キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――
誰もいない部屋で、顔だけで窓を見る。
窓はベッドの左後ろにあるため、身体をひねらなければ
ほとんどの景色は死角になってしまうが、空だけは見えた。
どのくらい眠っていたのだろう。
皆の様子からして、まだ日付は変わっていないようだ。
もう何年も寝ていたような気もするが、さほど時間は経っていないらしい。
「思い上がるな…」
リタの言葉が口の上で蘇る。
絶望に浸って、自分がかわいそうでいるだけ。
きっと、心の奥で、誰かにこの苦しみを肩代わりして欲しいと思っている。
(思い上がるんじゃない)
この状態がずっと続くと思い込んで、さらに深みにはまってゆく。
まだ別れはこない。誰も死んでいない。
それなのに、一人で想像しただけで疲れて、傷ついて。
ふっと、笑いが漏れる。全く馬鹿馬鹿しい。
窓を見るのはやめて、床にそろえて置いてあるブーツに足を入れる。
靴紐を一段一段結びつつ、考える。
ゼクスはまた来るだろう。目的を達成するまで。
それが何なのか、次は聞き出す。
もしかしたらあの人もきっと、私と同じような闇を持っているのかもしれない。
見えないものに怯えないで。目の前のものをちゃんと見て。
お前次第だ。
(うん)
覚悟はしても、恐れちゃぁ、アカンよ。
「…よし」
きゅ、と音を立てて紐が締まる。ベッドを立って、軽くシーツを整えて。
確実に別れの時は近づいている。それなら怯えて待つより――
フレアは髪も結ばないまま、扉を押し開いた。
・・・★・・・
リタの部屋のドアをノックすると、出てきたのは予想通り、ヴィルフリードだった。
こちらの顔を見ると一瞬だけ面くらったようだが、すぐに納得したように
後ろを振り返ってリタ、とだけ呼びかけた。
その声に、ベッドではなく机に突っ伏していたリタルードが、顔を上げる。
「…もういいの?」
「あぁ、もう――大丈夫。すまない」
強がりではなく笑ってみせると、ふぅん、とだけ言ってリタは頬杖をついた。
「いいよ、入って」
部屋には入れてくれないかもしれない、というのは杞憂だった。
勧められた椅子に腰掛けると、ヴィルフリードも近寄ってきて
窓枠に寄りかかって腕を組んだ。
「用件だけ言う。私が寝ている間に何があったか聞かせて欲しい。
疲れているだろうから悪いとは思ったけれど――でかける前に
聞いておきたいんだ」
「でかける?どこに」
横手から声がかかる。ヴィルフリードだ。
「この宿の近くに図書館があったはず。もう少しゼクス…というより
人体変異と魔術の関係についての知識がほしい」
一緒に来るか?と言うと、彼はどうするかねぇ――と頭を掻いて窓の外を見た。
NPC:ゼクス
場所:宿屋
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誰もいない部屋で、顔だけで窓を見る。
窓はベッドの左後ろにあるため、身体をひねらなければ
ほとんどの景色は死角になってしまうが、空だけは見えた。
どのくらい眠っていたのだろう。
皆の様子からして、まだ日付は変わっていないようだ。
もう何年も寝ていたような気もするが、さほど時間は経っていないらしい。
「思い上がるな…」
リタの言葉が口の上で蘇る。
絶望に浸って、自分がかわいそうでいるだけ。
きっと、心の奥で、誰かにこの苦しみを肩代わりして欲しいと思っている。
(思い上がるんじゃない)
この状態がずっと続くと思い込んで、さらに深みにはまってゆく。
まだ別れはこない。誰も死んでいない。
それなのに、一人で想像しただけで疲れて、傷ついて。
ふっと、笑いが漏れる。全く馬鹿馬鹿しい。
窓を見るのはやめて、床にそろえて置いてあるブーツに足を入れる。
靴紐を一段一段結びつつ、考える。
ゼクスはまた来るだろう。目的を達成するまで。
それが何なのか、次は聞き出す。
もしかしたらあの人もきっと、私と同じような闇を持っているのかもしれない。
見えないものに怯えないで。目の前のものをちゃんと見て。
お前次第だ。
(うん)
覚悟はしても、恐れちゃぁ、アカンよ。
「…よし」
きゅ、と音を立てて紐が締まる。ベッドを立って、軽くシーツを整えて。
確実に別れの時は近づいている。それなら怯えて待つより――
フレアは髪も結ばないまま、扉を押し開いた。
・・・★・・・
リタの部屋のドアをノックすると、出てきたのは予想通り、ヴィルフリードだった。
こちらの顔を見ると一瞬だけ面くらったようだが、すぐに納得したように
後ろを振り返ってリタ、とだけ呼びかけた。
その声に、ベッドではなく机に突っ伏していたリタルードが、顔を上げる。
「…もういいの?」
「あぁ、もう――大丈夫。すまない」
強がりではなく笑ってみせると、ふぅん、とだけ言ってリタは頬杖をついた。
「いいよ、入って」
部屋には入れてくれないかもしれない、というのは杞憂だった。
勧められた椅子に腰掛けると、ヴィルフリードも近寄ってきて
窓枠に寄りかかって腕を組んだ。
「用件だけ言う。私が寝ている間に何があったか聞かせて欲しい。
疲れているだろうから悪いとは思ったけれど――でかける前に
聞いておきたいんだ」
「でかける?どこに」
横手から声がかかる。ヴィルフリードだ。
「この宿の近くに図書館があったはず。もう少しゼクス…というより
人体変異と魔術の関係についての知識がほしい」
一緒に来るか?と言うと、彼はどうするかねぇ――と頭を掻いて窓の外を見た。
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