PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?)
場所:エドランス国 香草の畑
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「行くか」
ラズロが緊張した面持ちでそっと剣を抜き出した。
アベルも同じように剣を抜き出し、
「作戦どうする?」
最後の確認とばかり、尋ねた。
他のメンバーにとっても重要事項なので、必然的に全員が顔を寄せることになった。
「そうだな……リーダー格らしい人間を集中して狙うことにして……」
そこまで言ってからラズロはちらりとヴァネッサ、リック、リリアを見て、難しそう
な顔をした。
攻撃役の方が少ないという事実を、一体どうしたものかと考えたらしい。
「ああ、それなら、こっちでコボルド相手にしてもいいぞ」
リックのあっさりとした物言いに、リリア以外の全員が目を丸くする。
「だ、大丈夫かよ?」
意外とばかりにアベルが声を上げると、リックは苦笑いを浮かべた。
「言ってなかったけど、こう見えてもアカデミーに入る前に色々やってたからな、コ
ボルドぐらいなら何とかなる」
「……もしかして、お前、強かったりする?」
「お前の『強い』の基準はわかんないけどさ。まあそれなりに、コボルドぐらいなら
勝率が高い、ってとこかな」
「なんだよ、早く言えよっ」
「言う機会があると思うのかよお前~~~っ」
リックがどこか恨めしげな目をしている。
……リックと言えば。
普段はリリアに振り回され、今日は今日でじゃんけんに負けてカゴを背負っていた、
あまり活躍どころのない少年である。
目立つか目立たないかで問われたら、確実に「目立たない」少年である。
そのリックが、不思議と今は頼もしく見えた。
雰囲気まで、いつもと違うような気がする。
「なーによ。威張っちゃって。アカデミーに入る前、ずううううっとあたしに助けて
もらってたのは誰だったっけー?」
そこに茶々を入れるのはリリアである。
途端、リックがガキリ、と凍りついた。
「誰だっけー? 飢え死にしかかってて、ゴハン食べさせてもらったのは。無鉄砲に
突っ込んでって、返り討ちにされて、ちょっと涙ぐんでた頃が懐かしいわねぇ。ぐじ
ぐじ言ってうずくまって、いつまでたっても立とうとしないから、手を引っ張って立
ちあがらせてもらったりして。そんでー」
「ううううるさい、昔のことはいいだろっ!」
リリアの発言を、リックがややムキになりながらさえぎる。
いつもならリリアがムキになり、リックがそれをいなすパターンが多かったので、こ
れはかなり珍しい事態である。
「……あー。はいはい。どうどう」
リリアがリックの頭をぽふぽふと叩き、リックがそれを「俺は馬かっ」と嫌がる。
ヴァネッサは、そのやり取りの中に『何か』を感じた。
一つは、二人はアカデミーに入る前から知り合いだったのだろうな、ということ。
それともう一つは……。
(二人とも、昔のこと、あまり知られたくないんだろうな)
そう言えば、二人は昔どこでどうしていたかをあまり言わなかった。
――ねえ、この仕事が終わってゆっくりできるときにさ、みんなに聞いてほしいこと
があるんだけど、いいかな?――
不意に、先ほどのリリアの言葉が頭をよぎる。
聞いて欲しいこととは、どんなことだろう。
たとえ、どんな話だったとしても、それをちゃんと受け止めよう。
ヴァネッサは、そう決めた。
「心強いな。それじゃあコボルドはそっちに任せる。人間の方をできるだけ早く片付
けて戻るから」
「おう、がんばれよ、アベル、ラズロ」
「こちらの台詞だ……さて」
ラズロの言葉に、全員がみるみる緊張した顔つきになった。
「まあ、僕も手伝うから、心配ないよ」
妖精がふよふよと漂いながら、励ましらしいことを口にする。
(手伝うって、何ができるんだろう……)
ヴァネッサはほんの少しだけ首を傾げた。
そういえばこの妖精、何ができるかまだわからない。
見た目からすると、こうやってふわふわ漂う以外に能がなさそうで、まともに戦える
などとは思えないのだが……。
ヴァネッサは、ちらりとリリアの顔を見た。
視線に気付いたリリアが笑みを作る。
「あたしのことも頼りにしてて良いよ。リックより役に立つからね」
「なんか言ったか?」
「いえいえ、何も。おほほほ」
リックとの短いやり取りを終えると、彼女は真剣な表情になり、懐から短剣を取り出
して握りしめた。
「行くぞ。3・2・1……!」
ラズロの合図で、全員が茂みから飛び出した。
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NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?)
場所:エドランス国 香草の畑
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「行くか」
ラズロが緊張した面持ちでそっと剣を抜き出した。
アベルも同じように剣を抜き出し、
「作戦どうする?」
最後の確認とばかり、尋ねた。
他のメンバーにとっても重要事項なので、必然的に全員が顔を寄せることになった。
「そうだな……リーダー格らしい人間を集中して狙うことにして……」
そこまで言ってからラズロはちらりとヴァネッサ、リック、リリアを見て、難しそう
な顔をした。
攻撃役の方が少ないという事実を、一体どうしたものかと考えたらしい。
「ああ、それなら、こっちでコボルド相手にしてもいいぞ」
リックのあっさりとした物言いに、リリア以外の全員が目を丸くする。
「だ、大丈夫かよ?」
意外とばかりにアベルが声を上げると、リックは苦笑いを浮かべた。
「言ってなかったけど、こう見えてもアカデミーに入る前に色々やってたからな、コ
ボルドぐらいなら何とかなる」
「……もしかして、お前、強かったりする?」
「お前の『強い』の基準はわかんないけどさ。まあそれなりに、コボルドぐらいなら
勝率が高い、ってとこかな」
「なんだよ、早く言えよっ」
「言う機会があると思うのかよお前~~~っ」
リックがどこか恨めしげな目をしている。
……リックと言えば。
普段はリリアに振り回され、今日は今日でじゃんけんに負けてカゴを背負っていた、
あまり活躍どころのない少年である。
目立つか目立たないかで問われたら、確実に「目立たない」少年である。
そのリックが、不思議と今は頼もしく見えた。
雰囲気まで、いつもと違うような気がする。
「なーによ。威張っちゃって。アカデミーに入る前、ずううううっとあたしに助けて
もらってたのは誰だったっけー?」
そこに茶々を入れるのはリリアである。
途端、リックがガキリ、と凍りついた。
「誰だっけー? 飢え死にしかかってて、ゴハン食べさせてもらったのは。無鉄砲に
突っ込んでって、返り討ちにされて、ちょっと涙ぐんでた頃が懐かしいわねぇ。ぐじ
ぐじ言ってうずくまって、いつまでたっても立とうとしないから、手を引っ張って立
ちあがらせてもらったりして。そんでー」
「ううううるさい、昔のことはいいだろっ!」
リリアの発言を、リックがややムキになりながらさえぎる。
いつもならリリアがムキになり、リックがそれをいなすパターンが多かったので、こ
れはかなり珍しい事態である。
「……あー。はいはい。どうどう」
リリアがリックの頭をぽふぽふと叩き、リックがそれを「俺は馬かっ」と嫌がる。
ヴァネッサは、そのやり取りの中に『何か』を感じた。
一つは、二人はアカデミーに入る前から知り合いだったのだろうな、ということ。
それともう一つは……。
(二人とも、昔のこと、あまり知られたくないんだろうな)
そう言えば、二人は昔どこでどうしていたかをあまり言わなかった。
――ねえ、この仕事が終わってゆっくりできるときにさ、みんなに聞いてほしいこと
があるんだけど、いいかな?――
不意に、先ほどのリリアの言葉が頭をよぎる。
聞いて欲しいこととは、どんなことだろう。
たとえ、どんな話だったとしても、それをちゃんと受け止めよう。
ヴァネッサは、そう決めた。
「心強いな。それじゃあコボルドはそっちに任せる。人間の方をできるだけ早く片付
けて戻るから」
「おう、がんばれよ、アベル、ラズロ」
「こちらの台詞だ……さて」
ラズロの言葉に、全員がみるみる緊張した顔つきになった。
「まあ、僕も手伝うから、心配ないよ」
妖精がふよふよと漂いながら、励ましらしいことを口にする。
(手伝うって、何ができるんだろう……)
ヴァネッサはほんの少しだけ首を傾げた。
そういえばこの妖精、何ができるかまだわからない。
見た目からすると、こうやってふわふわ漂う以外に能がなさそうで、まともに戦える
などとは思えないのだが……。
ヴァネッサは、ちらりとリリアの顔を見た。
視線に気付いたリリアが笑みを作る。
「あたしのことも頼りにしてて良いよ。リックより役に立つからね」
「なんか言ったか?」
「いえいえ、何も。おほほほ」
リックとの短いやり取りを終えると、彼女は真剣な表情になり、懐から短剣を取り出
して握りしめた。
「行くぞ。3・2・1……!」
ラズロの合図で、全員が茂みから飛び出した。
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