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2025/03/10 06:40 |
立金花の咲く場所(トコロ) 54/アベル(ひろ)
PC:アベル ヴァネッサ 
NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?)
場所:エドランス国 香草の畑

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 アベル達もこのパーティでの初めての戦いということで浮き足立っていた
のか、風向きを考えずに茂みから飛び出した。
 小柄な人方の体に犬のような頭を持つコボルトは見かけとは裏腹に、特に
嗅覚に優れているわけではなかったが、それでも人よりは鋭いはず。
 経験地がそれなりにあるリックはそのことに思い至り、しまったかと舌打
ちしそうになったが、相手の動きをみて眉をひそめる。

 最初に気がついたのは前にいるコボルドではなく、後ろにいる男だった。
 物音にびっくりしたようにあちらこちらに顔を向けたのち、走り来る三人
に気がついた男はヒステリックな声を上げた。
「な! なにをしてる! はやくかたずけろ!」
「……ギッ」
 いいながら腕を振るとそれを合図に、コボルトは武器を構えながら三人に
対峙するように展開しようとする。

(あのコボルト……)
 考えてみれば人間とコボルドが仲間ということはありえない。
 コボルトが異種族といる大概の場合は主従関係にあることがほとんどで、
もっというと僕として従わされているのだが、もともと知能よりも本能のほ
うが強いコボルトは闇雲に突っ込んでくるもので、指示通りに動くなんて芸
当はまずできない。
 男よりも反応が鈍いのも気になる。
「アベル、ラズロ、ことによると魔法を使うのかもしれないから気をつけろ
よ!」
 コボルトを押さえてる間にリーダーらしき男を抑える作戦のためには、ま
ず二人がコボルトの向こうに抜けねばならない。
 勢いを殺さず飛び出した三人が接敵するまでにリックがいえたのはその一
言だけだったが、二人にはちゃんと伝わったようで、気配だけだが頷いたの
がリックにもわかった。
 リックは冷静に自分の実力とコボルド三体をくらべてまともにやっては勝
てないことはわかっていたし、とにもかくにも先に二人を向こうの男の元へ
やらねばならなかった。
 
 リックは自分達に相対するように隊列を組みなおしつつあるコボルトの真
ん中にいる一体に向かって、転がるように身をかがめて突っ込んでいった。

「あ!」
 茂みから様子を見ていたヴァネッサにはリックが何かに躓いて転んだよう
に見えた。
 おもわず腰を浮かすヴァネッサの肩をつかんだままリリアは何かを投げる
ようにするどく手を振った。 

 アベルもラズロもリックと詳しい打ち合わせをしたわけではなかった。
 ただ、二人はリックが任せろといった以上、コボルトではなくその後ろの
男しか見ておらず、コボルドを弾き飛ばすつもりで突っ込んだ。
 当然ながら一歩前を行くリックがこけるように倒れるのは見えていたが、
そのために足を止めることはなかった。

 リックは前のめりに地面に右手をつくと、体をひねるように前転した。
 片手しかついてない上にひねったため、斜め上から横気味に回転しながら
足を振り下ろした。

 コボルトは命令に従い、急の来敵を迎え撃つため三人それぞれに対峙し、
男を守れるように壁に慣れる位置へと向き直ろうとしていた。
 当然眼前に迫る敵からは目を離さずにいたがその姿が突然消えた。
 かと思うと足を強烈な力でなぎ払われ、踏ん張ることもできずに転がり
そうになった。
「ギ!」
 反射的に手を伸ばして隣にいたコボルドをつかんだため一瞬持ちこたえ
たが、つかまれたコボルトが突然バランスを崩して一緒くたに転がり倒れ
る。

 リックが倒れるようにしてコボルドの一体の足を刈った。
 そのコボルドがつかまったもう一体が踏ん張ろうとした瞬間、突然額に
何かがぶつかり、痛みに木をとられたのか、声をあげるまもなく道ずれに
倒れる。
「まかせろ!」
 足元から聞こえる声に一瞬だけ目を向けた二人は、回転の勢いのままも
う立ち上がる体制にリックがいることを確認し、そのままこけた二体でで
きた穴からコボルトの壁を突っ切って走り抜ける。

 走り抜ける二人にあわてることもなく残った一体は目前のリックに攻撃
を仕掛けようと剣を振り上げたが、またしても飛来する何かに額を打たれ
てよろめく様一歩下がった。
 その隙を突いて立ち上がったリックは、自分も剣を構え、すかさずけん
制の攻撃を開始した。

「あ、ま、また?」
 リックの危機にまたしても焦ったヴァネッサだったが、その後の展開に
目を丸くする。
 一度目は良くわからなかったが、二度目はリリアが何かを投げつけてい
るのを目の当たりにした。
「へへへ、ただの石なんだけどね。」
 照れるように笑ったリリアは、手を開いて手のひらで握り隠せるほどの
小石を見せた。
「直接剣を持って戦わなくても、やれることはあるんだよ」
 ヴァネッサははじめてリリアを「冒険者の先輩」として実感した。

「あ、何をしている! 俺を守れ!」
 焦ったように叫ぶ男が手を振ったとき、左手にははめた指輪が淡く輝い
たのに二人は気がついた。
「ラズロ! 左手!」
 アベルは怒鳴りながら剣で切りかかった。
「わかってる!」
 リックは自身ありそうだったし、さっきも見事だったが、本職の戦士と
してはすぐにも援護に駆けつけてやりたい。
 二人は相手に何もさせる暇もなくかたをつけるつもりで連携してあたる
ことにしたのだった。


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2008/02/22 23:46 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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