忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/21 08:45 |
クロスフェードB第3話『剣の意思』/ギュンター(たじぽん)
PC ギュンター ジェナス
NPC 芥火薙真
場所 デューロンへ続く街道
________________________________

 街道を疾走するボロ馬車とそれを追走する一団の馬群。しかしその馬群は街
道を行く隊商などを襲う馬賊とは趣を異にする集団で、どちらかといえば忍者
が便宜上馬を使っている、という表現の方が正しい。

 先ほどジェナスが不意を付いて放った氷塊に激しく激突し、その数を4割ほ
ど減らしたものの、追撃者たちの戦意は衰えることなく、今にも馬車へと迫ろ
うとしていた。

「わざわざ死に急ぐとは愚かな」

 弓を構えたギュンターは目を細めると一言そうつぶやき、速さと正確さを兼
ね備えた射撃を披露した。彼の弓から放たれた矢は、唸りをあげて鞍上の追撃
者の眉間に突き刺さる。一人また一人と脱落していくが、それでもなお敵は追
撃の手を緩めようとはしなかった。

「このままでは埒が明かない、やつらは私が食い止めるからひとまず先に行っ
てくれ」

「あの人数だ、それなら俺も・・・」
「いや、お前は馬車に残れ。恐らく伏手がいるはずだ。私もやつらを片付けた
らすぐに追いかけるがそれまでは頼むぞ」

ジェナスの言葉を一方的に退けると、ギュンターは馬車から飛び降り受身を取
った。そして間を置くことなく跳ね起き、腰につけていた小型の連弩を放った
。この連弩は射程距離は極端に短いかわりに、一度に12本の矢を放つことがで
き、さらに次の矢の装填がすばやく簡単にできるもので、彼の祖国では歩兵の
基本装備であったものである。

 放たれた矢はことごとく先頭を走る数人の体に吸い込まれ、彼らは鮮血とと
もに鞍上から転げ落ちていったが、残りの者たちは私を一瞥しただけで通り過
ぎて行った。

「はなから私など眼中にないようだな」

乱戦を予測していたギュンターは肩透かしを食らわされた形となったが、すぐ
さま射倒した敵の馬に飛び乗ると追撃を開始した。逃げる敵を追いかけるとい
う形は追う方が一方的に有利な形である。この場合敵は前を追いかけているの
で決して逃げているわけではないがその点はあまり関係がなかった。私は両足
でがっちりと馬の体を締め上げ、人馬一体となると、空いた両手で弓を構え一
人ずつ射落としていった。

 一人、また一人と倒されていく中で敵もようやくギュンターを振り切ること
を断念したのか、見慣れない反身の剣を抜き放って向かってきた。彼は弓を矢
筒にしまい、剣を抜き放つと一番に切りかかってきた刃をかわし、同時に敵の
首筋を切り裂いた。
敵集団は騎乗しての戦いに慣れていないのか、向かってきては弾き飛ばされ、
まともに打ち合うことすらかなわない有様だったが、ただやられるだけではな
かった。途中から打ち合うことを諦めた彼らは馬を捨て距離をとって飛び道具
を使い始めたのである。それでもギュンターは動きを止めることなく一人ずつ
距離を詰め討ち取っていった。
しかし体に手裏剣やら小刀が突き立って、馬が棹立ちになりギュンターが地に
叩きつけられると、瞬時に間合いを詰めた敵は上段から剣を振り下ろした。一
本は剣で弾き飛ばし、一本は左腕の関節以外を守るアームガードを使って防ぎ
、さらに体を傾けもう一本を避けながら二人目に覆いかぶさるようになりなが
ら、剣を突き立てた。さらにさらに、背後から突き出された剣を半身になって
かわし、相手の腕を取って後ろに回りこみ頚骨を折って仕留める。次の挙動で
最初に弾き飛ばした敵に備えるべくそちらへ向き直るが、それよりも先に相手
は両手に持てるだけ持った小刀を放っていた。

「くっ・・がっ・・・」

上半身に迫る4本のうち、体の中心と顔に飛来したものは防いだものの残りは
右のわき腹と左肩にそれぞれ突き刺さり、下半身に迫った4本は1本が外れ残
り3本が左右の腿に突き刺さった。さらに相手は一気に勝負を決めるべく着火
した癇癪球を投げつけた。それらはギュンターの目前で火薬に引火し炸裂、そ
して粗悪な火薬特有の黒煙を上げた。
 その様子を見届けると追撃者の中で唯一生き残った男は、もくもくと上がる
煙に背を向けた。

「詰めを誤ったな」

煙の中から聞こえたギュンターの声に男は驚愕し慌てて振り返ったが、その時
には既にギュンターが剣を投げつけた後であった。男は自分の胸に生える剣を
見下ろし何が起こったのか理解せぬまま絶命した。

「ふぅ・・」

(私はまたこの剣に救われたのか)地に伏した男から剣を抜きながらギュンタ
ーはそう思った。爆発の直前剣が光を発するのを見たこと、さらに小刀の傷以
外どこにも傷を負っていない自分の体、もう認めないわけにはいかなかった。
理由や仕組みは分からないが自分はこの件に生かされているということを。
 ギュンターはとりあえず傷口を簡単に止血すると馬に乗り馬車を追いかけて
走り出した。
PR

2007/02/17 00:24 | Comments(0) | TrackBack() | ▲クロスフェードB

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<クロスフェード B 第二話 「襲撃」/ジェナス(鷹塔将文) | HOME | クロスフェードB 第四話「ライカンスロープ」/ジェナス(鷹塔将文)>>
忍者ブログ[PR]