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2024/05/16 23:31 |
光と影 第二回「その男、いい加減につき」/ウェイスター(ノーマン)
PC:ウェイスター(ヴォルボ)
NPC:デブスな少女
場所:ソフィニア市街
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

私はウェイスター・ロビン。カミカゼ機動隊というテロ組織に所属する危険分子の一
人だ。
だが、間違わないで欲しい。テロリストというのはあくまで世間の認識だ。カミカゼ
機動隊は悪に対する悪、つまり悪党を討つために組織された非営利組織である。世の
悪党をうち、世界を浄化するのが目的だ。その辺よろしく。

ウェイスターがソフィニアの「トラベラーズイン」という冒険者の酒場に着いたのは
昨日のことだった。彼は、カミカゼ機動隊の命を受け、各地の悪を討つために旅をし
ていたところだ。宿はにぎわっており、静寂を好む彼はそれを少々疎ましく思いなが
ら、カウンターでちびちび酒を飲みはじめた。壁に貼られた手配書の数々。彼は辟易
した。どれも欺瞞に見える正義。利益本位で誠意の無い依頼。安い酒をあおり、宿を
後のした。ふと、脇に目をやると決して美人じゃない…いや、むしろブス、しかもデ
ブな女が、同じく寸胴な男と話をしていた。男は多分、ドワーフなのだろうが、女の
方はただの人間だろう。デブスという言葉が良く似合う女だった。

「しくしくしく。私、少し前に誘拐されたんだけれど、私みたいなブスでデブな女は
必要ないって放り出されたの。あんまりだと思わない?」

などと話している。正直、あんなブス女がどうなろうと知ったことではない。むし
ろ、放り捨てた男はなんて懸命なのだろうと感心してしまう。いや、でも、それなら
誘拐するなって話か。なんてことを考えながら、無意識のうちに二人の会話を聞いて
いた。深い意味は無い。

「~でも、とても邪悪な匂いがしたの」

突如耳にした言葉はカミカゼ機動隊であれば素通り出来ない単語だった。邪悪!悪の
上に邪までつく忌まわしきのろいの言葉だ。デブスは知ったことではないが、悪を討
つのがカミカゼ機動隊の使命。これは何とか便乗しなければならないだろう。

「よし、その問題、ボクが解決してあげますよ。安心して下さい」

ドワーフの男が頼もしげに言っていた。よっぽどなフェミニストか熱血漢かは知らな
いが、これは実に好都合だった。ウェイスターはドワーフの後をつけ、悪ある所まで
運んでもらおうと考えた。

あくる朝、ドワーフの男は大層な荷物を担いで、町を出た。一体どこへ行くつもりだ
ろうか。因みに私もろくに調査していない。彼の後ろのついて、時期が来たら飛び出
しヒーローを気取る予定だ。
ドワーフの足取りは軽く、近くの森へ進んでいった。

「ふんふんふーん♪」

鼻歌交じりのドワーフ。どうやら、あのデブスとの約束を果たすべく、件の黒ローブ
の男を捜しているようだ。しかし…見当が有るのだろうか。闇雲に歩いているような
気がする。

「へへ…。あんな可愛い娘とお近づきになれるなら、ローブの男なんて安いもんだよ
ナァ。『ヴォルボ様、素敵!』なんていわれて抱きつかれたりして…。へへっ。」

なにやら独り言とを言ってはにやけた面をしている。…もしかしたら、頼りにはなら
ないかもしれないな。まぁ、敵さえ明らかになれば、私は単独でも悪を討つをだけ
だ。いかにドワーフが役に立たなかろうと、私にはなんら関係ない。

ソフィニアの町を出てから一刻半。なにやら怪しげな森の中、これまた怪しげな洞窟
を見つけた。悪と名のつくものは往々にして地下を好む。太陽の光を恐れるモグラの
ように貧弱な連中だ。正義を冠する私が出れば一網打尽にできよう。案の定、洞窟に
乗り込むドワーフ。なんと好都合か。

暗く、陰鬱な雰囲気のする洞窟だった。湿気がひどく、苔でぬめり、暗く気味が悪
い。まるで暗黒の世界だ。もっとも、名誉有る正義の具現者カミカゼ機動隊はその程
度でひるんだりはしない。そうだ、ひるんではいけないのだ。

若干ビビってたウェイスターは自分に言い聞かせ、先を行くヴォルボの後をつける。
ヴォルボは準備良く、たいまつを掲げていた。ここに悪の組織が有るのを知っていた
のかもしれない。知らなかったとしたら、大した勘のよさだ。ドワーフは手先が器用
だそうだが、勘がいいとは聞いたことは無い。偶然といえばそれまでか。

こつんこつん…

暗い洞窟に響く足音。たよりの無いたいまつの明かりがドワーフを照らし、影が長く
のびる。

こつん…

ドワーフの足が止まった。

「だれだっ!」

こっそり後をつけていたつもりだが、ばれてしまったようだ。だるまさんが転んだの
如く、振り返ったドワーフに見咎められた私は硬直してしまった。良く考えれば、こ
れだけ反響する洞窟では姿は見えなくても足音で気付かれる。

「お前が彼女をバカしたバカかっ!」

あらぬ疑いをかけられているが、まぁ致仕方るまい。問題は、それをどうやって誤魔
化すかだ。

「…何を言う。私も彼女に頼まれた者だ。」

嘘八百。

「え?…そうなの?」

「いかにも。」

あっけに取られた様子のドワーフだったが、ウェイスターがあんまり堂々と話すもの
でなんだか気おされてしまっていた。また、あんまり深く考えることもしなかった。


「そう…。なら、一緒に行こう。」

「よかろう。」

かくして、若干予定が狂ったが、二人は洞窟の奥へとさらに歩みを進めていった…。

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2007/02/12 17:16 | Comments(0) | TrackBack() | ▲光と影

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