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2025/03/10 07:26 |
立金花の咲く場所(トコロ) 32/アベル(ひろ)
PC:アベル ヴァネッサ 
NPC:リリア リック
場所:エドランス国 アカデミー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・うわぁ!!」
「・・・・・・すっげぇ!!」

 校舎との連絡通路にもうけられた入り口は、教室や職員室と同じ引戸(当た
り前といえば当たり前)をぬけると、そこは想像以上の光景だった。
 人の気配はするし、なんと言ってもアカデミーであることを考えると相当な
ものだと期待していたアベルもヴァネッサも、あまりの光景に感嘆の声を上げ
ずにはいられなかった。

「あはははは、一度外に出てあっちの表口から来るとそうでもないんだけど、
こっちの校舎との連絡口からるとみんな驚くんだよね。」

 アベルたちの育った村の人が全員集まったとしても広すぎるだろうそこは、
軽く500人はゆっくりと食事ができる席とテーブルがきれいにならべられ、昼前
というのに既に席もかなり埋るほどの人がいた。
 あっけにとられながら視線を動かしてみる、長方形の箱型のシンプルなつくり
の空間が左右に広がっており、アベル達の位置からみて、左手にはカウンターの
お化けが中央付近に設置され、奥の厨房との仕切りとなっているようで、客はそ
こで食事を受け取っているようだった。
 そこから、この空間の長い辺と平行に何列ものテーブルと椅子が設置され、リ
リアの指し示した指先へと続いていた。
 おそらく移動しやすいようにとの配慮であろうことは、リリアの指先にある扉
が端から端までいくつもつけられた壁面から沸いて出てくる(アベルにはそうみえ
た)人の群れがじつにスムーズに流れているのを見てわかった。
 後になって知るのだが、立派な扉をでっかく一つ二つつけるよりも、構造の問
題で両開きの普通の扉を端から端まで並べて、一つの扉で一度に通れる人数は限
られるのを数で補ったそのつくりは、外から見ると巨大な建物とそこに並ぶ扉扉
扉・・・・・・で、桁外れのスケールを感じさせるらしい。
 外観で先に予測ができない分、連絡口から入るとより驚くということらしい。

「こんな時間なのに結構人が・・・・・・あら?」

 アベルと並んでぼんやりと食堂を眺めたヴァネッサは、カウンーの光景で何か
に気がついた。

「んー、さすがいいとこにめをつけるわね。」

 その様子にリリアが目ざとく気がつき、説明をしてくれる。
 この食堂に来る人は、カウンターで中の人に注文を出し、トレイにメニューのせ
て席に向かう流れとは別に、なにやら袋詰めされたものを受け取ってそのまま出て
行く流れがあることにヴァネッサは気がついたのだった。

「ここは普通に授業を受けに来る人だけでなくて、旅支度とかをする人もいるのよ。
私たち程度ではまだまだ学ぶのがメインになるんだけど、経験地稼ぎと収入確保を
かねて仕事を初めながら通う人も多いいの。特に修士をとった後の人はほとんどね。
アカデミーは国の補助もあるし、修士以降の学生出身の名士なんかの寄付もあるも
のだから割安で買えるしね。」

 リリアにつづけるようにリックも補足する。

「ほら、アカデミーの施設は学生も働いてるっていったろ。実は学費や生活費以外
にも、アカデミー内にある料理系の教室の実地研修もかねててさ、そこの新作とか
が出るんだけど、それはここでしか売ってないからさ。」

 修士となってもそれでアカデミーから完全に離れるというものではなく、その後
もアカデミーにいくつもある「教室」という研究機関に所属してさらなる高みを目
指すこともできるらしい。
 教室の中には武術や魔法などの闘技関連ももちろんあるが、料理や洋裁など一般
的なものの研究をしているものも数多く存在するという。
 料理の教室では、普通の料理研究のほかにも、保存食や栄養学、薬膳などの特殊
な料理の研究も盛んらしい。
 特殊料理は冒険なんかにも役に立つため、結構アカデミーの名物として定着して
いるという。
 アベルはリリアとリックの話を聞いてますます呆れた。
 料理一つとってもこの有様ではアカデミーというところは桁が違う、と改めて思
っていた。
 
「んー、さすがにお昼にはまだ早いけど、飲み物ぐらい買ってみよっか?」

 リリアの提案に特に反対もなかったため、四人は連れ立ってカウンターの方に向
かっていった。

 カウンターはかなりの人数がいたが、さすがこの大きさだと人が多くても列がで
きたりもせず、むしろすいている風に見えるから不思議だ。
 みたところ、カウンター越しに呼びかけると中の人が注文を受けてその場で品物
を受け取るというシステムのようだった。
 リリアがカウンターに近づくとすぐに白い清潔そうな衣装をみにまとった女性が
顔を出した。

「おねーさん、フルーツミックジュース四人分!」
「はいよ。一緒でいいの?」
「うん、わたしで。」
「はいよ。」

 リリアが注文すると中の女性は手元の紙に何かを書き付け、すぐにリリアに渡し
た。
 リリアがその紙にサインかなにかを書いている間に、中の女性はカウンターの奥
に一度引っ込み、トレイにコップを四つ載せて戻ってきた。
 リリアから紙を受け取り、何かを確認した女性はその紙の一部を切り取りリリア
に手渡した。
 
「ん、ありがと。」
「はいよ、来週にはまた新作出すから、期待しといてね。」
 
 リリアから、ほい、ほい、とてわたされたコップをもって手近な席に腰を下ろし
た四人は、さっそくのどを潤した。

「あ、美味しい。」
「ほんとだ、良く冷えてんなー。」
「でしょでしょ。」
「これだけでも、ここで買う価値あるだろ?」

 確かにアベルもヴァネッサも一口飲んでみて驚いた。
 料理ならある程度調理過程で工夫が聞くのだが、こうした単純なものとなると、
素材の良さが8割、後は配合といったところだがどちらも完璧だった。

「ここは材料の保管もアカデミーで開発した技術使ってるから、いつでも新鮮なま
まなのさ。」

 リックのいうように、保存が完璧でなければ、産地でもない限りこんなに美味し
くはならないだろう。
 
「そういえば、さっきお金払わなかったような?」

 不思議そうにしいるヴァネッサに、リリアはさっきもらった紙の切れ端を見せた。

「ここでは注文をしたら、発注書にサインして版権を受け取るだけでいいんだよ。」
「え、じゃあお金要らないの?」
「んーアカデミー内でかかった費用は後でまとめて清算するんだよ。」

 あの紙もこのアカデミーの開発したもらしく、簡単な制約の魔法が封じられてて
踏み倒せないようになっているらしい。
 もっとも出世払いを認めているところだけあって猶予もかなり長いらしく、いま
だ魔法が発動したという話は聞かないらしい。
 もっとも、国の直営の上ギルドがバックアップするアカデミーで、進んでトラブ
ルをおこそうなどという命知らずはいないだろうが。
 とりあえずお金は後払いというギアの説明が正しかったことを確認できた姉弟は
ひそかに胸をなでおろした。
 信用してるといいたいところだが、ここと村のあまりのギャップが続くので、内
心気が気ではなかったのだ。
 何しろ、あの村にいる限りお金を使うことなんてほとんどなかったのだから、こ
れも田舎者の通る道なのかもしれない。
 そうこうしてるうちにジュースを飲み終わった四人は、リリアに先導されてカウ
ンターに設置された返却口にコップを戻した。

「さーて、次はどこ行く?」

 リリアは、まだまだいくよとヴァネッサとアベルに笑顔を向けた。


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2007/02/12 21:46 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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