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2024/05/21 14:29 |
クロスフェード B 第二話 「襲撃」/ジェナス(鷹塔将文)
「んで、一応合流地点には来たが、これからどうすりゃいいんだ??」
「知るか。 大体合流地点だって大体のところしか聞いていないだろう」

ここは街道と街道の合流地点。
にも関わらず、辺りには人通りは全くない。
そよぐ風に揺れる草原の草々と、戯れる小動物の影だけの世界だ。
「ったく、なんでそこんとこを聞かないで契約するかねぇ」
草むらに横になり、空を見上げるジェナス。
「寝ていた人間に言われたくはない」
側の木に寄りかかっているギュンター。
二人はそれっきり黙ってしまった。

刻は静寂と共に刻々と流れていく。

「・・・!」
「来たな・・・」
街道の向こう側から、馬車が一台こちらに向かってくる。
白煙を上げながら猛然と走っている。
「・・・妙だな、あそこまでとばして来る必要性はないと思うんだが・・・」
「おい、ギュンター! 戦闘準備をしろ!」
ジェナスが勢いよく立ち上がり、馬車の方に向かって身構える。
続いてギュンターも弓を構え、矢をあてがう。
馬車は二人にグングン近づいてくるが、一向にスピードを緩める気配はない。
ようやく馬車がはっきり見えるくらいに近づいてくるころに、ギュンターは馬車の後
ろに黒いいくつかの影を認めた。
「馬車が襲われている!? ジェナス!」
「分かってるよ! 来い、シヴァ!」
ジェナスの声に答え、集まった冷気が精霊としての実体を形作る。
「シヴァ、俺の合図で氷壁を馬車の後方に作ってくれ!」
〈分かったわ!〉
その間にも馬車は物凄い勢いを保ちつつ突っ込んでくる。
後方からは黒い影が何かを馬車に向かって打ち続けつつ、じりじりとその距離を詰め
始めていた。
「おい、ジェナス! このままではやられるぞ!!」
「もう少し・・・もう少しだ・・・・!」
ジェナスは何かを必死に耐えるように呟く。
あと数メートルという距離に馬車が近づき、黒い影はその馬車に手をかけようと手を
伸ばした。
「! 今だシヴァ!」
〈フリーズウォール!!〉
シヴァが両手を天にかかげ、勢いよく振り下ろす。
馬車の上空に巨大な氷の結晶が出現し、馬車と黒い影を見事に分断する。
氷壁にぶつかる澄んだ音と、なにやら鈍い音が同時にいくつか聞こえた。
「よっしゃあ!」
ジェナスは派手にガッツポーズを決める。
しかし彼は忘れていた、馬車が物凄い勢いで彼の横を通り過ぎようとしていること
を。
「げっ、しまっ・・・ぐぇっ!?」
最後まで言葉を終えることなく、ジェナスは思いっきり後方に引っ張られた。
しばしの浮遊感の後、彼は馬車の中にいた。
「詰めが甘いんだ、お前は」
それだけ言うと、ギュンターはジェナスを掴んでいた手を離した。
この男、いつの間にか馬車に飛び乗っていたようだ。
(・・・このスピードでどうやったんだ、コイツ?)

襲撃を振り切り、ようやく一息ついてスピードを緩めた馬車内で、ようやくケヴィン
が口を開いた。
「申し訳ない、非常事態が発生した」
「どういうことだ?」
手綱を握るケヴィンの横に、ギュンターが歩み寄る。
「姉妹の主治医だったゼリッグ・ベルナールが拉致された。それによってこの計画が
筒抜けになり、ある組織に追われることになってしまった」
「なるほど、さっきの黒い奴らだな」
先ほどのやたらと俊敏な襲撃者を思い出す。動きからいって、暗殺などの専門集団だ
ろう。
「面倒なことになったな・・・。ところで、その問題の姉妹は・・・、!?」
突如馬車が大きく弾む。
横転しそうになるも、なんとかこれを堪えて立て直す。
「また来たぞ! あれでやられてないってのかよ~!?」
ジェナスの声がギュンターにも聞こえた。
馬車後方に目を向けると、確かに黒い影が数人、こちらに向かいつつ攻撃してくる。
「しゃあないなぁ、またシヴァを呼んで・・・」
「いや、ここは俺に任せろ。お前はここで見物していろ」
飛び出そうとするジェナスを押さえ、ギュンターが前にでる。

「まだ弓の腕前は見せたことなかったな・・・。よく見ておいてくれ」
そう言ってギュンターは、獰猛な笑みを浮かべた。


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2007/02/17 00:23 | Comments(0) | TrackBack() | ▲クロスフェードB

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