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2025/03/10 07:02 |
立金花の咲く場所(トコロ) 46/アベル(ひろ)
PC:アベル ヴァネッサ 
NPC:ラズロ リリア リック 
場所:エドランス国 ウサギ型眷属の村

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 山でと思っていた予定を変更して、村の宿兼食堂でお弁当にすることに
した一行は、村の地産であるという香草茶を頼んで、机の上に弁当を広げ
た。

「美味い!」
「ほんと、これ美味しい!」

 リックとリリアは、今回の楽しみの一つである女将の手作り弁当の味に、
満足の声をあげた。
 弁当はどこでも食べやすいように、パンに具を挟み込んだいわゆるサンド
イッチだったが、その具材には「せせらぎ亭」の名物でもある女将の仕込み
料理が餡として一工夫されたものが使われていて、これだけでも十分店が
出せそうなほどの完成度だった。

「すごい……餡にするために普通より水分を少なめにしてるんだぁ。 それ
なのに十分煮込んである。 うーん、後で水気飛ばしたんじゃ、ぱさぱさに
なるよね?」

 ヴァネッサが一口食べ進めるごとに、感動しては「どうやって?」を繰り返
している。
 普段厨房を手伝っていても、まだまだ女将の技には追いつけそうにない。
 身についた料理人の魂がついつい調理法に目を向けてしまうが、素直に
美味しいという気持ちがやはり大きい。
 何種類かに分かれていることをしって、ヴァネッサとリリアは中に何か使
われているかで盛り上がっていた。
 一方の男三人は、美味いと最初にうなった後は黙々と食べることに集中し
ていた。
 アベルとリックはともかく、ラズロですら終始口元をほころばせっぱなし
だったところを見ると、十分すぎるほど満足したのは疑いなかった。
 そうして当然ながら早く食べ終わった三人は茶をすすりながら満足げに椅
子の背もたれに背を預けた。
 女の子ほど料理話で盛り上がれはしないが、特に普段女将のお弁当なん
て口にできないリックは、食後の感想がしばらく続いたほどだった。

「ふー、そういや、ワムさんの言ってた幽霊ってなんだろな?」

 「おいしかった!」も一息つくと、リックはこれからのことを考えて気になっ
ていることをあげた。
 ラズロも知識を記憶のそこから引っ張り出すように思案する。

「幽霊というとたいていは錯覚だ。モンスターとしてならレイスやファント
ムがありきたりだが、こういう普通の野山での遭遇例はあまり聞かないな。」

 ダンジョンや建築物、もしくは古戦場など、それなりに意味のある場所に縛
られているのが、ファントムやレイスといったアンデッドとよばれる系統のモン
スターの特徴だ。

「なら何かを見間違えたか。白くてぼんやりしたもの……、うーん。」

 アベルもほんものの幽霊とは思わなかったが、今ひつ思い当たるものがな
かった。
 
「まてよ、普通畑に行くのは昼間だろ? アンデッドの線は薄くないか?」

 この中ではもっとも実践経験のあるリックにしても、昼日中から現れるアン
デッドの話は聞いたことがない。
 強いて言えば魔法使いが使い魔として創造するクリーチャー系(ゴーレム
等が有名)のアンデッドならありえるが、それこそ単体で山をうろつく理由もな
いし、目撃証言ともかなり違う。
 三人そろって思案にふけっていると、ようやく食事を終えたヴァネッサとリリ
アもお茶を入れて会話に加わってきた。

「目撃談といっても、直接荒らしてるところではなくて、付近で見かけただけな
のよね。」

 言外に「ほんとに関係あるの?」とにじませながら、リリアが言った。

「でも、時期が合いすぎてる。」

 ラズロが冷静に指摘する。
 昔からならともかく、畑があらされた同時期に突然あらわれたとなれば、犯
人かどうかはともかく、無関係とはおもえなかった。

「ひょっとして、精霊とか……。」

 術謝以外が精霊を目視できることは稀だが、大事に扱われたもに人の思
念が宿りもともとそこにいた精霊に力を与えるというのはままあることだ。
 この村の人たちが、畑や畑のある山を大事にしきたなら、精霊が姿を現せ
るほどに力を付けていても珍しくはない。
 ヴァネッサは村に入ってからも、精霊の力が満ちていることに気かついてい
た。
 それはこの村が自然と調和するようにして存在していることを示していた。
 
「だとすると、犯人というより何かを伝えようとしてるのかも。」

 ヴァネッサはそういうとなんとなく山のほうをみた。

「案外、猿や猪が犯人で目撃されたのはたまたまの自然現象だったなんての
もよくある話だ。 一応気をつけるってことで、そろそろいくか?」

 リックがそういうと、皆もうなづいた。
 まずは山にあるという香草の畑にいく。
 しかしそこが荒らされている事が入荷不足の原因だったとなると、おそらく山
の中に自生してる分を探さないと必要分は手に入らないだろう。
 さらに、アベル、ヴァネッサ、ラズロの三人は女将さんのことを考えれば、で
きることなら畑に対して何らかの対策をしておきたいところだった。

「よっし! 長さんに挨拶して早速山にいれてもらおうぜ。」

 アベルはそういうと、いそいそと食事跡をかたずけだした。


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2007/08/28 00:39 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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