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2025/03/10 07:49 |
28.シャイン/フレア(熊猫)
キャスト:ヴィルフリード・リタルード・ディアン・フレア
NPC:ゼクス
場所:宿屋
―――――――――――――――


 誰もいない部屋で、顔だけで窓を見る。


窓はベッドの左後ろにあるため、身体をひねらなければ
ほとんどの景色は死角になってしまうが、空だけは見えた。

どのくらい眠っていたのだろう。

皆の様子からして、まだ日付は変わっていないようだ。
もう何年も寝ていたような気もするが、さほど時間は経っていないらしい。

「思い上がるな…」

リタの言葉が口の上で蘇る。

絶望に浸って、自分がかわいそうでいるだけ。
きっと、心の奥で、誰かにこの苦しみを肩代わりして欲しいと思っている。

(思い上がるんじゃない)

この状態がずっと続くと思い込んで、さらに深みにはまってゆく。
まだ別れはこない。誰も死んでいない。
それなのに、一人で想像しただけで疲れて、傷ついて。

ふっと、笑いが漏れる。全く馬鹿馬鹿しい。

窓を見るのはやめて、床にそろえて置いてあるブーツに足を入れる。
靴紐を一段一段結びつつ、考える。

ゼクスはまた来るだろう。目的を達成するまで。
それが何なのか、次は聞き出す。
もしかしたらあの人もきっと、私と同じような闇を持っているのかもしれない。


見えないものに怯えないで。目の前のものをちゃんと見て。


お前次第だ。

(うん)

覚悟はしても、恐れちゃぁ、アカンよ。

「…よし」


きゅ、と音を立てて紐が締まる。ベッドを立って、軽くシーツを整えて。
確実に別れの時は近づいている。それなら怯えて待つより――


フレアは髪も結ばないまま、扉を押し開いた。


・・・★・・・

リタの部屋のドアをノックすると、出てきたのは予想通り、ヴィルフリードだった。

こちらの顔を見ると一瞬だけ面くらったようだが、すぐに納得したように
後ろを振り返ってリタ、とだけ呼びかけた。

その声に、ベッドではなく机に突っ伏していたリタルードが、顔を上げる。

「…もういいの?」
「あぁ、もう――大丈夫。すまない」

強がりではなく笑ってみせると、ふぅん、とだけ言ってリタは頬杖をついた。

「いいよ、入って」

部屋には入れてくれないかもしれない、というのは杞憂だった。

勧められた椅子に腰掛けると、ヴィルフリードも近寄ってきて
窓枠に寄りかかって腕を組んだ。

「用件だけ言う。私が寝ている間に何があったか聞かせて欲しい。
 疲れているだろうから悪いとは思ったけれど――でかける前に
 聞いておきたいんだ」
「でかける?どこに」

横手から声がかかる。ヴィルフリードだ。

「この宿の近くに図書館があったはず。もう少しゼクス…というより
 人体変異と魔術の関係についての知識がほしい」


一緒に来るか?と言うと、彼はどうするかねぇ――と頭を掻いて窓の外を見た。

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2007/02/11 14:42 | Comments(0) | TrackBack() | ●Colors

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