キャスト:マシュー リウッツィ
NPC:ジラルド
場所:コールベル/エランド公園
――――――――――――――――
すてきな夕餉
パンにスープ 肉に魚
知らないお酒は赤い色
どんな食べ方だってかまわない
みんなおなじ姿でたいらげた
あぁなんてすてきな夕餉!
少女の縄跳び歌とともに、タンッタンッ!と乾いた縄の音がする。
年は7,8歳くらいだろうか。どこの街でも見かけるひっそりとした裏路地で、少女は俯きながら縄跳びを跳んでいる。その表情は決して明るいと言えるものではなかった。
少女以外に人影はなく、縄跳び歌と縄の音だけが辺りに空しく響いていた。
……どうしてあんなこと言っちゃったんだろ……。
タンッタンッ!
お母さんすごく悲しそうな顔してたな……。
タンッタンッ!
謝らなきゃ……。
タンッタンッ!
『なんで私には魔法が使えないの?どうして?なんで私をこんな風に生んだの!?……全部お母さんのせいよ!!』
……あぁ……どうしてあんなこと……。
「どうしたの?何か悲しいことでもあった?」
「……!?」
当然、前方から声がした。驚いて顔を上げると、そこには自分と同じ年くらいの少女が立っていた。
「ねぇ。私も一緒に縄跳びしたいな」
少女はニコッと笑い、こちらに近づいてくる。
「う、うん。いいよ」
再び、縄跳び歌を歌い出し、縄跳びを跳び始めた。今度は2人で……。
++++++++++++++++++++
あのコの名前なんだっけ?……思い出せない……。
真っ新な空の元、公園の芝生の上で横になり、リウッツィはまどろみの中にいた。
リウッツィ・ピッツォニア。28歳。現在、地味に結婚相手募集中の彼女は、ビクトリア商店街の弁当屋で買ったデラックス弁当を完食し、腰までスリットが入ったチャイナドレス姿のまま、上に何も掛けることもせず、お昼寝を楽しんでいるところだった。
そんな彼女の頭上にある茂みの中で、雑草を食べながらうつらうつらしている猫が一匹。シャム猫の様な容姿をしているが、毛の色はアイボリーとワインレッドという少し変わった配色をしている。
陽だまりの中、体内に入った毛玉処理をするため雑草を食べていたところ、リウッツィと同じく眠くなってしまったらしい。
もう少しで熟睡の深淵に誘われようとしたその時。
「ぎゃん!」
不幸なことに、何かが頭上から落下し直撃したのだった。
「ん?ジュンちゃんも、ぎゃん!って鳴くことがあるんだねー」
「何馬鹿なこと言ってるんですか!?俺じゃありませんよ!明らかにマシューさんの手からすっぽ抜けたやつが何かに当たったんでしょうがっ」
……うるさいわね~……何?
リウッツィの頭上からバタバタと足音が聞こえる。それと同時に、「シャーッ!」とか「フーッ!」と威嚇する声も。
「ほう。どうやら猫ちゃんに当たったみたいよ。ジュンちゃん」
「他人事みたいに言わないでください……。どうすんですか?この猫相当怒ってますよ」
猫は未だに怒りが収まらないのか、威嚇し続けている。
「……ガット!うるさいって言ってるでしょう!?どうしていつも邪魔するのよ!!」
人がせっかく昼寝してるのに!っと勢いよく起き上がり、更に文句を言おうとしたが、茂みの向こうに見知らぬ男2人いるのに気付き、はたっと動きを止める。
眼下で男たちを威嚇している猫の側には縄が転がっていた。
「あら。こんにちは」
立ち上がって、乱れていた服装を簡単に整え、見知らぬ相手にあいさつをする。
「きれいなお姉さんじゃの~」
「ふふっ。ありがとう。あなたも綺麗な顔立ちをしてるじゃない。モテ顔さんね」
アッシュローズっぽい髪色をし、黒い目の眼鏡をかけた男の言葉に笑顔で礼を言った。角度によっては濃い紫色が入ってるように男の目は映る。
「あ。はじめまして。この子あなたの猫ですか?すみません……この人の不注意でこの子にこれを当ててしまって」
そう言って、金髪の青年が縄を拾い、頭を下げた。
「あぁ。そうだったんですか。あまり気にしないで。そんなことで死ぬわけじゃないから。ほら。この通りピンピンしてるでしょ」
尻尾をビンビンに逆立て、未だに興奮している猫を抱きあげリウッツィは言った。
「それに、この子女好きだからあまり男性には懐かないのよ」
「触らせてくれそうにないの~」
「がんばったら触れるかもしれないわね。きっと傷だらけになると思うけど」
「そうか……残念。変わった毛並みをしているから興味があるんじゃが」
男は顎を擦りながら、猫をまじまじと見つめていた。
「そうね。普通の猫じゃあないわね。焔猫(ほむらねこ)って知ってるかしら?年齢不詳の猫又よ」
「焔猫?」
青年がキョトンとした顔でこちらを向いた。
「火属性の魔法が使える猫よ。変わってるでしょう?」
猫を宥めるように頭を撫でてやる。段々落ち着いてきたのか、リウッツィの腕の中で満足そうに目を細めている。
「聞いたことはあるが、見るのは初めてじゃ。……お姉さんはもしかしてこの猫ちゃんの契約者かの?」
男はリウッツィの目の色を見て気付いたのだろう。彼女の右目は猫の目と同じ紅色をしていた。
「よくご存じねー。その通りよ」
ニコッと男に微笑む。
「でも、そんなに簡単に契約者になれないとも聞く。お姉さんは凄い人なんじゃな~」
子供みたいに目をキラキラさせ、男は感心していた。
なんだか、不思議な人ね……。自然と人を惹きつける力がある人みたい。
会ってまだほんの少ししか経っていないが、眼鏡をかけた男にそんな印象を受けた。
「それがね~……話を聞いたらびっくりする……あ!ガットどこ行くの??」
ピンッと耳を立ち上げ、紅色の目をまん丸くした猫は直後、脱兎の如くリウッツィの腕から逃げ出し、公園の噴水へと走って行った。
また、タイプの女の子でも見つけたわね……。
「ちょっとごめんなさいね!」
男性2人に断わりを入れ、リウッツィは溜息交じりで猫を追い、足早にその場を後にする。
「にゃ~~~ん♪♪」
噴水前まで行くと、猫が誰かの足にすり寄って猫撫で声をあげていた。
「こらっ!ガット!何がにゃ~~~んよ!私にはそんな声出したこともないでしょ??」
問題はそこなのだろうか?という疑問はこの際棚に上げる。
「ごめんなさい。びっくりしたでしょう?」
済まなそうな表情をしながら、リウッツィは言ったのだった。
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NPC:ジラルド
場所:コールベル/エランド公園
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すてきな夕餉
パンにスープ 肉に魚
知らないお酒は赤い色
どんな食べ方だってかまわない
みんなおなじ姿でたいらげた
あぁなんてすてきな夕餉!
少女の縄跳び歌とともに、タンッタンッ!と乾いた縄の音がする。
年は7,8歳くらいだろうか。どこの街でも見かけるひっそりとした裏路地で、少女は俯きながら縄跳びを跳んでいる。その表情は決して明るいと言えるものではなかった。
少女以外に人影はなく、縄跳び歌と縄の音だけが辺りに空しく響いていた。
……どうしてあんなこと言っちゃったんだろ……。
タンッタンッ!
お母さんすごく悲しそうな顔してたな……。
タンッタンッ!
謝らなきゃ……。
タンッタンッ!
『なんで私には魔法が使えないの?どうして?なんで私をこんな風に生んだの!?……全部お母さんのせいよ!!』
……あぁ……どうしてあんなこと……。
「どうしたの?何か悲しいことでもあった?」
「……!?」
当然、前方から声がした。驚いて顔を上げると、そこには自分と同じ年くらいの少女が立っていた。
「ねぇ。私も一緒に縄跳びしたいな」
少女はニコッと笑い、こちらに近づいてくる。
「う、うん。いいよ」
再び、縄跳び歌を歌い出し、縄跳びを跳び始めた。今度は2人で……。
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あのコの名前なんだっけ?……思い出せない……。
真っ新な空の元、公園の芝生の上で横になり、リウッツィはまどろみの中にいた。
リウッツィ・ピッツォニア。28歳。現在、地味に結婚相手募集中の彼女は、ビクトリア商店街の弁当屋で買ったデラックス弁当を完食し、腰までスリットが入ったチャイナドレス姿のまま、上に何も掛けることもせず、お昼寝を楽しんでいるところだった。
そんな彼女の頭上にある茂みの中で、雑草を食べながらうつらうつらしている猫が一匹。シャム猫の様な容姿をしているが、毛の色はアイボリーとワインレッドという少し変わった配色をしている。
陽だまりの中、体内に入った毛玉処理をするため雑草を食べていたところ、リウッツィと同じく眠くなってしまったらしい。
もう少しで熟睡の深淵に誘われようとしたその時。
「ぎゃん!」
不幸なことに、何かが頭上から落下し直撃したのだった。
「ん?ジュンちゃんも、ぎゃん!って鳴くことがあるんだねー」
「何馬鹿なこと言ってるんですか!?俺じゃありませんよ!明らかにマシューさんの手からすっぽ抜けたやつが何かに当たったんでしょうがっ」
……うるさいわね~……何?
リウッツィの頭上からバタバタと足音が聞こえる。それと同時に、「シャーッ!」とか「フーッ!」と威嚇する声も。
「ほう。どうやら猫ちゃんに当たったみたいよ。ジュンちゃん」
「他人事みたいに言わないでください……。どうすんですか?この猫相当怒ってますよ」
猫は未だに怒りが収まらないのか、威嚇し続けている。
「……ガット!うるさいって言ってるでしょう!?どうしていつも邪魔するのよ!!」
人がせっかく昼寝してるのに!っと勢いよく起き上がり、更に文句を言おうとしたが、茂みの向こうに見知らぬ男2人いるのに気付き、はたっと動きを止める。
眼下で男たちを威嚇している猫の側には縄が転がっていた。
「あら。こんにちは」
立ち上がって、乱れていた服装を簡単に整え、見知らぬ相手にあいさつをする。
「きれいなお姉さんじゃの~」
「ふふっ。ありがとう。あなたも綺麗な顔立ちをしてるじゃない。モテ顔さんね」
アッシュローズっぽい髪色をし、黒い目の眼鏡をかけた男の言葉に笑顔で礼を言った。角度によっては濃い紫色が入ってるように男の目は映る。
「あ。はじめまして。この子あなたの猫ですか?すみません……この人の不注意でこの子にこれを当ててしまって」
そう言って、金髪の青年が縄を拾い、頭を下げた。
「あぁ。そうだったんですか。あまり気にしないで。そんなことで死ぬわけじゃないから。ほら。この通りピンピンしてるでしょ」
尻尾をビンビンに逆立て、未だに興奮している猫を抱きあげリウッツィは言った。
「それに、この子女好きだからあまり男性には懐かないのよ」
「触らせてくれそうにないの~」
「がんばったら触れるかもしれないわね。きっと傷だらけになると思うけど」
「そうか……残念。変わった毛並みをしているから興味があるんじゃが」
男は顎を擦りながら、猫をまじまじと見つめていた。
「そうね。普通の猫じゃあないわね。焔猫(ほむらねこ)って知ってるかしら?年齢不詳の猫又よ」
「焔猫?」
青年がキョトンとした顔でこちらを向いた。
「火属性の魔法が使える猫よ。変わってるでしょう?」
猫を宥めるように頭を撫でてやる。段々落ち着いてきたのか、リウッツィの腕の中で満足そうに目を細めている。
「聞いたことはあるが、見るのは初めてじゃ。……お姉さんはもしかしてこの猫ちゃんの契約者かの?」
男はリウッツィの目の色を見て気付いたのだろう。彼女の右目は猫の目と同じ紅色をしていた。
「よくご存じねー。その通りよ」
ニコッと男に微笑む。
「でも、そんなに簡単に契約者になれないとも聞く。お姉さんは凄い人なんじゃな~」
子供みたいに目をキラキラさせ、男は感心していた。
なんだか、不思議な人ね……。自然と人を惹きつける力がある人みたい。
会ってまだほんの少ししか経っていないが、眼鏡をかけた男にそんな印象を受けた。
「それがね~……話を聞いたらびっくりする……あ!ガットどこ行くの??」
ピンッと耳を立ち上げ、紅色の目をまん丸くした猫は直後、脱兎の如くリウッツィの腕から逃げ出し、公園の噴水へと走って行った。
また、タイプの女の子でも見つけたわね……。
「ちょっとごめんなさいね!」
男性2人に断わりを入れ、リウッツィは溜息交じりで猫を追い、足早にその場を後にする。
「にゃ~~~ん♪♪」
噴水前まで行くと、猫が誰かの足にすり寄って猫撫で声をあげていた。
「こらっ!ガット!何がにゃ~~~んよ!私にはそんな声出したこともないでしょ??」
問題はそこなのだろうか?という疑問はこの際棚に上げる。
「ごめんなさい。びっくりしたでしょう?」
済まなそうな表情をしながら、リウッツィは言ったのだった。
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