PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック
場所:エドランス国 ウサギ型眷属の村近く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女の子の元気さに引っ張られるようにして歩き続けた五人は、予定よりも
だいぶ早く地図に記された村が見えてきた。
「うーん、意外と楽にこれたな。」
アベルも故郷の辺境から徒歩で歩いてきたのだから、それなりに疲労や時
間は予測を立てていたが、それよりもかなり楽に感じていた。
それはヴァネッサもラズロも同じらしく、意外に感じているようだった。
「お、それは皆真面目に授業受けてた証拠さ。」
基礎課程としてクラスで受けた授業のなかに、旅法というのがある。
基礎の基礎として初期に教わるのだが、装備や荷物を持ったときの重心や
姿勢、長距離を歩くときの体重移動を使う歩き方、心肺の負荷をへらす呼吸
法など、およそ「冒険者」と気負っているほど肩透かしな地味なものだった。
とはいえそれ以降、アカデミー内では当たり前にやらされることもあって、
今となっては頭の中に残ってなくても、体に染み付いているものだった。
リックはこの旅法が移動速度のUPと疲労の軽減につながっているといった。
「俺もさアカデミー来る前から仕事はチョコチョコしてたから、結構なめて
たんだけどさ、これが全然違うもんだから驚いたよ。」
冒険者ともなれば旅は付き物。
そう思ってみれば、一緒に旅をしたギアはいつも余裕綽々だった。
あれは子供と大人の違いだけではなかったのだ。
「へー、専門課程だけでいいのにって思ってたけど、さすがアカデミーだな
ぁ。」
アベルもこうして実際の成果を目の当たりにして、そのすごさを改めて実
感した。
剣も魔法強いだけなら数多いるだろう。
しかしこういう基礎的な部分が底上げされているからこそアカデミーで学
んだことがステータスになりうるのだ。
「おかげで早くついたし、お昼にする前に村によっておこうよ。」
リリアのせかすよな提案に異論はなかった。
女の子ほどでないにせよ、エドランス特有の眷属という種族の村、皆興味
があるのは男の子とて同じだった。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「うわぁ!」
「!!」
リリアが感動に声を上げ隣では声もなく感じ入るヴァネッサが目を丸くし
ていた。
「おお、ウサギさんだらけだけど、意外に普通に生活してるんだ。」
アベルもある意味想像通りの光景に驚く。
「おい、彼らはエドランスではエルフやドワーフといった亜人種と同じ国民
権をもつ同胞なんだぞ。失礼なことするな。」
冷静なラズロの言葉にリリア、ヴァネッサ、アベルの三人は気まずそうに
顔を見合わせる。
「ははは、しかたないって、まあ、これから気をつけようぜ。」
なんだかんだで経験をつんでいるリックはそれなりに異邦での礼儀も心得
ているらしく、驚きを顔に出したり、不躾な視線を撒き散らしたりはしてい
なかった。
気を取り直してどうするか話し合おうとした五人に、なにやら聞きなれた
感じの声がかけられた。
「まあまあまあ、こんなところに何か御用ですか?」
声のしたほうを向くとそこには女将と同じようなウサギ型の眷属が立って
いた。
シンプルな青いワンピースにエプロンを身につけ、手には野菜の入ったバ
ケットを下げているおそらく女性(雌?)のその人(?)は、なぜか微笑ん
でいるように見えた。
……いや、アベル、ヴァネッサ、ラズロの三人は女将との共同生活の中、
感情を感じ取れるぐらいにはなっていたので、彼女が不審者をとがめている
というより、はっきり親切心から声をかけてきたことを感じ取っていた。
「あ、あの、すいません、その王都のせせらぎ亭の女将さんの代わりに、こ
の村で管理している山に香草の採取に来たんですが……。」
「まあまあまあ、せせらぎ亭の?」
「はい、これがその女将さんの手紙なんです。」
ヴァネッサが村に来た目的をつげ、手紙を出して封筒に記された女将のサイ
ンを見せた。
「あらあらあら、たしかにあの子のサインね。だったら長のところにこの手紙
をもっていけばいいのよ。よかったら連れて行ってあげましょうか?」
「良いんですか? ……アベル君どうする?」
ヴァネッサは、どう見ても悪意を感じられないウサギさんのつぶらな瞳を見
ていると二つ返事しそうになるのをこらえて、仲間に確認を取った。
「そうだなぁ……うん、よかったら頼めますか?」
アベルは仲間の顔を見渡し反対がないことを見て取ると、ウサギさんのほう
を見て頭を下げた。
「あらあらあら、気にしなくてもいいのよ。ちょうど帰るところだったんです
から。」
太陽が中天に差し掛かり、暖かい日差しが降り注ぐ中をエプロン姿のウサギ
に先導させれて歩くこと数分。
さして広くない村の真ん中、ほんの少しほかの家々より大きな家にやってき
た。
ウサギさんに促されて中に入ると、なかは普通の人間が使うのと同じつくり
で、入り口から少し入ったところにある大部屋で、無骨な作りのロッキングチ
ェアに揺られながら本を読んでいるウサギがいた。
「ん? 客人か?」
女将や案内してくれたウサギさんが、柔らかな毛皮に覆われたいわばフワフ
ワモコモコな感じなのに対し、本からはずしたその目は鋭く、体毛も硬そうで
その成果全体として引き締まった感じに見えるそのウサギは、低い落ち着いた
声をしていた。
(な、なんか予想外なお人が……。)
(こら、リック!失礼だぞ。)
小声で話すリックとリリアにラズロも加わる。
(む、ひょっとして雄体?)
ラズロがそうつぶやいたのが聞こえたのか、長い耳をピクリと動かすと、笑
いながらほんを置いた。
「ははは、どうやら客人は兎族の村は初めてのようですな。確かにわしはあな
た方で言うところの男、雄というべきかどうかは悩むところですが、とにかく
男にしてを村長やっておる、ワムといいます。」
そこで案内をしてくれたウサギさんも振り返って、
「あらあらあら、そういえば自己紹介まだでしたね、一人娘のミノです。」
「あ、アベルです。」
「ヴァネッサです。」
「リリアです。」
「ラズロといいます。」
「リックです」
ミノのあいさつに、あわててみなも挨拶を交わした。
「ふむ、それでこんなところに何か御用ですかな?観光するには面白みもない
と思いますが。」
女の子二人は、「いいえ堪能させてもらってます!」といったところだった
がそれには触れずに、ヴァネッサは手紙を出して見せた。
「ふむ、わし宛のようじゃな。」
中に目を通した長はうなづいた。
「あの子も香草の採取ぐらいで律儀なものじゃのう。」
「それでは?」
「うむ、管理しているといっても山は誰のものでもない。荒らすのでなければ
すきにするとよい。」
「ありがとうございます。」
ヴァネッサが頭を下げるのに続いて四人も頭を下げる。
(それにしても、あの子って……ウサギは年がわからないからなぁ。)
アベルのみならず、下げた頭の中では似たような疑問がいっぱいの5人だった。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
NPC:ラズロ リリア リック
場所:エドランス国 ウサギ型眷属の村近く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女の子の元気さに引っ張られるようにして歩き続けた五人は、予定よりも
だいぶ早く地図に記された村が見えてきた。
「うーん、意外と楽にこれたな。」
アベルも故郷の辺境から徒歩で歩いてきたのだから、それなりに疲労や時
間は予測を立てていたが、それよりもかなり楽に感じていた。
それはヴァネッサもラズロも同じらしく、意外に感じているようだった。
「お、それは皆真面目に授業受けてた証拠さ。」
基礎課程としてクラスで受けた授業のなかに、旅法というのがある。
基礎の基礎として初期に教わるのだが、装備や荷物を持ったときの重心や
姿勢、長距離を歩くときの体重移動を使う歩き方、心肺の負荷をへらす呼吸
法など、およそ「冒険者」と気負っているほど肩透かしな地味なものだった。
とはいえそれ以降、アカデミー内では当たり前にやらされることもあって、
今となっては頭の中に残ってなくても、体に染み付いているものだった。
リックはこの旅法が移動速度のUPと疲労の軽減につながっているといった。
「俺もさアカデミー来る前から仕事はチョコチョコしてたから、結構なめて
たんだけどさ、これが全然違うもんだから驚いたよ。」
冒険者ともなれば旅は付き物。
そう思ってみれば、一緒に旅をしたギアはいつも余裕綽々だった。
あれは子供と大人の違いだけではなかったのだ。
「へー、専門課程だけでいいのにって思ってたけど、さすがアカデミーだな
ぁ。」
アベルもこうして実際の成果を目の当たりにして、そのすごさを改めて実
感した。
剣も魔法強いだけなら数多いるだろう。
しかしこういう基礎的な部分が底上げされているからこそアカデミーで学
んだことがステータスになりうるのだ。
「おかげで早くついたし、お昼にする前に村によっておこうよ。」
リリアのせかすよな提案に異論はなかった。
女の子ほどでないにせよ、エドランス特有の眷属という種族の村、皆興味
があるのは男の子とて同じだった。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「うわぁ!」
「!!」
リリアが感動に声を上げ隣では声もなく感じ入るヴァネッサが目を丸くし
ていた。
「おお、ウサギさんだらけだけど、意外に普通に生活してるんだ。」
アベルもある意味想像通りの光景に驚く。
「おい、彼らはエドランスではエルフやドワーフといった亜人種と同じ国民
権をもつ同胞なんだぞ。失礼なことするな。」
冷静なラズロの言葉にリリア、ヴァネッサ、アベルの三人は気まずそうに
顔を見合わせる。
「ははは、しかたないって、まあ、これから気をつけようぜ。」
なんだかんだで経験をつんでいるリックはそれなりに異邦での礼儀も心得
ているらしく、驚きを顔に出したり、不躾な視線を撒き散らしたりはしてい
なかった。
気を取り直してどうするか話し合おうとした五人に、なにやら聞きなれた
感じの声がかけられた。
「まあまあまあ、こんなところに何か御用ですか?」
声のしたほうを向くとそこには女将と同じようなウサギ型の眷属が立って
いた。
シンプルな青いワンピースにエプロンを身につけ、手には野菜の入ったバ
ケットを下げているおそらく女性(雌?)のその人(?)は、なぜか微笑ん
でいるように見えた。
……いや、アベル、ヴァネッサ、ラズロの三人は女将との共同生活の中、
感情を感じ取れるぐらいにはなっていたので、彼女が不審者をとがめている
というより、はっきり親切心から声をかけてきたことを感じ取っていた。
「あ、あの、すいません、その王都のせせらぎ亭の女将さんの代わりに、こ
の村で管理している山に香草の採取に来たんですが……。」
「まあまあまあ、せせらぎ亭の?」
「はい、これがその女将さんの手紙なんです。」
ヴァネッサが村に来た目的をつげ、手紙を出して封筒に記された女将のサイ
ンを見せた。
「あらあらあら、たしかにあの子のサインね。だったら長のところにこの手紙
をもっていけばいいのよ。よかったら連れて行ってあげましょうか?」
「良いんですか? ……アベル君どうする?」
ヴァネッサは、どう見ても悪意を感じられないウサギさんのつぶらな瞳を見
ていると二つ返事しそうになるのをこらえて、仲間に確認を取った。
「そうだなぁ……うん、よかったら頼めますか?」
アベルは仲間の顔を見渡し反対がないことを見て取ると、ウサギさんのほう
を見て頭を下げた。
「あらあらあら、気にしなくてもいいのよ。ちょうど帰るところだったんです
から。」
太陽が中天に差し掛かり、暖かい日差しが降り注ぐ中をエプロン姿のウサギ
に先導させれて歩くこと数分。
さして広くない村の真ん中、ほんの少しほかの家々より大きな家にやってき
た。
ウサギさんに促されて中に入ると、なかは普通の人間が使うのと同じつくり
で、入り口から少し入ったところにある大部屋で、無骨な作りのロッキングチ
ェアに揺られながら本を読んでいるウサギがいた。
「ん? 客人か?」
女将や案内してくれたウサギさんが、柔らかな毛皮に覆われたいわばフワフ
ワモコモコな感じなのに対し、本からはずしたその目は鋭く、体毛も硬そうで
その成果全体として引き締まった感じに見えるそのウサギは、低い落ち着いた
声をしていた。
(な、なんか予想外なお人が……。)
(こら、リック!失礼だぞ。)
小声で話すリックとリリアにラズロも加わる。
(む、ひょっとして雄体?)
ラズロがそうつぶやいたのが聞こえたのか、長い耳をピクリと動かすと、笑
いながらほんを置いた。
「ははは、どうやら客人は兎族の村は初めてのようですな。確かにわしはあな
た方で言うところの男、雄というべきかどうかは悩むところですが、とにかく
男にしてを村長やっておる、ワムといいます。」
そこで案内をしてくれたウサギさんも振り返って、
「あらあらあら、そういえば自己紹介まだでしたね、一人娘のミノです。」
「あ、アベルです。」
「ヴァネッサです。」
「リリアです。」
「ラズロといいます。」
「リックです」
ミノのあいさつに、あわててみなも挨拶を交わした。
「ふむ、それでこんなところに何か御用ですかな?観光するには面白みもない
と思いますが。」
女の子二人は、「いいえ堪能させてもらってます!」といったところだった
がそれには触れずに、ヴァネッサは手紙を出して見せた。
「ふむ、わし宛のようじゃな。」
中に目を通した長はうなづいた。
「あの子も香草の採取ぐらいで律儀なものじゃのう。」
「それでは?」
「うむ、管理しているといっても山は誰のものでもない。荒らすのでなければ
すきにするとよい。」
「ありがとうございます。」
ヴァネッサが頭を下げるのに続いて四人も頭を下げる。
(それにしても、あの子って……ウサギは年がわからないからなぁ。)
アベルのみならず、下げた頭の中では似たような疑問がいっぱいの5人だった。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
PR
トラックバック
トラックバックURL: