場所 :アニスの宿 / 演習場
PC :フェイ / コズン
NPC:レベッカ / アニス / シャルナ
「あの時感じたのは、『血をささげよ!』という強い意志でした」
「……血か」
ふむ、とアニスの言葉にフェイはつぶやいた。
町での暮らしにもだいぶ慣れたのか、しばらくぶりにあったアニスの表情はあ
の時よりも明るくなっていたが、さすがに連れ去られそうになったときのことを
思い出しているときはどことなく恐れるような表情を見せた。
アカデミーで異形種族廃絶派、とくに父を失った事件のような過激派との関連
について資料を当たっていたものの、芳しい成果が出てこないため、あえて避け
ていたアニスに改めて詳しいことを聞きなおしていた。
ほとんどは救出当時確認の取れていた情報の追確認にしかならなかったが、手
がかりが何かないかと真剣な様子のフェイに、「腹」の中で感じた強い意識のこ
とをアニスが言いにくそうにしながらも話し出したのだった。
「アニスは感応系の力や術は持ってないはずなので、勘違いかもしれないのです
けど」
だからこの話はしなかった、とシャルナが申し訳なさそうに言う。
「血……オドだったかしら、魔力としてつかえる血の力をオドと呼びあらわす魔法
体系があったわ」
フェイと一緒――というか、面白がってフェイをここに来るように仕向けたレ
ベッカが、記憶をたどるように注に視線を這わせる
「オド?」
聞き覚えがないらしいアニスとシャルナはフェイのほうを問うように見る。
「血を使う? 儀式魔法とかでよくある『乙女の生き血を~』というやつですか?」
アカデミーで修士まで取得し現在も教室所属で研鑽を積むフェイにしてもオド
なんて用語に聞き覚えがなかった。
「あ~違う違う。 どんなかって言うと、あなたたちみたいな力を魔法で後天的
にてにいれようってやつ」
レベッカはその小さな指でフェイとアニスを示しながら言った。
フェイやアニスのような「古の血脈」が、その血の濃さによって優れた身体能
力や超感覚をもっていたり、純血種であれば不死性すらもつというのは割と知ら
れている。
「そうね、例えば不死の王といわれる吸血鬼とそこらの吸血モンスターの違いっ
てわかる?」
レベッカが得意げに三人を見回す。
「不死の王はね血を栄養にしてるんじゃなくて、その血に宿るオドを補給してる
の。 その名前すら失われた魔法はね、そのオドを蓄積することで、究極的には
人為的に不死の王に迫ろうとするものだったらしいわ」
その過程において肉体的な優れた力を得たり、普通ではありえないほどの魔力
を得ることができたといわれてる、レベッカはそういうと、
「かつてのあなたや、お父さんみたいにね」
そう付け足した。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
(今まで眷属の犠牲者が多かったことと、自分の追いかける過去の事件から安易
に考えすぎてなかったか?)
アニスのところでレベッカの話を聞いてから、フェイはすっか考え今゛し舞、
何も言わず費目も区とアガミーへと帰ってきていた。
レベッカはなんとなく肩に座り辛い雰囲気を感じ、少し後ろを同じぐらいの速
度で飛びながらついてきていた。
(ありゃりゃ、あの娘のことでからかってやろうと思ってたのに、なんだかそん
な雰囲気じゃなくなったわね)
レベッカとしてはコズンとフェイの架け橋といえばきこえはいいものの、実質
緩衝材の役割を続けさせられてストレスもたまっていたため、少しぐらいは遊ば
せてもらってもいいじゃない、とそんな気分だったのだ。
せめて任務に出ていればともかく、待機状態でイラ立ちを募らせるコズンと、
表面上冷静だが、持ったように情報をつかめずに不満を溜め込むフェイの間にい
るのは、レベッカでなくともつらいとこだろう。
(これじゃ、二人のじゃなくて私の試練じゃないの~)
ちょっとくらい楽しみを~と心の中で叫びながらついてきたレベッカは、ふい
に立ち止まったフェイにぶつかりそうになり、あわてて頭を右にかわして肩の上
にてをついた。
「ちょっと!」
文句を言おうとしたレベッカは、人の多いところを避けて歩いていたフェイが
いつのまにか裏側に来ていたことに気がついた。
「あれ? ここってたしか」
フェイが足を止めてみている先ではコズンが、汗だくになりながら斧を振り続
けている姿があった。
もちろんフェイはレベッカからこの事を聞いていたが、一度も実に来た子度な
く、すっかり失念していたのだった。
「……形にはなってきてるようですね」
「え? ええ!?」
アカデミーには当然斧使いの熟練者もいるし、訓練や武術系の大会でェイを凌
駕する者と戦ったこともある。
そんなフェイのことだからてっきりこき下ろされると思っていたレベッカは思
わず変な驚きの声を上げてしまった。
それは静かに話していたフェイの声よりも遠くに届いたようで、コズンは斧を
ロスと少し周りを見渡し、すぐに気がついてこっちにやや速い歩き方で迫ってきた。
「おい!」
「……なんだ?」
ここで修行の成果を見てくれとでもいえば、レベッカの心労も減るところだ
が、コズンのいまにも殴りかかりそうな目つきを見る限り、そんな期待は出来そ
うになかった。
「なんだじゃねえ! いつまで待ってりゃいいんだ!」
さすがにつかみかかってくることはなかったが、その目は真直ぐにフェイを睨
みつけていた。
「何度も言っているだろう、まだかこの事件を洗って……」
「過激派とかそんなのはどうでもいいんだ。 俺はあのクソッタレな召喚術士を
ぶちのめさせろって言ってんだ!」
ある程度事情を知るレベッカはフェイも相当じれてることを感じてたため、い
まにもフェイがキレだすのではと、止めたほうがいいかどうかハラハラしながら
見守っていた。
しかしそんな不安とは裏腹に、フェイはコズンの視線を受け止め、気のせいか
少し笑ったようにすら感じた。
「……単細胞のほうがまよいがない、か」
「なんだと!」
「バカ、ほめてるんだ。 ……そうだな、レベッカ、資料を見直します」
唐突にレベッカのほうに顔を向け、フェイは確信に満ちた表情で言い切る。
「え? へ?」
「帰って来ないエルガーを待つまでもありません」
「どういうこと?」
「事件の中から召喚がらみで、かつ誘拐があり、とくに私のようなライカンス
ロープなどを襲ったケースを調べなおします」
自分やアニスをねらうことから、眷属襲撃の過去の事件と結び付けていたが、
たとえば過激派と別の目的を持つものが手を組んでいたということはないだろうか。
今回はたまたま普通の村だったが、自分や父のように、よく似た獣性をもつ眷
属の村にライカンスロープが居つくことは珍しくない。
そうおもえば、飛び大口はあの召喚士のスタイルとは違う気もする。
雇われたようなことを言っていたのも、捕獲しようとしていたのは別の誰か
で、あの召喚士は飛び大口だけでは対処しきれないときのためのバックアップ要
員だったと考えれば納得もしやすい
「おそらく条件を絞れば地域も絞れると思います。 普通は人型の襲撃者が過激
派の構成員ですが、モンスターを引き連れたケースはそれほど広い範囲ではおき
てません」
コズンの言うとおりだ。
組織だ何だに目を奪われすぎていた。
召喚士だけを追えば良い。
もし組織に広がるのなら、それは後の話だ。
フェイは考え込んでいたことがコズンの一言で確信に変わったのを感じていた。
「おい! どういうことだよ!」
唐突なフェイの変化にコズンが気勢をそがれながらも怒鳴り声を上げる。
それを無視して歩きだしたフェイを追うようにしながら振り返ったレベッカは、
「あんたのそいつを叩き込むチャンスが近そうってことよ!」
そういうと、忍耐の日々がようやく終わりそうな期待感に身を震わせていた。
――――――――――――――――
PC :フェイ / コズン
NPC:レベッカ / アニス / シャルナ
「あの時感じたのは、『血をささげよ!』という強い意志でした」
「……血か」
ふむ、とアニスの言葉にフェイはつぶやいた。
町での暮らしにもだいぶ慣れたのか、しばらくぶりにあったアニスの表情はあ
の時よりも明るくなっていたが、さすがに連れ去られそうになったときのことを
思い出しているときはどことなく恐れるような表情を見せた。
アカデミーで異形種族廃絶派、とくに父を失った事件のような過激派との関連
について資料を当たっていたものの、芳しい成果が出てこないため、あえて避け
ていたアニスに改めて詳しいことを聞きなおしていた。
ほとんどは救出当時確認の取れていた情報の追確認にしかならなかったが、手
がかりが何かないかと真剣な様子のフェイに、「腹」の中で感じた強い意識のこ
とをアニスが言いにくそうにしながらも話し出したのだった。
「アニスは感応系の力や術は持ってないはずなので、勘違いかもしれないのです
けど」
だからこの話はしなかった、とシャルナが申し訳なさそうに言う。
「血……オドだったかしら、魔力としてつかえる血の力をオドと呼びあらわす魔法
体系があったわ」
フェイと一緒――というか、面白がってフェイをここに来るように仕向けたレ
ベッカが、記憶をたどるように注に視線を這わせる
「オド?」
聞き覚えがないらしいアニスとシャルナはフェイのほうを問うように見る。
「血を使う? 儀式魔法とかでよくある『乙女の生き血を~』というやつですか?」
アカデミーで修士まで取得し現在も教室所属で研鑽を積むフェイにしてもオド
なんて用語に聞き覚えがなかった。
「あ~違う違う。 どんなかって言うと、あなたたちみたいな力を魔法で後天的
にてにいれようってやつ」
レベッカはその小さな指でフェイとアニスを示しながら言った。
フェイやアニスのような「古の血脈」が、その血の濃さによって優れた身体能
力や超感覚をもっていたり、純血種であれば不死性すらもつというのは割と知ら
れている。
「そうね、例えば不死の王といわれる吸血鬼とそこらの吸血モンスターの違いっ
てわかる?」
レベッカが得意げに三人を見回す。
「不死の王はね血を栄養にしてるんじゃなくて、その血に宿るオドを補給してる
の。 その名前すら失われた魔法はね、そのオドを蓄積することで、究極的には
人為的に不死の王に迫ろうとするものだったらしいわ」
その過程において肉体的な優れた力を得たり、普通ではありえないほどの魔力
を得ることができたといわれてる、レベッカはそういうと、
「かつてのあなたや、お父さんみたいにね」
そう付け足した。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
(今まで眷属の犠牲者が多かったことと、自分の追いかける過去の事件から安易
に考えすぎてなかったか?)
アニスのところでレベッカの話を聞いてから、フェイはすっか考え今゛し舞、
何も言わず費目も区とアガミーへと帰ってきていた。
レベッカはなんとなく肩に座り辛い雰囲気を感じ、少し後ろを同じぐらいの速
度で飛びながらついてきていた。
(ありゃりゃ、あの娘のことでからかってやろうと思ってたのに、なんだかそん
な雰囲気じゃなくなったわね)
レベッカとしてはコズンとフェイの架け橋といえばきこえはいいものの、実質
緩衝材の役割を続けさせられてストレスもたまっていたため、少しぐらいは遊ば
せてもらってもいいじゃない、とそんな気分だったのだ。
せめて任務に出ていればともかく、待機状態でイラ立ちを募らせるコズンと、
表面上冷静だが、持ったように情報をつかめずに不満を溜め込むフェイの間にい
るのは、レベッカでなくともつらいとこだろう。
(これじゃ、二人のじゃなくて私の試練じゃないの~)
ちょっとくらい楽しみを~と心の中で叫びながらついてきたレベッカは、ふい
に立ち止まったフェイにぶつかりそうになり、あわてて頭を右にかわして肩の上
にてをついた。
「ちょっと!」
文句を言おうとしたレベッカは、人の多いところを避けて歩いていたフェイが
いつのまにか裏側に来ていたことに気がついた。
「あれ? ここってたしか」
フェイが足を止めてみている先ではコズンが、汗だくになりながら斧を振り続
けている姿があった。
もちろんフェイはレベッカからこの事を聞いていたが、一度も実に来た子度な
く、すっかり失念していたのだった。
「……形にはなってきてるようですね」
「え? ええ!?」
アカデミーには当然斧使いの熟練者もいるし、訓練や武術系の大会でェイを凌
駕する者と戦ったこともある。
そんなフェイのことだからてっきりこき下ろされると思っていたレベッカは思
わず変な驚きの声を上げてしまった。
それは静かに話していたフェイの声よりも遠くに届いたようで、コズンは斧を
ロスと少し周りを見渡し、すぐに気がついてこっちにやや速い歩き方で迫ってきた。
「おい!」
「……なんだ?」
ここで修行の成果を見てくれとでもいえば、レベッカの心労も減るところだ
が、コズンのいまにも殴りかかりそうな目つきを見る限り、そんな期待は出来そ
うになかった。
「なんだじゃねえ! いつまで待ってりゃいいんだ!」
さすがにつかみかかってくることはなかったが、その目は真直ぐにフェイを睨
みつけていた。
「何度も言っているだろう、まだかこの事件を洗って……」
「過激派とかそんなのはどうでもいいんだ。 俺はあのクソッタレな召喚術士を
ぶちのめさせろって言ってんだ!」
ある程度事情を知るレベッカはフェイも相当じれてることを感じてたため、い
まにもフェイがキレだすのではと、止めたほうがいいかどうかハラハラしながら
見守っていた。
しかしそんな不安とは裏腹に、フェイはコズンの視線を受け止め、気のせいか
少し笑ったようにすら感じた。
「……単細胞のほうがまよいがない、か」
「なんだと!」
「バカ、ほめてるんだ。 ……そうだな、レベッカ、資料を見直します」
唐突にレベッカのほうに顔を向け、フェイは確信に満ちた表情で言い切る。
「え? へ?」
「帰って来ないエルガーを待つまでもありません」
「どういうこと?」
「事件の中から召喚がらみで、かつ誘拐があり、とくに私のようなライカンス
ロープなどを襲ったケースを調べなおします」
自分やアニスをねらうことから、眷属襲撃の過去の事件と結び付けていたが、
たとえば過激派と別の目的を持つものが手を組んでいたということはないだろうか。
今回はたまたま普通の村だったが、自分や父のように、よく似た獣性をもつ眷
属の村にライカンスロープが居つくことは珍しくない。
そうおもえば、飛び大口はあの召喚士のスタイルとは違う気もする。
雇われたようなことを言っていたのも、捕獲しようとしていたのは別の誰か
で、あの召喚士は飛び大口だけでは対処しきれないときのためのバックアップ要
員だったと考えれば納得もしやすい
「おそらく条件を絞れば地域も絞れると思います。 普通は人型の襲撃者が過激
派の構成員ですが、モンスターを引き連れたケースはそれほど広い範囲ではおき
てません」
コズンの言うとおりだ。
組織だ何だに目を奪われすぎていた。
召喚士だけを追えば良い。
もし組織に広がるのなら、それは後の話だ。
フェイは考え込んでいたことがコズンの一言で確信に変わったのを感じていた。
「おい! どういうことだよ!」
唐突なフェイの変化にコズンが気勢をそがれながらも怒鳴り声を上げる。
それを無視して歩きだしたフェイを追うようにしながら振り返ったレベッカは、
「あんたのそいつを叩き込むチャンスが近そうってことよ!」
そういうと、忍耐の日々がようやく終わりそうな期待感に身を震わせていた。
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