PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ギア ラズロ 学長
場所:ギルドアカデミー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学長は一行を伴って、なにやら四人ほどで熱く語り合っている一角に
近づいていった。
「―――だから、俺達は冒険者志望を預かるんだから、単に剣や魔法の
レベル上げよりも、連携を基礎課程に組み込むべきだろうが!」
「しかし冒険者志願ってのは漠然とした夢として目差す奴が多い。すで
に足を突っ込んだ奴がスキルアップに来てるならいいが、子供が想像以
上に多いことを考えると、まず何かのスキルを身につけさせてやらねば、
道をほんとの意味で選ぶことはできないのではないか?」
今熱く語っているのは鍛えぬいたとわかる体を革のズボンに麻のシャ
ツを着ただけのラフないでたちに包んだ青年で、それに返答していたの
はカタリナほどではないが、それでもそこらの男では比べ物にならない
ほどに鍛え抜かれた体をした女性だった。
髪も男と同様短く刈り込んであるのになぜ女性とわかったかと言うと、
なぜか足首まで覆うスカートをはいていたのだ。
「まあまあ二人とも。そういうことなら技術教練でやるより団体教練を
ふやしてやるほうが良いのではないですか?」
「そうだな。ラディみたいな魔法使いや俺みたいなスカウトは技術教練
のなかでPTスキルや集団戦闘を意識させるのは難しい。戦士系とちがっ
て体より先に頭で覚える技術だからな。」
特に熱く語る二人をなだめるようにもう二人が口を挟む。
先に口を挟んだラディと呼ばれた者は、見た目は線の細い優男で、腰
あたりまである見事なブロンドの合間から細くとがった耳を覗かせてい
た。
そのラディの後に話した男は、均整のとれた引き締まった体をしてい
たが、全身を柔らかそうな黄緑色の毛につつんだ獣人だった。
すでに獣人というより、直立歩行するウサギそのものの女将を見てい
た一行は今更驚きはしなかったが、
(猫?豹?どちらにしても、女将さんよりも私達人間に近いみたい。)
(うーん、あっちの人はもしかして妖精族かな?)
(馬鹿、指差すな失礼だろうが!)
……やはり少し興奮を隠せずにいた。
「はいはい、いいかしら?」
「あ、学長。」
「ふふ、大分熱心にやってるようね。」
にこやかに話しかけた学長に、四人は照れたように挨拶を返す。
「紹介するわね。戦士のセリアとヴァン、魔法使いのラディと、スカウ
トのザックよ。」
「いっておくが、私は女性だ、女装ではないぞ。」
学長の紹介の後、セリアはまじめな顔でそういった。
後で知ったことだが、セリアはなぜか同性に言い寄られることが多い
らしく、それのため、仕事以外ではスカートを着用しているらしい。
しかしこのときはまだ冗談とも本気とも知れなかったので、子供達は
なんともいえない顔で頷いただけだった。
それを笑って受け流した学長は、今度は子供達を紹介し、入学希望者
であることをつげた。
「ええと……、あなた達のクラスは来週からよね。あいてるところある
かしら?」
一瞬四人は顔を見合わせた後、セリアが手を上げる。
「私のところならまだあいてます。」
「そう、ならセリアに頼もうかしら。」
「わかりました。」
学長にうなづいてみせたセリアだったが、ふと思い出したようにラズ
ロをみていった。
「オーベンスのあなたもそれでいいのですね?」
いたってまじめな顔のままいったセリアに、一瞬不愉快げにまゆをひ
そめたラズロは挑むようにセリアをにらみつけた。
アベルもヴァネッサもセリアがなぜラズロだけにそんな確認をするの
か、その疑問に気をとられていたためにラズロの些細な変化には気がつ
かなかった。
「私たちは冒険者向けですから、仕官などを目指すなら、クラスを変え
たほうが近道ですよ?」
相変わらず田舎ものの姉弟には意味がわからなかったがラズロにはす
ぐに伝わったらしい。
珍しく態度を恥じるような苦笑いを浮かべて、ちらりとギアを見た。
ギアも「しょーがねえなぁ。」とでもいいたげに肩をすくめて笑い返
した。
「失礼しました。僕も同じでお願いします。」
これも受講がはじまるとすぐにわかることだったのだが、基本的に選
択式で生徒の自由意志で好きなように学べるとはいえ、全般的な基礎学
習をまなぶ学生生活の基盤となるクラスの選択は、ある程度目指すとこ
ろによって考えるのが普通らしい。
これは講習、特に実技講習などを受けやすくするためであった。
例えば武器術で組み打ちをするなど、クラス内で相手がいれば、練習
もしやすいなど、そういった利便性ゆえのことだった。
冒険者と貴族として仕官するのとでは、おのずと学ぶべきこともかわ
ってくるそれを気にかけてのセリアの言葉だったのだ。
もっともこのときは、アベルもヴァネッサにもわからないところだった
ので、なんとなく変な空気に首を傾げただけだった。
「じゃあ、あなた達はこのセリアが担当しますから、何かあったらセリア
のほうにいえばいいわ。」
学長の言葉にセリアもうなづいた。
「来週といっても三日しかない。三人とも心構えだけは忘れずに。」
別段利触れたセリアの言葉だったが、三人は新しい生活にわくわくして、
目を輝かせてうなづいた。
NPC:ギア ラズロ 学長
場所:ギルドアカデミー
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学長は一行を伴って、なにやら四人ほどで熱く語り合っている一角に
近づいていった。
「―――だから、俺達は冒険者志望を預かるんだから、単に剣や魔法の
レベル上げよりも、連携を基礎課程に組み込むべきだろうが!」
「しかし冒険者志願ってのは漠然とした夢として目差す奴が多い。すで
に足を突っ込んだ奴がスキルアップに来てるならいいが、子供が想像以
上に多いことを考えると、まず何かのスキルを身につけさせてやらねば、
道をほんとの意味で選ぶことはできないのではないか?」
今熱く語っているのは鍛えぬいたとわかる体を革のズボンに麻のシャ
ツを着ただけのラフないでたちに包んだ青年で、それに返答していたの
はカタリナほどではないが、それでもそこらの男では比べ物にならない
ほどに鍛え抜かれた体をした女性だった。
髪も男と同様短く刈り込んであるのになぜ女性とわかったかと言うと、
なぜか足首まで覆うスカートをはいていたのだ。
「まあまあ二人とも。そういうことなら技術教練でやるより団体教練を
ふやしてやるほうが良いのではないですか?」
「そうだな。ラディみたいな魔法使いや俺みたいなスカウトは技術教練
のなかでPTスキルや集団戦闘を意識させるのは難しい。戦士系とちがっ
て体より先に頭で覚える技術だからな。」
特に熱く語る二人をなだめるようにもう二人が口を挟む。
先に口を挟んだラディと呼ばれた者は、見た目は線の細い優男で、腰
あたりまである見事なブロンドの合間から細くとがった耳を覗かせてい
た。
そのラディの後に話した男は、均整のとれた引き締まった体をしてい
たが、全身を柔らかそうな黄緑色の毛につつんだ獣人だった。
すでに獣人というより、直立歩行するウサギそのものの女将を見てい
た一行は今更驚きはしなかったが、
(猫?豹?どちらにしても、女将さんよりも私達人間に近いみたい。)
(うーん、あっちの人はもしかして妖精族かな?)
(馬鹿、指差すな失礼だろうが!)
……やはり少し興奮を隠せずにいた。
「はいはい、いいかしら?」
「あ、学長。」
「ふふ、大分熱心にやってるようね。」
にこやかに話しかけた学長に、四人は照れたように挨拶を返す。
「紹介するわね。戦士のセリアとヴァン、魔法使いのラディと、スカウ
トのザックよ。」
「いっておくが、私は女性だ、女装ではないぞ。」
学長の紹介の後、セリアはまじめな顔でそういった。
後で知ったことだが、セリアはなぜか同性に言い寄られることが多い
らしく、それのため、仕事以外ではスカートを着用しているらしい。
しかしこのときはまだ冗談とも本気とも知れなかったので、子供達は
なんともいえない顔で頷いただけだった。
それを笑って受け流した学長は、今度は子供達を紹介し、入学希望者
であることをつげた。
「ええと……、あなた達のクラスは来週からよね。あいてるところある
かしら?」
一瞬四人は顔を見合わせた後、セリアが手を上げる。
「私のところならまだあいてます。」
「そう、ならセリアに頼もうかしら。」
「わかりました。」
学長にうなづいてみせたセリアだったが、ふと思い出したようにラズ
ロをみていった。
「オーベンスのあなたもそれでいいのですね?」
いたってまじめな顔のままいったセリアに、一瞬不愉快げにまゆをひ
そめたラズロは挑むようにセリアをにらみつけた。
アベルもヴァネッサもセリアがなぜラズロだけにそんな確認をするの
か、その疑問に気をとられていたためにラズロの些細な変化には気がつ
かなかった。
「私たちは冒険者向けですから、仕官などを目指すなら、クラスを変え
たほうが近道ですよ?」
相変わらず田舎ものの姉弟には意味がわからなかったがラズロにはす
ぐに伝わったらしい。
珍しく態度を恥じるような苦笑いを浮かべて、ちらりとギアを見た。
ギアも「しょーがねえなぁ。」とでもいいたげに肩をすくめて笑い返
した。
「失礼しました。僕も同じでお願いします。」
これも受講がはじまるとすぐにわかることだったのだが、基本的に選
択式で生徒の自由意志で好きなように学べるとはいえ、全般的な基礎学
習をまなぶ学生生活の基盤となるクラスの選択は、ある程度目指すとこ
ろによって考えるのが普通らしい。
これは講習、特に実技講習などを受けやすくするためであった。
例えば武器術で組み打ちをするなど、クラス内で相手がいれば、練習
もしやすいなど、そういった利便性ゆえのことだった。
冒険者と貴族として仕官するのとでは、おのずと学ぶべきこともかわ
ってくるそれを気にかけてのセリアの言葉だったのだ。
もっともこのときは、アベルもヴァネッサにもわからないところだった
ので、なんとなく変な空気に首を傾げただけだった。
「じゃあ、あなた達はこのセリアが担当しますから、何かあったらセリア
のほうにいえばいいわ。」
学長の言葉にセリアもうなづいた。
「来週といっても三日しかない。三人とも心構えだけは忘れずに。」
別段利触れたセリアの言葉だったが、三人は新しい生活にわくわくして、
目を輝かせてうなづいた。
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