PC:アベル ヴァネッサ
NPC:男達(ダントン ロクス) 学者
場所:村はずれの洞窟
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・
「くっそ! なんなんだあいつらは!」
ダントンは荒い息をつきながら吐き捨てた。
小柄ながら、森で狩をして生計を立てるダントンの体は、
程よくひきしまった無駄の無い鍛えられた筋肉をまとってい
るため、脆弱な印象は微塵も感じさせなかった。
そのダントンが青い顔をして、当惑していた。
「……ジャイアントアントではないよな?」
そういって、同じように当惑した顔を見せているのは、同
じく小柄ながら、大工で鍛えられた丸太のような腕を持つロ
クスだった。
二人とも専業の戦士ではないが、日々鍛えられたその力は
駆け出しの戦士など相手にならないほどの実力を持つ。
実際、戦士のアベルもよく練習相手になってもらうのだが
ようやく最近勝てるようになってきた、というところなのだ。
その二人がこんな顔をみせるなど、おそらく村の人間は思
いもよらないだろう。
もっとも、アベルは二人の反応はおおいに納得できるもの
だったのだが……。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
違和感を最初に感じたのはダントンだった。
穴を抜けて、土砂の反対側へと這出た三人は、ランタンに
火を灯し、付近をしばらく探索していた。
重症ということだったので、倒れて岩陰に隠されているこ
ともありえることから、慎重に探したもののみつけることは
できなかったため、奥へと探索の範囲を広げることになった。
そうして落石現場からはなれ、奥へと続く道を歩いてる最
中のことだった。
「ん? まてよ、学者連中が事故にあったのはここじゃない
ってことか?」
ダントンがくびをかしげる。
「んー、ひょっとすると、おもったより怪我が軽くて、とり
あえず現場から離れたんじゃないですか?」
「そうだといいんだが……。」
ダントンはなんとなく釈然としない様子で、アベルの答え
に同意を返した。
「なーんか、ひっかかってんだよな……。」
そんな二人から少し遅れて、見落としの確認をしていたロ
クスが不意に緊張した声で二人を呼び止めた。
「まて!」
「どうした?」
「どうかしました?」
ロクスはふたりに下を良く見るように手で示す。
それになにか思い至ったのか、ダントンは床の土を少し手
にとって灯の元に近づけてみた。
「おい、アベルはここに最近来たか?」
「? いえ。」
「俺達もガキのころにきただけだから気づかなかったが……、
ここは土が違う、俺らの知らない奥にきてるんだ。」
「ええ? そ、そういえば、こんなに深くなかった……。」
アベルもなにか変なことにようやく気づき、同時にむかし
ヴァネッサに言われたことを思い出していた。
――洞窟の奥には、悪魔がいる。
――入ったら悪魔につかまって、二度と帰って来られなくなる。
誰に聞いたのか、ヴァネッサもそんな子供だましを言うのか、
と大人ぶっていたアベルは妙に勝った気になったのを覚えている。
「まさか、学者の人たちは……。」
にわかに悪い予感ばかりが膨れ上がってくる。
そしてそれは、アベルの予想を超えた形で現実となった。
不安を抱えた三人はさらに奥へとすすんだが、
「おい! あれをみろ!」
先行していたダントンが、少し先の曲がり角で二人をよんだ。
岩陰から隠れながら先を見た三人は、巨大なアリのような昆虫
に担ぎ上げられるようにして運ばれる学者達を見つけた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
バックアタックで奇襲をかけた三人は、学者を担ぎ上げて道を
逃げ戻った。
もちろん、巨大アリも獲物を奪い返そうと、奥のほうから追い
かけ てきたのだったが、アベルが戦士の本領を発揮して足止め
をする間に、ダントンとロクスで二人づつはこんで、距離を稼ぎ、
戻ってきて合流した三人はしばらく踏みとどまって戦っていた。
意外としぶとい巨大アリを、十体ほど倒したあたりで、後続が
切れたのに合わせて落石現場まで後退してきたのだった。
「どうします?」
アベルは奥を警戒しいつでも動けるように身構えたまま年長者
に判断を仰いだ。
「幸い学者達は重傷には違いないが、出血は止まっている。」
床に並べて横たえた学者を診ていたダントンが、勤めて明るく
いったが、アベルもロクスも気安めということがわかっていた。
「……やつらのことを向こうの連中に知らせなきゃならん。」
ロクスが重い口を開く。
これはもはや学者の命をこえて村の危機なのである。
わかってはいたのだが三人とも次の言葉が言い出せずにいた。
すなわち、「誰がもどるか。」
あのアリどもが押し寄せてきたとき、二人は残していかねば怪
我人を放り出すことになる。
みたところ、まだ人を担いで通れる穴は開通してないのだ。
「……俺が残ります、戦士ですからね。」
アベルが剣を見せながらそういいきる。
「……そういうことなら、もどんのはロクスだな。」
「おい!」
なにかいいかけるロクスをダントンが制する。
「言い合ってる暇はねえ。俺は大工よりかは件を使える、そうい
うことだ。」
ダントンは狩りで使う小剣を見せた。
ロクスもことの重大性がよくわかるだけに、悔しそうな顔をしな
がらも一つうなづいて穴へともぐり始めた。
「いいか、死ぬんじゃねーぞ。ダントンはともかく、アベルに死な
れたんじゃヴァネッサちゃんに顔向けできねえからな!」
「アリなんかにやられるような鍛え方してませんよ!」
アベルはあながち気休めでもなくそう返した。
NPC:男達(ダントン ロクス) 学者
場所:村はずれの洞窟
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「くっそ! なんなんだあいつらは!」
ダントンは荒い息をつきながら吐き捨てた。
小柄ながら、森で狩をして生計を立てるダントンの体は、
程よくひきしまった無駄の無い鍛えられた筋肉をまとってい
るため、脆弱な印象は微塵も感じさせなかった。
そのダントンが青い顔をして、当惑していた。
「……ジャイアントアントではないよな?」
そういって、同じように当惑した顔を見せているのは、同
じく小柄ながら、大工で鍛えられた丸太のような腕を持つロ
クスだった。
二人とも専業の戦士ではないが、日々鍛えられたその力は
駆け出しの戦士など相手にならないほどの実力を持つ。
実際、戦士のアベルもよく練習相手になってもらうのだが
ようやく最近勝てるようになってきた、というところなのだ。
その二人がこんな顔をみせるなど、おそらく村の人間は思
いもよらないだろう。
もっとも、アベルは二人の反応はおおいに納得できるもの
だったのだが……。
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違和感を最初に感じたのはダントンだった。
穴を抜けて、土砂の反対側へと這出た三人は、ランタンに
火を灯し、付近をしばらく探索していた。
重症ということだったので、倒れて岩陰に隠されているこ
ともありえることから、慎重に探したもののみつけることは
できなかったため、奥へと探索の範囲を広げることになった。
そうして落石現場からはなれ、奥へと続く道を歩いてる最
中のことだった。
「ん? まてよ、学者連中が事故にあったのはここじゃない
ってことか?」
ダントンがくびをかしげる。
「んー、ひょっとすると、おもったより怪我が軽くて、とり
あえず現場から離れたんじゃないですか?」
「そうだといいんだが……。」
ダントンはなんとなく釈然としない様子で、アベルの答え
に同意を返した。
「なーんか、ひっかかってんだよな……。」
そんな二人から少し遅れて、見落としの確認をしていたロ
クスが不意に緊張した声で二人を呼び止めた。
「まて!」
「どうした?」
「どうかしました?」
ロクスはふたりに下を良く見るように手で示す。
それになにか思い至ったのか、ダントンは床の土を少し手
にとって灯の元に近づけてみた。
「おい、アベルはここに最近来たか?」
「? いえ。」
「俺達もガキのころにきただけだから気づかなかったが……、
ここは土が違う、俺らの知らない奥にきてるんだ。」
「ええ? そ、そういえば、こんなに深くなかった……。」
アベルもなにか変なことにようやく気づき、同時にむかし
ヴァネッサに言われたことを思い出していた。
――洞窟の奥には、悪魔がいる。
――入ったら悪魔につかまって、二度と帰って来られなくなる。
誰に聞いたのか、ヴァネッサもそんな子供だましを言うのか、
と大人ぶっていたアベルは妙に勝った気になったのを覚えている。
「まさか、学者の人たちは……。」
にわかに悪い予感ばかりが膨れ上がってくる。
そしてそれは、アベルの予想を超えた形で現実となった。
不安を抱えた三人はさらに奥へとすすんだが、
「おい! あれをみろ!」
先行していたダントンが、少し先の曲がり角で二人をよんだ。
岩陰から隠れながら先を見た三人は、巨大なアリのような昆虫
に担ぎ上げられるようにして運ばれる学者達を見つけた。
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バックアタックで奇襲をかけた三人は、学者を担ぎ上げて道を
逃げ戻った。
もちろん、巨大アリも獲物を奪い返そうと、奥のほうから追い
かけ てきたのだったが、アベルが戦士の本領を発揮して足止め
をする間に、ダントンとロクスで二人づつはこんで、距離を稼ぎ、
戻ってきて合流した三人はしばらく踏みとどまって戦っていた。
意外としぶとい巨大アリを、十体ほど倒したあたりで、後続が
切れたのに合わせて落石現場まで後退してきたのだった。
「どうします?」
アベルは奥を警戒しいつでも動けるように身構えたまま年長者
に判断を仰いだ。
「幸い学者達は重傷には違いないが、出血は止まっている。」
床に並べて横たえた学者を診ていたダントンが、勤めて明るく
いったが、アベルもロクスも気安めということがわかっていた。
「……やつらのことを向こうの連中に知らせなきゃならん。」
ロクスが重い口を開く。
これはもはや学者の命をこえて村の危機なのである。
わかってはいたのだが三人とも次の言葉が言い出せずにいた。
すなわち、「誰がもどるか。」
あのアリどもが押し寄せてきたとき、二人は残していかねば怪
我人を放り出すことになる。
みたところ、まだ人を担いで通れる穴は開通してないのだ。
「……俺が残ります、戦士ですからね。」
アベルが剣を見せながらそういいきる。
「……そういうことなら、もどんのはロクスだな。」
「おい!」
なにかいいかけるロクスをダントンが制する。
「言い合ってる暇はねえ。俺は大工よりかは件を使える、そうい
うことだ。」
ダントンは狩りで使う小剣を見せた。
ロクスもことの重大性がよくわかるだけに、悔しそうな顔をしな
がらも一つうなづいて穴へともぐり始めた。
「いいか、死ぬんじゃねーぞ。ダントンはともかく、アベルに死な
れたんじゃヴァネッサちゃんに顔向けできねえからな!」
「アリなんかにやられるような鍛え方してませんよ!」
アベルはあながち気休めでもなくそう返した。
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