PC:ハーティー 香織
NPC:ソクラテス・店内のお客さん
場所:クーロン 喫茶店
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「とりあえず、落ち着いて今の状況でも楽しんでみる?」
にっこりと温和に微笑みながら投げかけられた言葉。
「そっ……そういうわけにはいかないでしょっ!?」
香織は、危うく持っていたグラスを取り落とすところだった。
おっとと、なんて言いつつ、もう片方の手でグラスを支える。
「あはは、やっぱり」
さりげなく香織にとっては衝撃的なことを口にした当の本人は、軽く流している。
「だって、いきなり人がいなくなっちゃったら色々大変でしょ? 家族だって心配す
るし、仕事だって……」
家族、という言葉を口にした途端、不安が押し寄せてきた。
ちゃんと、日本に戻れるのだろうか。
「えーと……ハーティー君」
一体ここはどこの国、と質問をぶつけようとして、はたと気が付いた。
そういえば、自己紹介がまだだったような。
「ちゃんとした自己紹介、まだだったわよね? 私は西本香織……あ、こっちだと名
前の方が先なのかな。そしたらカオリ=ニシモトってことになるんだけど。で、日本
の東京出身」
「ニホンノトウキョウ?」
ちょっとアクセントがおかしい。
「日本の東京! 日本っていう国の、東京っていう都市の出身なの。……ねえ、本当
に知らない?」
「全然。あいにくだけど」
あっさりと答えられて、香織は思わず頭を抱えたくなった。
このクーロンという場所は、一体地球のどこに存在しているのだ?
日本はおろか、他の外国名すら、聞いたことがない、と一蹴されてしまうなんて。
(どうしよう……?)
何か良い現状打開策はないものか、と悩みながら、香織は手の中のグラスに視線を落
とした。
きれいな緑色の液体で満たされたグラス。底には、オレンジ色の果実が6つ沈んでい
る。
『6つの果実(シ・フリュイ)』――あまり耳慣れない名前の飲み物。
おずおずとグラスに口をつける。
生まれて初めて見たものに対する警戒心が、ちょっとだけあった。
こく。
わずかに顔を強張らせながら飲んでみると、口の中に爽やかな甘味が広がる。
香織の舌は、それをリンゴに似た味だと認識した。
……それにしても。
香織は、重たいため息をついた。
店内にいる客達の視線がこっちに集中しているのである。
ちらちらと投げかけられる視線に、正直気が滅入る。
おまけに「変な格好」なんて言葉まで聞こえてくる。
目立つことの好きな人間だったら、これだけ注目されて大喜びするかもしれないが、
あいにく香織は目立つのはあまり好きではない。
ただひたすらに憂鬱なだけである。
(私の服、そんなに珍しいの? こんなの、ただのビジネススーツなのに)
頬杖をつきながら、『気まぐれムース』をスプーンの底でぺたぺたと軽く叩く。
ムースは皿の上でぷにんぷにんと揺れていた。
「お姉さん、それ、叩いて遊ぶ物じゃないよ?」
ふと声をかけられて顔を上げると、ハーティーがスプーンですくって食べるような仕
草をしてみせた。
食べる物だよ、と言いたいらしい。
「それくらいわかってますぅ」
スプーンですくって口に運んでみると、苺のムースによく似た味がした。
先ほど、注文を取りに来た店員が『女性に人気』といっていたが、それも頷ける出来
である。
(……あっ、そうだ!)
その時、香織の脳裏にピコーンとひらめきが走った。
「ハーティー君、お願いあるんだけど」
ぱん、と両手を合わせ、ウィンク一つ。
「世界地図が見たいの。もしよかったら、なんだけど……地図のあるところに案内し
てくれないかな?」
そう、世界地図だ。世界地図を見れば、疑問は一発で解決するではないか。
ここがだいたいどこに位置しているのか、地図を見ればはっきりする。
ついでに、日本からどのくらい離れているか、なども。
……それが決定打になるとは、夢にも思わぬ香織であった。
NPC:ソクラテス・店内のお客さん
場所:クーロン 喫茶店
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「とりあえず、落ち着いて今の状況でも楽しんでみる?」
にっこりと温和に微笑みながら投げかけられた言葉。
「そっ……そういうわけにはいかないでしょっ!?」
香織は、危うく持っていたグラスを取り落とすところだった。
おっとと、なんて言いつつ、もう片方の手でグラスを支える。
「あはは、やっぱり」
さりげなく香織にとっては衝撃的なことを口にした当の本人は、軽く流している。
「だって、いきなり人がいなくなっちゃったら色々大変でしょ? 家族だって心配す
るし、仕事だって……」
家族、という言葉を口にした途端、不安が押し寄せてきた。
ちゃんと、日本に戻れるのだろうか。
「えーと……ハーティー君」
一体ここはどこの国、と質問をぶつけようとして、はたと気が付いた。
そういえば、自己紹介がまだだったような。
「ちゃんとした自己紹介、まだだったわよね? 私は西本香織……あ、こっちだと名
前の方が先なのかな。そしたらカオリ=ニシモトってことになるんだけど。で、日本
の東京出身」
「ニホンノトウキョウ?」
ちょっとアクセントがおかしい。
「日本の東京! 日本っていう国の、東京っていう都市の出身なの。……ねえ、本当
に知らない?」
「全然。あいにくだけど」
あっさりと答えられて、香織は思わず頭を抱えたくなった。
このクーロンという場所は、一体地球のどこに存在しているのだ?
日本はおろか、他の外国名すら、聞いたことがない、と一蹴されてしまうなんて。
(どうしよう……?)
何か良い現状打開策はないものか、と悩みながら、香織は手の中のグラスに視線を落
とした。
きれいな緑色の液体で満たされたグラス。底には、オレンジ色の果実が6つ沈んでい
る。
『6つの果実(シ・フリュイ)』――あまり耳慣れない名前の飲み物。
おずおずとグラスに口をつける。
生まれて初めて見たものに対する警戒心が、ちょっとだけあった。
こく。
わずかに顔を強張らせながら飲んでみると、口の中に爽やかな甘味が広がる。
香織の舌は、それをリンゴに似た味だと認識した。
……それにしても。
香織は、重たいため息をついた。
店内にいる客達の視線がこっちに集中しているのである。
ちらちらと投げかけられる視線に、正直気が滅入る。
おまけに「変な格好」なんて言葉まで聞こえてくる。
目立つことの好きな人間だったら、これだけ注目されて大喜びするかもしれないが、
あいにく香織は目立つのはあまり好きではない。
ただひたすらに憂鬱なだけである。
(私の服、そんなに珍しいの? こんなの、ただのビジネススーツなのに)
頬杖をつきながら、『気まぐれムース』をスプーンの底でぺたぺたと軽く叩く。
ムースは皿の上でぷにんぷにんと揺れていた。
「お姉さん、それ、叩いて遊ぶ物じゃないよ?」
ふと声をかけられて顔を上げると、ハーティーがスプーンですくって食べるような仕
草をしてみせた。
食べる物だよ、と言いたいらしい。
「それくらいわかってますぅ」
スプーンですくって口に運んでみると、苺のムースによく似た味がした。
先ほど、注文を取りに来た店員が『女性に人気』といっていたが、それも頷ける出来
である。
(……あっ、そうだ!)
その時、香織の脳裏にピコーンとひらめきが走った。
「ハーティー君、お願いあるんだけど」
ぱん、と両手を合わせ、ウィンク一つ。
「世界地図が見たいの。もしよかったら、なんだけど……地図のあるところに案内し
てくれないかな?」
そう、世界地図だ。世界地図を見れば、疑問は一発で解決するではないか。
ここがだいたいどこに位置しているのか、地図を見ればはっきりする。
ついでに、日本からどのくらい離れているか、なども。
……それが決定打になるとは、夢にも思わぬ香織であった。
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