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2024/05/17 04:40 |
61.「崩壊の合唱曲」/リング(果南)
PC ギゼー メデッタ
NPC リング
場所 白の遺跡
___________________________________

 空間が二つに裂けたと思ったら、メデッタの目の前に現れたのは、何の変哲
もない、積み上げられた石で出来た部屋だった。自分を幻惑する空間が消えれ
ば、この場所は単なる遺跡にしか過ぎない。
 ただし、この遺跡には今、変化が起こり始めていた。メデッタの顔にパラパ
ラと砂の粒が当たる。それは遺跡の天井から降ってきていた。天井を見上げ、
メデッタは呟いた。
「…この遺跡、崩れ始めている」
 なぜ今、この遺跡は壊れようとしているのか、メデッタには理由は解らなか
った。ただ、この状況から、…ギゼーとリングをつれて今すぐにココを脱出し
なければ危ないことは、分かった。
(急いで、あの二人を探さなければ)
 メデッタは黒いマントを翻すと、今いる部屋を駆け足で抜け出した。

 ***

 二人の名を呼びながら、崩れそうな部屋をいくつ廻ったことだろうか。
 何部屋目かの部屋で、ついにメデッタはようやく探していた一人目に出会え
た。
「…リング!!」
 リングは、崩れそうな部屋の中央で、呆けたように空を見て座り込んでい
た。体が、先ほどの自衛行為の影響で、まだ少し金色に発光している。メデッ
タはその様子を一目見て分かった。なぜ、遺跡が崩れはじめたのか、なぜ、リ
ングはこのようになってしまったのか。
(…「聖書」だ…っ)
 メデッタはリングに近寄ると、発光するその体をしっかりと抱きしめた。
「…さあ、此処から出ようリング。こんな本、抱えているからいけないん
だ…」
 目はうつろに開いていても、意識のないリングをメデッタは抱き上げた。抱
き上げたまま、ギゼーを探し、ここから出るつもりなのだ。
(こんなわけのわからない処で、死んでたまるか)
 メデッタはリングを抱えたまま、また走り出した。部屋を出ると石柱が立ち
並ぶ長い回廊があった。迷わずそこを走り抜ける。
(リングも、…そしてギゼー君もこんなところで絶対に死なせない!) 
 メデッタは走った。一刻も早く、ギゼーを見つけるために。
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2007/02/14 23:46 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
62.「遺跡からの脱出」/ギゼー(葉月瞬)
PC:ギゼー メデッタ
NPC:リング 影の男
場所:白の遺跡
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ギゼーはただ呆然と崩れ行く遺跡を眺めていた。
 崩れていく。遺跡が。浪漫が。そう考えたら自然と涙が込み上げてくる。同
時に笑いも。ギゼーは半泣き半笑いのままその場に立ち尽くしていた。“竜の
爪”を手にしたまま。
 壊れる? 遺跡が? ギゼーにとってそれは、俄かには信じ難い事だった。
 崩れ行く遺跡を目の前にして、自分の夢まで崩れていく錯覚を覚えながらも
ギゼーはとにかく早くこの場から脱出しなければいけないと痛感していた。だ
が、どうやって? そもそもここは何処なのかすらも知らないのだ。この場か
ら脱出するにしても、この部屋がある空間自体が外の世界と繋がっているかど
うかも怪しいのだ。

「でも、揺れているってことは……」

 少なくとも現実の世界である事だけは確かなようだ。

「そうだ! 真実の鍵は?」

 ギゼーは咄嗟に手元を見た。だが、真実の鍵は忽然と消えていた。まるで夢
が霧散してしまったかのように。足元を見遣っても、後ろの扉にあつらえてあ
る鍵穴を見ても、この部屋中何処を探しても真実の鍵の姿は見当たらなかっ
た。

「夢の中の出来事だったから、消えてしまったのかなぁ」

 そう、あれは現実の世界で手に入れたものではない。夢の中の世界で手に入
れたものだ。だから現実の世界に帰ってきた今、消えてしまったとしてもおか
しくはなかった。

「ま、いっか。ともかく今はここから早く脱出するだけだ」

 何時までも夢の中の世界に引き摺られるわけには行かない。この現実世界で
は、今正に自身の身が危ぶまれているのだ。竜の爪を手に入れた今となれば、
尚更こんな場所からはおさらばするべきだ。

「そうと決まれば……」

 扉に数歩歩きかけたギゼーの耳に、自分を呼ぶ声が何処か遠くから聞こえて
来た。

「? あの声は……メデッタさん!?」

 咄嗟に希望が生まれ、メデッタの元へと少しでも近付こうと扉を開けようと
した。が、開かない。それもそのはず、この扉を開いたのは真実の鍵だったの
だ。それが今はもう無い。仕方なしに扉に対して体当たりを敢行するギゼー。
一度目の体当たりではビクともしなかった。余裕の無さを痛感するためか、は
たまた刻限を計るためか、ギゼーは一度目の体当たりの後天井を仰ぎ見た。土
色の砂粒がパラパラと頭上に降り注いでいる。この部屋も崩れるのは最早時間
の問題だ。
 二度目の体当たりで、扉が軋む。
 三度目で漸く、扉が開け放たれた。
 扉が開け放たれてギゼーが部屋から飛び出ると同時に、天井が轟音を立てて
崩れ去った。室内はそのまま土塊で埋まり、揺れはまだ続いている。床が抜け
るのも時間の問題か。

「ふゅぃー。間一髪……」

 空気の抜けるような声を漏らし、ギゼーは立ち上がって周囲を見渡した。部
屋から飛び出たそこは通路だった。今は壊れて入り口は塞がれている扉を正面
に、左右に延びる通路。右手は行き止まりで、左手には螺旋が下へと続いてい
る階段があった。先程聞こえたメデッタの声は左の螺旋階段の下方から聞こえ
てくる。どうやらこの階は円を描くように構成されているらしい。
 ギゼーは大声を張り上げてメデッタの呼び声に答えてみた。

「メデッタさーん! 俺はここです!」

 ギゼーが一声張り上げると、メデッタも流石に気付いたのか呼び声が確認の
声に変わる。

「ギゼー君! そこにいるのか!?」

 どうやらメデッタはギゼーの位置を認知出来たようである。周囲の崩落する
轟音に掻き消されないように、声を目一杯張り上げながら近付いてくる。ギゼ
ーもメデッタの声を頼りに下へと続く階段を駆け下りて行った。



     ************



 白の遺跡の一室――。

 影の男は再び現実世界で、影の存在として形を成していた。暫し崩れ行く天
上を見上げながら呆けていたかと思うと、やがて小さく呟いた。

「…………これで、やっと……やっと、役目を終えられる……」

 影の男の頬には、光るものがあった。
 王の秘宝も奪われた今となっては、唯の虚しい一つの使命でしかなかった。
影の男は、落胆するようにその姿をかき消した。

2007/02/14 23:46 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング
63.「大脱出」/リング(果南)
PC:ギゼー メデッタ
NPC:リング
場所:白の遺跡
+++++++++++++++++++++++++++++++++++

「メデッタさーん! 俺はここです!」
 その声にメデッタは上方を振り仰いだ。間違いない、ギゼーの声だ。
「ギゼー君!そこにいるのか!?」
 そう言ってメデッタは目の前にある螺旋階段を、リングを抱えたまま上り始
めた。しかし、リングを抱えているせいで、その足取りは沈み込むように重
い。いつもは涼しい表情を絶やさない彼だが、今、メデッタの顔からは、滝の
ように汗が流れ出し、必死な形相で階段の段を一歩一歩、踏みしめるように上
っている。…しかし、メデッタはリングを抱える手の力を、一度も緩めようと
はしない。
 遠くで「ガコン」と遺跡の床が脆く崩れ落ちた音が聴こえた。
 メデッタが階段を必死に半分ほど上りきったところだろうか。
「メデッタさん!」
 階段を上から駆け下りてきたギゼーとようやく合流することができた。
「ギゼー君!」
 メデッタの表情から安堵の色が漏れる。
「…よかった、無事だったのだな」
「そんな…っ、メデッタさんこそ!すごい汗じゃないですか!ずっとここまで
リングちゃんを抱えて歩いてきたんですか!?」
 そういってメデッタの腕の中のリングをギゼーは不安そうに覗き込んだ。リ
ングは発光はおさまっていたが、うつろな瞳を虚空に向けて全く動かないのは
先ほどと同じである。そのギゼーの言葉にメデッタはふっと笑みを漏らした。
「…そんなこと、なんてことはないさ。リングもこうなっているが、身体は無
事だろう。さあ、もう時間がない。あの男と、こんなところで心中は御免
だ。…この遺跡の構造、頭に入っているだろうな?」
 メデッタがそう問うと、ギゼーはふっ…と不敵な笑みを漏らした。
「メデッタさん、俺、何年トレジャーハンターやってると思うんです?」
「…それを聞いて安心したよ」
 メデッタはリングを抱える腕に力を込めると、ギゼーとともに階段を上り始
めた――。


 階段を上りきり、それから休むことなく遺跡を走り続け、途中遺跡の陥没を
注意深く避けながらメデッタたちはようやく、遺跡の入り口まで戻ってくるこ
とができた。
「はぁはぁ…、ようやくここまで戻ってこれましたね、メデッタさん。地上ま
であと少し…ってええええ!!」
 ギゼーの驚く声に、メデッタは、汗でぐっしょりと濡れた額の汗を拭うと遺
跡の入り口を見た。
 そこに立っていたのは、遺跡の入り口でメデッタたちを分裂させたあの「フ
レッシュゴーレム」だった。そいつが、入り口を塞ぐようにのっそりと立って
いる。しかし、このゴーレムもこの遺跡の魔力の産物であったらしく、最初見
た姿とは違い、ゴーレムの顔の肉は半分どろどろに「溶けて」いた。腐った身
体からは前にも増した異臭が漂ってきている。しかも、こんな姿になってもま
だ戦う気があるようだ。ギゼーたちの姿を見ると、「まぁぁぁぁぁ!!!」と
いう悲鳴のような声を上げて、一歩一歩近づいてくる。
「…全く。これではゴーレムではなくゾンビだ」
 ゴーレムを見てメデッタは、最初に出会ったときよりも性質が悪い怪物にな
ったな…、と、一人息を吐いた。そんなメデッタの黒マントを、ギゼーは焦っ
た表情でぐいぐいと引っ張った。
「メデッタさん!ちょっ、呑気に見てないで何とかしてください!早く倒さな
いと俺たち遺跡と一緒に心中ですよ!」
「ギゼー君、そういう君こそ、まず戦ったらどうだね」
 すると、ギゼーは自信たっぷりにこう答えた。
「俺はあんな怪物と真正面から戦うのは嫌です!」
「…」
 メデッタは「仕方がない」と一つ息を吐くと、ギゼーの腕にリングをそっと
預けた。
「君にはここまで案内してもらった借りがある。今は戦ってやろうじゃない
か。すまんがリングの持っている扇子から水を出してもらえんかね。私もリン
グと同じく、水を操る技を使うのだ」
 言われるままに、ギゼーはリングが服のポケットに入れていた扇子を出す
と、扇子の先から水を出した。とたんに、水がメデッタの、前に突き出した両
手の先に、槍状になって集まっていく。メデッタは近づいてくるゴーレムの腹
に狙いを定め、呟いた。
「あんな奴は、一撃で撃破する」
 するとメデッタの手の先に集まった水の槍が、勢いよくゴーレムめがけて発
射された。水の槍はゴーレムの腹を、勢いよく貫く!
 とたんに、ゴーレムの全身の肉が弾けるようにバラバラに飛び散った。同時
に、ゴーレムによって塞がれていた入り口からの外の光が一筋遺跡に差し込ん
だ。
 ゴーレムを破壊したメデッタは、ギゼーのほうを振り向いた。
「ギゼー君、行こうか。早く脱出して、リングを病院に連れて行かねばならん
な」

2007/02/14 23:47 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング

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