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2024/05/21 17:59 |
クロスフェードB 第一話 requesut/ギュンター(たじぽん)
PC:ギュンター ジェナス
NPC:ゼリック=ベルナール
場所:クーロン近郊
________________________________ 
 クーロン近郊にある安宿内の食堂の最奥のテーブルに三人の男が向かい合
うように座っていた。一人はメガネをかけた学者肌の男。そしてその向かい
に座るのは小柄で筋肉質な男と長身で細身な男であった。

「時間がないから単刀直入に言おう。君たち二人にはある姉弟の警護をして
もらいたい」

全員が卓に着くや否やいきなりそう切り出したメガネ男、確か名前はゼリッ
ク=ベルナールだったか。彼の向かい側に座っている私は不機嫌そうに鼻を
鳴らし組んだ腕はそのままに顎で先を促した。私の不機嫌の理由は隣に座る
ジェナス=ディラという男である。ついさっき遅刻してきたそいつはやたら
派手な服装の見るからに女たらしといった感じのヘリウムガスのように軽い
男であった。要するに私の一番嫌いなタイプの男である。こんな奴に背中を
預けると思うと正直吐き気がするが何かと面倒を見てくれた情報屋直々の紹
介とあっては断るわけにはいかなかった。

「姉の名はリーズ=エルダート。弟はラーズだ。二人ともライカンスロープ
族で私の患者だった子供たちだ」

ライカンスロープ族とは違法な遺伝子実験によって人工的に作られた種族で
あり見た目は人間と何ら変わりがないこと以外一般人には詳しいことは知ら
れていないきわめて珍しいヒトである・・・らしい。今まで軍隊一筋で外界
との交渉のなかった私にとっては目の前のゼリックの説明にもいまいちピン
と来ないがそんなことは私にとってはどうでもいいことだった。今重要なの
は敵は誰なのか?金は入るのか?この二点だ。

「へぇー。そいつはめずらしいねぇ。まっ、とにかく二人を守ればいいんだ
ね?りょーかいしま・・・」

とあっさり仕事を引き受けようとするジェナスを制して私は言った。

「ちょっと待て。ただ単に警護しろといわれても困る。具体的に誰から狙わ
れているんだ?もう少し詳しい事情を聞かないことには受けるも受けないも
ない」

ゼリックとしてはあまり触れられたくなかったことらしく渋々といった感じ
で話し始めた。

「私はアスクレビオスという製薬会社で研究員をしている。五年前新薬を開
発して巨万の富を築いた会社だ。君たちも名前くらい聞いたことがあるだろ
う。アスクレビオスでは極秘裏にライカンスロープ族の研究が進められてい
て今回守ってもらいたい二人はアスクレビオスではじめて種の変更に成功し
たケースなんだ。ただ社長のディアン=ローガンの方針次第ではこれから先
さらなる投薬実験が続けられる可能性がある。少し前まで自分もその実験に
参加していてこんなこと言う資格はないのだけれど、せめてもの罪滅ぼしに
二人が正気でいるうちに逃がしてやりたいと思ったんだ。頼む手を貸してく
れ」そう言ってゼリックは頭を下げた。

(うーむ)これは厄介な仕事を掴まされたものだ、下手をすれば破滅しかね
ないアスクレビオスとしてはなんとしても姉弟を取り返すか始末するか、い
ずれにしろ必死だろうことは明白だ。聞いた話から察するに金には困らない
連中であるようだし。果たして私の手に負える仕事なのだろうか?などと考
えつつも目の前で必死に頭を下げるゼリックの様子を見たら無下に断るのも
気の毒に思えた。それに祖国を失った私にとっては失うものなど何もない。
命でさえも惜しいとは思わない。そう決めた私にとって断る理由もないよう
に思われた。結局私は依頼を引き受けることに決めて言った。

「分かった。引き受けよう。最後に報酬について聞きたいのだがいいか?」

するとゼリックは胸元から皮の袋を取り出して言った

「本当か?ありがとう。報酬についてだが前金として今この場でこれだけ払
う。残りは姉弟と一緒に動いてるケヴィン=ローグからもらってくれ。三人
は今朝E24街道を通ってデューロンに向かって出発した。君たちは先回り
して三人に合流して欲しい明日になればアスクレビオス側も動いてくるだろ
うからなるべく早く合流してくれ。頼む」

「私たちはすぐにでも発つがあんたはどうするんだ?こんなことしているの
がバレたらまずいんじゃないか?」

「私のことは気にしなくていい、とにかく二人を頼む」

「そうかそれならいい。おいジェナス行くぞ」

そうして立ち上がって隣を見た私は正直我が目を疑った。何とジェナスは気
持ちよさそうに寝息を立てているではないか。イライラがピークに達した私
は無言で剣を抜くといすの後ろ足をスパッと切り倒し店の外へと歩き出した
。後ろで派手にひっくり返ったジェナスをおいて外に出た私はこの日何度目
かわからないため息をついて派手で能天気な相棒が出てくるのを待った。
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2007/02/17 00:22 | Comments(0) | TrackBack() | ▲クロスフェードB

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