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2025/03/10 06:23 |
63.「大脱出」/リング(果南)
PC:ギゼー メデッタ
NPC:リング
場所:白の遺跡
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

「メデッタさーん! 俺はここです!」
 その声にメデッタは上方を振り仰いだ。間違いない、ギゼーの声だ。
「ギゼー君!そこにいるのか!?」
 そう言ってメデッタは目の前にある螺旋階段を、リングを抱えたまま上り始
めた。しかし、リングを抱えているせいで、その足取りは沈み込むように重
い。いつもは涼しい表情を絶やさない彼だが、今、メデッタの顔からは、滝の
ように汗が流れ出し、必死な形相で階段の段を一歩一歩、踏みしめるように上
っている。…しかし、メデッタはリングを抱える手の力を、一度も緩めようと
はしない。
 遠くで「ガコン」と遺跡の床が脆く崩れ落ちた音が聴こえた。
 メデッタが階段を必死に半分ほど上りきったところだろうか。
「メデッタさん!」
 階段を上から駆け下りてきたギゼーとようやく合流することができた。
「ギゼー君!」
 メデッタの表情から安堵の色が漏れる。
「…よかった、無事だったのだな」
「そんな…っ、メデッタさんこそ!すごい汗じゃないですか!ずっとここまで
リングちゃんを抱えて歩いてきたんですか!?」
 そういってメデッタの腕の中のリングをギゼーは不安そうに覗き込んだ。リ
ングは発光はおさまっていたが、うつろな瞳を虚空に向けて全く動かないのは
先ほどと同じである。そのギゼーの言葉にメデッタはふっと笑みを漏らした。
「…そんなこと、なんてことはないさ。リングもこうなっているが、身体は無
事だろう。さあ、もう時間がない。あの男と、こんなところで心中は御免
だ。…この遺跡の構造、頭に入っているだろうな?」
 メデッタがそう問うと、ギゼーはふっ…と不敵な笑みを漏らした。
「メデッタさん、俺、何年トレジャーハンターやってると思うんです?」
「…それを聞いて安心したよ」
 メデッタはリングを抱える腕に力を込めると、ギゼーとともに階段を上り始
めた――。


 階段を上りきり、それから休むことなく遺跡を走り続け、途中遺跡の陥没を
注意深く避けながらメデッタたちはようやく、遺跡の入り口まで戻ってくるこ
とができた。
「はぁはぁ…、ようやくここまで戻ってこれましたね、メデッタさん。地上ま
であと少し…ってええええ!!」
 ギゼーの驚く声に、メデッタは、汗でぐっしょりと濡れた額の汗を拭うと遺
跡の入り口を見た。
 そこに立っていたのは、遺跡の入り口でメデッタたちを分裂させたあの「フ
レッシュゴーレム」だった。そいつが、入り口を塞ぐようにのっそりと立って
いる。しかし、このゴーレムもこの遺跡の魔力の産物であったらしく、最初見
た姿とは違い、ゴーレムの顔の肉は半分どろどろに「溶けて」いた。腐った身
体からは前にも増した異臭が漂ってきている。しかも、こんな姿になってもま
だ戦う気があるようだ。ギゼーたちの姿を見ると、「まぁぁぁぁぁ!!!」と
いう悲鳴のような声を上げて、一歩一歩近づいてくる。
「…全く。これではゴーレムではなくゾンビだ」
 ゴーレムを見てメデッタは、最初に出会ったときよりも性質が悪い怪物にな
ったな…、と、一人息を吐いた。そんなメデッタの黒マントを、ギゼーは焦っ
た表情でぐいぐいと引っ張った。
「メデッタさん!ちょっ、呑気に見てないで何とかしてください!早く倒さな
いと俺たち遺跡と一緒に心中ですよ!」
「ギゼー君、そういう君こそ、まず戦ったらどうだね」
 すると、ギゼーは自信たっぷりにこう答えた。
「俺はあんな怪物と真正面から戦うのは嫌です!」
「…」
 メデッタは「仕方がない」と一つ息を吐くと、ギゼーの腕にリングをそっと
預けた。
「君にはここまで案内してもらった借りがある。今は戦ってやろうじゃない
か。すまんがリングの持っている扇子から水を出してもらえんかね。私もリン
グと同じく、水を操る技を使うのだ」
 言われるままに、ギゼーはリングが服のポケットに入れていた扇子を出す
と、扇子の先から水を出した。とたんに、水がメデッタの、前に突き出した両
手の先に、槍状になって集まっていく。メデッタは近づいてくるゴーレムの腹
に狙いを定め、呟いた。
「あんな奴は、一撃で撃破する」
 するとメデッタの手の先に集まった水の槍が、勢いよくゴーレムめがけて発
射された。水の槍はゴーレムの腹を、勢いよく貫く!
 とたんに、ゴーレムの全身の肉が弾けるようにバラバラに飛び散った。同時
に、ゴーレムによって塞がれていた入り口からの外の光が一筋遺跡に差し込ん
だ。
 ゴーレムを破壊したメデッタは、ギゼーのほうを振り向いた。
「ギゼー君、行こうか。早く脱出して、リングを病院に連れて行かねばならん
な」
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2007/02/14 23:47 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング

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