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2025/03/10 12:35 |
光と影 第十四回「畏怖」 /ウェイスター(ノーマン)
PC:ヴォルボ ウェイスター
NPC:ウォダック(テスカトリポカ)
場所:ソフィニア郊外 マリリアン宅
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

見えない。何も。感じない。どれも。信じない…。正義なんて…。

ウェイスターは暗い意識のふちで、そんなことを思っていた。確か、テスカトリポカ
とかいう者の力を受けたヲタクに完膚なきまでに叩きのめされたはずだ。そのせいで
全身はボロボロで、次に目覚めるときは天国とか地獄とかいう所なのだろうと、なん
となく思っていたくらいだ。

「気がつきました?」

聞き覚えのある声だった。
あぁ、確かヴォルボというドワーフだ。とすると、まだ私は死んでいないようだ。
少し気を緩めると、ウェイスターはまた気を失った。深い闇に落ちていく。
ヴォルボは、ウェイスターが気を失ったと知ると、その頭に濡れタオルを置き、席を
立った。

「……。」

見上げて写るのは、何の変哲も無い白い天井。多分、この景色をマリリアンも見たこ
とだろう。なにせここは彼女のうちだ。
満身創痍のまま、ふらふらと歩いていたらたどり着いたのはここだった。不法侵入と
は思ったが、誰がそれを咎めるだろう。住人はもうすでにいないのだ。彼女はいない
し、彼女の家族もまたいなかった。とゆうか、無かった。
彼女は不幸な身の上だったらしい。幼いころに両親は早世し、育ての親だった祖母も
また、去年肺を患って亡くなった。

「?」

ヴォルボは自問した。何故こんなことを知っているのかと。そして、正面を見据えた
とき答えが出た。

「…あぁ、そうだよなぁ。君自身は知っているよね…。」

おぼろげに揺れる影として、マリリアンの姿を見た。俗に言う霊というやつだ。あの
ときの彼女は幻ではなかった。
それは彼女の無念が故だろうか、それともか彼女への思いの強さゆえか。今頬を伝う
涙のわけがヴォルボにははっきりしなかった。

    *□■*

幾日かたったある日のことだった。
良く晴れていい天気だった。ウェイスターはベットから起き、自分が歩けることを確
信するとヴォルボにある提案をした。

「…私はあの邪神を討つつもりだ。」

「はい。ボクもです。」

「策はある。やつが邪神だというのならば、わがカミカゼ機動隊本部に奉納されてい
る邪滅の剣、『麗黒剣』をもってすれば…たやすくとは言わないが…少なくとも討つ
可能性は大きくなるはずだ。」

「しかし、今のヤツは人間に取り付いていて通常の攻撃でも倒せるはずですよ?なに
も、そこまで回りくどい真似をしなくとも…。」

「ふむ…。かもしれん。しかしだ、前回の戦闘で分かったのは純粋に戦闘力の差が大
きいことではないだろうか?」

「つまり、現時点では勝てないと?」

「残念ながらそう考えるのが妥当だ。一時の感情で命を捨てるのでは、亡くなった者
に対し失礼に当たる。」

「で、その剣はどこに?」

「本部、つまりジュデッカだ。長旅になるだろう。」

ヴォルボは、ウェイスターのこの提案に対し、疑問を持った。この男は、適当に理由
をつけて戦闘を先延ばしにしたいのではないか、と。そして、なによりその剣を自分
が作る事だって可能だ。あの髪飾りさえあれば自分にも勝機があった。そう考えれば
わざわざ取りに行く気にはなれなかった。

「ウェイスター殿、正直に言う。アナタはもしかして、邪神との戦闘を避けたいがた
め、言い逃れを探しているのでは?その剣の信憑性だってマユツバだし、なによりそ
ういった類の武具を作ることはボクにだってできるんです。」

ウェイスターは一瞬黙って、うつむいた。そして、うめくような声で「あぁ。」とだ
け言った。その姿は哀れみさえ感じさせる哀愁を纏っていた。ヴォルボは視線を外
し、無期限に気まずい空気が流れた。

 
      *□■*

ソフィニアの魔法学院では、地下講堂が激しく破壊されていたことに対する噂が飛び
交っていた。
そんな中、教室の片隅でウォダックは青い顔をさらに青くしてがたがたと震えてい
た。

「あぁ…。」

その風貌と性格ゆえにクラスのつまはじき者である彼。そんな彼の様子がおかしかっ
たことなど誰も気がつかなかった。そんなことより、根も葉もない噂話をしている方
が大抵の学生にとって刺激的だった。噂はもっぱら召喚に失敗したとか、魔法の暴発
だとかありきたりな発想だったが、それでも学生というのはこういったスキャンダル
を好むものだ。
そして、その日の地下には彼がいたという噂も当然飛び交った。なにしろ、彼は実際
にそこにいたのだ、普段はろくに話もしないクラスメイトに「あの日、何があっ
た?」などと聞かれる。ウォダックは適当にお茶を濁し、自分が邪神に取り付かれた
ことなどは話はしない。

ただ、がたがたと震えていた。

「ヨォ、オッサン。」

不意に声がかけられた。聞き覚えは無い。

「だ、誰?」

バン・チヨダこと、番長バンだ。ウェイスターに無理やり道案内させられた男。その
男がふてぶてしく、ウォダックの机に手を置いていた。

「オッサン。あの日、あそこで何があったんだよ。言えよ。」

ウォダックは、視線をそらした。こういった連中はすぐ暴力に走るから嫌いなんだ。


「黙ってんなよ。」

少し荒めの語気で問い詰める。

「あ…。いや、別に…。」

「別に何もなくて、どうして地下講堂に穴が開くんだよ?オッサン。」

「ど、どうして君がそんなことを…。」

「別に、興味がわいただけよ。」

「…なら、帰ってくれよ。忙しいんだ。」

「つれないこというなよ、なぁ、オッサン!」

バンは苛立ってウォダックの胸倉を掴みあげた。

「や、やめてくれよぉお!」

驚いたウォダックは、胸倉にあるバンの手をはたいた。
あぁ、やってしまった。と、ウォダックは思った。いつも、ここで思わず出た一発で
相手の反感を買って、ボコボコにされるのだ。
ウォダックにはその経験が7回あった。だから、思わず目をつぶったままじっとして
いた。

ドガァアアアッ

暫くしても、何も起こらないので、恐る恐る目を開けると、そこには数メートル吹っ
飛ばされ、白目をむいたバンがいた。

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2007/02/12 17:20 | Comments(0) | TrackBack() | ▲光と影

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