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2024/05/21 11:06 |
立金花の咲く場所(トコロ) 2/アベル(ひろ)
PC:ヴァネッサ アベル
NPC:カタリナ
場所:エドランス国のギサガ村

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「わかりました……でも、お義母さんに伝えてからじゃ、駄目ですか?
一言伝えてから行けば、余計な心配をかけなくて済むと思うんです」
 ヴァネッサの答えに男はなにかに思いついたように頷いた。
「悪いけどついでにギルドへの連絡もカタリナに頼んどいてくれ。」
 ギルドの名にアベルが首をかしげる。
「あれ? どこぞの研究機関とかなんとかいってなかったけ?」
 男にというより、ヴァネッサに聞きながら、荷物を持ち直す。
 ヴァネッサも、そういえばと少し首をかしげる。
「ああ、なんだかわからんが、ギルド出資のアカデミーがどうとか……
って、いけね、まだ長にも報告にいかにゃならんかった!」
 答えかけた男はそのことばも終わらないうちにもう駆け出していた。
 そしてそのまま振り返らずに後ろ手で合図を送る。
「じゃあ頼んだよ! 俺も一回りしたらてつだいにもどるからさ!」
「「わかりましたー!」」
 アベルとヴァネッサは遠ざかる背に向けて声をかけると、顔を見合わ
せて頷きあった。
「さ、急がなきゃね。」
「ああ、ヴァネッサは先にかーちゃんのトコロに。荷物は俺が納屋にも
っていっとくからさ。」
「うん、お願い。」
 家路を駆け出したヴァネッサに遅れまいと、アベルは袋の口をしっか
りと閉じると抱えあげるようにして走り出した。
 
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
  

「そいつはたいへんだねぇ。」
 ヴァネッサから話をきいたカタリナは眉をひそめながらいった。
 アベルの実母であり、ヴァネッサの義母でもあるところのカタリナは、
ギサガ村唯一の宿兼酒場、いわゆる「冒険者の店」を切り盛りする女将で
あった。
 もともと冒険者として、おもに遺跡探査を主とするハンターとして夫の
グラントと各地を巡る生活をしていたのだが、ヴァネッサをあずあかるこ
とになった時にギルドが世話をしてくれてこの店を出すことになった経緯
があるため、ギルドの窓口として村では「何でも屋」のように頼られてい
る。
 そしてヴァネッサが魔法を学びだし、独学ながら治癒魔法を使うように
なってからは、まともな医者のいない村という事情もあって、なにか事故
がおきると今回のようにヴァネッサが出て行くことが恒例化していた。
 そんなわけであったから、カタリナは肩をすくめたものの特に反対する
ことはなかった。
「ただし、遅くならないうちにかえるんだよ。」
 元戦士といいつついまでも鍛錬が日課からはずせないカタリナの、女性
にしては大柄で迫力の有る巨体をずいっと乗り出して声を少し落とす。
「夜になったらまたいつ……。」
「お義母さん、大丈夫。」
 心配げに言いかけたカタリナの言葉の先をさえぎるようにしてヴァネッサ
が笑顔できっぱりと言い切る。
 無理をしている風でもなく、あくまでいつもどおりの笑顔を見せる娘に何
を見たのか、カタリナは笑いながら娘の頭を軽くたたく。
「まったく、無理するなってのはあたしの娘にかける言葉じゃなかったね!」
 そこに心配をはるかに超える信頼を感じヴァネッサは力がわいてくるのを感
じるのだ。
「まあいいさ、倒れたら迎えに行ってやるからほどほどに無理してきな。」
「はい、いってきます。」
 ヴァネッサはそう元気に返事をすると、すぐに外へとかけていく。
 その後姿を見送りながら、髪に片手を突っ込み頭をかきながらため息をつく
カタリナ。
(まったく、無理してるわけじゃなさそうなんだけど、なんだか生き急いでる
きがして……って、なーに考えてんだぁあたしは……はぁ)
 まさしく母のカンというやつが働いているのかもしれないのだが、確証もそ
れらしい予兆も思い当たらなかったので、頭を振って考えを振り払う。
「あー、ちょっと! ヴァネッサ!」
 そこらのものをひっくり返しでもしたのか、納屋から裏口を通って店に入っ
てきたアベルが、引っかかっている剣を無理やり引き剥がしながら、転がるよ
うに出てくる。
 ちょうど入り口をくぐるヴァネッサを見たところのようで、あわてて後を追
おうとしてるようで、そのありさまをみてカタリナは苦笑いをする。
「アベル! そんなところで騒いでないで、さっさとヴァネッサの手伝いにい
きな!」
 母の叱咤にむっとしながらアベルもどなりかえす。
「わ、わかってるよ! 今でるとこなんじゃないか!」
 そのあまりに頼もしい様に、カタリナはやれやれとため息をつく。
(力ばっか強くなって、いらんとこばっかり私に似るなぁ)
 カタリナはしゃーないとばかりに、アベルにむけてはよいけと手を振って見
送った。
 アベルはカタリナにはそれ以上かまわずに、蹴りやぶらんばかりの勢いで扉
をあけると、すぐ先にヴァネッサの背を見つけて後を追った。
(ヴァネッサは俺が護ってやんなきゃ!)

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2007/02/12 21:28 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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