キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――
-Till We Meet Again!-
―――――――――――――――
ディアンはそれ以上詳しいことは言わなかったし、フレアも訊かなかった。
黙ったまま、指で地図をなぞるディアンの姿だけで十分だった。
彼の横顔を見上げたまま、胸の芯が軋むのを自覚する。
この人は、今の自分と同じくらいの歳に、すべてを失ったのだ。
・・・★・・・
リタの部屋のドアをノックしたが――返事はなかった。
入るぞ、と囁いて、扉を開く。通り道ができて、窓から吹き込んできた風が
髪を揺らした。
部屋にはリタ一人だった。肩にシーツをひっかけて、窓の前の机に
突っ伏して眠っている。
その寝顔があまりにも穏やかで、フレアは声を出さずに微笑してから、
そのままドアを閉めた。
廊下に向き直ると、階下から足音がした。すぐに褪せた黒の頭が見える。
ヴィルフリードだ。
彼は階段を上りきってから、リタの部屋の前に立っているフレアを見て、
人差し指を口元にあてた。
「昨日は寝てないんだと」
「みたいだな…ヴィルフリードはどこに行っていたんだ?」
「メシだよ。誰かさんのせいでまだ食ってなかったからな」
苦笑するヴィルフリードのセリフに、身体が強張る。それを見て、慌てて
ヴィルフリードが訂正してきた。
「違うって、あいつだよ…まったく、朝っぱらからやってくれたぜ」
「怪我とかは?」
“あいつ”が誰のことを指しているのかはわからなかったが、
彼は“あいつ”の名すら言いたくないようだった。
「ねぇよ。でも3時間ぐらいかな。怒られちまった」
「怒られた?」
その話題は忘れたいのか、ヴィルフリードはさっと目をそらすと、
まったく関係ない話を持ち出してきた。
「それより、結局どうなったんだ?話したのか?」
「うん、もう行き先も決まった」
「そう…かぁ」
「…」
そこで会話は終わりのようだった。数秒ののち、ヴィルフリードが
歩き出す。
「まぁ、また夕メシの時にでも」
喉まででかかった言葉を言おうか迷っているうちに、彼の
くたびれた肩が通り過ぎる。
そこで慌てて、フレアは振り返った。
今、言わないと。
――「待って」
「さっきはすまなかった……私、自分の事しか考えていなくて。
混乱してたとはいえ、酷い事も言った」
ヴィルフリードは既に自室のドアノブに手をかけていたが、
顔だけはこちらに向けてくれていた。
「…ま、全部が全部お前のせいじゃないからな。気にすんなって」
「ありがとう」
笑顔でそう言うと、ヴィルフリードは扉に隠れるようにしながら
手だけを出して振り、ドアの向こうに消えた。
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――
-Till We Meet Again!-
―――――――――――――――
ディアンはそれ以上詳しいことは言わなかったし、フレアも訊かなかった。
黙ったまま、指で地図をなぞるディアンの姿だけで十分だった。
彼の横顔を見上げたまま、胸の芯が軋むのを自覚する。
この人は、今の自分と同じくらいの歳に、すべてを失ったのだ。
・・・★・・・
リタの部屋のドアをノックしたが――返事はなかった。
入るぞ、と囁いて、扉を開く。通り道ができて、窓から吹き込んできた風が
髪を揺らした。
部屋にはリタ一人だった。肩にシーツをひっかけて、窓の前の机に
突っ伏して眠っている。
その寝顔があまりにも穏やかで、フレアは声を出さずに微笑してから、
そのままドアを閉めた。
廊下に向き直ると、階下から足音がした。すぐに褪せた黒の頭が見える。
ヴィルフリードだ。
彼は階段を上りきってから、リタの部屋の前に立っているフレアを見て、
人差し指を口元にあてた。
「昨日は寝てないんだと」
「みたいだな…ヴィルフリードはどこに行っていたんだ?」
「メシだよ。誰かさんのせいでまだ食ってなかったからな」
苦笑するヴィルフリードのセリフに、身体が強張る。それを見て、慌てて
ヴィルフリードが訂正してきた。
「違うって、あいつだよ…まったく、朝っぱらからやってくれたぜ」
「怪我とかは?」
“あいつ”が誰のことを指しているのかはわからなかったが、
彼は“あいつ”の名すら言いたくないようだった。
「ねぇよ。でも3時間ぐらいかな。怒られちまった」
「怒られた?」
その話題は忘れたいのか、ヴィルフリードはさっと目をそらすと、
まったく関係ない話を持ち出してきた。
「それより、結局どうなったんだ?話したのか?」
「うん、もう行き先も決まった」
「そう…かぁ」
「…」
そこで会話は終わりのようだった。数秒ののち、ヴィルフリードが
歩き出す。
「まぁ、また夕メシの時にでも」
喉まででかかった言葉を言おうか迷っているうちに、彼の
くたびれた肩が通り過ぎる。
そこで慌てて、フレアは振り返った。
今、言わないと。
――「待って」
「さっきはすまなかった……私、自分の事しか考えていなくて。
混乱してたとはいえ、酷い事も言った」
ヴィルフリードは既に自室のドアノブに手をかけていたが、
顔だけはこちらに向けてくれていた。
「…ま、全部が全部お前のせいじゃないからな。気にすんなって」
「ありがとう」
笑顔でそう言うと、ヴィルフリードは扉に隠れるようにしながら
手だけを出して振り、ドアの向こうに消えた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: