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2025/03/10 06:23 |
立金花の咲く場所(トコロ)  12/アベル(ひろ)
PC:アベル ヴァネッサ 
NPC:村のみなさん ギア ランバート
場所:ギサガ村 宿屋

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ギルドアカデミー?」
 アベルは少し考えただけでその言葉に思い至り、ギアに開放されて
ようやく落ち着いて食事を楽しめるわいとテーブルの上を物色する姉
の師でも有る老人に視線を向けた。
「なんか小難しそうなこと調査したり研究してるところだろ? あの
学者の人達とか、そこのおじいさんとかが働いてる所じゃないの?」
 実際村の中にいれば外の話は旅人、ことこの村においては冒険者か
らきくことになるが、その中でアカデミーを名のるのは大体が学者筋
の調査隊だった。
 そのため、アベルに限らず村の外に疎いものなら似たような認識だ
った。
 ギアはアベルの答えに酔っ払い特有のうろんな表情のまま、おかし
そうに笑った。
「たしかにそれもそうなんだがな。 アカデミーはもともと王立アカ
デミーといって、国がたてた教育研究機関でな……。」
 この国には体系付けられた教育機関、つまり学校制度がないのだが、
それはいわば基礎教育から高等教育はおろか、そのさきの研究にいた
るまでを統合する、国内唯一にして最大の学校機関だった。
「ころが、この国は今までの自然崇拝的な思想が影響してて、文化の
面で言うとかなり遅れててな、今の王になってから国内に手付かずの
遺跡や、解明されていない伝承伝説といった謎がかなり残されている
ことがわかったものの、それの専門家がまったく不足してたのさ。」
 エドランス国は国といいつつも、他国に比べるとその組織力はたい
したものではなく各地それぞれで森や海といった自然の恵みで慎まし
く生活するといものだった。
 肥沃な大地といるような平野がなく、贅沢を望まなければ自然の恩
恵だけで生きていける土地柄から、森や山を開拓するでもなく、国の
位置的にも大陸の中央とはかけ離れているため覇道とも関わり無く、
結果的に他国に侵略される危険と無縁なまま生きてこられた。
 しかしいかに野心に薄い国民性とはいえ、ここ数世代でついた他国
との文明の差はさすがに無視できなくなってきた。
 そこで代替わりした王は積極的に国をよくするためにとりくみはじ
めた。
 なんといっても足らないのは人材と考えた王は、教育機関から手を
入れ、特産品として遺跡類に目をつけた。
 それはつまり、冒険者に目をつけたということだった。
 そして冒険者といえば、そのころにはすでにギルドが浸透していた。
 王はうかつなならず者が国内の遺跡を荒らしたりする前にという思
いがあったため、もっとも手っ取り早い方法として、ギルドと協力、
もっといえば、ギルド教えを請うという一風かわった依頼をした。
 報酬として冒険者ギルドの優先権を提示した。
 なにしろ財宝を狙う盗賊ギルドも学徒を自認する魔術師ギルドもま
だ無かったこの国なら、軋轢も何もない。
 こうして冒険者ギルドが参入し、エドランス国で冒険者普通になり、
さらにこの村にも来たような研究者まで当たり前のように存在する頃
には、アカデミーは、ギルドアカデミーと呼ばれるようにっていた。
 アカデミーではそれぞれが自由に学びたいものを学べ、それぞれに
定められた資格はそのまま世間でも評価されるということもあり、か
つての辺境の田舎国は人材が各地から集まるようになった。
 アカデーの出身者はそのままギルドで冒険者になったり、国に使え
たりと世に広がり、エドランスをでて各国で活躍するものも現れだした。
「つまり、剣も魔法も、ちゃんと習うならアカデミーってな。」
 もし大陸の中央であれば、もしくは平野の多い豊かな国であれば、
ここまでアカデミーは育たず、またギルドの協力ももっと控えめであ
ったかもしれない。
「なにしろ、お前の両親だって昔いってたんだぜ。」
 へー、と半分聞き流していたアベルが、さすがに聞きとがめる。
 あからさまに目の色を変えた少年を面白そうに見るギアは、さらに
酒を口に運ぶ。
「はは、あのふたりだけじゃねぇよ。俺もそうだが、ちゃんと学ぼう
と思ったら、この国では特にだが、アカデミーにいくのさ。」
「ん? ひょっとして、ラズロとあんたは?」
 なんぜだか、ふと突然気になったアベルは両親の話よりもそれをきい
ていた。
「お、きがついたか? そう、俺じゃ剣のスキルは教えられんからな。
一度アカデミーで基礎からやらせてみようとおもってな。」
 その言葉はアベルは軽い驚きを感じさせた。
 あの洞窟で見たラズロの剣術はかなりのもの(アベル主観では)だっ
たのに、あえてアカデミーということは、……。
「アカデミーってそんなにすげーの?」
「おま……。 ほんとになーんもわかってねぇんだな。 カタリナもそ
だったっていったろ?」
「……。」
 そうだった、と改めてその意味を考えるアベル。
 ギアはそんな少年をにやにやとおもしろそうに眺めていた。
「ま、あれだ。 本気で上を目差すなら、どうしたって外に行くしかね
ぇ。 アカデミーってとこは、その目ざす先にいるやつらがうようよい
て、そこへの近道を敷いていてくれるとこって事だな。」
 それは軽い口調だったが、アベルの胸には重く響いた。
「っと、空になっちまった。」
 お気に入りなのか、自分の席の前に3本も並んでいるのと同じボトルを
ふりながらギアが残念そうに言ったのをきいて、はっと気づいたアベルは
「あ、かわりもってくるよ。」
と、空のボトルと皿を盆にのせ始めた。
「おーい、アベル!」
 そんなアベルの背にカタリナの怒鳴り声が浴びせられたので振り返っ
て見てみると、なにやら手振りで別のテーブルを指している。
「ありゃー……。」
 少し困った様子でこちらをみるアベルにギアは笑いながら手を振って
やる。
「はははは、カタリナはこえーからな。いいさ、自分でとってくるよ。」
 そういうと、よっこらせと立ち上がって、ふらふらと歩きだした。
「わりぃ、ごめんね。」
「いいさ、ちょうどカタリナとも話ししたかったしな。」
 ギアは恐縮するアベルにそういってやると、カタリナのいる厨房へと
ほどよく酔いの回ってきている客たちの間を掻き分けていった。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 

(これはやっぱり……)
 まだその日には数日あったはずだった。
 だが、日が落ちるにしたがって、ヴァネッサには馴染み深いいつもの
あの苦しさがます一方だった。
 あの洞窟のときから、まるで発作がひどくなるあの夜のように、自分
の心臓―――いや魂に爪を立てるあの呪いの力が騒いでいる。
 これまで家族に心配をかけたくない一身で、定期的な発作として事前
に目のつかない自室に引きこもっていたのだが、いつものというには日
がずれていたこともあって、つい手伝いを抜けるタイミングを逃してい
たのだ。
 気のせいを期待したヴァネッサだったが、このままでは深夜といわず
かなり早くに倒れかねない。
「あの、やっぱり休ませてもらいます。」
 申し訳なさそうにいうヴァネッサに周囲の女性は、むしろほっとした
ようなかおになった。
 なにしろヴァネッサは村でも特に大人の女性には可愛がられているこ
ともあり、そんな少女が苦しそうに仕事をしていたのだから、一緒にい
た女性達は気が気でなかったのだ。
「お母さんは?」
 律儀に断りを入れようとするヴァネッサに、普段から何かと面倒を見
てくれる小母さんの一人が首を振って答えた。
「カタリナなら、さっきギアって例の昔馴染みによばれていったよ。話
中だと思うから、ヴァネッサちゃんは先にお休みよ。」
「そうだよ、お母さんにはわたしらがいっとくからさ。」
別の小母さんも加わってそういわれては、ヴァネッサも頼みますという
しかないので、おとなしく言うとおりにした。
 実際、かなりつらくなってきていたのも事実なので、助かってもいた
のだ。
「それじゃあすいません。」
 ヴァネッサはそういうと、厨房に作られた勝手口から裏へと出た。
 この店のすぐ裏に家族で暮らす家があるのだ。
 外はすっかり暗くなっていたが、目を瞑っていてもあるけるほどにな
れた道なので、人目を逃れたことにむしろホッとして、家のほうへと歩
きだした。
 

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2007/02/12 21:32 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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