PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ギア ラズロ ダントン ランバート
場所:ギサガ村の洞窟
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それはともかく、あいつらは単なる巨大化タイプではないから、
ただここに蓋をしても時間稼ぎにしかならない。」
ギアは思い出を押しやり、あえて厳しい顔つきで言った。
ランバートとラズロを除く村の面々は意味がわからずに首をかし
げる。
「硬さって事?」
アベルが思いついたことを口にするが、ヴァネッサも首をかしげ
る。
「うーん、それもそうだが、ほら事情を聞いたときに、最初に襲わ
れた人達が何かの声みたいなのを聞いたっていってたろ?」
顔を見合わせる村人達は「おお」と思い出したものの「それがな
に?」という顔でギアに目を向ける。
なんだか講義でもしてるみたいだな、と苦笑しながらグラントは
頬をかいた。
「あ、それってつまり、単なるアリが巨大化してるのでなくて、ち
ゃんとした知能があるってことじぁ?」
少し遅れてヴァネッサが驚きと共に声に出す。
それを聞いてギアは感心しつつもなんだかうれしくなって目を細
める。
(さすがやっぱりあの人達の血を引いて……いやこれはグラントの
教育をほめるべきなのか?)
「そうだ。こいつらは……いやこいつらをまとめる女王はといった
ほうがより正確かもしれんが、とにかくただのGアントではない。」
「亜神と我々研究者は分類しておる。」
それまで弟子を見守るかのように、やり取りを黙ってみていたラン
バートが口を挟む。
「神?」
ぎょっとしてダントンが声を上げてしまう。
「いやいや、亜神。まあかつて神と崇められていたものであってあく
まで本物の神じゃない。よく凶悪なドラゴンとかが神として恐れられ
るようなもので、そういったものの内の一種類さ。」
「声、おそらく思念を飛ばしたのじゃろうが、それができるというこ
とはなかなかの高位種。そうともなれば、別の出入り口を作るのも容
易なことじゃろうな。」
まだピンときていなかったアベルやダントンをはじめとする村の衆
はようやく事の重大性に気づき声を失う。
ここが巣とわかったときは、洞窟を埋めてしまえば何とかなるとま
だ余裕があったが、掘り返せないように蓋をしてもべつのルートに切
り替える頭が……さらに言えば、知能があるなら組織的に兵隊アリを
運用してくれば、こちらの対策が追いつくはずがない。
「ど、どうするんだ?」
恐る恐るといった風に作業に来ていた男の一人がギアに聞いた。
「ありがちとしては水攻めだが、この規模では無理だし、今回は封印
をかけなおすってとこだな。」
「さしずめ蝋攻めのかわりじゃな。」
アベルとヴァネッサにはいまいち想像しにくかったが、ダントンを
はじめとした、いたずら小僧時代をすごした男衆は、蟻がわいてうっ
とおしいときに巣穴にロウを流し込んで固めてしまったことを思い出
していた。
「まだ目覚めたてで餌もとってないらしいから、封印してしまえば、
そのまま弱って朽ちるかもしれんしな。」
そういったギアは洞窟を見据えると、手で皆に下がるように合図し
た。
「皆は下がっててくれ。ああ、ラズロは時間稼ぎ頼む。」
「はい。」
「オジさん、オレも!」
アベルはまだまだやれるというふうに名乗りを上げた。
「うーん、そうだな二人のほうが確実だろう。」
「よっし! まかせて!」
「……。」
ラズロは特に感心なさげに無言でまえにでる。
遅れまいとアベルもつづく。
二人が並んで構えた場所は、ちょうどさっきまでダントンとアベル
が戦っていたところだった。
「さて、と。ここからは……。」
ギアが両手を合わせて印を結び出すと同時に、見えない力が風を巻
くように集まっていくのを感じた男達は、邪魔にならないように、と
いうよりは、気おされるように下がった。
「俺の見せ場だ!」
ギアが言葉とも旋律ともとれるような、まさに歌を、低く良く通る
声でつむぎだす。
ヴァネッサはその歌に惹かれるように、足元から広がりだした力の
波が大地から湧き出す光と混ざり溶け合い、何かの形になっていくの
が見えた。
「……綺麗。」
そんな場合でもないのにと思いつつも、こらえきれずに感動の声を
あげたヴァネッサに、変なものを見るようにダントンがおののく。
「綺麗って……あの人が?」
「え? 皆にはみえてないの?」
「へ?」
不思議そうな顔をするダントン。
はっとして周りを見渡すと他の男たちも同じように不思議そうに
している。
「ほほう。どうやら精霊力がみえておるようじゃな。」
ランバートが感心したようヴァネッサをみる。
(これが、精霊の力を借りた魔法……。)
今まで知識としてしか知らず、そうした高度な魔法を使えない悔しさ
を感じたばかりのヴァネッサは吸い込まれるようにその光の舞踏を見つ
めた。
印を組み替えながら腕を動かすギアは、歌いながら舞っているようで
もあり、力の流れを見れるヴァネッサには指揮者のようにもみえた。
「あっ!」
歌劇ならクライマックスだろうか、ギアを取り巻く光たちが何らかの
図形……円を基調とした魔方陣を形つくっていた。
もうすぐあれは完成する……見つめていたヴァネッサはそう感じてい
たとき、何か別の異質な力がギアに対する敵意と共に近づいてくるのを
かんじとった。
胸の奥にある『あれ』と呼び合うようなこの感じ……。
「アベル君! ギアさん!」
その声が届いたそのとき、洞窟の奥からは再びGアントが姿を見せて
いた。
「やっぱり素直に待ってちゃくれねーか。」
「そのための僕達戦士ですよ。」
ぼやくようにいったアベルを、冷静に諭しながらラズロは剣を閃かせた。
その鮮やかな剣閃の煌きにアベルは思わず見とれてしまう。
達人、それこそカタリナあたりがみればまだまだかもしれないが、駆け
出し同然のアベルからすれば、無駄の無いキレる技にみえたのだ。
「……俺だって!」
今まで周りに本職の戦士がいなかったこともあり、初めて見た同世代の
剣の技に、真負けん気を刺激されたのか、アベルも飛び掛る。
(……こいつ!)
技こそ未熟ながら、さっきまで戦い続けていたところというのに力でG
アントを押しているアベルの様子に、ラズロもなんとなく力が入る。
ギアはそんな二人に思わず頬を緩めていた。
(はは、ラズロのやつも妙にすましてやがるから心配してたけど、結構歳
相応なところもあるじゃねーか。)
もう少し見ていたい気もしたものの、実戦で遊ぶのは素人と気を引き締
め術を完成させる。
「いいぞ二人とも!」
ギアのその声を合図に、アベルとラズロは隙を見て後ろにさがった。
「うわぁ。」
アベルは目の前が突然光に包まれたかと思うと、後を追ってきたGアン
トが石へと変貌を遂げていた。
「これが魔法……。」
大規模な魔法を初めて見たアベルは感嘆の声を漏らす。
それを聞きつけたラズロが独り言のように説明を加える。
「……魔方陣で式を固定、地霊の力を乗せて封印を強化、大地の封神術だ。」
下がっている間にすぐそばに来ていたギアが、二人の後ろから肩をたたく。
「ごくろうさん。」
ギアは大して疲れた様子も見せずに得意げな笑顔を見せた。
「大地にかける範囲型だから、兵隊アリどももかたまってるはずだ。」
この説明は二人にというより、後ろの村人達にだったようで、少し大き
めの声で言った。
それを聞いた村人達は腰を抜かしたようにへたり込んだり、呆然と洞窟の
奥を見ていたりと、喜びを感じるにはしばらくかかりそうな様子だった。
そんな中、ヴァネッサが小走りに駆け寄ってきた。
「ギアさん、最後に声が聞こえたきがしたんですけど。」
そう、封印される最中、なぜ?とかそういった疑問をいみするような声が
ヴァネッサには聞こえていた。
それははっきりした言葉でなく、ただ意味だけが理解できるという不思議
なものだった。
「へえ。 そいつは女王の思念だろうけど、封印中にも聞けるなんて、波長
があったのかも知れねえな。」
それは別にたいしたことではない、ギアはそういったつもりだったが、ヴ
ァネッサには少し思うところがあるのか、考えるように口をつぐんでしまう。
「ヴァネッサ?」
「え? ああ、ううん。なんでもない。」
「そう?おじさんたちいっちゃうよ。」
あれ?といったふうにアベルが声をかけると、すぐにわれにかえったヴァ
ネッサは慌てて首を振る。
「そうね。さ、速くお母さん安心させたげないとね。」
「うん。」
ヴァネッサに促されたアベルは、奥をもう一度見たあと、横目でギアととも
に出口に向かうラズロを見て、自分の剣を見た。
(俺はまだまだか……。)
アベルはため息にならないように息を吐くと、ヴァネッサのあとにつづい
た。
NPC:ギア ラズロ ダントン ランバート
場所:ギサガ村の洞窟
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「それはともかく、あいつらは単なる巨大化タイプではないから、
ただここに蓋をしても時間稼ぎにしかならない。」
ギアは思い出を押しやり、あえて厳しい顔つきで言った。
ランバートとラズロを除く村の面々は意味がわからずに首をかし
げる。
「硬さって事?」
アベルが思いついたことを口にするが、ヴァネッサも首をかしげ
る。
「うーん、それもそうだが、ほら事情を聞いたときに、最初に襲わ
れた人達が何かの声みたいなのを聞いたっていってたろ?」
顔を見合わせる村人達は「おお」と思い出したものの「それがな
に?」という顔でギアに目を向ける。
なんだか講義でもしてるみたいだな、と苦笑しながらグラントは
頬をかいた。
「あ、それってつまり、単なるアリが巨大化してるのでなくて、ち
ゃんとした知能があるってことじぁ?」
少し遅れてヴァネッサが驚きと共に声に出す。
それを聞いてギアは感心しつつもなんだかうれしくなって目を細
める。
(さすがやっぱりあの人達の血を引いて……いやこれはグラントの
教育をほめるべきなのか?)
「そうだ。こいつらは……いやこいつらをまとめる女王はといった
ほうがより正確かもしれんが、とにかくただのGアントではない。」
「亜神と我々研究者は分類しておる。」
それまで弟子を見守るかのように、やり取りを黙ってみていたラン
バートが口を挟む。
「神?」
ぎょっとしてダントンが声を上げてしまう。
「いやいや、亜神。まあかつて神と崇められていたものであってあく
まで本物の神じゃない。よく凶悪なドラゴンとかが神として恐れられ
るようなもので、そういったものの内の一種類さ。」
「声、おそらく思念を飛ばしたのじゃろうが、それができるというこ
とはなかなかの高位種。そうともなれば、別の出入り口を作るのも容
易なことじゃろうな。」
まだピンときていなかったアベルやダントンをはじめとする村の衆
はようやく事の重大性に気づき声を失う。
ここが巣とわかったときは、洞窟を埋めてしまえば何とかなるとま
だ余裕があったが、掘り返せないように蓋をしてもべつのルートに切
り替える頭が……さらに言えば、知能があるなら組織的に兵隊アリを
運用してくれば、こちらの対策が追いつくはずがない。
「ど、どうするんだ?」
恐る恐るといった風に作業に来ていた男の一人がギアに聞いた。
「ありがちとしては水攻めだが、この規模では無理だし、今回は封印
をかけなおすってとこだな。」
「さしずめ蝋攻めのかわりじゃな。」
アベルとヴァネッサにはいまいち想像しにくかったが、ダントンを
はじめとした、いたずら小僧時代をすごした男衆は、蟻がわいてうっ
とおしいときに巣穴にロウを流し込んで固めてしまったことを思い出
していた。
「まだ目覚めたてで餌もとってないらしいから、封印してしまえば、
そのまま弱って朽ちるかもしれんしな。」
そういったギアは洞窟を見据えると、手で皆に下がるように合図し
た。
「皆は下がっててくれ。ああ、ラズロは時間稼ぎ頼む。」
「はい。」
「オジさん、オレも!」
アベルはまだまだやれるというふうに名乗りを上げた。
「うーん、そうだな二人のほうが確実だろう。」
「よっし! まかせて!」
「……。」
ラズロは特に感心なさげに無言でまえにでる。
遅れまいとアベルもつづく。
二人が並んで構えた場所は、ちょうどさっきまでダントンとアベル
が戦っていたところだった。
「さて、と。ここからは……。」
ギアが両手を合わせて印を結び出すと同時に、見えない力が風を巻
くように集まっていくのを感じた男達は、邪魔にならないように、と
いうよりは、気おされるように下がった。
「俺の見せ場だ!」
ギアが言葉とも旋律ともとれるような、まさに歌を、低く良く通る
声でつむぎだす。
ヴァネッサはその歌に惹かれるように、足元から広がりだした力の
波が大地から湧き出す光と混ざり溶け合い、何かの形になっていくの
が見えた。
「……綺麗。」
そんな場合でもないのにと思いつつも、こらえきれずに感動の声を
あげたヴァネッサに、変なものを見るようにダントンがおののく。
「綺麗って……あの人が?」
「え? 皆にはみえてないの?」
「へ?」
不思議そうな顔をするダントン。
はっとして周りを見渡すと他の男たちも同じように不思議そうに
している。
「ほほう。どうやら精霊力がみえておるようじゃな。」
ランバートが感心したようヴァネッサをみる。
(これが、精霊の力を借りた魔法……。)
今まで知識としてしか知らず、そうした高度な魔法を使えない悔しさ
を感じたばかりのヴァネッサは吸い込まれるようにその光の舞踏を見つ
めた。
印を組み替えながら腕を動かすギアは、歌いながら舞っているようで
もあり、力の流れを見れるヴァネッサには指揮者のようにもみえた。
「あっ!」
歌劇ならクライマックスだろうか、ギアを取り巻く光たちが何らかの
図形……円を基調とした魔方陣を形つくっていた。
もうすぐあれは完成する……見つめていたヴァネッサはそう感じてい
たとき、何か別の異質な力がギアに対する敵意と共に近づいてくるのを
かんじとった。
胸の奥にある『あれ』と呼び合うようなこの感じ……。
「アベル君! ギアさん!」
その声が届いたそのとき、洞窟の奥からは再びGアントが姿を見せて
いた。
「やっぱり素直に待ってちゃくれねーか。」
「そのための僕達戦士ですよ。」
ぼやくようにいったアベルを、冷静に諭しながらラズロは剣を閃かせた。
その鮮やかな剣閃の煌きにアベルは思わず見とれてしまう。
達人、それこそカタリナあたりがみればまだまだかもしれないが、駆け
出し同然のアベルからすれば、無駄の無いキレる技にみえたのだ。
「……俺だって!」
今まで周りに本職の戦士がいなかったこともあり、初めて見た同世代の
剣の技に、真負けん気を刺激されたのか、アベルも飛び掛る。
(……こいつ!)
技こそ未熟ながら、さっきまで戦い続けていたところというのに力でG
アントを押しているアベルの様子に、ラズロもなんとなく力が入る。
ギアはそんな二人に思わず頬を緩めていた。
(はは、ラズロのやつも妙にすましてやがるから心配してたけど、結構歳
相応なところもあるじゃねーか。)
もう少し見ていたい気もしたものの、実戦で遊ぶのは素人と気を引き締
め術を完成させる。
「いいぞ二人とも!」
ギアのその声を合図に、アベルとラズロは隙を見て後ろにさがった。
「うわぁ。」
アベルは目の前が突然光に包まれたかと思うと、後を追ってきたGアン
トが石へと変貌を遂げていた。
「これが魔法……。」
大規模な魔法を初めて見たアベルは感嘆の声を漏らす。
それを聞きつけたラズロが独り言のように説明を加える。
「……魔方陣で式を固定、地霊の力を乗せて封印を強化、大地の封神術だ。」
下がっている間にすぐそばに来ていたギアが、二人の後ろから肩をたたく。
「ごくろうさん。」
ギアは大して疲れた様子も見せずに得意げな笑顔を見せた。
「大地にかける範囲型だから、兵隊アリどももかたまってるはずだ。」
この説明は二人にというより、後ろの村人達にだったようで、少し大き
めの声で言った。
それを聞いた村人達は腰を抜かしたようにへたり込んだり、呆然と洞窟の
奥を見ていたりと、喜びを感じるにはしばらくかかりそうな様子だった。
そんな中、ヴァネッサが小走りに駆け寄ってきた。
「ギアさん、最後に声が聞こえたきがしたんですけど。」
そう、封印される最中、なぜ?とかそういった疑問をいみするような声が
ヴァネッサには聞こえていた。
それははっきりした言葉でなく、ただ意味だけが理解できるという不思議
なものだった。
「へえ。 そいつは女王の思念だろうけど、封印中にも聞けるなんて、波長
があったのかも知れねえな。」
それは別にたいしたことではない、ギアはそういったつもりだったが、ヴ
ァネッサには少し思うところがあるのか、考えるように口をつぐんでしまう。
「ヴァネッサ?」
「え? ああ、ううん。なんでもない。」
「そう?おじさんたちいっちゃうよ。」
あれ?といったふうにアベルが声をかけると、すぐにわれにかえったヴァ
ネッサは慌てて首を振る。
「そうね。さ、速くお母さん安心させたげないとね。」
「うん。」
ヴァネッサに促されたアベルは、奥をもう一度見たあと、横目でギアととも
に出口に向かうラズロを見て、自分の剣を見た。
(俺はまだまだか……。)
アベルはため息にならないように息を吐くと、ヴァネッサのあとにつづい
た。
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