PC:クランティーニ・セシル・イヴァン・フロウ
場所:クーロン・カランズ邸別宅
NPC:フィーク・フィル・パンドゥール フィール・マグラルド
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光が、次いで闇が、襲い掛かる。フロウは、吹き飛ばされそうになっていたフ
ィークを抱えて、身体を低くした。爆風が襲い掛かるが、フロウは腕を翳して
耐える。
顔を上げると会場の風景は一転しており、黒焦げになって吹き飛んだ料理と椅
子が散乱していた。他には何事も無かったような客達と、耳を押さえるイヴァ
ン、そしてそれに話し掛けるセシルがいた、のだが
「あああぁぁ!料理がぁ!!まだ一杯食べられましたのですのにいぃ!!」
「そこかよ!」
フィークが突っ込むと、フロウはだってと口を尖らせた。
「ご飯は大切なのですよ!?食べないと死んでしまいますですぅ!!」
「んな事言ってる状況じゃないだろ!」
ああ、もう、と頭を掻くフィークを横目に、フロウは猫さん大丈夫ですかぁと
のほほんと問いかけた。
ズレていても、見るところはちゃんと見ている。。
先程まで辛そうにしていたイヴァンはもう回復したのか、針を取り出してい
た。そういえば周りの客の皆々様が各々武器を取り出しているような気がしな
いでもない。仕事を、っとイヴァンが呟いたが、フロウはうーん、と唸って指
を唇に当てた。
「あはは、皆警戒してますですねぇ」
「お前馬鹿か!こいつら俺ら狙ってんだよ」
セシルが見兼ねたのかお叱りを飛ばしてくる。フロウは一瞬キョトンとし、ポ
ンッと手を打った。
「…成る程」
「て事で自分の身くらい自分で守れよ、構ってる暇なんか無いからな!」
そう言いながら、セシルはナイフ一本で敵の群れに応戦する為に飛び出す。一
方イヴァンは数人の「敵」を倒した後、律義にも依頼主を守っていた。
その辺りはプロである。
どうしようか、と見ているうちに、「敵」の一人がフロウの背後で武器を振り上
げた。気が付いてフロウはギリギリそれを避ける。相手の舌打ち。
「いきなりは危ないなのですよぉ」
次いで横や正面から、一斉に「敵」が襲い掛かってきた。
慌ててしゃがんだフロウの頭上スレスレを釘の付いたこん棒が通り過ぎ、飛び
込み前転の要領で飛んだ胸のすぐ下を、ナイフが唸りながら通過する。
そこにすかさず襲って来たトンファを尻餅をつくように避け、立ち上がった際
にドレスの裾を踏み、少しよろけた耳の横を、ナイフが凪いで行った。
「大丈夫か…あれは」
「この、ちょこまかと!」
セシルの冷めた呟きに重なるように、ナイフを持ったタキシードの男がフロウ
に向かって走り込んできた。その男の視界から、フロウが一瞬消える。目標を
失った男は次の瞬間、真横にフロウの言葉を聞いた。
「ご苦労様なのでぇーすぅ」
フロウにとっては一歩横へズレただけなのだが、男は対応出来ずに振り返ろう
とし、
その首に、にこりと笑ったフロウの手刀が思い切り叩きつけられた。
体格の良いその男は、突っ込んだ勢いのまま白目を向き、倒れながらフロウが
避け続けて何故か一直線に並んだ客達に衝突する。慌てて敵達は逃げようとし
たが、
「あ…足が…動か…」
と呟きながら、次々とぶつかり合い、積み重なって倒れていった。フロウが避
ける際に、手で急所を突いていた事に気が付いていた者などいないだろう。
「人間ドミノ倒しかんせーいなのですよぉ」
セシルが、呆れたようにフロウを見る。そんな彼の元にフィークが飛んでき
て、こっそりセシルに耳打ちした。
「言っとくけど、フロウはあまり怒らせない方がいいぞ。滅多に怒らないけど
な」
「…知るか」
セシルの言葉にフィークが肩を竦める。そのままセシルの側で飛び続けるフィ
ークを、セシルは睨んだ。
「何でついて来るんだ」
「んと、一番危なかしそうだから?」
「迷惑千万」
そう言いつつドレスの裾を踏みそうになるセシルに、フィークは、敵が来る方
向を一々報告する。
そんな二人をのほほんと見ながら、フロウは近くに奇跡的に無傷で転がってい
た壷を、襲い掛かって来たドレス姿の女性の顎に躊躇いもなく叩き付けた。セ
シルが「ああ!いくらすると思ってんだ!」と叫んだが、全く気にしない。裾
を捌いて一挙動で新たな敵の背後へ回り込み、蹴り倒す。
「なあ、あいつ神官とか似合わないんじゃ?」
「俺もそう思…うぅ!?」
一瞬だけフィークがセシルの側を離れた瞬間を見計らったように、敵の手がニ
ュッと伸びて来た。
呆気なく敵の手に握られたフィークを見て、セシルが眉を寄せる。
「…何遊んでるんだ」
「遊んでる訳ねぇだろう!!」
ジタバタと暴れるフィークを手に、敵は大声で叫んだ。
「動きを止めろ!でないとこいつを握り潰すぞ!!」
一瞬の、静寂……
は、訪れ無かった。
イヴァンは聞こえていない訳が無いのに、構わず針を投げ続け、セシルはお
ー、虫頑張れよとやる気無く言いながら敵の攻撃を避けている。逆に捕まえた
男が戸惑う程だ。
「…本当に潰すぞ?」
「どうぞ?」
やや弱気気味に言う男に、セシルがあっさりと頷く。
「プチッと行くぞ?」
「だから良いって」
「セシル!!てめ…」
「本当にやるからなあ!!!」
半分涙目で叫ぶ男の肩に、ポンッと手が置かれた。振り替える男の目に飛び込
んで来たのは、純粋な笑顔。
フロウがニッコリと笑った。
男もつられて笑う。
次の瞬間、男の肘がおかしな角度に曲がっていた。弾みで解放されたフィーク
が、方向転換できずにふらふらとセシルの頭の上に飛んでいき、ポテッと落ち
る。
男が、声にならない悲鳴を上げた。フロウはそれを一瞬冷たく見下ろし、セシ
ルの方へ駆け寄る。
「フィーク、大丈夫なのですか?」
「あぁ、うん、何と、か?」
頭の上から振り落とされたフィークを、フロウは受け止めて様子を見る。
「回復を…」
「だーーわーーやめろ!おかしな所に手が生える!!!」
手を翳そうとしたフロウを慌ててフィークが止めた。フロウはそんな事ないで
すよぉ、と顔を膨らませる。
セシルが顔を引き攣らせて何だそれ、と呟いた。
「そんな事ないっていうならあの男回復させてみろよ」
なおもフィークを治そうとするフロウに、フィークは必死に倒れた男を指し示
した。フロウは男を振り返って、口を曲げる。
「ボクの大切な友達を傷つけた罪人さんにかける魔法なんてありませんですよ」
「まあまあ、そこを試しに」
フロウはむぅっと唸って、未だ悶えてる男に近寄った。男はフロウの姿を見
て、必死に後ずさる。
「お、俺が悪かった!!神に謝るから許してくれ!!」
「神様なんて関係ありませんですよ。フィークがどうしてもって言うからやりま
すですけどね」
フロウはそう言って手を翳し-
頭に一本余分に骨が生えた男の悲鳴は、街中に響き渡ったそうな。
* * *
「ははは、お疲れさん」
全ての客が沈黙した中、イヴァンの足元で、フィルが得意気に言った。ちなみ
に彼は何もやっていない。
フィール・マグラルドはそんな護衛を満足そうに見つめ、腕を組む。
「お疲れ様。見事だったわ」
そんな彼女に、セシルは鋭い視線を向けた。フィールは、どうかした?と首を
傾げる。
「あんた、この襲撃に気が付いてただろう?」
単刀直入にセシルが切り出すと、フィールはあら、と小さく呟いた。
「どうしてそう思うのかしら?」
「爆発や襲撃者に全然動じて無かったから」
「あら?仮にもマグラルド家の当主たる者、そんなものに一々動じてられないわ
よ」
ホホホと笑ってフィールはセシルを見た。セシルはぐっとフィールを睨む。
「一つだけ、聞かせろ」
「愛の告白なら間に合ってるわよ」
「そうじゃない。あんた、何企んでるんだ?」
フィールはスッと笑みを消す。
イヴァンとフィルはじっと二人の会話に耳を傾け、フロウはフィークと戯れて
いた。
たっぷりと時間を置いて、フィールが瞳を閉じる。躊躇うように首を小さく振
り、セシルに視線を向けた。
「そうね。一つだけ、教えてあげるわ」
そのあまりにも重々しい口調に、セシルは唇を引き結ぶ。フロウまでもが真剣
な表情でフィールに視線を向けた。
「せっちゃん」
「変な呼び方をするな!で、何だ?」
「…その恰好で凄んでも、迫力無いわよ?」
うふふ、と笑うフィールに、セシルはガクリと崩れ落ちた。
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場所:クーロン・カランズ邸別宅
NPC:フィーク・フィル・パンドゥール フィール・マグラルド
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光が、次いで闇が、襲い掛かる。フロウは、吹き飛ばされそうになっていたフ
ィークを抱えて、身体を低くした。爆風が襲い掛かるが、フロウは腕を翳して
耐える。
顔を上げると会場の風景は一転しており、黒焦げになって吹き飛んだ料理と椅
子が散乱していた。他には何事も無かったような客達と、耳を押さえるイヴァ
ン、そしてそれに話し掛けるセシルがいた、のだが
「あああぁぁ!料理がぁ!!まだ一杯食べられましたのですのにいぃ!!」
「そこかよ!」
フィークが突っ込むと、フロウはだってと口を尖らせた。
「ご飯は大切なのですよ!?食べないと死んでしまいますですぅ!!」
「んな事言ってる状況じゃないだろ!」
ああ、もう、と頭を掻くフィークを横目に、フロウは猫さん大丈夫ですかぁと
のほほんと問いかけた。
ズレていても、見るところはちゃんと見ている。。
先程まで辛そうにしていたイヴァンはもう回復したのか、針を取り出してい
た。そういえば周りの客の皆々様が各々武器を取り出しているような気がしな
いでもない。仕事を、っとイヴァンが呟いたが、フロウはうーん、と唸って指
を唇に当てた。
「あはは、皆警戒してますですねぇ」
「お前馬鹿か!こいつら俺ら狙ってんだよ」
セシルが見兼ねたのかお叱りを飛ばしてくる。フロウは一瞬キョトンとし、ポ
ンッと手を打った。
「…成る程」
「て事で自分の身くらい自分で守れよ、構ってる暇なんか無いからな!」
そう言いながら、セシルはナイフ一本で敵の群れに応戦する為に飛び出す。一
方イヴァンは数人の「敵」を倒した後、律義にも依頼主を守っていた。
その辺りはプロである。
どうしようか、と見ているうちに、「敵」の一人がフロウの背後で武器を振り上
げた。気が付いてフロウはギリギリそれを避ける。相手の舌打ち。
「いきなりは危ないなのですよぉ」
次いで横や正面から、一斉に「敵」が襲い掛かってきた。
慌ててしゃがんだフロウの頭上スレスレを釘の付いたこん棒が通り過ぎ、飛び
込み前転の要領で飛んだ胸のすぐ下を、ナイフが唸りながら通過する。
そこにすかさず襲って来たトンファを尻餅をつくように避け、立ち上がった際
にドレスの裾を踏み、少しよろけた耳の横を、ナイフが凪いで行った。
「大丈夫か…あれは」
「この、ちょこまかと!」
セシルの冷めた呟きに重なるように、ナイフを持ったタキシードの男がフロウ
に向かって走り込んできた。その男の視界から、フロウが一瞬消える。目標を
失った男は次の瞬間、真横にフロウの言葉を聞いた。
「ご苦労様なのでぇーすぅ」
フロウにとっては一歩横へズレただけなのだが、男は対応出来ずに振り返ろう
とし、
その首に、にこりと笑ったフロウの手刀が思い切り叩きつけられた。
体格の良いその男は、突っ込んだ勢いのまま白目を向き、倒れながらフロウが
避け続けて何故か一直線に並んだ客達に衝突する。慌てて敵達は逃げようとし
たが、
「あ…足が…動か…」
と呟きながら、次々とぶつかり合い、積み重なって倒れていった。フロウが避
ける際に、手で急所を突いていた事に気が付いていた者などいないだろう。
「人間ドミノ倒しかんせーいなのですよぉ」
セシルが、呆れたようにフロウを見る。そんな彼の元にフィークが飛んでき
て、こっそりセシルに耳打ちした。
「言っとくけど、フロウはあまり怒らせない方がいいぞ。滅多に怒らないけど
な」
「…知るか」
セシルの言葉にフィークが肩を竦める。そのままセシルの側で飛び続けるフィ
ークを、セシルは睨んだ。
「何でついて来るんだ」
「んと、一番危なかしそうだから?」
「迷惑千万」
そう言いつつドレスの裾を踏みそうになるセシルに、フィークは、敵が来る方
向を一々報告する。
そんな二人をのほほんと見ながら、フロウは近くに奇跡的に無傷で転がってい
た壷を、襲い掛かって来たドレス姿の女性の顎に躊躇いもなく叩き付けた。セ
シルが「ああ!いくらすると思ってんだ!」と叫んだが、全く気にしない。裾
を捌いて一挙動で新たな敵の背後へ回り込み、蹴り倒す。
「なあ、あいつ神官とか似合わないんじゃ?」
「俺もそう思…うぅ!?」
一瞬だけフィークがセシルの側を離れた瞬間を見計らったように、敵の手がニ
ュッと伸びて来た。
呆気なく敵の手に握られたフィークを見て、セシルが眉を寄せる。
「…何遊んでるんだ」
「遊んでる訳ねぇだろう!!」
ジタバタと暴れるフィークを手に、敵は大声で叫んだ。
「動きを止めろ!でないとこいつを握り潰すぞ!!」
一瞬の、静寂……
は、訪れ無かった。
イヴァンは聞こえていない訳が無いのに、構わず針を投げ続け、セシルはお
ー、虫頑張れよとやる気無く言いながら敵の攻撃を避けている。逆に捕まえた
男が戸惑う程だ。
「…本当に潰すぞ?」
「どうぞ?」
やや弱気気味に言う男に、セシルがあっさりと頷く。
「プチッと行くぞ?」
「だから良いって」
「セシル!!てめ…」
「本当にやるからなあ!!!」
半分涙目で叫ぶ男の肩に、ポンッと手が置かれた。振り替える男の目に飛び込
んで来たのは、純粋な笑顔。
フロウがニッコリと笑った。
男もつられて笑う。
次の瞬間、男の肘がおかしな角度に曲がっていた。弾みで解放されたフィーク
が、方向転換できずにふらふらとセシルの頭の上に飛んでいき、ポテッと落ち
る。
男が、声にならない悲鳴を上げた。フロウはそれを一瞬冷たく見下ろし、セシ
ルの方へ駆け寄る。
「フィーク、大丈夫なのですか?」
「あぁ、うん、何と、か?」
頭の上から振り落とされたフィークを、フロウは受け止めて様子を見る。
「回復を…」
「だーーわーーやめろ!おかしな所に手が生える!!!」
手を翳そうとしたフロウを慌ててフィークが止めた。フロウはそんな事ないで
すよぉ、と顔を膨らませる。
セシルが顔を引き攣らせて何だそれ、と呟いた。
「そんな事ないっていうならあの男回復させてみろよ」
なおもフィークを治そうとするフロウに、フィークは必死に倒れた男を指し示
した。フロウは男を振り返って、口を曲げる。
「ボクの大切な友達を傷つけた罪人さんにかける魔法なんてありませんですよ」
「まあまあ、そこを試しに」
フロウはむぅっと唸って、未だ悶えてる男に近寄った。男はフロウの姿を見
て、必死に後ずさる。
「お、俺が悪かった!!神に謝るから許してくれ!!」
「神様なんて関係ありませんですよ。フィークがどうしてもって言うからやりま
すですけどね」
フロウはそう言って手を翳し-
頭に一本余分に骨が生えた男の悲鳴は、街中に響き渡ったそうな。
* * *
「ははは、お疲れさん」
全ての客が沈黙した中、イヴァンの足元で、フィルが得意気に言った。ちなみ
に彼は何もやっていない。
フィール・マグラルドはそんな護衛を満足そうに見つめ、腕を組む。
「お疲れ様。見事だったわ」
そんな彼女に、セシルは鋭い視線を向けた。フィールは、どうかした?と首を
傾げる。
「あんた、この襲撃に気が付いてただろう?」
単刀直入にセシルが切り出すと、フィールはあら、と小さく呟いた。
「どうしてそう思うのかしら?」
「爆発や襲撃者に全然動じて無かったから」
「あら?仮にもマグラルド家の当主たる者、そんなものに一々動じてられないわ
よ」
ホホホと笑ってフィールはセシルを見た。セシルはぐっとフィールを睨む。
「一つだけ、聞かせろ」
「愛の告白なら間に合ってるわよ」
「そうじゃない。あんた、何企んでるんだ?」
フィールはスッと笑みを消す。
イヴァンとフィルはじっと二人の会話に耳を傾け、フロウはフィークと戯れて
いた。
たっぷりと時間を置いて、フィールが瞳を閉じる。躊躇うように首を小さく振
り、セシルに視線を向けた。
「そうね。一つだけ、教えてあげるわ」
そのあまりにも重々しい口調に、セシルは唇を引き結ぶ。フロウまでもが真剣
な表情でフィールに視線を向けた。
「せっちゃん」
「変な呼び方をするな!で、何だ?」
「…その恰好で凄んでも、迫力無いわよ?」
うふふ、と笑うフィールに、セシルはガクリと崩れ落ちた。
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