キャスト:トノヤ・月見・ファング
NPC:ワッチ
場所:ヴァルカン/街道
……………………………………………
必死に馬車から這い出て、無意識に空を仰いだら思いっきり太陽を直視した。
反射的に目を閉じるが、遅い。
まぶたの上から網膜が焼かれるような重い痛みが襲った。
チカチカする目をこすりながら前を見ると、
削げた鼻。
「うっわ!!」
トノヤはうしろにのけぞり、馬車の車輪に後頭部を強打した。
馬車から降りようとしていた月見が、その衝撃でトノヤの上に落ちてきた。
乱暴に月見をはねのけ、情況を把握しようと周りを見回した。
頭がグルグルする。
目の前には、触ったら崩れてしまいそうな粗末なアーマーを着けている汚い男。
頬も目も肉という肉が落ちて、骨と皮だけで出来ているようで気味が悪い。
こいつのドアップを不意打ちに当てられ、二日酔いでヒィヒィ言っている内臓が悪化
した。
賊か?と思ったが様子がおかしい。
「くぁ…………いぃ……」
目の焦点が合っていない。
「うっはー!こーゆーオジサマはノーセンキゥですぁ……うえっぷ」
「吐くな吐くな。頼むからやめてくれ」
ファングが月見の頭をフラフラとわしずかむ。
「と、盗賊だーー!」
乗客だか乗員だか誰かが叫んだ。
場は、あっという間に混乱した。
「おえぇえええ……!うはっ★気分爽か……い、うおえっ」
「リバース!?ふざけんなテメェ!!!うおっ服についたし……ってまだ吐く気かっ」
違うところでモメはじめた月見とトノヤを横目に、ワッチとファングは情況を把握し
ようと急いで馬車から飛び出た。
すでに馬車は囲われていた。
数は八人。
大型馬車ではないので少人数で十分囲える。
二日酔いなんて言っていられない情況なのは充分わかった。
一般の乗客はさっさと馬車に逃げ込み息をひそめてしまっていた。
下手に外に居られても邪魔な分、ありがたかった。
「な、なんか気持悪いやつらだな。ワッチんよろしくぅ~、ぅぇ」
「なにゆってんだ!みんなで力を合わせて……こらぁ!月見!トノヤ!加勢してくれ
よ!」
ヒィヒィ言ったり、汚れた服を脱いだりとマイペースな二人を横目に、ワッチは駆け
出した。
ファングもとりあえず鞄をゴゾゴソと探っている。
「いくぜ!ンルディ!!」
一番近い、すでにボロボロの男を斬り付けようとンルディを振りかぶった。
ゆらり、と、やる気のない動きでうまく躱される。
続けざまに横薙ぎに剣を振るが、手応えは軽い。
片腕を削っただけだった。
「おっ、やるねぇゾンビ君」
覇気のない顔がワッチを向いたとき、男の身体が分裂した。
正確には腕が、飛んだ。
「こんなヤツに躱されるなんてワッチん二日酔い酷いんじゃない。おっととぉ」
片腕を無くした男越しにファングがチャクラムを片手に他の敵と応戦しているのが見
えた。
気が付けばトノヤも一人に馬乗りになりボコボコに殴りつけていた。
月見も、本当にそれはフンドシなのかというようなモノを片手に敵を打ち付けている。
「こりゃぁ気合い入れないとねっ」
言い終わる前にうしろから忍び寄っていた一人を、振向きざまに一薙ぎ。
敵は言葉にもならない声で倒れた。
あいにく戦闘能力のある同乗者はいなかったようだが、敵は本当にたいしたことなく
あっという間に片づいた。
と、思ったのもつかの間で。
「あれ……なんか……増えてない?っつぅか不死身ですかこいつら!?」
ファングのセリフは間違ってはいなかった。
どうりで様子がおかしいと思っていたら、敵は不死者だったらしい。
落ちた腕や足まで意志を持っているかのように動いている。
「二日酔いにコイツぁ辛いゼ~~」
「うひゃ~!中身丸見えってやつですな★しかしこういう中身は嬉しくないですって
…!」
「キリがないよこれ」
「あ、でもオイラが斬ったヤツラはそのまま倒れてるぞ。三人とも根性がたりんぞ!」
「いや、そういう問題じゃないんじゃ」
「刃物でやればヤれるんか?」
何を勘違いしているのかトノヤはポケットからナイフをとりだし敵に突っ込んで入っ
た。
「そうじゃないって……」
ファングのつぶやきも聞こえるわけもなく。
「トノヤ殿~~!違いますぞ~~!オヤジ殿のよーなペカペカ光るスペシアルな刃物
で斬らないと意味がナッスィングッ」
「何!?ずりぃぞコラ!」
言いながらもドンパチやっているトノヤ。
「ってことはオイラ一人でやらないと……ダメ?」
「がんばってワッチん~」
はぁ、とため息をつき、足元にウゾウゾ動いていた腕を弾いてから、グロテスクな戦
場へと向った。
「こなくそーーーー!!!」
ヤケになったワッチは最強だった。
一方馬車の中。
外の恐怖に身を縮め、一固まりになったとある一角。
「おかーさーんどうしたのぉ?」
小さな子供が理解しきれず母親に聞くが、母親は黙って子供を抱きしめた。
「ねぇねぇ、あのシト、ガクガクブツブツしてるよ?だいじょーぶなのかなぁ」
みんなガクガクしてるだろうと思いながら、子供の指さすほうを見た。
薄汚いマントを目深にかぶった一人の老人。
馬車の窓にかじりつき、目はヒン剥き、血が出るほど爪をかんでいた。
呪でもかけているかのように裏返った声でブツブツと何か独り言を言っている
あきらかに他より挙動不審。
「ひぃっ!み、見ちゃいけません!」
子供の首を無理矢理そむけ、更にきつく抱きしめた。
「ひ、ひひ。……いぞ……やはり……アレは……ディ……」
「しいぞ……見つけた……ヒヒ。。ヒヒヒ」
噛んだ指は血でまみれていた。
NPC:ワッチ
場所:ヴァルカン/街道
……………………………………………
必死に馬車から這い出て、無意識に空を仰いだら思いっきり太陽を直視した。
反射的に目を閉じるが、遅い。
まぶたの上から網膜が焼かれるような重い痛みが襲った。
チカチカする目をこすりながら前を見ると、
削げた鼻。
「うっわ!!」
トノヤはうしろにのけぞり、馬車の車輪に後頭部を強打した。
馬車から降りようとしていた月見が、その衝撃でトノヤの上に落ちてきた。
乱暴に月見をはねのけ、情況を把握しようと周りを見回した。
頭がグルグルする。
目の前には、触ったら崩れてしまいそうな粗末なアーマーを着けている汚い男。
頬も目も肉という肉が落ちて、骨と皮だけで出来ているようで気味が悪い。
こいつのドアップを不意打ちに当てられ、二日酔いでヒィヒィ言っている内臓が悪化
した。
賊か?と思ったが様子がおかしい。
「くぁ…………いぃ……」
目の焦点が合っていない。
「うっはー!こーゆーオジサマはノーセンキゥですぁ……うえっぷ」
「吐くな吐くな。頼むからやめてくれ」
ファングが月見の頭をフラフラとわしずかむ。
「と、盗賊だーー!」
乗客だか乗員だか誰かが叫んだ。
場は、あっという間に混乱した。
「おえぇえええ……!うはっ★気分爽か……い、うおえっ」
「リバース!?ふざけんなテメェ!!!うおっ服についたし……ってまだ吐く気かっ」
違うところでモメはじめた月見とトノヤを横目に、ワッチとファングは情況を把握し
ようと急いで馬車から飛び出た。
すでに馬車は囲われていた。
数は八人。
大型馬車ではないので少人数で十分囲える。
二日酔いなんて言っていられない情況なのは充分わかった。
一般の乗客はさっさと馬車に逃げ込み息をひそめてしまっていた。
下手に外に居られても邪魔な分、ありがたかった。
「な、なんか気持悪いやつらだな。ワッチんよろしくぅ~、ぅぇ」
「なにゆってんだ!みんなで力を合わせて……こらぁ!月見!トノヤ!加勢してくれ
よ!」
ヒィヒィ言ったり、汚れた服を脱いだりとマイペースな二人を横目に、ワッチは駆け
出した。
ファングもとりあえず鞄をゴゾゴソと探っている。
「いくぜ!ンルディ!!」
一番近い、すでにボロボロの男を斬り付けようとンルディを振りかぶった。
ゆらり、と、やる気のない動きでうまく躱される。
続けざまに横薙ぎに剣を振るが、手応えは軽い。
片腕を削っただけだった。
「おっ、やるねぇゾンビ君」
覇気のない顔がワッチを向いたとき、男の身体が分裂した。
正確には腕が、飛んだ。
「こんなヤツに躱されるなんてワッチん二日酔い酷いんじゃない。おっととぉ」
片腕を無くした男越しにファングがチャクラムを片手に他の敵と応戦しているのが見
えた。
気が付けばトノヤも一人に馬乗りになりボコボコに殴りつけていた。
月見も、本当にそれはフンドシなのかというようなモノを片手に敵を打ち付けている。
「こりゃぁ気合い入れないとねっ」
言い終わる前にうしろから忍び寄っていた一人を、振向きざまに一薙ぎ。
敵は言葉にもならない声で倒れた。
あいにく戦闘能力のある同乗者はいなかったようだが、敵は本当にたいしたことなく
あっという間に片づいた。
と、思ったのもつかの間で。
「あれ……なんか……増えてない?っつぅか不死身ですかこいつら!?」
ファングのセリフは間違ってはいなかった。
どうりで様子がおかしいと思っていたら、敵は不死者だったらしい。
落ちた腕や足まで意志を持っているかのように動いている。
「二日酔いにコイツぁ辛いゼ~~」
「うひゃ~!中身丸見えってやつですな★しかしこういう中身は嬉しくないですって
…!」
「キリがないよこれ」
「あ、でもオイラが斬ったヤツラはそのまま倒れてるぞ。三人とも根性がたりんぞ!」
「いや、そういう問題じゃないんじゃ」
「刃物でやればヤれるんか?」
何を勘違いしているのかトノヤはポケットからナイフをとりだし敵に突っ込んで入っ
た。
「そうじゃないって……」
ファングのつぶやきも聞こえるわけもなく。
「トノヤ殿~~!違いますぞ~~!オヤジ殿のよーなペカペカ光るスペシアルな刃物
で斬らないと意味がナッスィングッ」
「何!?ずりぃぞコラ!」
言いながらもドンパチやっているトノヤ。
「ってことはオイラ一人でやらないと……ダメ?」
「がんばってワッチん~」
はぁ、とため息をつき、足元にウゾウゾ動いていた腕を弾いてから、グロテスクな戦
場へと向った。
「こなくそーーーー!!!」
ヤケになったワッチは最強だった。
一方馬車の中。
外の恐怖に身を縮め、一固まりになったとある一角。
「おかーさーんどうしたのぉ?」
小さな子供が理解しきれず母親に聞くが、母親は黙って子供を抱きしめた。
「ねぇねぇ、あのシト、ガクガクブツブツしてるよ?だいじょーぶなのかなぁ」
みんなガクガクしてるだろうと思いながら、子供の指さすほうを見た。
薄汚いマントを目深にかぶった一人の老人。
馬車の窓にかじりつき、目はヒン剥き、血が出るほど爪をかんでいた。
呪でもかけているかのように裏返った声でブツブツと何か独り言を言っている
あきらかに他より挙動不審。
「ひぃっ!み、見ちゃいけません!」
子供の首を無理矢理そむけ、更にきつく抱きしめた。
「ひ、ひひ。……いぞ……やはり……アレは……ディ……」
「しいぞ……見つけた……ヒヒ。。ヒヒヒ」
噛んだ指は血でまみれていた。
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