PC:ヴォルボ ウェイスター
NPC:黒ローブの男達 眼鏡の男 不良・千代田 番 マリリアン
場所:ソフィニア市街~魔術学院
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
ウェイスターが魔術学院でも屈指の不良、千代田 番と対峙している頃、ヴ
ォルボは今しがた空になったばかりの部屋を見詰め愕然としていた。
ここは、マリリアンの家だ。質素だがこじんまりとしていて、清潔感のある
良い家だ。その家の居間の丁度台所に当たるところに一枚の紙切れが落ちてい
た。その紙切れから煙が出ていて、今し方魔法が発動したばかりのように見受
けられる。
「マ、マリリアンちゃん?」
ヴォルボは呆然と呟いた。
信じられない面持ちだった。昨日帰されたばかりだというのに、再び誘拐さ
れてしまうとは。何の為に帰されたのかこれでは解らない。
暫し呆然としていたヴォルボだったが、唐突に気を取り直して現場検証をす
ることにした。まだ何か手がかりが残っているかもしれない。ぱっと見て先ず
目に付くのは、台所に面している窓が開きっぱなしだということだった。台所
には料理でもしていたのか、包丁と食材が散乱している。鍋の火が点きっぱな
しである事に気付き、慌てて鍋をどけて火を消す。そして、再び床の紙切れを
見る。
先程少女が消えたときに落ちていた紙切れと同じように、その紙切れにも魔
方陣らしき模様替えがかれていた。円形の中に複雑に絡み合った幾何学模様は
魔術師にしかわからない図式で【転移魔法】の呪文が描かれていた。当然、ヴ
ォルボにその事を理解できる訳が無い。
その紙切れをしげしげと眺めているヴォルボは、ふと思い立ちその紙切れに
乗ってみる事にした。その紙切れに乗れば、先程の少女と同じ現象――消失現
象が起こるのではないかと思ったのだ。
だが、何も起こらなかった。
当然、魔法陣の書かれた紙切れは簡易魔方陣で、一度上に乗って魔方陣を発
動すると魔力が失われ二度と使えなくなる代物だった。だから発動した後の魔
法陣に乗っても、発動するわけが無かった。
ヴォルボの肩はがっくりと落ちた。
自分もその同じ魔法陣に乗れば、同じ場所に行けるのではないかと思ったの
だ。
ドワーフの浅はかな知恵だった。
「……!? 黒ローブの男!」
ヴォルボははっとなって突然顔を上げた。何かをふと思い出したのだ。
確か、黒ローブの男の胸元には何かの紋章のようなものが描かれていた。具
体的にどんな紋章かは遠目だったので解らないが、輪郭は何となくソフィニア
の魔術学院の紋章に似ていた。
となれば、魔術学院に行くしかない。
手掛かりはそこにあるはずだ。
ヴォルボはそう、思い立つと、素早く行動に移った。
*■□*
いついかなる場所いかなる時代にも、不良と呼ばれる者達は居る。
伝統と格式と実力を重んじるここ、ソフィニアの魔術学院にもやはり不良と
呼ばれる人種は居た。
不良とは、そもそも自分の能力が他と比べて劣っている劣等感の塊のような
人間がなるものだ。だから、リーゼント頭が凛々しい不良、千代田 番も劣等
感に苛まされていた。だからこそ、むやみやたらと他人に突っ掛かるのだ。
だが、今日は日が悪かった。
運悪く、突っ掛かった者がカミカゼ機動隊のエース、ウェイスター・ロビン
だった事が災いした。
番はウェイスターに突っ掛かっていって、殴り合いの末何故か優勢だった番
の方がウェイスターに屈服していた。これは不良たる者にとって、屈辱的な事
だった。だが、何故かウェイスターには逆らえないのだ。それほどの貫禄が、
彼にはあった。それは何故か。青い長ランの制服を着ているからか。否。ウェ
イスターの打たれても打ち負けない根性が不良、千代田 番を屈服させたの
だ。
勝ち誇ったウェイスターは、見下す様に番を見――実際には目は前髪に隠れ
て見えないのだが――訊ねた。
「ここ――魔術学院の中で不審な人物、最近何か不審な事をしているものが居
ないか?」
高慢な質問だった。
だが、番は何故か素直に答えてしまう。不良の世界とは不思議なものだ。
「あ? ああ。不審な事と言えばよぉ。最近夜中に魔術学院の実践魔法科の方
でよぉ、光が点ってたりするんだよなぁ。人が出入りしている痕跡もあるし。
人影だって見たんだ。で、肝試しついでに入ってみたのよ。そしたら、黒ロー
ブの男達が地下に潜っていくのを見たんだよ。実践魔法科の棟の地下講堂って
奴だ。何でも、実践魔法は危険が伴うから地下に講堂を作って結界魔法を張り
巡らしてんだとよ。なぁ、もういいだろう?」
十分な情報を得たとばかりに、ウェイスターは首肯で返した。
番はほっと胸を撫で下ろして、開放された喜びを噛み締めていた。
*□■*
一方、ここは地下講堂。
「まだだ。まだ足りない。あと、五人はいないと……」
眼鏡をかけた一際背の低い黒ローブの男が、何やら低く呟いていた。
男の背後には六芳星の魔方陣と、その頂点の一つに一人の少女が蹲ってい
た。どうやら気を失っているようだ。少女は、ヴォルボの目の前で消えうせた
あの美少女だった。
眼鏡の男は歯噛みしていた。イライラして、その場をウロウロ往復してい
た。
と、そこへ、一人の少女が転移して来た。少女の下には受け側の転移魔法陣
が描かれている。少女は否応無く、眼鏡の男の視線を一身に浴びた。
一瞬後。
眼鏡の男は肩を戦慄かせて周囲に怒鳴り散らした。
「こいつはどういうことだ! あれほどデブでブスな女はは連れてくるなと言
っただろうがっ!」
二人目として連れてこられたのは、マリリアンだった。
「はっ、すいません。ガルの奴がこんなデブに目が無いもので」
「ふ、ふん。まぁ、いい。期日は差し迫っているんだ。こんな女でも使い物に
ならない訳ではあるまい。六芳星の頂点に連れて行け。……スリープクラウ
ド」
眼鏡の男が何か呪文を呟いて手をマリリアンの方に掲げると、掌から雲のよ
うなものが出現して、マリリアンの頭部を覆った。すると、マリリアンは眠気
はまったく無い筈なのに、突如として睡魔に襲われたのだった。
マリリアンはその場に倒れた。
そして、六芳星の頂点へと連れて行かれた。
NPC:黒ローブの男達 眼鏡の男 不良・千代田 番 マリリアン
場所:ソフィニア市街~魔術学院
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ウェイスターが魔術学院でも屈指の不良、千代田 番と対峙している頃、ヴ
ォルボは今しがた空になったばかりの部屋を見詰め愕然としていた。
ここは、マリリアンの家だ。質素だがこじんまりとしていて、清潔感のある
良い家だ。その家の居間の丁度台所に当たるところに一枚の紙切れが落ちてい
た。その紙切れから煙が出ていて、今し方魔法が発動したばかりのように見受
けられる。
「マ、マリリアンちゃん?」
ヴォルボは呆然と呟いた。
信じられない面持ちだった。昨日帰されたばかりだというのに、再び誘拐さ
れてしまうとは。何の為に帰されたのかこれでは解らない。
暫し呆然としていたヴォルボだったが、唐突に気を取り直して現場検証をす
ることにした。まだ何か手がかりが残っているかもしれない。ぱっと見て先ず
目に付くのは、台所に面している窓が開きっぱなしだということだった。台所
には料理でもしていたのか、包丁と食材が散乱している。鍋の火が点きっぱな
しである事に気付き、慌てて鍋をどけて火を消す。そして、再び床の紙切れを
見る。
先程少女が消えたときに落ちていた紙切れと同じように、その紙切れにも魔
方陣らしき模様替えがかれていた。円形の中に複雑に絡み合った幾何学模様は
魔術師にしかわからない図式で【転移魔法】の呪文が描かれていた。当然、ヴ
ォルボにその事を理解できる訳が無い。
その紙切れをしげしげと眺めているヴォルボは、ふと思い立ちその紙切れに
乗ってみる事にした。その紙切れに乗れば、先程の少女と同じ現象――消失現
象が起こるのではないかと思ったのだ。
だが、何も起こらなかった。
当然、魔法陣の書かれた紙切れは簡易魔方陣で、一度上に乗って魔方陣を発
動すると魔力が失われ二度と使えなくなる代物だった。だから発動した後の魔
法陣に乗っても、発動するわけが無かった。
ヴォルボの肩はがっくりと落ちた。
自分もその同じ魔法陣に乗れば、同じ場所に行けるのではないかと思ったの
だ。
ドワーフの浅はかな知恵だった。
「……!? 黒ローブの男!」
ヴォルボははっとなって突然顔を上げた。何かをふと思い出したのだ。
確か、黒ローブの男の胸元には何かの紋章のようなものが描かれていた。具
体的にどんな紋章かは遠目だったので解らないが、輪郭は何となくソフィニア
の魔術学院の紋章に似ていた。
となれば、魔術学院に行くしかない。
手掛かりはそこにあるはずだ。
ヴォルボはそう、思い立つと、素早く行動に移った。
*■□*
いついかなる場所いかなる時代にも、不良と呼ばれる者達は居る。
伝統と格式と実力を重んじるここ、ソフィニアの魔術学院にもやはり不良と
呼ばれる人種は居た。
不良とは、そもそも自分の能力が他と比べて劣っている劣等感の塊のような
人間がなるものだ。だから、リーゼント頭が凛々しい不良、千代田 番も劣等
感に苛まされていた。だからこそ、むやみやたらと他人に突っ掛かるのだ。
だが、今日は日が悪かった。
運悪く、突っ掛かった者がカミカゼ機動隊のエース、ウェイスター・ロビン
だった事が災いした。
番はウェイスターに突っ掛かっていって、殴り合いの末何故か優勢だった番
の方がウェイスターに屈服していた。これは不良たる者にとって、屈辱的な事
だった。だが、何故かウェイスターには逆らえないのだ。それほどの貫禄が、
彼にはあった。それは何故か。青い長ランの制服を着ているからか。否。ウェ
イスターの打たれても打ち負けない根性が不良、千代田 番を屈服させたの
だ。
勝ち誇ったウェイスターは、見下す様に番を見――実際には目は前髪に隠れ
て見えないのだが――訊ねた。
「ここ――魔術学院の中で不審な人物、最近何か不審な事をしているものが居
ないか?」
高慢な質問だった。
だが、番は何故か素直に答えてしまう。不良の世界とは不思議なものだ。
「あ? ああ。不審な事と言えばよぉ。最近夜中に魔術学院の実践魔法科の方
でよぉ、光が点ってたりするんだよなぁ。人が出入りしている痕跡もあるし。
人影だって見たんだ。で、肝試しついでに入ってみたのよ。そしたら、黒ロー
ブの男達が地下に潜っていくのを見たんだよ。実践魔法科の棟の地下講堂って
奴だ。何でも、実践魔法は危険が伴うから地下に講堂を作って結界魔法を張り
巡らしてんだとよ。なぁ、もういいだろう?」
十分な情報を得たとばかりに、ウェイスターは首肯で返した。
番はほっと胸を撫で下ろして、開放された喜びを噛み締めていた。
*□■*
一方、ここは地下講堂。
「まだだ。まだ足りない。あと、五人はいないと……」
眼鏡をかけた一際背の低い黒ローブの男が、何やら低く呟いていた。
男の背後には六芳星の魔方陣と、その頂点の一つに一人の少女が蹲ってい
た。どうやら気を失っているようだ。少女は、ヴォルボの目の前で消えうせた
あの美少女だった。
眼鏡の男は歯噛みしていた。イライラして、その場をウロウロ往復してい
た。
と、そこへ、一人の少女が転移して来た。少女の下には受け側の転移魔法陣
が描かれている。少女は否応無く、眼鏡の男の視線を一身に浴びた。
一瞬後。
眼鏡の男は肩を戦慄かせて周囲に怒鳴り散らした。
「こいつはどういうことだ! あれほどデブでブスな女はは連れてくるなと言
っただろうがっ!」
二人目として連れてこられたのは、マリリアンだった。
「はっ、すいません。ガルの奴がこんなデブに目が無いもので」
「ふ、ふん。まぁ、いい。期日は差し迫っているんだ。こんな女でも使い物に
ならない訳ではあるまい。六芳星の頂点に連れて行け。……スリープクラウ
ド」
眼鏡の男が何か呪文を呟いて手をマリリアンの方に掲げると、掌から雲のよ
うなものが出現して、マリリアンの頭部を覆った。すると、マリリアンは眠気
はまったく無い筈なのに、突如として睡魔に襲われたのだった。
マリリアンはその場に倒れた。
そして、六芳星の頂点へと連れて行かれた。
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