PC:アベル ヴァネッサ
NPC:ギア カタリナ
場所:ギサガ村
――――――――――――――――――――――――
(――歌?)
ヴァネッサは朦朧とする意識の中、苦しさや恐怖が薄れていくのを
不思議な気持ちで感じていた。
いつもの‘あれ’なら一晩は続くはずだというのに、……それとも
意識を失ったまま夜が明けてしまったのだろうか?
朝が来ればいつもの習慣で自然に目が覚めそうなものだが、ヴァネ
ッサの意識は、夢ともなんともつかないまどろみを漂っていた。
苦痛と恐怖に打ち据えられた心は、とても夢うつつなどといえる態
でなかったはずだが、今ではむしろ安らぎの中でまどろんでいるよう
な心地よさの中にいた。
(不思議、詞も何もない旋律だけなのに、歌だとわかる……)
どこかで……そうついさっき聞いたような……、しかしヴァネッサ
の思考は次第にまどろみに溶けかけ、まともな考えは続けられなかっ
た。
先ほどとは明らかに違う意識の闇へと堕ちていくヴァネッサは、誰
かが優しく頭をなでてくれたのを感じた。
(……お……とう……さん?)
「もう大丈夫だろう、このまま寝かせといてやろう。」
床に横たわるヴァネッサの頭に当てていた手をゆっくり上げながら、
傍らでじっと見守っていたカタリナを振り返ったのはギアだった。
口を固く結んだカタリナは、そっと優しく愛娘を抱き上げると、ベ
ッドへと運んだ。
布団をかけてやり、その寝顔に苦しさを感じさせるものが浮かんで
いないことを確認すると、ようやく息を吐き出して緊張を解いた。
「私では何もしてやれんのだな。」
そのままギアのほうを見ずに、静かにカタリナの発した言葉は、疑
問ではなく確認であった。
「そうだ。これは剣では解決できない。」
そういうギアは先ほどまでの酔っ払い姿とは打って変わって、真摯
な厳しい目を細めてヴァネッサを見る。
「今の俺には嬢ちゃんを苦しめている力は感じられても鑑定まではで
きない……が、精霊たちが力を貸してくれた。どんな呪いかは知らな
いが、対処的にでも効果がでたなら、解決する方法もあるかもしれな
い。」
「……。」
「グラントが消息を絶つ前にアカデミーで何かを調べていた。そして、
今回俺が洞窟で使った封神術は、グラントにもらったやつだ。あの時
嬢ちゃんは俺の精霊だけでなく、‘やつら’の力も‘見’えていた。」
「……そうか。」
グラントが調べていたこと、やっていたこと、それがヴネッサに関
することだったとしてもおかしくは無い。
「アカデミーにいって魔法を学べばなんとかなるのか?」
「わからん。しかし、外傷とか出ない以上、本人こそが最も正確に状
態を把握できるのは確かなのだから、自身が挑むのが最も確率は高か
ろうな。」
「ここでまってても確率は変わらない……か?」
母親のの歯に衣を着せない答えに、ギアのほうが押されながら肩を
すくめて見せる。
「嬢ちゃんが何も言わないのが、諦めか別の何なのかわからんが、選
択肢を増やすために学ぶのはいい事と思うぜ。」
「まさか初めからそのつもりで顔を出したのか?」
「いいや、本とはグラントの役目だからな。 だが洞窟のあれと、今
夜のこれでそのほうが良いと思ったのさ。」
カタリナもギアとの付き合いは長い。
その口調から純粋に心配してくれていることは伝わっていた。
「……この娘のやりたいようにさせるよ。」
ヴァネッサの呪いが単に苦しませるものなのかそれ以上の何かがあ
るのかカタリナにはわからない。
だからといって軽く見ているわけではない。
だからこそ、ヴァネッサの思うままにさせてやろうと思うのだ。
愛する娘だらこそ。
「そうか。」
短く答えたギアは、カタリナを残したまま静かに部屋をあとにする。
(さて、アベルは興味ありげだったが……)
子を持たないギアだったが、親友の子だからか、あの二人には明る
い未来を与えてやりたいと思っていた。
「ほんと、グラントのやつ、なにしてやがんだか。」
NPC:ギア カタリナ
場所:ギサガ村
――――――――――――――――――――――――
(――歌?)
ヴァネッサは朦朧とする意識の中、苦しさや恐怖が薄れていくのを
不思議な気持ちで感じていた。
いつもの‘あれ’なら一晩は続くはずだというのに、……それとも
意識を失ったまま夜が明けてしまったのだろうか?
朝が来ればいつもの習慣で自然に目が覚めそうなものだが、ヴァネ
ッサの意識は、夢ともなんともつかないまどろみを漂っていた。
苦痛と恐怖に打ち据えられた心は、とても夢うつつなどといえる態
でなかったはずだが、今ではむしろ安らぎの中でまどろんでいるよう
な心地よさの中にいた。
(不思議、詞も何もない旋律だけなのに、歌だとわかる……)
どこかで……そうついさっき聞いたような……、しかしヴァネッサ
の思考は次第にまどろみに溶けかけ、まともな考えは続けられなかっ
た。
先ほどとは明らかに違う意識の闇へと堕ちていくヴァネッサは、誰
かが優しく頭をなでてくれたのを感じた。
(……お……とう……さん?)
「もう大丈夫だろう、このまま寝かせといてやろう。」
床に横たわるヴァネッサの頭に当てていた手をゆっくり上げながら、
傍らでじっと見守っていたカタリナを振り返ったのはギアだった。
口を固く結んだカタリナは、そっと優しく愛娘を抱き上げると、ベ
ッドへと運んだ。
布団をかけてやり、その寝顔に苦しさを感じさせるものが浮かんで
いないことを確認すると、ようやく息を吐き出して緊張を解いた。
「私では何もしてやれんのだな。」
そのままギアのほうを見ずに、静かにカタリナの発した言葉は、疑
問ではなく確認であった。
「そうだ。これは剣では解決できない。」
そういうギアは先ほどまでの酔っ払い姿とは打って変わって、真摯
な厳しい目を細めてヴァネッサを見る。
「今の俺には嬢ちゃんを苦しめている力は感じられても鑑定まではで
きない……が、精霊たちが力を貸してくれた。どんな呪いかは知らな
いが、対処的にでも効果がでたなら、解決する方法もあるかもしれな
い。」
「……。」
「グラントが消息を絶つ前にアカデミーで何かを調べていた。そして、
今回俺が洞窟で使った封神術は、グラントにもらったやつだ。あの時
嬢ちゃんは俺の精霊だけでなく、‘やつら’の力も‘見’えていた。」
「……そうか。」
グラントが調べていたこと、やっていたこと、それがヴネッサに関
することだったとしてもおかしくは無い。
「アカデミーにいって魔法を学べばなんとかなるのか?」
「わからん。しかし、外傷とか出ない以上、本人こそが最も正確に状
態を把握できるのは確かなのだから、自身が挑むのが最も確率は高か
ろうな。」
「ここでまってても確率は変わらない……か?」
母親のの歯に衣を着せない答えに、ギアのほうが押されながら肩を
すくめて見せる。
「嬢ちゃんが何も言わないのが、諦めか別の何なのかわからんが、選
択肢を増やすために学ぶのはいい事と思うぜ。」
「まさか初めからそのつもりで顔を出したのか?」
「いいや、本とはグラントの役目だからな。 だが洞窟のあれと、今
夜のこれでそのほうが良いと思ったのさ。」
カタリナもギアとの付き合いは長い。
その口調から純粋に心配してくれていることは伝わっていた。
「……この娘のやりたいようにさせるよ。」
ヴァネッサの呪いが単に苦しませるものなのかそれ以上の何かがあ
るのかカタリナにはわからない。
だからといって軽く見ているわけではない。
だからこそ、ヴァネッサの思うままにさせてやろうと思うのだ。
愛する娘だらこそ。
「そうか。」
短く答えたギアは、カタリナを残したまま静かに部屋をあとにする。
(さて、アベルは興味ありげだったが……)
子を持たないギアだったが、親友の子だからか、あの二人には明る
い未来を与えてやりたいと思っていた。
「ほんと、グラントのやつ、なにしてやがんだか。」
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