PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?) コボルド三体 主犯格の男
場所:エドランス国 香草の畑
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「は、話が違う!」
大ぶりに勢いよく振り下ろしたアベルの剣を、下がってかわしながら男が叫ぶ。
一応ショートソードを持つ手を見れば素人ではなさそうだったが、
(こんな雑な攻撃を大げさにかわすとは……こいつ、剣のほうは大したことないな)
初撃の攻防で相手の実力を測る、それはアカデミーの座学で学んだ戦士の初歩の
一つだった。
いちいち確認はしないがラズロも同じ様に考えたはずだった。
相手は何らかの魔法を使うものの、体術のほうはそれほどのものではない、とな
ると……。
「ぅらあっ!」
アベルは怒声とともに、渾身の力をこめて切り上げる。
その斬撃は迫力はあるものの、何の技もなく力任せに振るっただけだったので、
男にかすりもせずにかわされてしまう。
(よし!)
しかしかわされることはアベルの狙い通りの結果であった。
初撃から連続で力のこもった攻撃をされて、男の注意は完全にアベルに向いてい
た。
さらに間合いも詰め切らず直線的な大ぶりは、下がってかわすという単純な動作
を男に選択させた。
「う、ぎゃ! いててててて!」
初撃で見きった男の実力からアベルの意図を予測したラズロは、左から回り込む
ように走りこみ、左手をつかむとひじに手を当てて後ろにねじり上げ、そのまま肩
とひじの関節を決めて抑え込んだのだ。
悲鳴をあげる男の手からショートソードをたたき落としたアベルは、ラズロが完
璧に抑え込んだことを確認すると、すぐに向きを変えた。
「リック! いまいく……ぞ?」
すぐに援護に駆け戻らねば、と一息つく間もなく駆け戻ろうとしたアベルは、あ
げた声を呑みこんでたちどまった。
ちょうどそのとき、リックたちはどこから取り出したのか白い布をコボルドにか
ぶせて捕縛している最中だった。
その布は妖精が出したものらしく、アベルの位置からは膨れ上がった妖精がコボ
ルドを丸呑みにしているように見えた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「さて、と」
アベルとラズロは縛り上げた男を引きずるようにして合流した。
縛られたまま置きものかなにかのように硬直したコボルドたちの隣に男を転が
すと、
アベルがしゃがみこんで胸倉を掴んで上半身だけ苦しい形で引き起こし、いつでも切
り殺せるようにそのわきでラズロが抜き身の剣を突き付けた。
「コボルド程度とはいえ三体も使役してるわりに、やってることはせこいこそ泥、だ
な?」
尋問なんて初めてだったが、いかにも格上を装って、ゆっくり言い聞かせるように
問いかけるアベルに、男はふてくされたように答えた。
「へっ! こそどろで悪かったな!」
こそ泥なりのプライドなのか、単に諦めたのか。
(いや、おれたち見てなめたのかな?)
結果から見るほど楽な戦いではなかった。
事前の待ち伏せ。
作戦通りの奇襲の成功。
こちらの思惑がぴったり型にはまったからの結果だ。
男がこちらに気が付いていたなら、無傷でとはいかなかったかもしれない。
だがアベルはおそらくそういうことでなく、自分たちがまだ若い見るからに駆け出
しの寄せ集めのような構成であることから、大したことはされない、と男が判断した
のだろうと思った。
貫禄が足らないのは今更どうにもならない、それでもアベルとラズロは男に聞くべ
きことがあった。
「おまえ、おもしろいこといってたな?」
ラズロが底冷えするような冷たい声で言った。
「話が違うってなんだ?」
男の顔は多少ひきつったように見えた見えた。
しかし男は態度を変えようとはせず、
「はっ、しらねーよ。 それにもうつかまってんだからいいだろーが」
と、なげやりにいいはなった。
本当なら痛めつけてはかす場面なんだろうというのはアベルもラズロも分かって
いたが、さすがにそれは躊躇する。
戦いの中でなら躊躇はしない。
戦乱にこそ縁はないこの国に育ったが、そんな甘い気持ちで戦死を名乗れるほ
ど平和
な世界でもないし、アカデミーでも心構えから鍛えなおされてもいる。
しかし一度けりがついた状況下で暴力をひけらかすほどにはすれてもいなかった。
珍しくお互いの気持ちを理解し合った二人は思わずリックをみる。
「ふーん、ひょっとしておっさんの余裕の元はこれかな?」
リックはにやりと笑みを浮かべながら男のそばにしゃがみこみ、しばられた腕
の先、
その指先から指輪を抜き取った。
すると、そばに転がっていたコボルドが、スーっと蜃気楼かなにかのように薄
くなって
のように消え去った。
突然のことだったが、アカデミーできちんと座学も受けていたおかげでうろた
える必要
はなかった。
「やっぱり、あんたの魔法じゃなくて、魔法具か」
アベルは腑に落ちた、というようにうなづいた。
召喚かせんのうかなにかはわからなかったが、いずれにしろ低級とはいえ妖魔
を三匹も
使役する魔法使いにしてはほかの魔法の用意が何もなく、奇襲が成功したことを
差し引い
ても何か変に思っていたのだった。
男はどのみち手を縛られていては力を行使するための必要なしぐさができない
ため、当
てにしてわけでなくたんにひらきなおっていただけだったが、今度ははっきり顔
色を変え
た。
「……ん? それ……」
リックの肩越しにリリアと並んでのぞきこんでいたヴァネッサが首をかしげる。
「ん? どうかした?」
「んー、なんだかそれの魔力、あのときのに似てる気が……」
アベルの問いに言いよどむヴァネッサ。
今は発動してるわけじゃないため、かすかにしか感じられずはっきりしたこと
がわから
なかった。
「……こいつはアカデミーで調べてもらったほうがいいかもな」
アベルはヴァネッサのいうあの時が何を指してるかすぐにわかり、思わぬ手が
かりかも
という期待がでてきていたが、冷静にそういうとリックに保管しとくように頼んだ。
「お、おまえらガキばっかりのくせに妙にこなれてやがると思ったが、アカデ
ミーのもんか!」
男は今度こそ悲鳴のように叫んだ。
「お?」
「ほう?」
「へー?」
アベル、ラズロ、リックはその様子にかおをみあわせてにやりと笑った。
「どうやら、アカデミーに連絡する必要ありそうだな」
アベルはそういうと立ち上がってみんなを見渡した。
「よし、とりあえず村であずかってもらって、アカデミーに報告しよう」
やってたことはこそ泥でも、どうにももいろいろ怪しい。
ましてやヴァネッサの俺に関係があるかもしれない。
これは一度アカデミーで先生とかの知恵を借りたほうがよさそうだ。
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NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?) コボルド三体 主犯格の男
場所:エドランス国 香草の畑
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「は、話が違う!」
大ぶりに勢いよく振り下ろしたアベルの剣を、下がってかわしながら男が叫ぶ。
一応ショートソードを持つ手を見れば素人ではなさそうだったが、
(こんな雑な攻撃を大げさにかわすとは……こいつ、剣のほうは大したことないな)
初撃の攻防で相手の実力を測る、それはアカデミーの座学で学んだ戦士の初歩の
一つだった。
いちいち確認はしないがラズロも同じ様に考えたはずだった。
相手は何らかの魔法を使うものの、体術のほうはそれほどのものではない、とな
ると……。
「ぅらあっ!」
アベルは怒声とともに、渾身の力をこめて切り上げる。
その斬撃は迫力はあるものの、何の技もなく力任せに振るっただけだったので、
男にかすりもせずにかわされてしまう。
(よし!)
しかしかわされることはアベルの狙い通りの結果であった。
初撃から連続で力のこもった攻撃をされて、男の注意は完全にアベルに向いてい
た。
さらに間合いも詰め切らず直線的な大ぶりは、下がってかわすという単純な動作
を男に選択させた。
「う、ぎゃ! いててててて!」
初撃で見きった男の実力からアベルの意図を予測したラズロは、左から回り込む
ように走りこみ、左手をつかむとひじに手を当てて後ろにねじり上げ、そのまま肩
とひじの関節を決めて抑え込んだのだ。
悲鳴をあげる男の手からショートソードをたたき落としたアベルは、ラズロが完
璧に抑え込んだことを確認すると、すぐに向きを変えた。
「リック! いまいく……ぞ?」
すぐに援護に駆け戻らねば、と一息つく間もなく駆け戻ろうとしたアベルは、あ
げた声を呑みこんでたちどまった。
ちょうどそのとき、リックたちはどこから取り出したのか白い布をコボルドにか
ぶせて捕縛している最中だった。
その布は妖精が出したものらしく、アベルの位置からは膨れ上がった妖精がコボ
ルドを丸呑みにしているように見えた。
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アベルとラズロは縛り上げた男を引きずるようにして合流した。
縛られたまま置きものかなにかのように硬直したコボルドたちの隣に男を転が
すと、
アベルがしゃがみこんで胸倉を掴んで上半身だけ苦しい形で引き起こし、いつでも切
り殺せるようにそのわきでラズロが抜き身の剣を突き付けた。
「コボルド程度とはいえ三体も使役してるわりに、やってることはせこいこそ泥、だ
な?」
尋問なんて初めてだったが、いかにも格上を装って、ゆっくり言い聞かせるように
問いかけるアベルに、男はふてくされたように答えた。
「へっ! こそどろで悪かったな!」
こそ泥なりのプライドなのか、単に諦めたのか。
(いや、おれたち見てなめたのかな?)
結果から見るほど楽な戦いではなかった。
事前の待ち伏せ。
作戦通りの奇襲の成功。
こちらの思惑がぴったり型にはまったからの結果だ。
男がこちらに気が付いていたなら、無傷でとはいかなかったかもしれない。
だがアベルはおそらくそういうことでなく、自分たちがまだ若い見るからに駆け出
しの寄せ集めのような構成であることから、大したことはされない、と男が判断した
のだろうと思った。
貫禄が足らないのは今更どうにもならない、それでもアベルとラズロは男に聞くべ
きことがあった。
「おまえ、おもしろいこといってたな?」
ラズロが底冷えするような冷たい声で言った。
「話が違うってなんだ?」
男の顔は多少ひきつったように見えた見えた。
しかし男は態度を変えようとはせず、
「はっ、しらねーよ。 それにもうつかまってんだからいいだろーが」
と、なげやりにいいはなった。
本当なら痛めつけてはかす場面なんだろうというのはアベルもラズロも分かって
いたが、さすがにそれは躊躇する。
戦いの中でなら躊躇はしない。
戦乱にこそ縁はないこの国に育ったが、そんな甘い気持ちで戦死を名乗れるほ
ど平和
な世界でもないし、アカデミーでも心構えから鍛えなおされてもいる。
しかし一度けりがついた状況下で暴力をひけらかすほどにはすれてもいなかった。
珍しくお互いの気持ちを理解し合った二人は思わずリックをみる。
「ふーん、ひょっとしておっさんの余裕の元はこれかな?」
リックはにやりと笑みを浮かべながら男のそばにしゃがみこみ、しばられた腕
の先、
その指先から指輪を抜き取った。
すると、そばに転がっていたコボルドが、スーっと蜃気楼かなにかのように薄
くなって
のように消え去った。
突然のことだったが、アカデミーできちんと座学も受けていたおかげでうろた
える必要
はなかった。
「やっぱり、あんたの魔法じゃなくて、魔法具か」
アベルは腑に落ちた、というようにうなづいた。
召喚かせんのうかなにかはわからなかったが、いずれにしろ低級とはいえ妖魔
を三匹も
使役する魔法使いにしてはほかの魔法の用意が何もなく、奇襲が成功したことを
差し引い
ても何か変に思っていたのだった。
男はどのみち手を縛られていては力を行使するための必要なしぐさができない
ため、当
てにしてわけでなくたんにひらきなおっていただけだったが、今度ははっきり顔
色を変え
た。
「……ん? それ……」
リックの肩越しにリリアと並んでのぞきこんでいたヴァネッサが首をかしげる。
「ん? どうかした?」
「んー、なんだかそれの魔力、あのときのに似てる気が……」
アベルの問いに言いよどむヴァネッサ。
今は発動してるわけじゃないため、かすかにしか感じられずはっきりしたこと
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なかった。
「……こいつはアカデミーで調べてもらったほうがいいかもな」
アベルはヴァネッサのいうあの時が何を指してるかすぐにわかり、思わぬ手が
かりかも
という期待がでてきていたが、冷静にそういうとリックに保管しとくように頼んだ。
「お、おまえらガキばっかりのくせに妙にこなれてやがると思ったが、アカデ
ミーのもんか!」
男は今度こそ悲鳴のように叫んだ。
「お?」
「ほう?」
「へー?」
アベル、ラズロ、リックはその様子にかおをみあわせてにやりと笑った。
「どうやら、アカデミーに連絡する必要ありそうだな」
アベルはそういうと立ち上がってみんなを見渡した。
「よし、とりあえず村であずかってもらって、アカデミーに報告しよう」
やってたことはこそ泥でも、どうにももいろいろ怪しい。
ましてやヴァネッサの俺に関係があるかもしれない。
これは一度アカデミーで先生とかの知恵を借りたほうがよさそうだ。
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