忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/03/10 06:54 |
捜し求める者たちの軌跡6「消えた少女の捜索依頼」/ギゼー(葉月瞬)
PC :ギゼー メデッタ サノレ アイリス エスト
NPC:ニーニャの母親テレゼア・パルヒャー
場所 :ソフィニア市街・レストラン~ギルド
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 アイリッシュ・ミストと名乗った女性は、妖艶なほど美麗だった。
 だが、どこか違う雰囲気を醸し出していた。女性――というには余りにも完
璧すぎた。完璧すぎる女性など、この世には存在しない。だからこそ、ギゼー
は名乗られたとき即座に反応を示さなかったのだ。それに何故か、何処と無く
女性の色香を感じられなかったのだ。
 アイリスは名前を名乗っただけで、そのままある一点を見詰めて目を瞠っ
た。そして優雅に微笑むと、メデッタから目を離さずに言った。

「あら奇遇ね。こんなところで漆黒の竜神と出会うなんて。私も冒険者なの
よ。よろしくね」

 そして一つウィンクして見せると、微笑を残しながら店を出た。
 一方メデッタの方はというと、アイリスから目を離さずにずっと彼女の言葉
に耳を傾けていた。一言一句逃さぬように聞き入れているかのように。アイリ
スに興味があるようにも見えたし、然して興味を示していないようにも見え
た。


     ***


 気が付いたら黒い肌の目つきの悪い青年も居なくなっていた。恐らく店を出
て行ったのだろう。彼が何処で何をしていようと、今のギゼー達には関係のな
い話であった。
 ギゼー達は最初に席を取った卓に再び腰を落ち着けると、いつの間にか運ば
れていた料理を目の前にして顔を突き合わせて相談事に集中する事にした。

「さっきの、消えた少女の事、どう思う?」

 ギゼーが早速、口を開く。付いて出た言葉は至極もっともな疑問だった。そ
の疑問に答えるように何度か頷いて言葉を綴るメデッタ。

「ああ。明らかに先程の現象は異常だった」
「見るからに不自然だったーよ」

 サノレも鳥の腿肉を口に頬張りながら賛同する。

「だな。母親らしき人も必死になってたし」
「君は女性が絡むと、直ぐに興味を示すな」

 二人はスパゲティを軽く口に運びながらも、会話を続ける。
 ニーニャの母親は美しかった。絶世のとまではいかないまでも見目麗しく、
ギゼーの頬を染めるには十分だった。ギゼーは何故かそのニーニャの母親が気
になっていた。

「とりあえず、ギルドに行けば何か情報がつかめるかもしれない。よし! 
俺、ギルドに登録する! 冒険者になる!」

 ギゼーが拳を握り締めて決意を表すと、メデッタが半目であきれがちに問い
質した。

「まさかとは思うが、あんな美女の依頼を受けられるなら一にも二にも無く冒
険者への道を歩む、とか言う気じゃ……」

 ギゼーは親指を立ててそれに答えた。
 メデッタは米神を押さえて苦悩の表情を浮かべた。
 サノレは、そんな二人を交互に見詰めながら皿にあった鳥の唐揚げを平らげ
ていた。


     ***


 ギルドは例の如く賑わっていた。
 そこにはあの紫色の髪の女性も、色黒の目つきの悪い青年も居た。そして、
何故か先程消えた少女の母親と思しき女性もいた。ニーニャと少女の名前を連
呼していたあの、女性である。見目麗しいその姿は、途端にギゼーの目を奪っ
た。
 彼女を観察していたら、彼女が何故このギルド斡旋所に来たのか、その理由
が解った。彼女は、依頼を申し込みに来たのだ。ニーニャを失った悲しみを乗
り越えて、ニーニャを捜索する依頼をするためにここに来たのだ。
 途端にギゼーの両の目は光った。何に燃えているのかは想像に難くない。彼
は、ニーニャの母親を助けるべく行動に移した。即ち、冒険者ギルドの登録と
いう行動に。

「あのう。ここで冒険者ギルドに登録出来るって聞いてきたのですが……」

 語尾は何故か臆病だった。

「ん? ああ。冒険者希望者ね。……これと、これに必要事項を記入して。
あ、それと、既にハンターになってる人の紹介も必要なんだけど…………君の
場合、大丈夫みたいだね」

 応対に応じたギルド員の青年は、ちらりとギゼーの後ろに居る漆黒の竜神に
目を走らせると、そのまま下を向いてしまった。ギゼーは用紙を何枚か受け取
るとその紙に記入するべくペンを取った。奇しくもニーニャの母親と同じ姿勢
で、同じようにギルドの用紙に記入する事になったギゼー。至福のひと時に身
を振るわせるギゼーであった。



「ちょっと待ってて下さいね」

 そう言ってギゼーが書いた書類を持って奥へと引っ込んだ受付係の青年。
 暫く経って、奥から彼の青年が出てきた。手には何やらカードらしきものを
持っている。材質は不明。キラキラ輝いているようにも見えるし、まるでただ
の紙の様にも見える。書かれている内容は、ハンターの氏名、年齢、ギルドラ
ンクや血液型まで書いてある。

「これが彼の有名な、ギルドカードか……」

 をのカードを手にしたギゼーは、感慨深げに翳してみたり眺め見たりしてい
た。

「一年後に更新に来てくれ。更新だけなら各地にあるギルド支部でも行ってい
るよ」

 そうこうしている内に、ギルドに新たな依頼書が貼り出された。
 内容は以下の如くである。

***********************************

依頼人:テレゼア・パルヒャー

依頼内容:ニーニャ・パルヒャーを探してください。
     ニーニャは今日、街角で突然消えました。
     近くには魔方陣のような紋様が残っていました。
     どうか、ニーニャを、ウチの娘を探してください。

報酬:銅貨500枚

***********************************

 ギゼーはその依頼に、一も二も無く飛びついた。

PR

2007/02/12 17:42 | Comments(0) | TrackBack() | ▲捜し求める者達の軌跡

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<探し求める者たちの軌跡5「つまらない男」/アイリス(とばり) | HOME | 捜し求める者たちの軌跡6 「歯車」/サノレ(ちあきゆーか)>>
忍者ブログ[PR]