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2024/11/01 07:57 |
光と影 第十回「絶望」/ウェイスター(ノーマン)
PC:ウェイスター ヴォルボ
NPC:黒ローブの男達 ウォダック テスカトリポカ
場所:ソフィニア魔術学院
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

バトルアックスは儚く砕け散った。テスカトリポカにあたる直前、見えない壁…い
や、なにかの障壁なのだろう。それにぶつかり、粉々になった。

「くっ!」

ヴォルボは柄だけになったバトルアックスを投げ捨て、渾身の体当たりを試みる。
ドカァン
渾身の体当たりは、またしても儚く散った。というか、はじき返されたわけだが。
どうやら、あの障壁はあらゆる衝撃を弾くようだ。傍観していたウェイスターはそれ
を感じた。
そして、低い…どこまでも低い地を這うような声が室内に響いた。

「…貴様が、我を呼び出した者か…。」

幾度となく繰り返し体当たりを放つヴォルボをよそに、テスカトリポカはウォダック
のほうを向き、値踏みするように見下していた。
ウォダックは、高揚感と恐怖でがたがたになり、震える声で「そうだ。」と、かろう
じて言った。

「ほほう。我を呼び出すとはいい度胸だ。…生贄をささげるまでして…。して、我に
何のようか。」

声だけで命を奪っていきそうな威圧感。多分、ヤツが小指を弾くほどの力で人間の頭
吹き飛ぶことだろう。
ウォダックは、すっかりテスカトリポカの放つ雰囲気に飲まれていた。が、質問に答
えることぐらいはできた。

「あ、あ…の、その…。ボクを変えてくれ…。」

おずおずと話し始めるウォダック。

「ボクは…容姿もこんなんだし、スポーツだってできない。…だから、魔法を学んだ
んだけど…それだって…。だから!ボクを…!」
「承知した。」

瞬間。辺りが闇に飲まれた。ゆらゆらと揺れるろうそくの炎や、わずかな光源が消え
うせた。そして、数秒後、何事もなかったうように光が戻る。

「ははッ…。」

魔方陣の中からテスカトリポカの姿が消えていた。ついでに、生贄にささげられた少
女たちも血の一滴の後も残さず消えていた。
ヴォルボは、突然いなくなったテスカトリポカを探した。
それらしい姿はなかった。姿はなかった。…が、その邪悪なオーラは漂ったままだっ
た。
その発生源は…あのヲタクだ…。

「…ははッ。なんだこれ、すごい、体中に力がみなぎっている!」

不気味に笑うウォダック。容姿は大して変わっていない。ガリガリで背が低く、ひ弱
そうな外見に違いはない。だが、眼鏡の奥、細い目が暗い光を放っていた。

周りにた数人の学生達もウォダックの豹変振りに気付いていた。いつもは、身分の低
いものには高圧的で、自分より上のものにはおびえて暮らすだけの人間だったはずな
のに…。

「ははははははッッ!」

笑い転げるウォダック。ヴォルボはなんとなく思った。あのヲタクの中にテスカトリ
ポカが入り込んだだろう。理屈は分からないが、あれだけ凶悪なオーラを放っていた
存在だ。ましてやここは魔法学院。なにかしらの魔力などを助長させる装置があった
のかもしれない。
拳を握り、ウォダックに殴りかかる。

「うぉぉぉおおおお!」

バチンッ
妙に低い音がしたと思うと、ヴォルボは宙を舞っていた。
ウォダックのデコピンでだ。

「カハッ…。」

そして、短く息と血を吐いて動かなくなった。かすかに、胸が上下しているから死ん
でいないだろうが、放っておいていいとは思えない。
ウェイスターは、ようやく我に返った。
正直、ヴォルボがここにいる理由は良く分からないが、彼がまずい状況に有るのは理
解できた。だが、どうできるといえよう。多分、あのヲタクはもはやヲタクではな
く、 テスカトリポカであるのは間違いないだろう。となれば、何ができるだろう
か。
ヴォルボの戦闘能力がどの程度かは詳しく知らないが、さっきの様子を見ると決して
弱くはないだろう。それが、いとも簡単にだ。
真正面からの戦闘では勝ち目はないだろう。なら、どうする?

「…なんだったんだ?さっきのドワーフは。」

しれっと言ってのける。ヲタクが、だ。
周りの学生は、それを機に出口に向けて走り出す。なにかが間違っている。それに気
付くと、その場にはいられなくなったのだ。
ばたばたと走り抜ける学生たち。取り残されたのは、ウォダックとウェイスター、
ヴォルボだけだった。

薄暗い部屋。黒い世界が始まった。
一瞬だった。ウォダックが、ウェイスターと距離を詰める。咄嗟に剣を取るウェイス
ター。

「オオッ!こんなに早く歩けるなんて!」

驚愕のウェイスターとは対照的に歓喜の声を上げるウォダック。

「このッ!」

剣を横に一閃。が、それを跳躍してかわすウォダック。

「ははッ!」

天井まで跳ね上がり、天井を蹴ってウェイスターに向かって落下する。
ウェイスターはかろうじて顔を上げた。
落下と脚力をあわせた推進力に加えた、テスカトリポカの力でウェイスターの頭を叩
きおろす。
ばし
目の玉が飛び出るくらいの衝撃を受け、ウェイスターはあっけなく昏倒した。
少しだけ残った意識の中で、ウェイスターは絶望を思った。

高笑いするウォダックの声だけが暗い地下室に鳴り響いていた…。

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2007/02/12 17:19 | Comments(0) | TrackBack() | ▲光と影

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