PC ギゼー メデッタ アイリス エスト サノレ
場所 ソフィニア表通り・裏通り
NPC 小男
--------------------------------------------
時は夕刻、ソフィニアギルド前の大通り。
「さて、と」
無事に初仕事を請け負い、ギゼーはひと息つく。
力不足だとギルドに断られるのではないかと。
そうでなくとも、依頼人は新米に任せてくれるだろうかと。
申請をしてから職員が奥から戻ってくるまでの間、そんな不安ばかり頭を掠めていた
のだった。
ところが、意に反して、職員は相変わらず事務的な態度で判をつき、簡素な応接室で
会ったニーニャの母親も「お願いします」を繰り返すだけで、彼の素性やランクにつ
いては一切触れなかった。
そう、こうなれば後は。
「とっとと娘を見つけるだけさ!そしてあの人は俺に感謝するっ!!」
握りしめた拳を、天に向かって突き上げるギゼー。
通行人がちらちらと見ているが、彼はちっとも意に介していない。
どうやら、声になっていることにまったく気付いていないらしい。
「しかし、ギゼー君」
それまで沈黙を保っていたメデッタが、唐突に口を開いた。
「何か忘れてはいないかね」
「何か、って?」
「そこにいるお嬢さんのことだ。成り行き上連れて来たが、我々の仕事に巻き込むわ
けにもゆかぬだろう」
メデッタの言うことも道理であった。
ギゼーとメデッタはこれまでパーティを組んできた間柄であり、互いに冒険者である
から、何の問題もないが、サノレはさっき偶然知り合ったばかりで、しかも冒険者で
もない。
このまま彼女を同行させれば、幾度となく危険な目にさらすことになるだろう。
しかし、当のサノレはというと、ギゼーのギルド入りを我がことのように喜んだこと
といい、レストランでの食べっぷりといい、既にパーティの一員であると思っている
ように見受けられた。
「お嬢さん」
「なーに?」
「ここから先は我々の仕事だが、お嬢さんはどうするかね?」
サノレは意味がわからないといった風にメデッタを見た。
そして、当然だと言わんばかりに答えた。
「どうって、ニーニャ探すに決まってるーよ」
一呼吸おいて、メデッタは低い笑いを漏らした。
ギゼーもそれに同調するように笑い出す。
何がおかしいのーよ、とサノレは唇を尖らせる。
「いや、なんでもない…よろしく頼む、サノレ嬢」
「もっちろーん!」
「よろしくな!」
「お礼は山分けーね」
「…………」
「あっはは、冗談ーよ!」
苦虫を噛み潰したような顔をするギゼーの肩をばしばし叩きながら、サノレは声をあ
げて笑った。
「なんでメデッタさんだけ…」
「でもね、あたしギゼーも嫌いじゃないのーよ?15年後が楽しみだーわ」
「15年……」
そんな三人を、向かいの建物から鋭い眼が覗いていた。
そのころ、裏通りでは。
「あら、失礼」
ふらつく足取りで向かってくる小男を、アイリスは優雅な動きでかわす。
しかし、男は急に向き直ると、アイリスの腕を掴んでものすごい力で引き寄せた。
不意を衝かれ、アイリスの両腕は自由を奪われてしまう。
「あら、積極的なのね」
「こそこそ嗅ぎ回っているのはお前か?」
生臭い吐息が耳元で囁く。
「…何のことかしらね」
「とぼけるな」
後ろから掴まれた腕にさらに力がこめられ、骨が軋む。
貧弱な小男のくせに、どこにこんな力が潜んでいるのか。
アイリスは声をあげないように歯を食いしばっていたが、耐えかねたように、艶かし
くも聞こえる吐息を漏らした。
「さっき会っていた奴と、何を話していたんだ」
それはあのつまらない男か、漆黒の竜神か、銀髪のエストなのか、それとも。
「さぁ、何だったかしらね…」
ほぼ無関係に近い自分にまでこんな応対をするとは、よほど知られたくない秘密なの
だろう。
いずれにせよ、面白いことになってきた。
「…ねぇ、あなたの御主人様に会わせてくれない?きっとお役に立てると思うわ」
腕の痛みに眉をしかめながらも口元には妖艶な微笑をたたえ、アイリスは男を誘い込
む。
「本気か…?」
男の束縛がゆるむ。
その一瞬を見逃さず、アイリスは男の手を振り払った。
「嘘だと思うならいいわ」
男より頭ひとつ分背の高いアイリスは、男を見おろすように言った。
その雰囲気に呑まれてか、男は頷いた。
「…よかろう」
それを聞き、アイリスの濡れた唇が笑みを形作る。
そして、男の顎をとらえて顔を近づけると、低い声で囁いた。
「私を満足させてくれる?」
場所 ソフィニア表通り・裏通り
NPC 小男
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時は夕刻、ソフィニアギルド前の大通り。
「さて、と」
無事に初仕事を請け負い、ギゼーはひと息つく。
力不足だとギルドに断られるのではないかと。
そうでなくとも、依頼人は新米に任せてくれるだろうかと。
申請をしてから職員が奥から戻ってくるまでの間、そんな不安ばかり頭を掠めていた
のだった。
ところが、意に反して、職員は相変わらず事務的な態度で判をつき、簡素な応接室で
会ったニーニャの母親も「お願いします」を繰り返すだけで、彼の素性やランクにつ
いては一切触れなかった。
そう、こうなれば後は。
「とっとと娘を見つけるだけさ!そしてあの人は俺に感謝するっ!!」
握りしめた拳を、天に向かって突き上げるギゼー。
通行人がちらちらと見ているが、彼はちっとも意に介していない。
どうやら、声になっていることにまったく気付いていないらしい。
「しかし、ギゼー君」
それまで沈黙を保っていたメデッタが、唐突に口を開いた。
「何か忘れてはいないかね」
「何か、って?」
「そこにいるお嬢さんのことだ。成り行き上連れて来たが、我々の仕事に巻き込むわ
けにもゆかぬだろう」
メデッタの言うことも道理であった。
ギゼーとメデッタはこれまでパーティを組んできた間柄であり、互いに冒険者である
から、何の問題もないが、サノレはさっき偶然知り合ったばかりで、しかも冒険者で
もない。
このまま彼女を同行させれば、幾度となく危険な目にさらすことになるだろう。
しかし、当のサノレはというと、ギゼーのギルド入りを我がことのように喜んだこと
といい、レストランでの食べっぷりといい、既にパーティの一員であると思っている
ように見受けられた。
「お嬢さん」
「なーに?」
「ここから先は我々の仕事だが、お嬢さんはどうするかね?」
サノレは意味がわからないといった風にメデッタを見た。
そして、当然だと言わんばかりに答えた。
「どうって、ニーニャ探すに決まってるーよ」
一呼吸おいて、メデッタは低い笑いを漏らした。
ギゼーもそれに同調するように笑い出す。
何がおかしいのーよ、とサノレは唇を尖らせる。
「いや、なんでもない…よろしく頼む、サノレ嬢」
「もっちろーん!」
「よろしくな!」
「お礼は山分けーね」
「…………」
「あっはは、冗談ーよ!」
苦虫を噛み潰したような顔をするギゼーの肩をばしばし叩きながら、サノレは声をあ
げて笑った。
「なんでメデッタさんだけ…」
「でもね、あたしギゼーも嫌いじゃないのーよ?15年後が楽しみだーわ」
「15年……」
そんな三人を、向かいの建物から鋭い眼が覗いていた。
そのころ、裏通りでは。
「あら、失礼」
ふらつく足取りで向かってくる小男を、アイリスは優雅な動きでかわす。
しかし、男は急に向き直ると、アイリスの腕を掴んでものすごい力で引き寄せた。
不意を衝かれ、アイリスの両腕は自由を奪われてしまう。
「あら、積極的なのね」
「こそこそ嗅ぎ回っているのはお前か?」
生臭い吐息が耳元で囁く。
「…何のことかしらね」
「とぼけるな」
後ろから掴まれた腕にさらに力がこめられ、骨が軋む。
貧弱な小男のくせに、どこにこんな力が潜んでいるのか。
アイリスは声をあげないように歯を食いしばっていたが、耐えかねたように、艶かし
くも聞こえる吐息を漏らした。
「さっき会っていた奴と、何を話していたんだ」
それはあのつまらない男か、漆黒の竜神か、銀髪のエストなのか、それとも。
「さぁ、何だったかしらね…」
ほぼ無関係に近い自分にまでこんな応対をするとは、よほど知られたくない秘密なの
だろう。
いずれにせよ、面白いことになってきた。
「…ねぇ、あなたの御主人様に会わせてくれない?きっとお役に立てると思うわ」
腕の痛みに眉をしかめながらも口元には妖艶な微笑をたたえ、アイリスは男を誘い込
む。
「本気か…?」
男の束縛がゆるむ。
その一瞬を見逃さず、アイリスは男の手を振り払った。
「嘘だと思うならいいわ」
男より頭ひとつ分背の高いアイリスは、男を見おろすように言った。
その雰囲気に呑まれてか、男は頷いた。
「…よかろう」
それを聞き、アイリスの濡れた唇が笑みを形作る。
そして、男の顎をとらえて顔を近づけると、低い声で囁いた。
「私を満足させてくれる?」
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