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2024/11/19 06:47 |
立金花の咲く場所(トコロ) 8/アベル(ひろ)
PC:アベル ヴァネッサ 
NPC:カタリナ ギア ラズロ ダントン ロクス
    学者(ニコル シュナップス ヒース ラルフ) 老人(ランバー
ト)  
 
場所:ギサガ村

――――――――――――――――――――――――

「私も連れて行ってください!」
 間髪入れずに強い口調でヴァネッサが言う。
 普段は気配りをする性格からか、他人の話に割り込んだ
り、こんなに強く言い放つことは無いのだが、少女を良く知
るロクスやランバートが驚いてしまったほどの変わりようだ
った。
「……嬢ちゃんがヴァネッサちゃんか?」
「え?」
 勢いで割り込んだものの、見ず知らずの相手に突然名前を
当てられ、ヴァネッサは思わず気勢をそがれる。
「そうか、ギアはカタリナとは馴染みだったな。」
 ランバートが今思い出したとばかりに頷いた。
「カタリナ……母さんのお知り合い?」
「まあそうだ。カタリナやグラントと組んで仕事してたとき
もあるんだぜ。」
 初対面にもかかわらず、親戚の子にでも接するようにはな
すギアに気圧されながらも、ヴァネッサは姿勢をただし真っ
直ぐにギアの目を見た。
「ギアさん、私も連れて行ってください。未熟ですが、治癒
の魔法も使えますし、邪魔にならないようにしますから。」
「……うーん、カタリナの娘だし……いやだからしょうがな
いのかなぁ。」
「おねがいします!」
「うーん、しかたねぇな。よし! ラズロはヴァネッサちゃ
んをまもってやんな。」
 ギアの言葉にパッと顔を輝かすヴァネッサと対称的に、他
人事とすっかり聞き流していたラズロは、露骨に機嫌を損ね
た様子で、一応反論を試みる。
「無理してまで連れて行く必要があるんですか?」
「ばーか、お前と2人で潜った上、助けを待つのも男ばかり、
正気じゃおれんだろうが。」
「……。」
 予想通り、とはいえ、さすがにあきれてだまるラズロ。
「ヴァネッサがいくなら、わしも行くかの。」
 さすがにギアもランバートのこの言葉にはなにもいえなか
った。
「まあいいさ。どのみち洞窟の中なら、俺がいれば危険なん
て無いって事を、師匠にお見せするいい機会だ。」
 気分をすぐに変えたギアは、軽くいってわらった。
 ヴァネッサは洞窟のことで頭がいっぱいだったが、ギアが
現れてから場の空気が軽くなったことに気がついた。
(お父さんとお母さんと一緒に冒険をしていた人……。なん
だか不思議な人。)
 
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽  

 戦いが始まってからどれぐらいの時間がたったのか……。
 おそらく自分が感じているほどにはすぎてないだろう、と
ダントンは冷静に考えていた。
 狩をするときには一切の気配を絶ち、闇に潜むことが常の
狩人は体感時間と現実の時間の差を本能的に図ることができ
る。
 ダントンはロクスが無理を通して、特に怪我の重い学者の
一人を引きずるように抜け穴に消えてからの時間を計ること
で、限界までを計算していたのだ。
(学者さんにはわりーが、せめてアベルだけでも。)
 ダントンは自分の命の賭け時を計っていたわけだが、同時
に意外な頑張りを見せるアベルにいささかの期待を感じても
いた。
 アベルはまだまだ技を語るほどの腕ではなかったが、基本
を積み重ねてきた努力を、確実に力にしていることをうかが
わせる堅実な戦い方をしていた。
 ジャイアント・アント(以降Gアント)は力も強く、表皮
も装甲のごとき硬さをもっていたが、単調で幅の無い攻撃と
連携をまったくとらない行動パターンが幸いし、確実に一匹
づつしとめることで、Gアントの波に耐えていた。
「結構たった気がしますけど、こいつらはあきらめたりしな
いんですかね?」
 アベルはまだ余力を感じさせる声色ながらも、呆れたよう
な口調でぼやいた。
「なりこそでかいけど、ほんとにアリなんだなぁ。」
 あいも変わらず体当たりから前足でのホールドそこからの
強靭な顎での喰いつきをしかけるGアントを、剣を上手くつ
かって真っ向から受け止め、その際受ける衝撃と擦り傷にひ
るむこと無く、頭の足りないGアントをねじ伏せ、上段から
渾身の一撃を見舞う――もはや戦闘というよりも作業になる
動作を繰り返しながらアベルがぼやく。
 ダントンは主にアベルが二体同時に相手取らずにすむよう
にサポートにまわっているおかげで、まだ体力の消費も抑え
られていたが、やはり戦闘による疲労は確実に積み重ねられ
ていた。
 それだけに感心もしていた。
(さすがカタリナさんの息子だ。)
 さすがに、このまま虫どもが尽きるまでいけるとおもうほ
どアベルもダントンも楽観できなかったが、ダントンはアベ
ルだけなら助かるかもしれないと思い始めていた。
 そんな二人が同時に顔を見合わせる。
「……今、なんか聞こえました?」
「……アベルもきこえたのか?」
 体力尽きるまで続くかと思われた虫退治のさなか、二人は
地響きのような音が、よりにもよって後ろから聞こえてきた
のだ。
 まさか逃げ道が崩れるのか、とさすがにあけった二人の予
測をおおきくはずれ、突如として、崩れて埋まっていた土砂
の壁が、まるで自らの意思で動いているかのように、見る見
るうちに四方へと移動し、元の洞窟と指して変わらない様子
へと変化した。
「アベル君!」
「ヴァネッサ?!」
 聞きなれた声に驚くアベルとロクスは、見知らぬ男と、控
えるように取り巻くランバートと見知らぬ少年、そしてヴァ
ネッサがそこにいる状況についていけないまま、唖然と見
ていた。
 
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2007/02/12 21:30 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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