PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック セリア ギア
場所:エドランス国 アカデミー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ウサギ型眷属の村での騒動を解決した一行は、首都に帰ってきてから二手に別れた。
ラズロ、リリア、リックはせせらぎ亭へ、女将に調味料の原料となる香草を渡しに向
かった。
一方のアベルとヴァネッサはアカデミーへ直行した。
香草の畑を荒らしていた犯人の処遇についての意見を求めるためと、妖精が教えてく
れた、あの紋章のことを伝えるために。
「絡み合う蛇……ねえ」
一連の話を聞き終えたセリアが、ほっそりした指をあごに当て、ふむ、と考え込む。
教務室に他の教師の姿はない。
授業やら何やらで、全員出払っているらしい。
他の人間にわずらわされず話ができるのは利点だった。
「どこかの家の家紋だったら、図書館に行けば資料があると思うが……」
「家紋とか、そういう立派なものじゃないと思います。悪い組織が使っているらしい
ですから」
悪い組織、と聞いてセリアの眉が動く。
「どんな紋章だった?」
その真剣な表情に、二人は気圧されかかった。
「ええと、お互いを食い合うように、2匹の蛇が絡み合ってる感じの紋章」
アベルは懸命に、身振り手振りなども交えて説明するが、セリアは今一つピンとこな
い様子で首を傾げた。
「なんだかわからないな、ちょっと描いてみてくれ」
セリアはそう言うと、机の上にあった羊皮紙と羽根ペン、それにインクつぼを二人の
前に置く。
「だからー、2匹の蛇がいて~」
アベルは羽根ペンを取ると、ガリガリと書きなぐり始めた。
「そんで、こう、絡み合ってて……」
ガリガリガリガリ。
「それが、お互いを食い合うみたいにー」
やがて形を成して来たそれは……蛇というよりも不恰好なミミズという表現がぴった
りだった。
「ぶわっはっはっは! 何だこりゃおい!」
唐突に声が上がり、三人はビクッと体を振るわせた。
「いやー、傑作だ傑作。お前、面白い才能あるなあ!」
――いつの間にか忍び寄っていたらしいギアが、出来あがった物を見て、腹を抱えて
爆笑している。
「笑うなよ! 俺、今まで絵なんか書いた事ねーんだから、しょうがねえだろ!」
真っ赤になってアベルが立ち上がると、「まあまあ」とギアは片手をひらひらさせ
た。
「じゃあ、ヴァネッサはどうだ? 描いてみな」
「あ、はい」
返事をしたものの……内心、ヴァネッサはゆううつだった。
ヴァネッサだって絵を描いたことなどほとんどない。
小さい時に、地面に小枝で落書きをしたことがある程度だ。
絵を描くことに関心のある方ではない、という自覚はある。
ヴァネッサは、絵を描くよりも花輪を作るほうがうんと楽しかった。
……だから、その腕前となると……。
数刻後、ヴァネッサは、黙って羽根ペンをインクつぼに入れた。
羊皮紙には、アベルが描いた物のさらに上を行くシロモノが描かれていた。
蛇どころか、こんがらがったミミズにすら見えないというのはどういうわけだろう
か。
その場にいた全員が、あんまりにもあんまりな出来映えに黙りこむ。
ギアの方も、女の子を相手に笑い飛ばすのは、さすがに良心が咎めるらしい。
「……すみません」
しゅんとするヴァネッサの頭に、セリアがいたわるように手を乗せる。
「頭の中には、ちゃんとあるんですけど……みんなにわかるように描くのは、ちょっ
と……」
「ま、まあ。しっかり覚えてる人間が二人もいるんだ、問題はないさ。見ればわかる
んだろう?」
かばうようなセリアの言葉が、余計みじめな気持ちを増幅させる。
(もう絵なんか描きたくない)とヴァネッサは思った。
「あ、そうだ、おっちゃん」
アベルが目をキラキラさせながらギアを見上げる。
「父ちゃん、生きてるって! 妖精が会ったんだって! あと、ヴァネッサの呪い、
もしかしたら解けるかもしれないって!」
それはアベルだけではなく、ヴァネッサにとってもうれしい情報だった。
だが二人だけで分かち合うべきではない。
ギアはほんの少し目を丸くしていたが、すぐにニカッと笑みを浮かべた。
「良かったな! そうか、あいつ生きてるのか!」
太い腕で、ぎゅうううっと二人を抱きしめる。
よほど嬉しかったのだろう、その腕には力がこもっていた。
「あ、それで……畑を荒らしてた奴はどうしたらいいんだろ? アカデミーの名前を
出したらビビってたから、たぶんアカデミーに関係してる気がするんだけど」
「そうだなー……ま、こっちに連れてきて、あらいざらい吐かせるか。その後、ギル
ドで手配されてるならギルドに引き渡してもいいし」
ギアは寝癖のついた頭をぼりぼりかいた。
「というかな、そいつ、もしかしたら俺の知ってる奴かもしれん。迎えに……っつう
か連行しに戻る時は俺も一緒に行くから、声かけてくれや」
「私も行こう」
三人が抱き合う様子を微笑ましそうに見ていたセリアが、片手を上げる。
「大人が二人ついて行くのが望ましいだろう。それに色々と自分で探ってみたい部分
があるからな」
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NPC:ラズロ リリア リック セリア ギア
場所:エドランス国 アカデミー
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ウサギ型眷属の村での騒動を解決した一行は、首都に帰ってきてから二手に別れた。
ラズロ、リリア、リックはせせらぎ亭へ、女将に調味料の原料となる香草を渡しに向
かった。
一方のアベルとヴァネッサはアカデミーへ直行した。
香草の畑を荒らしていた犯人の処遇についての意見を求めるためと、妖精が教えてく
れた、あの紋章のことを伝えるために。
「絡み合う蛇……ねえ」
一連の話を聞き終えたセリアが、ほっそりした指をあごに当て、ふむ、と考え込む。
教務室に他の教師の姿はない。
授業やら何やらで、全員出払っているらしい。
他の人間にわずらわされず話ができるのは利点だった。
「どこかの家の家紋だったら、図書館に行けば資料があると思うが……」
「家紋とか、そういう立派なものじゃないと思います。悪い組織が使っているらしい
ですから」
悪い組織、と聞いてセリアの眉が動く。
「どんな紋章だった?」
その真剣な表情に、二人は気圧されかかった。
「ええと、お互いを食い合うように、2匹の蛇が絡み合ってる感じの紋章」
アベルは懸命に、身振り手振りなども交えて説明するが、セリアは今一つピンとこな
い様子で首を傾げた。
「なんだかわからないな、ちょっと描いてみてくれ」
セリアはそう言うと、机の上にあった羊皮紙と羽根ペン、それにインクつぼを二人の
前に置く。
「だからー、2匹の蛇がいて~」
アベルは羽根ペンを取ると、ガリガリと書きなぐり始めた。
「そんで、こう、絡み合ってて……」
ガリガリガリガリ。
「それが、お互いを食い合うみたいにー」
やがて形を成して来たそれは……蛇というよりも不恰好なミミズという表現がぴった
りだった。
「ぶわっはっはっは! 何だこりゃおい!」
唐突に声が上がり、三人はビクッと体を振るわせた。
「いやー、傑作だ傑作。お前、面白い才能あるなあ!」
――いつの間にか忍び寄っていたらしいギアが、出来あがった物を見て、腹を抱えて
爆笑している。
「笑うなよ! 俺、今まで絵なんか書いた事ねーんだから、しょうがねえだろ!」
真っ赤になってアベルが立ち上がると、「まあまあ」とギアは片手をひらひらさせ
た。
「じゃあ、ヴァネッサはどうだ? 描いてみな」
「あ、はい」
返事をしたものの……内心、ヴァネッサはゆううつだった。
ヴァネッサだって絵を描いたことなどほとんどない。
小さい時に、地面に小枝で落書きをしたことがある程度だ。
絵を描くことに関心のある方ではない、という自覚はある。
ヴァネッサは、絵を描くよりも花輪を作るほうがうんと楽しかった。
……だから、その腕前となると……。
数刻後、ヴァネッサは、黙って羽根ペンをインクつぼに入れた。
羊皮紙には、アベルが描いた物のさらに上を行くシロモノが描かれていた。
蛇どころか、こんがらがったミミズにすら見えないというのはどういうわけだろう
か。
その場にいた全員が、あんまりにもあんまりな出来映えに黙りこむ。
ギアの方も、女の子を相手に笑い飛ばすのは、さすがに良心が咎めるらしい。
「……すみません」
しゅんとするヴァネッサの頭に、セリアがいたわるように手を乗せる。
「頭の中には、ちゃんとあるんですけど……みんなにわかるように描くのは、ちょっ
と……」
「ま、まあ。しっかり覚えてる人間が二人もいるんだ、問題はないさ。見ればわかる
んだろう?」
かばうようなセリアの言葉が、余計みじめな気持ちを増幅させる。
(もう絵なんか描きたくない)とヴァネッサは思った。
「あ、そうだ、おっちゃん」
アベルが目をキラキラさせながらギアを見上げる。
「父ちゃん、生きてるって! 妖精が会ったんだって! あと、ヴァネッサの呪い、
もしかしたら解けるかもしれないって!」
それはアベルだけではなく、ヴァネッサにとってもうれしい情報だった。
だが二人だけで分かち合うべきではない。
ギアはほんの少し目を丸くしていたが、すぐにニカッと笑みを浮かべた。
「良かったな! そうか、あいつ生きてるのか!」
太い腕で、ぎゅうううっと二人を抱きしめる。
よほど嬉しかったのだろう、その腕には力がこもっていた。
「あ、それで……畑を荒らしてた奴はどうしたらいいんだろ? アカデミーの名前を
出したらビビってたから、たぶんアカデミーに関係してる気がするんだけど」
「そうだなー……ま、こっちに連れてきて、あらいざらい吐かせるか。その後、ギル
ドで手配されてるならギルドに引き渡してもいいし」
ギアは寝癖のついた頭をぼりぼりかいた。
「というかな、そいつ、もしかしたら俺の知ってる奴かもしれん。迎えに……っつう
か連行しに戻る時は俺も一緒に行くから、声かけてくれや」
「私も行こう」
三人が抱き合う様子を微笑ましそうに見ていたセリアが、片手を上げる。
「大人が二人ついて行くのが望ましいだろう。それに色々と自分で探ってみたい部分
があるからな」
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