件 名 :
差出人 : 周防 松
送信日時 : 2007/06/03 12:26
PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック 教官
場所:エドランス国
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんなこんなで、初クエストに挑戦することになった早朝。
朝特有の、ひんやりした空気の中を5人の少年少女が歩く。
その5人というのは、アベル・ヴァネッサ・ラズロ・リリア・リックのことである。
5人はこれからアカデミーに行き、アベル・ヴァネッサ・ラズロの三人分のクエスト
挑戦の申請をするところである。
申請を済ませ次第、香草の採取に出発する予定である。
ラズロ以外の4人は多少眠気があるぐらいで普段と大差ないのだが、ラズロは早起き
があまり得意ではないのか、何だかぼんやりしていた。
「えへへー、初クエストのおかげで、朝から得しちゃったぁ。せせらぎ亭の朝ご飯が
タダで食べられて、そのうえお昼ご飯までついてくるんだもん。あたし、せせらぎ亭
絡みのクエスト専門でやってこうかな」
ニコニコ顔で、リリアは荷物の入ったリュックの底をぺしぺしと叩く。
朝ご飯、と言っても大して手のこんだものではない。
余った材料を使って作る、いわば「まかない飯」である。
今日の朝ご飯は野菜入りのあんかけオムレツと、クルミ入りのパンだった。
アベルが野菜を刻み、ヴァネッサがあん作りとオムレツ作りを担当した。
お昼ご飯の方は、完全に女将が作ったもので、包みを開けてみるまでは何が入ってい
るのかわからない。
「現金な奴」
ぼそりと呟くリックを、リリアは睨みつけ、それからヴァネッサのそばにくっついて
歩いた。
「にしても、ヴァネッサって料理得意なんだね。美味しかったよ」
「得意……なのかな……?」
ヴァネッサは首をかしげる。
料理をするのは長年の慣習みたいなもので、あまり得意とか不得意とかは考えたこと
がない。
カタリナに教えられつつ、初めて目玉焼きを作ったのが楽しかったのを覚えている。
その後、毎日のように目玉焼きを作っていたら、「今度はオムレツを教えてあげる
よ」と言われ……そんな具合で、少しずつ覚えていったのだ。
それがカタリナにちょっとでも楽をさせられるとわかると、ヴァネッサは次第に食事
作りを担当するようになった。
一方アベルが簡単なものとはいえ料理ができるのは、無理矢理手伝わされていたせい
でもあるが、料理する人間を間近で見ていたところにも一因はある。
兄や姉のすることに、下の子は興味を持つものだ。
「得意だよぉ。少なくともあたしよりは、さ。すごいよね」
「お前はイモの皮一つむけないもんな」
「人には向き不向きっていうのがあるのっ」
すかさずリリアが反論している。
ヴァネッサは、なんとなく気にかかった。
(……どうして、リック君そんなこと知ってるんだろう)
リリアの反応を見ると、イモの皮一つむけない、というのは、どうやら事実のよう
だ。
ということは以前、リリアに料理を作ってもらったことがあるのだろうか?
「……でも、本当に料理が得意な人って、玉ねぎのみじん切りしても涙が出ないって
聞いたことあるよ? 私、玉ねぎを切ってると涙が出るから、得意なんじゃなくて慣
れてるだけだと思う」
以前、ヴァネッサはそんな話を聞いたことがある。
本当かどうかはわからないが、全くの嘘とも言いきれないような気がして、今でもな
んとなく信じている。
「いや、それは泣かないほうがどうかしてるんじゃ……」
リリアは極めて常識的なことを口にする。
「俺だって泣くし、かーちゃんだって玉ねぎ切ってる最中に「ああ、目が痛い」とか
言って顔洗ったりしてたじゃねえか。みんな泣くんじゃねえの?」
そう言われると、やはり泣くのが普通のように思われる。
「やっぱり、デマなのかな……?」
「いや、デマでしょ、明かに」
「……まさか、ずーっと信じてたのか?」
アベルの問いかけに、ヴァネッサは正直に、こく、と頷いた。
……沈黙。
全員の視線が、ヴァネッサに集中していた。
「ほ、ほら。クエスト挑戦の申請に行くんでしょ、玉ねぎは後回し!」
リリアの言葉で、一同の時間が再び動き出した。
「おはようございまーす」
アカデミー内の教務室の入り口で、リリアが明るい挨拶の声を上げる。
教務室には、昼間ほどではないが、何人かの教官が仕事をしていた。
「えぇと、セリア先生いますかー?」
すると、近くの机に向かっていた教官がこちらに向き直った。
「今日はまだ出てきてないよ。どうしたんだい?」
「クラスメイトが、クエスト挑戦の申請をするので、セリア先生のサインを頂きたい
んです」
リックは相手が教官ということもあってか、敬語を使っている。
「……でも、セリア先生いないんだよね?」
困ったなあ、と言わんばかりにリリアは頭をかく。
こちらは良くも悪くも親しみ溢れる口調である。
「ああ、それならこの紙に書いて提出してくれれば大丈夫だよ。セリアには後で渡し
ておくから」
教官は、ぴらり、と用紙を数枚取ってこちらに差し出す。
「ええ? 先生、それっていいの?」
「教官のサインなら誰のでも通ることになってるの。本当は、担当の先生のサインが
一番なんだけどね」
「わっかりました! 先生、ありがと!」
リリアは親しげに礼を述べ、差し出された用紙を受け取って、早速三人に説明しよう
とする。
「それから、注意ね。僕は一応、教官なんだから、教務室にいる時ぐらいはちゃんと
敬語を使うように」
「はーい、以後気をつけまーす」
笑顔で答えると、リリアは再びこちらを向く。
傍らのリックが、ため息をついていた。
「えーとね、じゃあ、書き方教えるね」
(リリアちゃんって、いろんな人と仲良しなんだなぁ……)
書き方について説明を始めたリリアを見つつ、改めてそう思うヴァネッサだった。
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差出人 : 周防 松
送信日時 : 2007/06/03 12:26
PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ラズロ リリア リック 教官
場所:エドランス国
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そんなこんなで、初クエストに挑戦することになった早朝。
朝特有の、ひんやりした空気の中を5人の少年少女が歩く。
その5人というのは、アベル・ヴァネッサ・ラズロ・リリア・リックのことである。
5人はこれからアカデミーに行き、アベル・ヴァネッサ・ラズロの三人分のクエスト
挑戦の申請をするところである。
申請を済ませ次第、香草の採取に出発する予定である。
ラズロ以外の4人は多少眠気があるぐらいで普段と大差ないのだが、ラズロは早起き
があまり得意ではないのか、何だかぼんやりしていた。
「えへへー、初クエストのおかげで、朝から得しちゃったぁ。せせらぎ亭の朝ご飯が
タダで食べられて、そのうえお昼ご飯までついてくるんだもん。あたし、せせらぎ亭
絡みのクエスト専門でやってこうかな」
ニコニコ顔で、リリアは荷物の入ったリュックの底をぺしぺしと叩く。
朝ご飯、と言っても大して手のこんだものではない。
余った材料を使って作る、いわば「まかない飯」である。
今日の朝ご飯は野菜入りのあんかけオムレツと、クルミ入りのパンだった。
アベルが野菜を刻み、ヴァネッサがあん作りとオムレツ作りを担当した。
お昼ご飯の方は、完全に女将が作ったもので、包みを開けてみるまでは何が入ってい
るのかわからない。
「現金な奴」
ぼそりと呟くリックを、リリアは睨みつけ、それからヴァネッサのそばにくっついて
歩いた。
「にしても、ヴァネッサって料理得意なんだね。美味しかったよ」
「得意……なのかな……?」
ヴァネッサは首をかしげる。
料理をするのは長年の慣習みたいなもので、あまり得意とか不得意とかは考えたこと
がない。
カタリナに教えられつつ、初めて目玉焼きを作ったのが楽しかったのを覚えている。
その後、毎日のように目玉焼きを作っていたら、「今度はオムレツを教えてあげる
よ」と言われ……そんな具合で、少しずつ覚えていったのだ。
それがカタリナにちょっとでも楽をさせられるとわかると、ヴァネッサは次第に食事
作りを担当するようになった。
一方アベルが簡単なものとはいえ料理ができるのは、無理矢理手伝わされていたせい
でもあるが、料理する人間を間近で見ていたところにも一因はある。
兄や姉のすることに、下の子は興味を持つものだ。
「得意だよぉ。少なくともあたしよりは、さ。すごいよね」
「お前はイモの皮一つむけないもんな」
「人には向き不向きっていうのがあるのっ」
すかさずリリアが反論している。
ヴァネッサは、なんとなく気にかかった。
(……どうして、リック君そんなこと知ってるんだろう)
リリアの反応を見ると、イモの皮一つむけない、というのは、どうやら事実のよう
だ。
ということは以前、リリアに料理を作ってもらったことがあるのだろうか?
「……でも、本当に料理が得意な人って、玉ねぎのみじん切りしても涙が出ないって
聞いたことあるよ? 私、玉ねぎを切ってると涙が出るから、得意なんじゃなくて慣
れてるだけだと思う」
以前、ヴァネッサはそんな話を聞いたことがある。
本当かどうかはわからないが、全くの嘘とも言いきれないような気がして、今でもな
んとなく信じている。
「いや、それは泣かないほうがどうかしてるんじゃ……」
リリアは極めて常識的なことを口にする。
「俺だって泣くし、かーちゃんだって玉ねぎ切ってる最中に「ああ、目が痛い」とか
言って顔洗ったりしてたじゃねえか。みんな泣くんじゃねえの?」
そう言われると、やはり泣くのが普通のように思われる。
「やっぱり、デマなのかな……?」
「いや、デマでしょ、明かに」
「……まさか、ずーっと信じてたのか?」
アベルの問いかけに、ヴァネッサは正直に、こく、と頷いた。
……沈黙。
全員の視線が、ヴァネッサに集中していた。
「ほ、ほら。クエスト挑戦の申請に行くんでしょ、玉ねぎは後回し!」
リリアの言葉で、一同の時間が再び動き出した。
「おはようございまーす」
アカデミー内の教務室の入り口で、リリアが明るい挨拶の声を上げる。
教務室には、昼間ほどではないが、何人かの教官が仕事をしていた。
「えぇと、セリア先生いますかー?」
すると、近くの机に向かっていた教官がこちらに向き直った。
「今日はまだ出てきてないよ。どうしたんだい?」
「クラスメイトが、クエスト挑戦の申請をするので、セリア先生のサインを頂きたい
んです」
リックは相手が教官ということもあってか、敬語を使っている。
「……でも、セリア先生いないんだよね?」
困ったなあ、と言わんばかりにリリアは頭をかく。
こちらは良くも悪くも親しみ溢れる口調である。
「ああ、それならこの紙に書いて提出してくれれば大丈夫だよ。セリアには後で渡し
ておくから」
教官は、ぴらり、と用紙を数枚取ってこちらに差し出す。
「ええ? 先生、それっていいの?」
「教官のサインなら誰のでも通ることになってるの。本当は、担当の先生のサインが
一番なんだけどね」
「わっかりました! 先生、ありがと!」
リリアは親しげに礼を述べ、差し出された用紙を受け取って、早速三人に説明しよう
とする。
「それから、注意ね。僕は一応、教官なんだから、教務室にいる時ぐらいはちゃんと
敬語を使うように」
「はーい、以後気をつけまーす」
笑顔で答えると、リリアは再びこちらを向く。
傍らのリックが、ため息をついていた。
「えーとね、じゃあ、書き方教えるね」
(リリアちゃんって、いろんな人と仲良しなんだなぁ……)
書き方について説明を始めたリリアを見つつ、改めてそう思うヴァネッサだった。
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