフロウを、幾度となくかわす。
そして幾度となく聞こえるため息は。
「この俺の姿をポポルの連中が見たら、きっと異種族虐待だとか言って蜂起するぜ」
「どうせ殺虫剤まいて終いだろ」
セシルとフィークは、二人ともそっくりな格好で、そんなことを言い合いながら
窓に肘をついて遠い目をしている。
セシルはまだ少年のあどけなさが残っているので、見た目に関しては
メイクの腕を差し引いてもさほど違和感はない。
ただ、歩きのフォームや座る時の所作を、何より言動を見れば、
見破られないほうがおかしいだろう。
「この際、この仕事蹴っちまったらどうだい。
…あー、駄目だァ旦那、針は無しだ。へいへい、わかり申したよ、
お手上げだ。手前は何処へでも付いて行きまさァ」
両手を放り投げるしぐさを最後に、パンドゥールは黙る。
イヴァンは馬車の振動に身を任せ、レースで縁取られた襟に首をうずめた。
確かにパンドゥールが言うように、自分の本業は暗殺だ。
護衛という仕事をやったことがないわけではないが、
退屈でしかも割に合わない。できればあまり受けたくない仕事である。
ただ、ギルドランクがAランクのクランティーニが、この自分が
必要とされているのは、それだけの敵が控えている可能性もあると言う事だ。
――だとすれば。
下手をすれば暗殺よりよほど、愉しい事になるに違いないのだ。
外の夕闇は茜を抱え、雲はひときわ最後の赤を放っていた。
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