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2024/11/01 08:00 |
番劇/ランディ(スケミ)
場所 : ソフィニア・マジエ氏邸宅
PC : アダム ランディ シックザール
NPC: ル・グラン=マジエ
―――――――――――――――――――――

「さて、それでは早速以来内容をお教えしたいと思います。」

そう言ってアダムさんの依頼人――マジエ氏は書斎にあるソファの内、周囲に
本が高く積まれている方へと座った。
どうやらこのソファは日常的に使われているらしく、ソファの前におかれたデ
スクの上には開かれた本が何冊が規則正しく置かれている。
デスクの上だけではなく本棚に置かれた本も、大きさやページ数、本のジャン
ルなどで等間隔に整頓されていた。
この本で満ちた部屋を見ていると、マジエ氏の趣味がひしひしと伝わってく
る。
すなわち、読書・または本の蒐集。

(これは同時に読んでる……ということなのでしょうか。)

視線を目の前のデスクにうつし、ぼんやりとそう思う。
デスクの前に開かれた本は、よく見るとそれぞれ別の言語で記述されている。
物質や生き物を元にしたと思われる象形文字に近い文字やその系統とはまった
く外れた魔術文字。
本の冊数は十数冊。
この様々な言語をマジエ氏は理解しているのだろうか。
もちろん、僕たち魔族でもそのようなことを軽々と行う者はいる。
しかしながら、人間の身でそこまでできるとは中々侮れないものだ。

(人間……かぁ。)

僕の隣に座るアダムさんは、真面目な顔をしてマジエ氏を見ている。
その表情にはめんどくさそうな色がちらりとにじみ出ており、アダムさんがこ
の依頼に乗り気ではないことを表していた。
例え一時期のものであろうとも、惑星や空間、次元、世界軸を異なる無数の魔
界を統一した魔王である彼。
もちろん、僕の魔王様が支配する第二魔界も例外ではない。
そんな彼と、ただの人間であるアダムさんがどのようにして出会ったのか。
個人的に興味をそそられるものである。
まあ、人間人間いっている僕も、現在はその人間に近いものなのではあるが。

「これは、私がもっとも愛する本のうちの一つです。」

そう言ってマダム氏は本棚の隣にあるガラスでつくられたショウケースから、
慎重に一冊の本を取り出した。
古ぼけた、オリーブ色の本。表紙は皮でできているのだろうか、丈夫そうだ。
マジエ氏の手にま真っ白な手袋がいつのまにかはめられており、彼がいかにそ
の本を大事にしているかがわかる。

「物騒な本だな。」

堂々とそう漏らすアダムさん。いつの間にか依頼人に対する敬語がなくなって
いる。
……って、そういうことを持ち主の前で言ってしまってもいいのでしょう
か……。
飄々とした外見とは裏腹にアダムさんはとても我が強いのかもしれない。
だけど、アダムさんの言葉は確かだった。
――なぜなら、その本を見た瞬間。僕の身体は不覚にも戦いてしまったから
だ。

「そのことは否定しません。しかし、こんな存在になってしまった罪はこの本
にはないのです。」

優しげに、まるでわが子をなだめるように本の表紙で撫でる。
しかしその本はまるで泣き止むことなく、声にならない咆哮をあげている。
いや、それはもう咆哮というよりは単純な力の放出に近い。
無遠慮なその放出が、酷く、癇に障る。
僕は無意識に拳をきつく握った。

「……俺も骨董品には興味があってな。どこで手に入れたのか気になっただけ
さ。」

「それを貴方に教える必要は皆無です。」

その返答を予想していたのか、アダムさんは「はいはい。わかりましたよ。」
と肩をすくめる。
それにしても先ほどまで元気だったシックザール様(仮にも魔界統一を成し遂
げた方に「さん」付けは無礼だろう)が静かだ。
仕事モードに入ったアダムさんがかまってくれなくてすねてるのだろうか?
――嗚呼、それにしてもあの本を誰か止めてはくれないだろうか。
ひどく、身体の中がかきまわされる。

「依頼はこの本の番である、桜という木から作られた箱を入手することで
す。」

差し出された写真。
セピア色のその写真には色素の薄い木の箱と、マジエ氏の持つ本が写ってい
た。

「An angel's miniature garden……<天使の箱庭>。この本の、そして番の名
です。」


放出は絶え間なく僕を襲う。
箱庭を失った生身の天使はただただ鳴き続けるのみだ。



――ああ、その本の中に、天使が、いる。
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2007/01/17 23:35 | Comments(0) | TrackBack() | ▲劇(まめ子&アダム&ランディ)

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