PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ギア ラズロ
場所:エドランス城下(首都)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……うおおお!」
驚愕の声を上げ固まるアベルの、田舎モノ丸出しの態度に、いつもなら
皮肉とも取れる冷静なコメントで一刺しそうなラズロも珍しく目の前の光
景に釘付けになっている。
「あ、ほらアベル君、そんなところにいると邪魔になるよ。」
一緒になって突っ立っていたヴァネッサは、われに返って注意を促す。
「まあ、こんな大きい街は初めてだからな。」
ギアはいつになく子供らしい様子の三人に笑いを誘われながらヴァネッ
サにこえをかける。
「なにせエドランス国随一にして唯一っていいくらいの大都市だからな。」
そして、いまやエドランスを象徴するといってもいい存在となったアカ
デミーがある学院都市でもあった。
あの朝、ヴァネッサはギアとアベルを交えて、カタリナに全てを話した。
最後まで黙って聞いていたカタリナはおもむろに席を立つと、三人を待
たせたまま奥へいき、しばらくして一冊の小さなノートを持ってきた。
「これはあの人の忘れ物らしくてね。」
「……グラントの?」
「そう、旅にでてから半年ぐらいして、アカデミーからの荷物に入ってた
のさ。」
ギアの疑問に答えつつテーブルにそれをおいたカタリナは、三人に目で
見るように促した。
席の並びが、カタリナの真向かいにヴァネッサ、その両側にアベルとギ
アだったので、自然ヴァネッサが手に取り、二人はそれを覗き込む形にな
った。
そのノートはまるで考古学の研究所のように、伝承や神話、それもいく
つかの遺跡が見つかった時代を中心に研究されているようだった。
そのノートをしばらく捲るに任せて眺めていたギアが、何かに気がつい
たようにヴァネッサの手を止める。
「ちょっとまってくれ! この遺跡、とくにこの古代文字……まさか、神
人を追いかけてるのか!」
ギアの驚きはアベルとヴァネッサにはわからなかったが、洞窟の一件を
連想させられ不安げな顔をカタリナに向けた。
「まあね。とくにあんなことの後だし、ヴァネッサのことが無くても近い
うちこの話しなきゃね、とは思ってたとこなのよね。」
ギアには、と後の言葉を消してカタリナは苦笑いを浮かべた。
その一方でいまいち理解し切れてない子供達のために説明をしてやった。
「洞窟のやつらが、亜神ってのはきいたね。その亜神ってのは大抵王や女
王といった頭以外はそれほどたいした知能も無い本能の塊みたいなものな
んだけど、なかには人に近い種族もいてね。彼らは意思の疎通が可能だっ
たこともあり神人と呼ばれ、現世の神と崇められたのさ。」
「神人の中には人に交わったものもあり、種によっては自然よりも人の文
明を取り込み独自の文明へ高めたものさえいたんだ。このノートのは特に
その神人の関わってるものがあつめられてるわけさ。」
補足をしたギアにアベルは少し眉をひそめた。
「でもさっきの驚き方はそれだけじゃないよね?」
意外とアベルがよく見ていたことに内心感心しつつ、それでも言うべき
かどうかカタリナに視線を送る。
それを受けて頷くカタリナをみてギアはアベルとヴァネッサに向き直る。
「この神人は他の亜神と同じくすでに歴史からは姿を消している。ここの
蟻みたいに封じられているのか滅んだのかはわからんがな。だが一つの噂
話があるんだ。」
「うわさ?」
「ああ、その末裔は今も闇にひそんでるってな。」
「へ?」
目いっぱいマジに話したつもりだったが、アベルはそれがどうしたのか、
とキョトンとしている。
横に目をむけとヴァネッサも同様だった。
「あー、つまりな、この件を追う研究者や冒険者にはなぜか死んだり行方
不明になるやつが多くてな……。」
さすがに息を飲む二人。
「もう一つ……、ヴァネッサの実父からこのノートは引き継いだんだ。」
「それって!」
「まさか!」
驚きにこえをあげるヴァネッサにつづいて、あることに気がついたアベ
ルも声を上げる。
(もしかして、ヴァネッサの呪いに関係がある?)
だがカタリナの強い視線に二の句をふさがれる。
おそらくヴァネッサもそのことには気がついただろう。
しかしそれは同時に、実父の死疑惑を浮かび上がらせる。
だがアベルにとってヴァネッサは大事でも、完全に赤の他人の知らぬその
実父のことまで気を回すことはできなかった。
そのため、せっかく見つけた希望を口にすることを妨げられたことに、あ
きらかに納得いかない様子で口を閉じている。
(はー、この子もまだまだだね。)
もっともそういう気の使い方をするアベルも気色悪い、と母にしてはひど
いことを思いつつも、このことをできれば知らせたくは無かったと、カタリ
ナにしては珍しく少し悔いを感じていた。
「あんたたちがただ勉強しに行くならともかく、目的があるなら教えとかな
いとね。」
そういったカタリナはいつものカタリナで、ヴァネッサの運命を知った衝
撃も、知らせずに済ませたかったことをよりにもよってこんなときに言わね
ばならなかった後悔も感じさせなかった。
それらが全てヴァネッサのことを思いやってのことだとわかったヴァネッ
サ改めて、生きたいと感じていた。
それから用意を整え、ギアとラズロとともに二人が旅立つのはすぐだった。
村人と、仲間と共に残るランバートに見送られながら、二人は初めて自分
達の旅にでたのだった。
「さて、どうする?」
道の端によけて、一息ついた一行に、ギアが聞いた。
「このままカデミーにいってもいいし、とりあえず宿を決めてもいいぞ。」
「そうか、アカデミーに通うなら、長期にとまれる、むしろ住処をきめなき
ゃダメか。」
いまさらながら気がついたようにアベルが頷く。
「まあ寮とかもあるらしいけどな。」
「うーん、どうしよう?」
ほんとうなら、ここでいつもラズロがそつの無いところを見せると子なの
だが、ラズロもこういうときのことはわからないらしく、自然とヴァネッサ
へと、視線が集まるのは仕方が無いのかもしれない。
「えーと……。」
もう勉強が始まってるということなのか、このたびの間は何かと子供達を
フォローしていたギアは黙ってみているだけだった。
NPC:ギア ラズロ
場所:エドランス城下(首都)
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「……うおおお!」
驚愕の声を上げ固まるアベルの、田舎モノ丸出しの態度に、いつもなら
皮肉とも取れる冷静なコメントで一刺しそうなラズロも珍しく目の前の光
景に釘付けになっている。
「あ、ほらアベル君、そんなところにいると邪魔になるよ。」
一緒になって突っ立っていたヴァネッサは、われに返って注意を促す。
「まあ、こんな大きい街は初めてだからな。」
ギアはいつになく子供らしい様子の三人に笑いを誘われながらヴァネッ
サにこえをかける。
「なにせエドランス国随一にして唯一っていいくらいの大都市だからな。」
そして、いまやエドランスを象徴するといってもいい存在となったアカ
デミーがある学院都市でもあった。
あの朝、ヴァネッサはギアとアベルを交えて、カタリナに全てを話した。
最後まで黙って聞いていたカタリナはおもむろに席を立つと、三人を待
たせたまま奥へいき、しばらくして一冊の小さなノートを持ってきた。
「これはあの人の忘れ物らしくてね。」
「……グラントの?」
「そう、旅にでてから半年ぐらいして、アカデミーからの荷物に入ってた
のさ。」
ギアの疑問に答えつつテーブルにそれをおいたカタリナは、三人に目で
見るように促した。
席の並びが、カタリナの真向かいにヴァネッサ、その両側にアベルとギ
アだったので、自然ヴァネッサが手に取り、二人はそれを覗き込む形にな
った。
そのノートはまるで考古学の研究所のように、伝承や神話、それもいく
つかの遺跡が見つかった時代を中心に研究されているようだった。
そのノートをしばらく捲るに任せて眺めていたギアが、何かに気がつい
たようにヴァネッサの手を止める。
「ちょっとまってくれ! この遺跡、とくにこの古代文字……まさか、神
人を追いかけてるのか!」
ギアの驚きはアベルとヴァネッサにはわからなかったが、洞窟の一件を
連想させられ不安げな顔をカタリナに向けた。
「まあね。とくにあんなことの後だし、ヴァネッサのことが無くても近い
うちこの話しなきゃね、とは思ってたとこなのよね。」
ギアには、と後の言葉を消してカタリナは苦笑いを浮かべた。
その一方でいまいち理解し切れてない子供達のために説明をしてやった。
「洞窟のやつらが、亜神ってのはきいたね。その亜神ってのは大抵王や女
王といった頭以外はそれほどたいした知能も無い本能の塊みたいなものな
んだけど、なかには人に近い種族もいてね。彼らは意思の疎通が可能だっ
たこともあり神人と呼ばれ、現世の神と崇められたのさ。」
「神人の中には人に交わったものもあり、種によっては自然よりも人の文
明を取り込み独自の文明へ高めたものさえいたんだ。このノートのは特に
その神人の関わってるものがあつめられてるわけさ。」
補足をしたギアにアベルは少し眉をひそめた。
「でもさっきの驚き方はそれだけじゃないよね?」
意外とアベルがよく見ていたことに内心感心しつつ、それでも言うべき
かどうかカタリナに視線を送る。
それを受けて頷くカタリナをみてギアはアベルとヴァネッサに向き直る。
「この神人は他の亜神と同じくすでに歴史からは姿を消している。ここの
蟻みたいに封じられているのか滅んだのかはわからんがな。だが一つの噂
話があるんだ。」
「うわさ?」
「ああ、その末裔は今も闇にひそんでるってな。」
「へ?」
目いっぱいマジに話したつもりだったが、アベルはそれがどうしたのか、
とキョトンとしている。
横に目をむけとヴァネッサも同様だった。
「あー、つまりな、この件を追う研究者や冒険者にはなぜか死んだり行方
不明になるやつが多くてな……。」
さすがに息を飲む二人。
「もう一つ……、ヴァネッサの実父からこのノートは引き継いだんだ。」
「それって!」
「まさか!」
驚きにこえをあげるヴァネッサにつづいて、あることに気がついたアベ
ルも声を上げる。
(もしかして、ヴァネッサの呪いに関係がある?)
だがカタリナの強い視線に二の句をふさがれる。
おそらくヴァネッサもそのことには気がついただろう。
しかしそれは同時に、実父の死疑惑を浮かび上がらせる。
だがアベルにとってヴァネッサは大事でも、完全に赤の他人の知らぬその
実父のことまで気を回すことはできなかった。
そのため、せっかく見つけた希望を口にすることを妨げられたことに、あ
きらかに納得いかない様子で口を閉じている。
(はー、この子もまだまだだね。)
もっともそういう気の使い方をするアベルも気色悪い、と母にしてはひど
いことを思いつつも、このことをできれば知らせたくは無かったと、カタリ
ナにしては珍しく少し悔いを感じていた。
「あんたたちがただ勉強しに行くならともかく、目的があるなら教えとかな
いとね。」
そういったカタリナはいつものカタリナで、ヴァネッサの運命を知った衝
撃も、知らせずに済ませたかったことをよりにもよってこんなときに言わね
ばならなかった後悔も感じさせなかった。
それらが全てヴァネッサのことを思いやってのことだとわかったヴァネッ
サ改めて、生きたいと感じていた。
それから用意を整え、ギアとラズロとともに二人が旅立つのはすぐだった。
村人と、仲間と共に残るランバートに見送られながら、二人は初めて自分
達の旅にでたのだった。
「さて、どうする?」
道の端によけて、一息ついた一行に、ギアが聞いた。
「このままカデミーにいってもいいし、とりあえず宿を決めてもいいぞ。」
「そうか、アカデミーに通うなら、長期にとまれる、むしろ住処をきめなき
ゃダメか。」
いまさらながら気がついたようにアベルが頷く。
「まあ寮とかもあるらしいけどな。」
「うーん、どうしよう?」
ほんとうなら、ここでいつもラズロがそつの無いところを見せると子なの
だが、ラズロもこういうときのことはわからないらしく、自然とヴァネッサ
へと、視線が集まるのは仕方が無いのかもしれない。
「えーと……。」
もう勉強が始まってるということなのか、このたびの間は何かと子供達を
フォローしていたギアは黙ってみているだけだった。
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