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2024/05/21 10:36 |
クロスフェードB 第四話「ライカンスロープ」/ジェナス(鷹塔将文)
敵の襲撃をなんとか切り抜け、一息つける程には落ち着いた一行。

「ふう、なんとなくヤバそうな依頼だとは思っていたが、こうもいきなり襲撃を受け
るたぁな~」
「すまない、こちらも予想外の出来事だ。こうも早く情報が漏れるとは・・・」
ケヴィンは馬車を制御しながら、ジェナスに答える。
馬はまだ多少興奮してはいたが、除々に落ち着きを取り戻しつつある。
「君達と連絡を取った後、ベルナールの消息が途絶えた。先ほどの黒い連中が襲って
きたタイミングを考えると、やはりベルナールが捕らえられたと考えるしかない・・
・」
「そうか、またやっかいなことになったなぁ」
ジェナスはどかっと馬車内に腰を下ろす。
「いたっ!!」
「・・・ん??」
きょろきょろとあたりを見回すジェナス。
怪訝そうな顔つきのギュンターと目が合う。
「・・・何アホ面をさらしている?」
「・・・お前、俺のこと嫌いだろ・・・」
ジェナスはギュンターに意見を求めるのを却下し、自分の足元を調べる。
すると、わずかな隙間を発見。
「なぁケヴィンさん、馬車って隠し部屋とかあったりする?」
「いや、ないはずだが・・・」
こちらを見ようともせず、淡々とした返事が返ってくる。
その様子に逆に不信感を募らせたジェナスは、いきなり床にがばっと伏せると、隙間
に指をねじ込み床を引っぺがした。
「うわっ!!」
「きゃあっ!!」
二種類の声が足元から聞こえた。
ゆっくりとその穴を覗き込むと、可愛らしい二人組みの子供が抱き合って収まってい
た。
「ははぁ、この二人が護衛対象ってやつですか」
「ほう、これがライカンスロープ族か・・・」
ギュンターも興味を示し、覗きにくる。
「見つかってしまったか・・・いや、君達に隠していたわけではない。安全のため
だ」
「こんなとこにすし詰めでか??」
「いや、先ほどのような飛び道具などに当る危険性があるからな。少しは頭を使え」
ギュンターが見下ろして言う。
しかしジェナスの興味は二人の子供に向いている。
「お二人さ~ん、こんにちは~♪ 怯えなくていいよ~ん。俺はジェナス・ディラっ
てんだ、よろしくぅ!」
びしっと敬礼の真似事をして、軽い感じで話し掛ける。
「・・・・・・ちょっと! なんて荒っぽいことするのよ!!」
「へ??・・・ぶはっ!!」
へらへらしていたジェナスが、少女の正拳突きをモロに喰らって吹っ飛ぶ。
積んであった木箱に頭から突っ込み、しばらく痙攣していたがやがて大人しくぐった
りする。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん! あの人動かなくなっちゃったよ!!」
「いいのよ、別に。どうせしばらくしたら復活するんだろうし。でしょ、そこの陰気
なおじさん?」
少女はギュンターを見て言い放つ。
ギュンターの頬がピクリと微妙に動いたが、誰も気づかなかった。
「まったく、もうちょっとスマートに戦ってよね! がたがた揺れて頭打っちゃった
わよ。あんたたちギルドから来たんでしょ?? ならもっとしっかり守ってよね! 
怪我したらどう責任とってくれるつもり!?」
少女はギュンターに向かって激しく、しかもねちねちと小言を浴びせ続ける。
子供相手に、しかも護衛対象に手を上げるわけにもいかず、しかし無視できるほどの
余裕のあるセリフでもない。
ギュンターはこめかみをぴくぴくさせながら、横で失神しているジェナスを見やり、
あとでコイツに八つ当たりしてやろうと心のなかで決めた。

「楽しい時間はそこまでだ」

「!?」
「動くな。・・・首から呼吸が出来るようになりたいか?」
ギュンターの背後で黒装束、いや、全身を影で覆われたという表現の方が似つかわし
い奴が、首筋に錐のようなものをギュンターに当てている。
ギュンターは剣に手が触れる直前で固まっている。
「・・・この俺に気配を感じさせないとは、大した奴だ」
「強がりは身を滅ぼす・・・ギュンター・オルトルート」
影はギュンターを牽制したまま、幼い姉妹を見やる。
弟がビクリと身を震わせ、姉の背後に素早く隠れる。姉はかばうように一歩前にで
る。
「よせ、リーズ!! 迂闊に動くんじゃない!」
ケヴィンが二人に叫ぶ。
彼は馬を制御しているため、その場から動けない。
「その二人を渡して貰おう。命ぐらいは保障してやる」
影は微動だにすることなく、その目的を口にする。
「・・・答えはわかってるんだろう? 回りくどいのはやめたらどうだ?」
「強がりは身を滅ぼすと言ったはずだがな・・・」
「油断も身を滅ぼすんだぜ?」
突然足元に衝撃が走り、影の注意が一瞬途切れる。
その隙にギュンターは体をひねりながら剣を引き抜き、その勢いのまま袈裟切りに切
りつける。
「ぐぅっ・・・!」
「油断大敵火がボーボーってか?」
「・・・相変わらずのペテン師ぶりだな」
ジェナスがギュンターの隣に並ぶ。
ジェナスは気を失ったフリを続けていただけだった。実際に失ってはいたが。
「くっ・・・ここは引くとしよう・・・」
「逃がすかよ!!」
馬車から飛び降りる影を追おとするうジェナス。と、突如影が体を反転させ、無数の
針を打ち出した。
ジェナスはすんでのところで踏みとどまり、その場に伏せてかわした。
その隙に影は大きく跳んで、遥か後方に消えていった。
「くそっ、やらしい野郎だ!」
「ラーズ! ラーズしっかりして!」
背後からリーズの金切り声が響く。
リーズの腕の中で、ラーズが苦しげに喘いでいる。
「どうした!?」
「どうやら先ほどの針が刺さったらしい。ご丁寧に毒まで塗ってあるようだ」
ギュンターが針のささった箇所を見ながら説明する。
針は抜いたものの、出血h一向に止まる気配を見せない。
「ケヴィンさんよ!」
「あと少しでアルフォード家だ!! そこでなら何とかできるはずだ!」
ケヴィンは馬に鞭を入れ、スピードを上げさせる。
馬車は、人気のない街道を猛スピードで走り始めた。 
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2007/02/17 00:24 | Comments(0) | TrackBack() | ▲クロスフェードB

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