PC:アベル ヴァネッサ
NPC:セリア ギア
場所:エドランス国 ウサギ型眷属の村付近
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――二度目となるウサギ村への道中は、子供達だけだった時と違い、静かだった。
ギアとセリアが前を歩き、アベルとヴァネッサに時折どちらへ進むのかと質問するぐ
らいで、あとは余計な会話をしない。
しゃべればその分体力を消耗するから……ということらしい。
「その犯人、名前何ていうんだ?」
道中、前を歩くギアが唐突に呟いた。
……何かを手の中でいじくっている。
「あ……そういえば、聞き出してなかった」
アベルが頭をかく。
そういえば、犯人の名前を聞いていない。
縛り上げた時に張り飛ばすなり何なりして徹底的に締め上げれば、色々と情報を得ら
れたかもしれないが……アベルやラズロは平然とそれができる人間ではない。
「まあ、今回は別にいい。そいつ、もしかしたら手配されてる奴かもと思っただけだ
から」
ギアは、手の中でいじくっていた物を、ぐっと握りしめる。
「実物を見てねえから、もしかしたら違うかもしれねえけどな。そいつ、前にアカデ
ミーから指輪盗もうとした犯人だと思う」
「ええっ、そんな奴、いたのか!?」
アベルが驚いていると、ギアはしれっと「いたよ」と答えた。
「お前らが入学するだいぶ前だけどな。間抜けな奴で、指輪を保管してる部屋までは
来れたが、そこから先に進めなくて、罠に引っかかったんだ。ロープに引っかかって
ぷらぷら揺れてた」
ギアの説明に、セリアがうなずいている。
「まあ、逃げ足だけは早い奴だったな。取り押さえてちょっと目を離しているすき
に、全速力で逃げられた。まったく呆れたものだ」
今回は逃がしてたまるものか、とセリアが拳を手の平に打ちつける。
――気合充分、といったところか。
(そんなに凄い奴だったかなー……)
アベルは疑問に思う。
あの犯人に、アカデミーの教師に取り押さえられて逃げるという芸当ができるとは思
えないのだろう。
コボルド3匹がいなくなった途端弱気になり、リリアに凄まれては怯えていた姿が目
立っていたのだから、仕方ない反応である。
「で、だ。ちょっと見ろ……」
ギアは足を止め、手を開いて中身を二人に見せた。
ゴツゴツした大きな手に握られていたのは、犯人が持っていた指輪だ。
アカデミーに戻った時にセリアに渡したものを、ギアが受け取って色々と見ていたら
しい。
「ここに文字が入ってるんだよ。わかるか?」
ギアが指輪を傾け、内側が見えるようにすると……確かに、文字らしいものが刻み込
まれている。
「何て書いてあるんですか?」
ヴァネッサが尋ねると、ギアはしかめ面をして指輪を見つめた。
「んー……このテの場合、普通は名前とかだったりするけどな。セリア頼む」
やがて、セリアに向けて指輪を放る。
要するに、読めない、ということだろう。
「馬鹿者っ! 貴重な物を放ってよこす奴があるかっ!」
セリアはギアを一睨みしてから、指輪の裏側に目を光らせた。
「ええと……『 永久 我が子らよ 地平 願いて うた 』 」
指輪を回しながら文字を追っていたセリアが、黙りこむ。
「……これだけだな」
「そんだけっ!?」
アベルが驚いた顔をする。
無理もない。
指輪の中に刻まれているのは、単語を並べただけと言うべきもので、文章として成り
立っていない。
これでは、一体何を伝えたいのかさっぱりわからない。
「ああ、そうだ。私の個人的な意見だが、一つのメッセージをいくつかに分けている
んだろう。探せばこの前後につながる文字の入った指輪もあると思う……」
セリアは難しい顔をして、手の中の指輪を見つめていた。
「アカデミーにある物も、いずれきちんと解読する必要がありそうだな。学園長に頼
んでみよ
う」
――指輪の淵が、太陽の光を反射して鋭い光を放っていた。
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NPC:セリア ギア
場所:エドランス国 ウサギ型眷属の村付近
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――二度目となるウサギ村への道中は、子供達だけだった時と違い、静かだった。
ギアとセリアが前を歩き、アベルとヴァネッサに時折どちらへ進むのかと質問するぐ
らいで、あとは余計な会話をしない。
しゃべればその分体力を消耗するから……ということらしい。
「その犯人、名前何ていうんだ?」
道中、前を歩くギアが唐突に呟いた。
……何かを手の中でいじくっている。
「あ……そういえば、聞き出してなかった」
アベルが頭をかく。
そういえば、犯人の名前を聞いていない。
縛り上げた時に張り飛ばすなり何なりして徹底的に締め上げれば、色々と情報を得ら
れたかもしれないが……アベルやラズロは平然とそれができる人間ではない。
「まあ、今回は別にいい。そいつ、もしかしたら手配されてる奴かもと思っただけだ
から」
ギアは、手の中でいじくっていた物を、ぐっと握りしめる。
「実物を見てねえから、もしかしたら違うかもしれねえけどな。そいつ、前にアカデ
ミーから指輪盗もうとした犯人だと思う」
「ええっ、そんな奴、いたのか!?」
アベルが驚いていると、ギアはしれっと「いたよ」と答えた。
「お前らが入学するだいぶ前だけどな。間抜けな奴で、指輪を保管してる部屋までは
来れたが、そこから先に進めなくて、罠に引っかかったんだ。ロープに引っかかって
ぷらぷら揺れてた」
ギアの説明に、セリアがうなずいている。
「まあ、逃げ足だけは早い奴だったな。取り押さえてちょっと目を離しているすき
に、全速力で逃げられた。まったく呆れたものだ」
今回は逃がしてたまるものか、とセリアが拳を手の平に打ちつける。
――気合充分、といったところか。
(そんなに凄い奴だったかなー……)
アベルは疑問に思う。
あの犯人に、アカデミーの教師に取り押さえられて逃げるという芸当ができるとは思
えないのだろう。
コボルド3匹がいなくなった途端弱気になり、リリアに凄まれては怯えていた姿が目
立っていたのだから、仕方ない反応である。
「で、だ。ちょっと見ろ……」
ギアは足を止め、手を開いて中身を二人に見せた。
ゴツゴツした大きな手に握られていたのは、犯人が持っていた指輪だ。
アカデミーに戻った時にセリアに渡したものを、ギアが受け取って色々と見ていたら
しい。
「ここに文字が入ってるんだよ。わかるか?」
ギアが指輪を傾け、内側が見えるようにすると……確かに、文字らしいものが刻み込
まれている。
「何て書いてあるんですか?」
ヴァネッサが尋ねると、ギアはしかめ面をして指輪を見つめた。
「んー……このテの場合、普通は名前とかだったりするけどな。セリア頼む」
やがて、セリアに向けて指輪を放る。
要するに、読めない、ということだろう。
「馬鹿者っ! 貴重な物を放ってよこす奴があるかっ!」
セリアはギアを一睨みしてから、指輪の裏側に目を光らせた。
「ええと……『 永久 我が子らよ 地平 願いて うた 』 」
指輪を回しながら文字を追っていたセリアが、黙りこむ。
「……これだけだな」
「そんだけっ!?」
アベルが驚いた顔をする。
無理もない。
指輪の中に刻まれているのは、単語を並べただけと言うべきもので、文章として成り
立っていない。
これでは、一体何を伝えたいのかさっぱりわからない。
「ああ、そうだ。私の個人的な意見だが、一つのメッセージをいくつかに分けている
んだろう。探せばこの前後につながる文字の入った指輪もあると思う……」
セリアは難しい顔をして、手の中の指輪を見つめていた。
「アカデミーにある物も、いずれきちんと解読する必要がありそうだな。学園長に頼
んでみよ
う」
――指輪の淵が、太陽の光を反射して鋭い光を放っていた。
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