PC: 香織/冬留
場所: クーロン
NPC: 「影法師ザザ」/不良のようなごろつきのような若者達
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元の世界に帰る。
それは、大きな目標である。ただし、その到達方法は今のところ不明で、可能かどう
かすらもわからない段階だが。
しかし、いきなり到達しようとするのは無理だとしても、それに繋がるように小さな
事を積み重ねていけば、いつかはその目標に辿りつけるのではないか?
だから、とりあえず今は。
「今日寝るところをどうにかしなきゃね」
香織の言葉が、白い吐息とともに肌寒い空気の中に消えた。
「どうにかって、アテはあるんですか?」
「うーん……まあ、歩いてればそのうち見つかるんじゃないかな」
なんともアバウトな答えを返し、香織は歩き出す。
やや遅れて冬留がついてくるが、いかんせん冬留は身長が高く、歩幅が広いため、す
ぐに肩を並べることになった。
――そこから、会話が途切れる。
最初は、旅館というかホテルというか宿泊施設の類を探してキョロキョロしていたか
ら会話どころではなかったのだが……時間が経つにつれ、香織は、その沈黙を重たく
感じ始めた。
(……なんか、軽く話でもしてみようかな)
歩きながら、香織は冬留を見上げた。
「冬留君って、いくつ?」
いくら沈黙が気詰まりだからといって、なんで年齢のことなんか尋ねたのか、本人に
もよくわからなかった。
不意に話しかけられ、冬留はきょとんとした表情を見せる。
「ボクは」
「だから勝手に出てくるなっ!……ええと、俺は15歳ですけど」
影からひょっこり現れたザザを一喝した後、冬留は答える。
「15歳?」
(……7つも年下だったのね)
おそらく年下だろうと予測してはいたが、7つも年下だったとは。
ただし口に出しては言わない。
理由は単純。年齢がバレるからである。
最近の子は背が高いのねえ、なんて年寄りじみたことを考えながら、
(ということは、私がしっかりしなくちゃね)
香織は内心気合を入れた。
15歳ということは、未成年である。
そして自分はというと、22歳、つまり成人。
やはりここは、曲がりなりにも成人である香織が面倒をみるのが一般的だろう。
成人だから頼りになるかどうかというと、また別の話だが。
「15歳ってことは……」
中学3年生? と尋ねかけた香織の足が、ぴたっ、と地面に貼りついたかのように動
かなくなる。
なんというか、進行方向になんともイヤな気配を感じるのだ。
気配の正体を知りたいような、でも知りたくないような。
香織は、ぎぎぎっ、とぎこちなく進行方向に顔を向けた。
う。
自分の顔が、まともに引きつるのを香織は感じた。
「わあ、お友達になりたくないタイプダネ」
香織の心の中を読み取ったかのように、ザザが陽気な声を上げた。
香織の視線の先には、数人の若者がたむろしている様子があった。
皆一様に派手な格好をしていて、ナイフやら何やら武器を持っている。
その姿を一言で現すと『不良少年』とか『ごろつき』とか、そんなところだろうか。
近くを通りかかると、「お前何ガンつけてんだ」とかなんとかいちゃもんつけてボコ
ボコにされそうな、物騒な雰囲気が漂っている。
……怖い……。
年上なんだからしっかりしなくちゃ、という気持ちが一瞬にしてぺしゃんこに潰れ
る。
おずおずと手を伸ばし、冬留の袖をつかまえた。
「何ですかっ?」
途端にぎょっとした表情を返されて、香織は内心慌てる。
正直に「あいつら、なんか怖いから」なんて、口が裂けても言えない。
つまらない年上のプライドである。
「え、あ、ああ、ええとね、冬留君が迷子になったら困るからっ」
少し考えた末に出てきた言い訳が、またなんとも間抜けだった。
口にした瞬間、もっとマシな言い訳はできないのか、と自分の頭をぽかすか叩きたく
なるくらいに。
「俺、そこまで子供じゃないですよ」
冬留のぎょっとした表情が、ほんの少しムッとしたような表情に変わる。
「ナニ言ってるノ。トールは未成年だから、ボクみたいな保護者が必要ダヨ」
「俺はお前に保護してもらった覚えはない!」
「ヒドイなトール。ボクはすごくデリケートなのに。カオリもそう思うデショ?」
「え、ええと……」
出会ったばかりでそう思うも何もないと思うのだが、と香織は思いつつ、あいまいな
笑みを浮かべる。
「と、とにかく、別の道行きましょ。ね? ね?」
香織は冬留をぐいぐい引っ張って、今歩いてきた道を引き返し始めた。
場所: クーロン
NPC: 「影法師ザザ」/不良のようなごろつきのような若者達
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元の世界に帰る。
それは、大きな目標である。ただし、その到達方法は今のところ不明で、可能かどう
かすらもわからない段階だが。
しかし、いきなり到達しようとするのは無理だとしても、それに繋がるように小さな
事を積み重ねていけば、いつかはその目標に辿りつけるのではないか?
だから、とりあえず今は。
「今日寝るところをどうにかしなきゃね」
香織の言葉が、白い吐息とともに肌寒い空気の中に消えた。
「どうにかって、アテはあるんですか?」
「うーん……まあ、歩いてればそのうち見つかるんじゃないかな」
なんともアバウトな答えを返し、香織は歩き出す。
やや遅れて冬留がついてくるが、いかんせん冬留は身長が高く、歩幅が広いため、す
ぐに肩を並べることになった。
――そこから、会話が途切れる。
最初は、旅館というかホテルというか宿泊施設の類を探してキョロキョロしていたか
ら会話どころではなかったのだが……時間が経つにつれ、香織は、その沈黙を重たく
感じ始めた。
(……なんか、軽く話でもしてみようかな)
歩きながら、香織は冬留を見上げた。
「冬留君って、いくつ?」
いくら沈黙が気詰まりだからといって、なんで年齢のことなんか尋ねたのか、本人に
もよくわからなかった。
不意に話しかけられ、冬留はきょとんとした表情を見せる。
「ボクは」
「だから勝手に出てくるなっ!……ええと、俺は15歳ですけど」
影からひょっこり現れたザザを一喝した後、冬留は答える。
「15歳?」
(……7つも年下だったのね)
おそらく年下だろうと予測してはいたが、7つも年下だったとは。
ただし口に出しては言わない。
理由は単純。年齢がバレるからである。
最近の子は背が高いのねえ、なんて年寄りじみたことを考えながら、
(ということは、私がしっかりしなくちゃね)
香織は内心気合を入れた。
15歳ということは、未成年である。
そして自分はというと、22歳、つまり成人。
やはりここは、曲がりなりにも成人である香織が面倒をみるのが一般的だろう。
成人だから頼りになるかどうかというと、また別の話だが。
「15歳ってことは……」
中学3年生? と尋ねかけた香織の足が、ぴたっ、と地面に貼りついたかのように動
かなくなる。
なんというか、進行方向になんともイヤな気配を感じるのだ。
気配の正体を知りたいような、でも知りたくないような。
香織は、ぎぎぎっ、とぎこちなく進行方向に顔を向けた。
う。
自分の顔が、まともに引きつるのを香織は感じた。
「わあ、お友達になりたくないタイプダネ」
香織の心の中を読み取ったかのように、ザザが陽気な声を上げた。
香織の視線の先には、数人の若者がたむろしている様子があった。
皆一様に派手な格好をしていて、ナイフやら何やら武器を持っている。
その姿を一言で現すと『不良少年』とか『ごろつき』とか、そんなところだろうか。
近くを通りかかると、「お前何ガンつけてんだ」とかなんとかいちゃもんつけてボコ
ボコにされそうな、物騒な雰囲気が漂っている。
……怖い……。
年上なんだからしっかりしなくちゃ、という気持ちが一瞬にしてぺしゃんこに潰れ
る。
おずおずと手を伸ばし、冬留の袖をつかまえた。
「何ですかっ?」
途端にぎょっとした表情を返されて、香織は内心慌てる。
正直に「あいつら、なんか怖いから」なんて、口が裂けても言えない。
つまらない年上のプライドである。
「え、あ、ああ、ええとね、冬留君が迷子になったら困るからっ」
少し考えた末に出てきた言い訳が、またなんとも間抜けだった。
口にした瞬間、もっとマシな言い訳はできないのか、と自分の頭をぽかすか叩きたく
なるくらいに。
「俺、そこまで子供じゃないですよ」
冬留のぎょっとした表情が、ほんの少しムッとしたような表情に変わる。
「ナニ言ってるノ。トールは未成年だから、ボクみたいな保護者が必要ダヨ」
「俺はお前に保護してもらった覚えはない!」
「ヒドイなトール。ボクはすごくデリケートなのに。カオリもそう思うデショ?」
「え、ええと……」
出会ったばかりでそう思うも何もないと思うのだが、と香織は思いつつ、あいまいな
笑みを浮かべる。
「と、とにかく、別の道行きましょ。ね? ね?」
香織は冬留をぐいぐい引っ張って、今歩いてきた道を引き返し始めた。
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