PC:ハーティー 香織
NPC:ソクラテス
場所:クーロン 酒場『緑の峡谷(ウェッド・レヒ)』の裏通り
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「まあ、とりあえずお姉さん。何か飲み物でも奢ってあげようか?」
少年は笑顔でそう言った。
「とりあえず、ゆっくり話さないと多分お姉さんが困ると思うし」
どこか、含みのある発言であった。
通りに面した変哲もない喫茶店。
すくなくとも、クーロンや他の場所にもどこにでも存在しそうな店。
すくなくとも、この世界では。
「お飲み物は何になさいますか?」
『緑の峡谷』とはまた違い、落ち着いた制服のウェイトレスが、営業用の笑顔
で覗き込んでくる。
「えと、僕は『4つの四十奏(カルテット)』で。リズゥーの実入りで、あと
なにか『軽い食事(セヴォリーズ)』でお勧めとかあります?」
「ええ、最近は『気まぐれムース(ムース・カプリス)』が女性に人気です
よ。そちらの方はどうですか?」
「え、ええ・・・・・・・」
もはや言語についてこれてない女性を、にこやかに見守りつつ、あんまり眺め
ていると本当に意地悪なのでそれとなく注文してあげた。
「じゃあ彼女には、飲み物は『6つの果実(シ・フリュイ)』のラズイバット
の甘みで。さっきの『気まぐれムース』を2つね」
「かしこまりました」
「・・・ここは何処!?カナダ?イタリア?ドイツ?フランス?いいえそれと
も未開の地!!?」
けっこう面白い展開だ。しかし、丁寧に答えてみる。
「どれも聞いたことない地名だね。お姉さん、しかもその服目立ってるよ」
先程から他の客の視線が痛いほどに香織に突き刺さる。
少年&梟のほうにも、痛いほどの珍妙な視線が刺さるが、本人は感じないらし
い。
「あ、そうそう。言い忘れてたけど、僕は“壊れたら元に戻らない者”、ハン
プティ・ダンプティっていうんだ。
仲間は“卵”とか“ジョーカー”って呼ぶ人もいるけど。仲間内だけだからい
いや。
まあ長いから「ハーティー」でいいよ?こっちはソクラテスね」
相変わらず、毛ほども動かない梟を指差して自己紹介終了。
柔和な笑みに反して、その剣色の髪の毛は冷徹なまでの硬質な輝きを放ってい
た。
触れてみたい、と思うが、きっと触れるだけで指を切り裂いてしまいそうな光
沢。
少なくとも、彼を真正面に見た人間は違和感を感じるのだ。
その、優しい微笑みと鋭利な輝きのギャップに。
「お姉さん、名前は香織でしょ?どこから来たとかは?」
「え?え?ああ、名前・・・名前は香織よ。苗字は・・・」
「ミョウジ?ミドルネームのこと?」
「なんで知ってる知識と知らない知識が混濁してるのよ!?」
「や、僕に怒られても困るよ」
そうこうしているうちに、先程のウェイトレスが注文の品を持ってくる。
香織は、興味深そうに飲み物を見つめている。
笑顔で進めるが、手に取っただけで顔には「?」マークが浮き出ている。
『6つの果実』は緑色の美しい飲み物。そこの方にオレンジ色の果実が6つ沈
んでいる。
「とりあえず、落ち着いて今の状況でも楽しんでみる?」
他人事ゆえの、余裕であった。
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